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57 第4の国の災厄3

 アーサー達4人は、この町の領主ピエール男爵を訪問することにした。


 いきなりでは失礼なので、まず、メイナードとメイが訪問の許しを得るために館に向かった。


 歩きながら、メイナードが言った。


「メイ様。私の今着ている服は似合っているとは思いますが、どうも体がぎくしゃくします。なにせ、着る服を替えるなんて滅多にしない人間ですから。」


「そうですか。それでは今回、私の魔術でメイナード様のために服を作ってよかったです。フレイヤさんも、ほんとうは新品の似合う服を着るメイナード様を見たいんだと思います。」


「フレイヤは何も言いませんので、そのようなことを考えるとは思っても見ませんでした。」


「それはフレイヤさんが素敵な方だからです。自分の言いたいことをまず抑えて、メイナード様がどのように考えているかということを第1番に考える娘さんなんです。」


「気がつきませんでした。教えていただいてありがとうございました。」


 2人が歩いていると、先に教えてもらった領主の館が近づいてきた。


 門番を守備している2人の兵士にメイが告げた。


「失礼致します。私とこの騎士メイナードは、真実に至る魔女を継ぐクラリス様、ゴード王国王子にして英雄アーサー様の使者でございます。私どもの主人が領主様にお会いしたいのですが。」


 話し始めたメイに門番達は見とれてしまい、数秒間、固まってしまった。


 銀色の服はメイの顔やスタイルを最大限に引き立てていた。


 ムナジロガラスの化身であるメイの魅力は、人間離れしていた。


「‥‥‥‥‥‥‥‥はい。今、主人に連絡して参ります。」


 我に返った門番の1人が、屋敷の中に向かって全力で走り出した。


 それからわずかな時間が過ぎただけで、屋敷の方から2人が走って来た。


 前に走っていった門番と一緒に来たのは、身分の高い人のようだった。


 その人は、門の場所まで来てメイを見ると驚いた声で言った。


「なんて美しい! 失礼しました。私はこの町の領主ピエール男爵です。あなた様の主人である真実に至る魔女を継ぐ方クラリス様は創造できないほどお美しいのでしょう。早くお会いしたいです。」


 その後、ピエールはメイナードを見て言った。


「ごあいさつが遅れて誠に申し訳ありません。ゴード王国のアーサー王子といえば、世界最強の剣士で味方に必ず勝利を届ける英雄。前から是非、直接お目にかかりお話したいと切望しておりました。」


 よく見ると、ピエール男爵の服装は質素そのもので、少しも着飾っていなかった。


 それに、無骨な顔で武人らしく立派だったが、美しいとは言えなかった。


 明日の訪問を約束して、メイとメイナードは宿に戻った。


 クラリスが聞いた。


「メイ。ピエール男爵は美しかった? お洒落していた? 」


 メイは首を振った。


「不思議なことに全く違いました。立派な武人だとは思いますが、あのような文言を町の入口に表示している人物とはとても思えません。」


「そうですか。明日、お会いすればわかりますね。」




 翌日、約束の時間にアーサー達4人は男爵の館に到着した。


 すると、ピエール男爵他家来数十人が門の前で待っていた。


「ようこそいらっしゃいました。御訪問を心から歓迎致します。田舎領主の館で御無礼なほど汚いかもしれませんが、どうぞお入りください。」


 クラリスは思った。


(確かにメイが言ったとおり、生粋の武人で美しさには全く縁遠い人だわ………… )


 ピエールが感嘆の声を上げた。


「さすがにクラリス様は神秘な黒髪、青い瞳に吸い込まれそうなほど大変お美しく、アーサー様は英雄らしく凜々しく輝くのですね。」


 館に入り、大広間に通された。


 楕円形のテーブルにセットされた椅子に腰かけるよう依頼された。


 取り立てて飾られてはいないが、男爵の落ち着いた素晴らしい調和のとれたコーディネートだった。


 アーサーがピエールに聞いた。


「見聞を広めるため、私達は世界各国を私達で旅してます。このファーム王国に着いたのは2日前です。まだこの国の習慣はあまりよくわかりませんが、美しさを追求していらっしゃることを感じました。」


 瞬間、ピエールの顔はとても険しくなり緊張した。


「アーサー様。単刀直入で聞いていただいても構いません。美しさだけに価値があるとするこの国の現状は異常です。たぶん、もう御存知かもしれませんが、それは半年前のあの会議から始まりました。」


 それから、ピエール男爵は王宮で開かれた会議について語り始めた。




 それは突然の招集だった。


 全ての領主が王宮に集まるよう、ファーム王国全土に命令があった。


 ピエール男爵はとても小さな町の領主だったが、例外なく会議に出席しなければならなかった。


 王都キーフに着くと、会場は王宮の大講堂で全国から集まった領主達で非常に混雑していた。


 大講堂の最前列のひな壇には、国王フェリスと地位の高い家臣達が座っていた。


 そして非常にめずらしいことに、国王のとなりには着飾ったとても美しい女性が座っていた。


 フェリス国王はまだ独身だったので、出席した領主達は、どこかの国の王族を女王候補にしたのではないかと、さまざまに詮索を始めた。


 そのうち会議が始まった。


 まず国王から、美しきものを最大限にたたえなければならない法律を創ったことが宣言された。


「この法律は唯一絶対的なものである。違反することは許されない。我が臣下である領主なら、自らが美しくあるよう努めるとともに、領民にもこの考えを正しく啓蒙(けいもう)するように。」


 たとえ国王からであろうと、突然の予期せぬ命令で領主達は面食い混乱していた。


 ところが、国王は混乱にさらに拍車を掛けた。


「それでは、至高の美を見るのだ。」


 その声に合図するかのように、国王の横に座っていた女性がおじぎし立ち上がった。


 よく見ると、その女性の顔は天使か妖精のように人間離れして美しかった。


 そして、次の発言が領主達を非常に驚かせ仰天させた。


「私をしっかり見なさい!!! 」

お読みいただき心より感謝申しわげます。


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