46 第2の国の災厄8
リリーの母親は話しを続けた。
「今、家の回りを大勢の人々が取り囲んでいるわ。そして、私とあなたのことをひどくなじっている。 」
「お母さん! 顔色がひどく悪そうだわ。」
リリーは意識の深い場所で、母親とつながっていた。
「大勢の人は、私が恥ずかしい仕事でお金を稼いだと怒っているわ。言い訳はしません。でもただ一つだけ、あなたに言いたかった。どうしても、あなたの未来のためにアカデミーに入学して教育を受けてほしかった。」
すごく熱がありそうで、その後、しばらく母親は顔を手でおおった。
力を振り絞って、母親は話し始めた。
「あなたがいつも目を輝かせて話す、女性の地位向上。未来には、私のような女性でもしっかりした職業に就き、毎日豊かに過ごせるような国にしてください。政治に携わり、あなたなら、絶対できる。」
最後に一言を告げた。
「お願いです。あなたがアカデミー入学のために蓄えたお金を汚く思わないで―― お母さんはそれだけがつらい。悲しい立場の女性があなたに未来の望みをたくしたお金です――
――誇りに ――思って 」
その瞬間、家が崩壊したようで何かが上から押してきて、母親の姿は見えなくなった。
(お母さん。もう家に火が回っていたのね。熱かったでしょう。)
命を落す瞬間、伝わる可能性がほとんどないのに、母親はリリーに向かってメッセージを残したのだった。
(私はなんでそんなに怒っていたのだろう。お母さんの愛情と私への望みは尊い。私に対して嘲笑した人々には怒るのではなく、理解してもらい、世の中を変えていけばいいんだ。)
美しき心を映す世界の花畑に横たわっていたリリーは意識を取り戻し、目を覚ませた。
「ここは? 」
不思議そうに回りを見渡すリリーにクラリスが説明した。
「リリーさん。ここは美しき心を映す世界、私が御招待しました。」
「輝くような黒い髪。美しく輝く青い瞳。もしかしたら、あなた様は美しき心を映す世界の守護者。真実に至る魔女を継ぐ方ですか? 」
「はい。私はクラリスです。シャーロッテさんから、あなたのことを救うように依頼があったのです。」
「シャーロッテ! 最高執政官ですか! 」
「私の意識はしばらくありませんでした。母親の死に直面してから、なにかに心を支配されていたようでした。」
「虚飾を現実にみせられていたのです。そして、巨大な怒りを心の中に作らされていました。悪しき心を映す世界の暗黒騎士が黒幕です。」
「暗黒騎士ですか。」
「具体的な名前で言うと、ゾルゲです。」
「ゾルゲですか!!! あの人が―― 」
「リリーさん。あなたはもう大丈夫です。ただ、もう1回、ゾルゲに狙われる可能性があります。ですから、現実世界に帰るのはもう少し後にして、この美しき心を映す世界にいてください。」
「魔女様。あの人の弁舌、多くの人に対して演説する力は虚飾を現実にしてしまう魔の力をもっています。どのように戦われるのですか。」
「大丈夫。任せてください。あのような人は絶対に許せません。女性として、あなたに代わって十倍返してやります。」
悪しき心を映す世界の世界の魔王城、ベランダに出て魔王アスモデウスは天を仰いでいた。
「人間の世界との連結空間が閉じられた。心に憎悪の穴が開いた人間を誰かが助けたのか。ゾルゲはもうあぶないかもしれないな―― 」
その後、魔王はゾルゲに向かって指令を出した。
ゾルゲは、ゲルマ王国の首都ベルン中央公園に観衆を集めて演説をしていた。
彼の演説を聴いていた全ての人が、彼の思うとおりの考えをいだくようになっていた。
演説の後、彼は大満足して演説台を降りた。
その時だった。
時間が静止し、全ての動きが止まった。
「暗黒騎士ゾルゲよ。お前が作った悪しき心を映す世界との連結空間は消滅したぞ。」
「魔王様。それはあり得ません。あの女の心には私の力で憎悪の巨大な穴が開いています。それをふさぐことなどできるはずがありません。」
「虚飾のゾルゲよ。確かにお前が話す演説には人間の歴史を変えてしまうくらいの魔力が宿る。しかし、人間を超えた人間もいるのだ。十分に注意して、そのような人間にあったらやり過ごして逃げよ。」
「人間を超えた人間とは誰ですか。」
「美しき心を映す世界の守護者である魔女で真実に至る魔女を継ぐ者。そしてもう1人、私と同じくらいの強さをもつ英雄だ。」
「魔王様。わかりました。」
ゾルゲはそう答えたが、実は自信家の彼はその2人にあったら戦い、絶対に勝ってみせようと考えていた。
首都ベルンの郊外にゾルゲは大邸宅を構えていた。
嘘を真実にみせることで、多くの人々からたくさんの報酬を得ていたからだった。
演説会場になった中央公園から、ゾルゲは馬車で帰宅しようとしていた。
ところが、その門の前に2つの人影があった。
黒いローブに体中を包んでいた女性2人だった。
そのすぐ前に馬車を止めて、ゾルゲは注意して降りた。
「おやおや、我が邸宅の前に2人のお客様ですか。どちら様ですか。」
前に立っていた1人の女性がローブのフードを上げて顔を見せた。
この国では非常にめずらしい黒髪が妖しい神秘的な力を放ち、さらに驚くことは、途方もない巨大な魔力を秘めた青い瞳が強い光で輝いた。
まるで、青い炎がそこで燃え始めているようだった。
「わかったぞ。お前のことは魔王アスモデウス様から聞いている。美しき心を映す世界の守護者である魔女で真実に至る魔女を継ぐ者だな。」
魔女は静かにおじぎをした。
とても無気味なおじぎだった。
「クラリスです。今日は相手を必ず殺戮する黒装束でお目にかかりました―――― 」
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