66 第5の国の災厄3
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フラン王国では、力で王位を奪い取ったソウヤの横暴がますます激しくなった。
「戦いに出て、敵を倒せない者は価値が全くない。」
ソウヤは全国民に対する軍事適合試験を実施することを国中に通達した。
この試験は、既に騎士として国軍に属している者も受ける義務が課されていた。
これには、魔王アスモデウスの指示を受けた彼の目的があった。
悪しき心を映す世界にある魔王の城に、ソウヤが報告と伺いに来ていた。
「ソウヤよ。英雄アーサーを倒したというのはほんとうか。 息が絶えたのを確認したのか。」
「魔王様。英雄と1対1の戦いをする中で、大きな隙を見つけ剣を打ち込むことができました。手応えは十分。暗黒騎士としての極限魔力が込められていますので、数日で命を落すでしょう。」
「しかし、英雄の隣には真実に至る魔女の後継者であるクラリスがいただろう。クラリスのヒール魔術は奇跡を起す力をもつのだぞ。」
「いいえ大丈夫です。英雄に大きな隙を作るため、部下に命じ、戦いの最中にその場でクラリスにちょっかいを出させました。原因となったクラリスは大きく動揺したので、奇跡を起す魔術の構築は無理です。」
「そうかな。これまで見てきたが、英雄と魔女の2人はとても強い心を持っている。真実に至る魔女の後継者であるクラリスは決して心が折れることはない。そう感じるが。」
「問題はありません。英雄の死を確認した後、魔女も必ず殺します。」
「期待している―― 」
「ところで魔王様。事前に書面で御依頼させていただいた件につきましては‥‥ 」
「許可する。」
「ありがとうございます。」
フラン王国では、国民に対して実施する軍事適合試験が着々と進んだ。
そして、家柄や運だけで地位をつかんだ者達が排除された。
真に強い剣を使い戦いや戦術理解力が高い者、5万人が厳選され、国王直属の師団が作られた。
ある日、その師団に出撃命令が下された。
山岳地帯に頻繁に出現するようになった魔族討伐のためである。
ただ、魔族がどのくらいのレベルでどのような種類なのか、一切情報がなかった。
師団が山岳地帯に完全に入りきった時、異変が起きた。
周囲が濃霧に包まれ、完全に視界が遮断された。
師団長はカール。これまで運が悪く、それなりの地位が与えられなかった。
しかし、戦いについて、非常にまれな特別な才能を有し、心も強く勇気があった。
彼は落ち着いて全軍に指示した。
「星計陣形をとって、最大限の防御態勢をとれ!!! 」
やがて、周囲から多くの魔族達の笑い声が聞こえてきた。
「はははははははは―― 」
そして、人間にもわかる言葉が聞こえた。
「人間の中で、少しは戦える者達が集まっている。どうせ、すぐに終わってしまうと思うが、みなの者、皆殺しにしろ。み な ご ろ し だ―― 」
舞台のカーテンが開くように霧が晴れた。
優れた戦士達で構成された師団であったが、目の前の光景に、それぞれの心が折れそうになった。
人間の2、3倍の体の大きさの獣人達だった。
ライオンやトラなど肉食系の動物系で、軍団が構成されていた。
「師団長様。ざっと10万人、我が方の2倍の数の獣人に囲まれています。完全に囲まれました。師団の中には動揺が広がっています。」
師団長のカールは冷静に戦い方を考えていたが、大きな危機に気がついた。
「動揺が広がっているのか。まずいな。人間が魔族と戦う時には勇気が一番必要なのに。」
しばらくすると、獣人の大きな声がまた聞こえた。
「かわいそうだなおまえ達。おまえ達を皆殺しにすれば、フラン王国に残るのは弱い者ばかりだ。お遊び気分で攻め込んで住民を殺しまくろう。ソウヤ様は最高だなあ!!! 」
さらに師団に動揺が広がった。
その時だった。
周囲が優しい光りに包まれた。まぶしいけれど優しい光りだった。
その光りは天の高い所から、山岳地帯を照らし、戦場となろうとしている場所に白い花を着けた四葉のクローバがたくさん咲いた。
最後に天から2つの人影が降りてきて、天の高い場所で静止した。
不思議なことに遠くからもその姿ははっきりと見えた。
英雄アーサーと真実に至る魔女を継ぐ、美しき心を映す世界の守護者クラリスだった。
師団長のカールが言った。
「アーサー様とクラリス様―― 人間世界の災厄と戦っている方々だ―― 」
アーサーはまず師団の東側の前面に降りたった。
そして、光り輝く剣を胸の前に立て、聖なる言葉を唱えた。
次に瞬間移動し西、北、南面、全てに回った後、アーサーの姿は消えた。
天の高い場所の静止していたクラリスの姿も消えた。
師団長のカールはそのタイミングを逃さなかった。
「さあ、みんな。我々は最高の加護を受けているぞ。陣の周囲を鋼鉄楯でしっかり守れ。絶対にその外には出るな。遠距離に鉄砲で弾幕を作れ。近距離に入ってきた獣人は弓矢を浴びせろ。」
戦術に優れたカールは開戦前に最高の準備をした。
さらに、全軍に指令を出した。
「一斉に掛け声をかけるのだ。」
「アーサー万歳!!! 」
「クラリス万歳!!! 」
美しき心を映す世界では、優しい太陽が光を照らし始めていた。
やっと起き上がれるようになったアーサーがクラリスと話していた。
「クラリスさん。私達の気持ちを投射しただけでほんとうに大丈夫でしょうか。フラン王国の師団は獣人の軍団に勝てるでしょうか。」
「アーサー王子様。人間がもつ最大の武器は勇気です。そして、王子様の姿を見ただけで、師団のみなさんの勇気は何倍にも増幅されてでしょう。あなたは困難に負けないで戦う勇気の象徴なのです。」
「そうですか。私は弱い人間なのに。」
「価値のある尊い人間ほど、自分の価値に気がつかないものですな。」
クラリスは顔をとても赤らめて、言葉を続けた。
「アーサー様の価値を一番よく知っているのは、私です―― 」
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