60 第4の国の災厄6
クラリス達は館に戻り、ピエール男爵、アーサー達と情報を共有した。
ピエール男爵がクラリス達にお礼した。
「私の領民の家族を救っていただき、心から感謝致します。」
「心の通い合った温かい親子でした。ですから、美しさで心を縛り眠らせていた、ナイトメアの妖精を消滅させることも非常に簡単でした。」
アーサーが聞いた。
「クラリスさん。都市の住民を全て眠らせた力について、何かわかりましたか。」
「はい。最初は魔族であるナイトメアの力だと思いましたが、魔眼で真実を見ることができました。ややここしいですが、ナイトメアが憑依した暗黒騎士のしわざでした。」
「暗黒騎士はこの国のどこにいるのでしょう。もしかしたら、領主会議で国王の隣にいた女性ですか。」
「はい。そうに違いありません。私にはそれが誰なのか、だいたいわかっています。」
アーサーが驚いて言った。
「もう暗黒騎士についてわかったのですか。」
「はい。しかし、どうしようか。今迷っています。ピエール男爵様、この町で一番のおいしい料理を出す店を御存知ですか。」
「はい。私が国王の命令を受けて、『見栄えが良い料理しか出してはいけない』というおふれを出してしまったことに影響を受けて、人気メニューの上位を出せなくなった店があります。」
「男爵様は一番何が好きですか。」
「魚のあらの煮込みリゾットです。」
「かなり通われましたか。」
「はい。週に4日はその店に通うことにしていました。その理由は誠にお恥ずかしいのですが、魚のあらの煮込みリゾットを第1位として、上位4位までの料理を食べたかったからです。」
「その他に、その店について知っていることはありませんか。」
「私の出したおふれのせいで、上位4位のメニューを消したと聞いています。」
「それもありますね。その他には何かありますか? 」
「ありません。」
「なるほど。私が推測したとおりです。アーサー王子様。今から宿に戻りましょう。」
そう言った後、クラリスはピエール男爵に依頼した。
「ピエール男爵様も御一緒していただけませんか。男爵様に来ていただければ、この後の戦いもうまく行きます。」
「あの店で戦いをするのですか。なんであの店で―― 」
「申し訳ありません。詳細には御説明することができません。」
「わかりました。我が領民の家族を助けていただいたクラリス様の御依頼ならば、お断りすることなどできません。それに、久し振りに店に行ってみたいです。」
クラリス達4人はピエール男爵を連れて、宿の店に戻った。
店の中に男爵が入ってきたのを見て、店主のおばあさんは非常に驚いた。
「これはこれは領主様。どうなされたのですか、おふれに従い、以前領主様がお好きだった料理はメニューからはずしてしまいましたが。」
クラリス達4人が後ろに続いているのを見て、店主は聞いた。
「お客様。お帰りなさい。領主様といっしょに来られるなんて、身分の高い方々だったのですね。」
ピエール男爵があわてて言った。
「店主。この方々は私よりはるかに世界に知られている………… 」
話しを続けようとしたピエール男爵をクラリスが首を振りさえぎった。
そして、わざとらしい大きな声でクラリスが言い始めた。
「ピエール男爵様。この店には、天使か妖精のように大変に美しい顔をした少女がいます。私よりも何倍も美しいのですよ。お会いしたくないですか! 」
突然のことでピエール男爵は戸惑ったが、クラリスから肯定するようにと合図があった。
「そうですか。是非是非、会いたいですね。」
クラリスが店主のおばあさんに聞いた。
「マノンさんは今どこにいますか? 」
「しっかり把握はしてませんが。この店の中にはいると思います。」
「ピエール男爵様。マノンさんとお話したいですよね。」
成り行きで、ピエール男爵はまた大きな声で答えた。
「是非是非! 早くお会いたいです! 」
バタン――
2回の部屋の扉が開く音がした。
(あっ、あれは私の部屋? )
クラリスは思った。
やがて、天使か妖精のように美しい顔をしたマノンが階段を降りてきた。
みんなに注目されていたが、凜りんとした表情で少しも気おくれしていなかった。
ところが、ピエール男爵の視線が向けられたことを感じると、顔をとても赤くした。
(やっぱりそうだ。)
クラリスは自分の推測に確信をもった。
完全に1階に降りると、マノンはあきらかにゆっくりと近づいてきた。
「私をお呼びですか。御領主様。」
マノンの声は小さくて震えていた。
「はい。今まで気がつかなくてごめんなさい。我が一生の不覚です。」
「御領主様。前に頻繁におばあちゃんの店に来られ、料理をとてもおいしそうに食べていらっしゃいました。仮にその時、私がテーブルの前を横切ったら気がついていただけましたか? 」
マノンの問いに、ピエール男爵は即答した。
「当然マノンさんのことに気がつきますよ。当たり前です。私が今まで見た女性の中で最も美し方なのですから。」
「うそは言わなくても良いですよ。ここに絶対的に美しい方がいらっしゃいます。」
マノンはそう言うとクラリスの方を見た。
「マノンさん。絶対的に美しいというような価値はありません。私にとっては、マノンさんの方がとても美しく見えるのです。ほんとうに失礼ですが、お年をお聞きしてもいいですか。」
「9歳です。」
「私はまだ22歳ですので、年齢的にも合いますね。」
突然、マノンはクラリスの方を見て質問した。
「絶対的に美しい方。私にはあなたの黒髪や青い瞳は、この世で至高の物、特別な力を感じます。いったい、どなたですか? 」
「マノンさんには、ばれてしまいましたね。私はクラリス。美しき心を映す世界の守護者で、真実に至る魔女を継ぐ者です。」
「クラリス様は、悪しき心を映す世界を守護する暗黒騎士の最大の敵なのですね。」
食堂の中の雰囲気が一瞬にして緊張した。
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