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44 第2の国の災厄6

「どうしたらリリーさんの心に大きく開いた憎悪の穴をふさげるのだろう―― 」




 クラリスは真剣に考えたが、なかなか良い方法をみつけることはできなかった。




 魔眼をフル回転させて真実を捜したがダメだった。




 今、宿舎の中で1人でいると、自分の不甲斐にあきれるばかりだった。








 ふいに、彼女の部屋にノックの音がした。




「クラリスさん。難しい問題の答えを考えるの大変ですよね。私も一緒にお手伝いします。」


 アーサーの声がした。




「どうぞ。お入りください。」


 ドアを開けると、アーサーがとても心配そうな顔で立っていた。




「とても疲れている御様子ですね。どうですか―― こういう時は少し動くといい考えが浮かぶことがあります。ベルンの町に出て見ませんか。さっき聞いたら、今日はお祭りみたいですよ。」




「はい。そうかもしれませんね。初めて来た町の中を歩くのもいいかも―― 」




 2人は侍女のメイや従者のメイナードに気づかれないように、そっと2人の部屋の前を通り過ぎた。




 ベルンのメインストリートには多くの人々が繰り出していた。


 両側にはたくさんのさまざまな種類の露店が開かれていた。




「アーサー王子様。大変な人手ですね。いったい今夜はどんなお祭りなのでしょう。」




 2人の会話を聞いていた露店の店主が声をかけてきた。




「お似合いのお2人さん! ゲルマ共和国に初めて来られた旅の方ですか。今日は『星祭り』です。」




 お似合いと言われて、少し顔を赤らめながらクラリスが聞いた。


「どうしてお祭りになったのですか? 」




「大変な苦労をして世界初の共和国を建国した偉人達が、ほんとうに美しく夜に輝く星々を見て心を励ましました。自分達を応援し期待しているたくさんの人々の気持ちに気がつき、最後には戦いに勝利しました。」




 クラリスとアーサーは夜の空を見上げた。


「そうでしたか。でも、きれいですね!!! 」




 クラリスは、自分が解決しなければならない問題があることを一瞬、忘れてしまった。




 その後、彼女の心の中に光が差した。




「アーサー王子様。リリーさんの心を励ますことができないでしょうか。憎悪で心を守るのではなく、悲しい悲惨な事実に立ち向い、真実をつかんで勝利できるように―― 」




「クラリスさん。これは可能かどうかわかりませんが、リリーさんをほんの短い時間でも美しき心を映す世界に連れて行って、真実を見せてあげることができないでしょうか。」




「はい。彼女のお母様はもうこの世にいらっしゃらないかもしれませんが、お母様の愛情を見せてあげたいと思います。私の転移魔術を最大限に使えば可能だと思います。」




「すぐにでも取りかかりますか。最大の魔術を使うために心と体を休める必要がありますから、クラリスさん、宿舎に帰りましょう。」




「―― 」




「どうしました? 」




「私の隣には、背がとても高く金色のくせ毛で目の大きなイケメンがいます。しかも、そのイケメンは外見だけではなく内面もイケメンで、最弱で最強の英雄です‥‥ すばらしい時をもう少し私にください。」




「もちろんです。夜の暗闇の中でもきれいに輝く黒髪、美しく青い瞳は真実の美しさに満ちあふれています。私も、世界最高の魔女ともう少し素敵な時間を過ごしたいです。」




「………… 」


「………… 」




 2人は人通りが少なくなる深夜まで、祭りでにぎあうベルンのメインストリートを散策した。








 宿舎に帰った時にはかなり遅い時間になっていたが、クラリスとアーサーが非常に驚いたのは、宿舎の入口の門の前に2つの人影が見えたことだった。




「あっ、あれはメイ! 」


「そして、メイナード! 」




 近づくと、侍女のメイが第一声を発した。




「お嬢様。大変お早いお帰りですね。こんなに早い時間に帰って来ていただけるのなら、大変安心です。私も侍女として同行しなくても問題にはなりませんですね。」




 メイナードは大変神妙な顔で言った。




「王子様。王子様くらい強ければ何も問題はないとは思いますが、万が一のこともあります。もし、王子様に何か異変が生じた場合は、私は騎士失格ですから自ら命を絶ちます。」




「メイナード。ほんとうにすいません。お祭りのすばらしさに、つい長い時間遠出してしまいました。」




 クラリスがメイに言い訳をした。




「ごめんなさい。メイを心配させてしまいました。でもちゃんと、真実に至る魔女を継ぐ者としての義務を果たすことができそうです。明日、特別な魔術を発動しなければなりませんから助けてください。」




「さすがですね。お嬢様はほんとうに短い時間で、リリーさんを助けることができる方法を思いついたのですね。」




「はいはい。確かにほんとうに短い時間でした。私の気持ちの高ぶりが、時間を無限大に短くしたような気がしました。」




「そうですか! お嬢様。ほんとうによかったです。明日、私は侍女として、お嬢様が特別な魔術を発動させるのをしっかりとお助けします。」



「ところでメイ。リリーさんの心には憎悪の大きな穴が開き、悪しき心を映す世界との連結空間になっています。このような方を美しき心を映す世界に御招待することはできますか。」




「とても難しいことです。ただ、もし可能になるとしたら、たとえ一瞬でも連結空間をふさぐことができれば、お嬢様の特別な転移魔術で、リリーさんを時間が無い美しき心を映す世界に御招待できるでしょう。」

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