41 第2の国の災厄3
若い娘は、意識のない目つきでふらふらと歩いていた。
「クラリスさん。あの娘さんはどうしたのでしょう。」
「アーサー王子様。あの娘さんは何か普通の人間とは違うところがあります………… 」
そう言った後、クラリスは魔眼で真実の姿を見始めた。
「…………わかりました。心の中に大きな穴があります。それは、悪しき心を映す世界と連結しています。もしかすると、魔族はそこを通り、出現しているのかもしれません。」
突然、娘の額から光りが放出された。
そして、光りがあたった場所には、次々に魔族が実態化された。
メイナードが聞いた。
「王子様。どうしましょうか。魔族達を駆逐しましょうか。」
「ゲルマ共和国のために、全部駆逐しましょう。クラリスさん、私達を不視のカーテンから出してください。」
「わかりました。『不視を解け、姿形を実態化させよ。』」
魔族達の集団の中にアーサーとメイナードが実態化した。
自分達の中に、いきなり人間が現われたことに魔族達は大変驚いた。
しかし、知能をもつリーダー格のオーガが叫んだ。
「こんな場所にまだ人間が残っているぞ。魔王様に怒られる。既にこの地は魔族の土地、あの2人の人間を早く殺せ。今すぐに―― 」
そう命令された魔族達は、アーサーとメイナードに殺到した。
「王子様。これくらいの数の中級魔族であれば、私1人で十分です。見ていてください。」
「そうですね。お願いします。我が最高の騎士メイナード、魔族達を全て殲滅せんめつしなさい。」
毎日朝昼晩、槍の鍛錬を欠かさず努力しているメイナードのことを、アーサーは良く知っていた。
事実、彼は槍の達人のレベルをはるかに超えて、神のレベルに達していた。
メイナードの槍は、瞬く間にほとんどの魔族の一番重要な急所を貫き、魔石を破壊した。
姿を消してその要素を見ていたメイが、クラリスに聞いた。
「お嬢様。メイナードさんには美しき心を映す世界からの光が当っていますね。今では、勇者を完璧に守る騎士になられていますね。」
「メイ。メイナードさんの一番良いところは、謙虚で努力し、他人のことを思いやれる性格です。このような人間には、ますます美しき心を映す世界の光りが当り、強くなるでしょう。」
その内、メイナードは全ての魔族を消滅させてしまった。
メイナードはアーサー王子の前にひざまずいて報告した。
「アーサー王子様。御指示どおりの戦いを完了させました。」
「さすがです。ところで、あの娘さんはどこに? 」
戦いの間に、心の中が魔界との連結空間になっていた娘は姿を消していた。
4人は政庁に帰り、街道で見たこと起こったことをシャーロッテ最高執政官に報告した。
全てのことを聞いた後、シャーロッテの顔が曇った。
そして、4人に話し始めた。
「その娘はリリーです。まだ若いのですが、とても優秀で、かって、この政庁で私の右腕としてすばらしい働きをしてくれました。特に女性の地位向上、子育てしやすい国づくりです。」
「その方が、なんで、心の中に悪しき心を映す政界との連結空間を作り、あのような場所をふらふらと歩いていたのですか。」
「この国は世界で初めて王政を廃し、共和性になったといえ、昔からの保守的勢力は大変多いのです。ですから、女性が人を指導する立場になること悪く思うのです。」
「そうなんですか。」
「保守的な勢力の矛先はまず、リリーに向けられました。そして、無いことばかりですが、彼女の不正やスキャンダルが国中に広められました。」
「国として、そのような嘘を流す人々の取り締まりは行わなかったのですか。」
アーサーが聞いた。
「できる限りの取り締まりは行いました。ところが、保守的勢力は彼女にとって、もっともつらい事実を見つけ出してしまいました。今度は嘘ではなく、つらい事実を最大限に宣伝し始めました。」
「ひどいことをするのですね。」
同じ女性として、怒りを込めた声でクラリスが言った。
「クライスさん。リリーの心に開いた穴をなんとかして埋めることはできないでしょうか。」
「つらい経験をして、心の中に開いてしまった穴は、残念ですが本人でしか埋めることができません。ですが、回りの人々は穴を埋めることができるよう助けることはできるのです。」
そう言った後、クラリスは決意を込めた青い瞳をシャーロッテに向けて、お願いした。
「最高執政官様。個人的なことを聞くのは良くないかもしれません。しかし、私は彼女を助けたいのです。詳しいことを教えてくださいませんか。」
「…………わかりました。」
シャーロッテは話し始めた。
リリーはゲルマ共和国の中でも最低の貧民街の出身だった。
彼女は幼い頃から頭が良く、さらに何事も前向きに積極的に考え、自分のことよりもまず、弱くて苦しんでいる他人のことを考えた。
しかし、彼女の未来に大きな壁が立ちふさがった。
母親1人に育てられ、最貧の家庭で育った彼女は教育を受けることが不可能だった。
ゲルマ共和国には、国民誰もが最高な教育を受けることができるよう、国立アカデミーがあった。
国立で学費はとても安かったが、彼女の家庭にとっては最高に高かった。
ところが、ある日、母親が十分な学費を用意した。
「お母さん。このお金はどうしたの。まさか悪いことで手に入れたのではないですね。」
「いいえ、これは私が精一杯の努力をして働いて得たお金だよ。だから胸を張ってアカデミーにお行き。」
「ほんとうにありがとう! お母さん! 」




