63 第4の国の災厄9
ファーム王国中に分散し、人々を眠らせていたナイトメアの妖精はすべて消滅した。
国王は、美しきものを最大限にたたえなければならない法律を撤回した。
クラリス達は次の世界を目指す前に、マノンを魔女の国に送ることにした。
魔女の国の女王に向けて、クラリスは魔術で思考を送信した。
「母様、魔女であることを認識したばかりの幼いマノンを受け入れてください。彼女は魔王アスモデウスにだまされ暗黒騎士になってしまいました。しかし、魔王との契約を破棄できました。」
すぐに魔女の国の女王クリスタから返事があった。
「クラリス。世界の災厄からもう4か国も救ったのですね。お疲れ様です。幼い魔女マノンさんですが、もちらん、魔女の国で預かります。そして魔王からも守ります。」
「母様。ありがとうございます。」
「あなたとアーサー王子様達がこれから向かう国々は、さらにもっと情勢が厳しいです。悪しき心を映す世界の侵略がかなり進んでいる国々ばかりです。でも、必ずやり遂げることができます。」
「はい。それらの国々のみなさんを必ず救ってみせます。」
「かなり強い暗黒騎士が出てくると思います。それに絶望的な状況になるかもしれません。でも必ず未来は開けます。クラリス! あなたに四葉のクロバーの御加護がありますように。」
魔女の国の女王、真実に至る魔女クリスタの言葉は娘のクラリスの心にしっかり届いた。
「母様。ありがとうございます。」
最初にマノンが転移魔法陣の中に立った。
クラリス達の他に、ピエール男爵が見送りに来ていた。
マノンがピエールに言った。
「魔女としていろいろなことを勉強してから、この町に帰ってきます。ピエール様、お仕事はとても大変だと思いますが、お体に十分注意なさってください。これは私からのささやかな贈り物です。」
マノンはきれいな色の液体が入った瓶をピエールに渡した。
「これは、一滴飲めば疲労やお体の悪いところを直すことができるポーションです。クラリス姉様から教えていただいて一生懸命に作りました。」
「マノンさん。ありがとうございます。」
「それでは、行ってきます。」
転移魔法陣の中からマノンの姿が消え、魔女の国に転移された。
次にクラリス、アーサー、メイ、メイナードの4人が転移魔法陣に入った。
ピエール男爵がお礼の言葉を告げた。
「このファーム王国の住民をお救いいただき心から感謝致します。それに、私の未来の大切な人、マノンさんも救っていただきました。重ね重ね感謝致します。」
4人は深くおじぎをして、転移魔法陣の中から消え、次の国に転移された。
次の国のフラン王国はこの異世界で1、2位を争う軍事大国だった。
経済も豊かであり、そのため常時10万人ほど軍事力があった。
騎士達個人の鍛錬も十分に行われており、世界に名前をとどろかせている強い騎士が多かった。
この王国は領土拡張主義をとって、だんだん強大な国になりつつあった。
しかし、数年前、多くの国々と無理矢理連合し、豊かな国として名高いゴード王国に攻め行った。
楽勝かと思われたが――
1人の英雄アーサーに大敗北し、野望は木っ端微塵にされた。
大敗北の記憶がまだ消えないある日の朝のことだった。
フラン王国の首都、城塞都市バリの巨大な城門の前に、黒ずくめの甲冑を着た騎士が騎馬に乗り、立ちふさがっていた。
城門の守備兵が怪しんで、退去するように命令したがその騎士は微動にせず、その場に留まっていた。
「私は魔王アスモデウス様の家臣、暗黒騎士唯我独尊のソウヤだ。ゴード王国に大敗北をした弱い軍隊だから強い騎士はいないな。しかし魔王様から征服命令が出ている。俺と戦え! 強い者は出て戦え! 」
ソウヤの声は人間離れして大きく、城塞都市中に聞こえた。
その結果、フラン王国の多くの騎士達の怒りを集めた。
自分が強いと思う騎士がそれぞれソウヤと戦った。
まず、フラン王国最高の騎士として名高いロペスが出た。
重い病気で、ゴード王国との戦いに参戦できなかったが、仮に参戦したら大敗北はなかったと言われた。
ロペス自身も、参戦できなかったことで、自分自身の大変な責任を感じていた。
「ソウヤ殿。私がお相手しよう。負けた後は速やかにこの国から退去しなさい。」
「最初に出て来て戦う勇気は評価しよう。それに自分の力にもかなりの自信があるのだな。」
ロペスは剣を抜いたが、ソウヤは剣を抜かなかった。
2人は馬を走らせ、ものすごい勢いでぶつかった。
すぐに結果が出た。
ロペスは剣を大きく投げ出し、城門の石畳の上に強く打ちつけられた。
ソウヤはロペスに言った。
「なかなか良いぞ。普通の人間の騎士としては最上最強だ。我が臣下になれ。それならば命を救い、お前の最大限の尊厳が守られる。」
その言葉を聞いた時、ロペスは最初、臣下になることをきっぱり拒否しようとした。
しかし、不思議なことにソウヤに不思議な力を感じた。
自らを唯我独尊とする絶対的な力を感じると、臣下になっても良いと思った。
臣下に是非なりたいと思った。
「はい。わかりました。あなたの臣下に加えてください。」
それからも同じことの繰り返しだった。
そして、わすか数時間しか経たないうちに、フラン王国のすべての騎士がソウヤの臣下になった。
ソウヤはすべての騎士を引き連れ、城塞都市バリの中の王宮に向かった。
「我に続け!!! 我が王座に座る!!! 」
それから1年が経っていた。
城塞都市フランのある一画に転移魔法陣が現われ、アーサーとクラリス達が転移した。
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