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49 第3の国の災厄2

 アーサーは、シンが収監されている牢屋に行ってみようと決心した。




 声を小さくして、住民に聞いた。




「お願いします。最高の戦士が収監されている牢屋がある街道に出たいのですが。」




「見ても面白くないよ。この道のあそこの交差点を右に曲がると大きな街道に突き当たる。その街道沿いだよ。左に曲がってしばらく歩くんだ。」




「ありがとうございました。」




 アーサーはクラリス達に聞いた。




「昔、子供の頃に大切な約束をした人なんです。私のことを覚えているかどうかわかりませんが、すぐにでも会いに行きたいのですが。」




「わかりました。」


「はい。」


「もちろんです。」




 その後4人は歩き、牢屋のような建物が見えてきた。




 メイナードが驚いて言った。




「王子様。ひどい建物です。あれでは収容されている人が丸見えです。」




「歴史上、最高に強い伝説のアサシンになると言われた人間にあのようなことをするとは、とても信じられない。メイナード、実はあなたの前に、子供の頃でしたが、彼とは臣下の約束をしているのです。」




「そうですか。王子様が臣下に加わることを許可されたのなら、かなりすばらしい方なのですね。」




「彼が今どうなっているのか心配です。私を覚えているでしょうか。」




 クラリスが言った。




「私とメイはここで待っています。アーサー王子様の臣下になることを許された方が、見世物にされているのがかわいそうです。アーサー王子様に会うことは切望されていることでしょう。」




「王子様。私もここで待っています。お2人だけの時間をお過ごしください。」




 メイナードがそう言うのを聞いて、アーサーは1人で牢屋に近づいて行った。




 牢屋に近づくにつれて悪臭がした。




 あまり衛生状態が悪いようだった。




 牢屋は街道に向かって全面的に開かれていた。




 アーサーが近づくと、中では筋肉質の生還な表情をしている男が逆立ちをしていた。




 両手、両足に鎖がはめられていた。




 しかし、彼の目は死んでいなかった。




 アーサーには見事なほど生き生きと見えた。




 一瞬、シンは逆立ちをしながらアーサーの顔を見上げた。




 そして、目があった。




 アーサーは思った。




(ああ、この目だ。無限大の深さと強さを秘めている。私に忠誠を誓ってくれた。)








 シンもすぐに気がついた。




 逆立ちを止めて、檻越しにアーサーの前にひざまずいた。




「王子様。長い年月、あなた様の元に駆けつけることができす、極めて遅くなり申し訳ありません。」




「いえいえ。私の戦いは、これから途方も長く続くのです。遅いことはありません。」




「理不尽に攻めてきた10倍を超える敵軍を見事に撃退し、逃げていく敵兵にも情けをかけた。英雄の逸話を私も知っています。逸話の中に私も入りたかったです。」




「私は、これから、幾度となくギリギリの戦いをしなければなりません。是非是非、私のそばにいてください。」




「王子様。残念ながらそれは不可能です。両手両足にかけられたこの鎖は、特別な金属で作られています。たぶん、私が死ぬまで外れることができないでしょう。」




 アーサーがよく見ると、鎖はかなり厳しくシンにかけられ、そこから血が流れていた。




 急にアーサーは下を向いた。




 そして黙り込んでしまった。




 少し遠くで見ていたクラリスにはよくわかった。




(アーサー王子様。あなたは人のことを第1に考えてしまう素敵な最弱の人ですね…… )




 石畳の下にアーサーの大粒の涙が落ちた。








 知らないうちに、アーサーとシンのそばにクラリスが近づいて来ていた。




 クラリスを見て、シンはとても驚いたように言った。




「あなたは、真実に至る魔女を継ぐ方ではありませんか。英雄を助ける方ですね。」




「そうです。シン様、その鎖を私に見せてください。」




 クラリスにそう言われて、シンは鎖にしばられた両手と両足を前にだした。




「これは魔石で作られています。悪しき心を映す世界のエネルギーを秘めています。だから人間にとっては永遠の鎖になります。しかし私は美しき心を映す世界の守護者です。」




 彼女は右手でシンを縛っている鎖を指さした。




 その手からは美しき心を映す世界の太陽の光りが放出された。




 そして、その光りが鎖にあたると、はずれた。




 クラリスは下を向いていたアーサーの顔に優しくさわって動かし、シンの鎖がはずれたことを見せた。




 泣きはらしたアーサーの顔に、驚きと明るさが現われた。




「シン。出切る限り後ろに下がってください。」




 そう言うと彼は剣を抜き、牢屋の鉄格子てつごうしに向かって振った。




 鉄格子は切断され、下に落ちた。




 そしてそこには大きな穴が開いた。




 アーサーは大きな声で叫んだ。


 怒りをこめたような強い口調だった。




「私はゴード王国第3王子アーサー!!! 私の大切な臣下が理不尽に牢屋に拘束されていたので取り戻した。このことについては、サラセン王国の、誰の、どのような抗議も受け付けない!!! 」




 牢屋の周囲は騒然として、大群衆が集まった。




 そのうちに、数百人の国軍兵士が集まってきた。




「陛下に反逆したアサシンを牢屋から助けようとする者、今すぐ殺すのだ。それからアサシンもここで殺してしまえ。」




 シンがアーサーに教えた。


「王子様。おわかりになりますか。この兵士達は人間ではありません。」




「わかります。それでは、全部消滅させましょう。メイナードも加わってください。クラリスさんとメイさんは安全な場所で見ていてください。」




 メイナードがシンに向かって深く一礼した。


「シンさん。私もアーサー王子様の騎士です。アサシン最高の戦士と一緒に戦うことを光栄に思います。」




「知っていますよ。戦場に道を作る最強の槍使いですね。私も光栄です。」








 戦いはほんのわずかな時間で終わった。




 数百人の国軍兵士はアーサー達3人に全て切り伏せられ、多くの魔族に変わった死骸が残された。

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