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54 第3の国の災厄7

 次の日の朝、王宮にある国王の寝室のバルコニーで、ライオンの死体が見つかった。




 半分獣人化した国王が行方不明になったので、そのライオンが国王ではないかと噂された。




 そして、夜のうちに、魔族に変っていた国軍の兵士や騎士は人間に戻っていた。




 王宮があるエド城塞都市の住民も、魔族に変っていた人々が人間に戻っていた。








 王宮の控えの間で、アーサーとクラリス達は王妃と王子に謁見するのを待っていた。




 アーサーが言った。




「ほんとうによかったです。美しき心を映す世界のエネルギーでクラリスさんが創ったナイフで、魔族になった人々の心臓を刺して、禁呪の効果が消滅して人間に戻ることができました。」




「魔王アスモデウスが構築した禁呪ならば、反対の力で元に戻せると思ってはいました。しかし、体全体に美しき心を映す世界のエネルギーを拡散させるため、心臓を正確にねらう必要がありました。」




「サラセン王国がほこるアサシン(暗殺者)の皆さんにお願いしたのですが、200人くらいの皆さんで一晩の間に何万人の人を救うことができたとは、さすがの集団です。」




「しかし、オットー国王はなぜ人間に戻らず、ライオンになってしまったのでしょう。」




「たぶん、御自身が人間に戻ることを拒否されたと思います。人間に戻れば現実を直視しなければなりませんから。そのせいで動物であるライオンになったのですが、体が大きな負担に耐えられませんでした。」




 案内役のアスマン公爵が部屋に入ってきた。




「みなさん。王妃様と王子様の支度ができました。こちらにお出でください。」




 アーサー、クラリス、メイ、メイナードそしてシンが謁見のためアスマン公爵の後に引き続き、王宮の中の謁見の間に向かった。




 入口が開かれた。




 ファンファーレーが鳴るとともに、奏上役の家臣が告げた。




「ゴード王国アーサー王子様、ランカスター公爵の御息女クラリス様の御一行が来られました。」




 アーサーを先頭に4人が中に入り進むと、絨毯の道の両側に多くの家臣達が集まり拍手で迎えた。




 王妃と王子の前に出て、4人がひざまずこうとすると王妃が止めた。




「お止めください。この国を救っていただいて、むしろ私達の方こそお礼しなければなりません。」




 アーサーが言った。


「王妃様、国王様をお救いすることができませんでした。申し訳ありません。」




「いえいえ、陛下の心はもう完全に魔王アスモデウスに奪われていました。私達は、獣人化した陛下に毎日吠えられ、いつ殺されるのではないかと心配でたまりませんでした。」




 まだ小さな王子がアーサーにおずおずと言った。




「私はなんて不甲斐ない。父親にいつもびくびく過ごす毎日で、国民のために何もすることができませんでした。英雄として世界に名高いアーサー王子様のようには絶対なれません。」




 それを聞いたアーサーはとても優しい顔をして、小さな王子に話し始めた。

 誰もが好きになる優しい顔だった。




「王子様。不甲斐ないことなんて、全然ありません。私が王子様くらい小さかった時に、王子様のような大変苦しい目には会いませんでした。毎日を過ごされてきただけで立派です。」




「アーサー王子様。私も強くなれるでしょうか。」




「なれます。なれます。絶対になれます。不幸にもつらく恐い事が訪れましたが、王子様は逃げることはしませんでした。これからも、同じように進んで行かれれば大丈夫です。」




「ただ、私には武芸を教えてくれる先生がいません。」




 王子のその言葉を聞いてシンが申し出た。




「王子様。私シンでよければ、基本からお教えします。世界最強のアサシンの武芸は王子様が覚えるべきものとは少し違うかもしれませんが。大人になってからアレンジすればいいのです。」




「我が国が誇る最強のシン。でも、あなたはアーサー王子様の臣下であるのですね。だから、これからこの国を出ていくのではないですか。」




 アーサーが王子に伝えた。




「シンはサラセン王国にお返しすることにしました。どうも、この国から離れることのできない切実な事情があるようです。」




 王子の顔は喜びで一杯になった。




「婚約者のノーラの力ですね! ノーラありがとう! 」


 王子は謁見の間の中に控えていたノーラに向かって無邪気にお礼をした。




 王子が少し声を小さくして、続けて話した。




「アーサー王子様も早く御婚約された方がいいかもしれませんね。真実に至る魔女を継ぐクラリス様とはこれから永遠に一緒に進まれるし、それに………… 」




 謁見の間の中が王子の次の言葉を待って、シーンとした。




「私もそのように真にお美しい女性を、これまで見たことがありません。」




 クラリスがにこにこしながら王子に言った。




「王子様、英雄の進むべき道を示していただき心より感謝致します。私のような真に美しい女性を英雄はどうされるつもりなんでしょうか? 」




 謁見の間の中が大きな笑いに包まれた。








 永遠に暗い悪しき心を映す世界の王宮で、魔王アスモデウスが7人に減った暗黒騎士を集めていた。




「英雄アーサーと真実に至る魔女を継ぐクラリスは、少しずつだが着実に力を付けつつある。まだ7か国あるが、2人が訪れたら必ず撃退するのだ。」




 暗黒騎士の1人が魔王に質問した。




「撃退ではなく。いっそ殺してしまう方が簡単です。お許しいただけますか。」




「それはできない。あの2人が消滅すると、世界の天秤のバランスが崩れてしまい、この悪しき心を映す世界も存続できないのだ。」

お読みいただき心より感謝申しわげます。


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