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52 第3の国の災厄5

 包囲軍の司令官がいるテントに緊急連絡に入った。




「ただ今、城の大手門が開かれ出撃がありました。ただ、4騎だけでゆっくりと進んできます。」




 緊急連絡を受けた司令官アスマン公爵は少しも驚かなかった。




「わかった。私も見てみよう。」




 アスマンはテントを出て、高台になっている場所に登り、自分の望遠鏡を取り出して確認した。




「そうか! 英雄と魔女様が入城したのか。シンも無事に牢屋から出たか。もう1人、護衛の役についている騎士は最強の槍使いか。」




「司令官。あれは、ほんとうの英雄と魔女様ですね。伝説が目の前に歩いてきます。」




「このまま向い入れましょう。私がお迎えします。」




 それからアスマンは部下達を連れ前方に出た。




 アーサー達が近づくとアスマンはひざまずいた。




 アーサーは近づいて言った。




「アスマン公爵様。お立ちください。お願いします。そのようにされると私が困ります。」




 アーサーに言われてアスマンは立ち上がった。


 同時にアーサー達も下馬した。




「今日はお願いごとに参りました。この戦いには全く意味がありません。」








「ゴード王国アーサー王子様。私はあなたと真実に至る魔女を継がれるクラリス様が、この国に来られるのをお待ちしておりました。この国は危機に直面しています。」




 クラリスがアスマンに聞いた。




「国王が魔王アスモデウスと契約してしまい、国民が『人間に生まれた』事実を『魔族に生まれた』事実に書き換えられてしまうのですね。一体どれくらいの方々の事実が変ってしまったのですか。」




「おそらく、国王の回りにいる人間から始まり、国軍のほぼ全員、今では城塞都市エドの住民にも広がりつつあります。」




「事実の書き換えは、魔王アスモデウスといえども絶対に行ってはいけない禁呪です。その力がこれ以上広がらないようにする必要があります。急ぎですから私の全力で、今やって見ます。」




 魔王アスモデウスがこの国に発動させた事実書き換えの禁呪を、停止させることができるかどうか、クラリスには全く自身がなかった。




(母様。できるかどうかわかりませんが、全力を尽くします。真実に至る魔女のお立場として許される範囲で私をお助けください。)




 心の底で、クラリスは母親のクリスタにお願いした。




「クラリス。自分の力を信じるのよ―― 」




 母親の声が聞こえた。


 そして、とても不思議なことが起きた。




 彼女が立っている場所を中心に四葉のクローバが現われた。


 四葉のクロバーは純白の花々を着けていた。




(母様。ありがとう。)




 決意したクラリスの魔眼の美しい青い瞳が輝いた。




「神よ。古いにしえよりあなたが与えた運命は神聖なるもの。それはどのようにやって来ようと従い、抗あらがい生きて行く。運命を書き換えている者の行いを見過ごされるのか??? 」




 彼女は両手で魔法印を結んだ。




 そして魔法印を開いた。


「私の全ての力を使い命ずる。解呪!!! 」




 クラリスの強い呼び掛けに、自分が与えた運命を書き換えられたことに気がついた神は驚き、アスモデウスの禁呪を否定した。




 そのしるしとして、天から大きな鐘の音が聞こえた。




 最大の魔力と集中力で神に呼び掛けたクラリスは、その場に倒れ込み意識を失った。


 あわててアーサーが抱き起こし、軽々と両手で抱いた。 




 しばらくすると、クラリスは意識を取り戻し目を開けた。




「クラリスさん。成功しました。もうこれ以上、この国の人間が魔族に変ることはありません。」




 クラリスは微笑みながら言った。




「よかったです。でも、母様なら既に魔族にされてしまった人間を元に戻すことを神にさせたでしょう。今の私にはこれ以上の魔族化を防ぐだけで精一杯でした。」




「いえいえ。神に禁呪を気がつかせるだけで最高に立派でした。クラリスさんは最高の魔女です。」




「ほめていただきましたね。それにご褒美もいただきありがとうございます。」




「ご褒美??? 」




「お姫様だっこ―― 」








 その場はしばらく固まったが、アスマン公爵が口を開いた。




「クラリス様、ありがとうございました。アーサー様、これからのことはどのようにお考えですか? 」




 アスマンに見られていることに気がついて、アーサーは急いでクラリスを下におろした。




「アスマン公爵様。尊敬する方に、これからの戦略のことを語るのはとてもおこがましいです。……国王をだます必要があります。」




「はい。城は包囲軍が落して、シンと城主のノーラさんが亡くなったことにするのですね。」




「ああ、よかった。アーサー公爵様と同じ結論に達して。子供の頃からの心の先生なんですよ!!! 




 アーサーは長年の夢を叶えようとしていた。


 そして、ふところからボロボロになったアスマン公爵の著作本を取り出した。




「ずっと何回も先生の本を読んで、正しい方向を選択することができました。心より感謝致します。」




「私こそ、拙作をそのように熟読していただいたとは恐れ多いです。」








 次の日、包囲軍は城に総攻撃をかけた。




 城の守備軍と大規模な戦闘になり、最後に城は落城し炎に包まれた。




 城の城主ノーラと、いつの間にか城に逃げ込んだシンは自ら命を絶った。




 サラセン王国の城塞都市ブヘンに多くの吟遊詩人が訪れ、合戦物語として歌った。




 王城にいる国王にも同じようなことが報告されていた。




 魔王アスモデウスと取引きした国王は既に半分魔族化し、ライオンの獣人になっていた。




 報告を聞くと、国王は大きく吠えた。


 まだ人間である王妃と王子は、大変おびえた。




「そうか。シンのやつは死んだのか。これも、国王に大きな恥をかかせたからだ。ノーラのことはとても残念だ。是非側室にしたかったのだがな―― 」

お読みいただき心より感謝申しわげます。


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