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39 第2の国の災厄

 ゾルゲの演説に、聴衆はみんな引き込まれていた。




 表情や身振り、声の調子、そして話し方から聴衆はみんな引き込まれた。




 そして、演説の最後には最大限の盛り上がりになり、聴衆から大歓声が上がった。




 演説が終了した後、アーサーがクラリスに聞いた。




「クラリスさん。彼の話すことは全部真実のように見えますが、少しおかしいですね。」




「アーサー王子様。あの人からは全く魔力を感じません。しかし、あの人が話す言葉には強力な魔力が込められています。たぶん、暗黒騎士だと思います。」




「そうですか、言葉自体に魔力が宿ることがあるのですか。」




「はい。そういう魔力の使い方をするのだと思います。簡単に言いますと、その人間の口から言葉を出す瞬間に、体の又は精神の奥底から魔力を放出し、声の性質や振動に付与するのです。」




「それにしても、農産物や工芸品の値段を役人が抑えているなんて、ほんとうかどうか確認する必要があります。ところで、この国はいったいどこなのでしょうか。初めて来たと思います。」




 世界中を旅した経験が多いアーサーも来たことがない国だった。




「メイ。うまく聞いてきてくれないかしら。」




「はい、お嬢様。私が聞いてきます。」


 侍女のメイが言った。








 メイはすぐ近くにあった工芸品を売っている露天商の店先に近づいた。




 人間の姿の時のメイは、背の高い大変な美人だったので、店の主人もすぐに反応した。




「これはこれは、とても美しいお嬢さん。美しい装飾品がご入り用ですか。」




「実は私は家族と一緒に遠い国から旅をしていて、ついさっきこの国についたばかりです。こんなことを聞くのは非常にお恥ずかしいのですが、この国はなんという国でしょうか? 」




「そうですか。遠い国から来られたのですか。この国は巨大大陸の西はずれ、ゲルマ共和国です。王制が廃止され今の共和制になって、100年たったばかりの若い国です。ここは首都ベルンです。」




「ありがとうございました。このお店売られている工芸品はみんなすばらしい技術で作られ、できあがりも大変見事な物です。例えば、この髪飾りはおいくらくらいですか。」




「100ギニーにしかなりません。手でつかめる雑穀と同じ値段なのです。」




「えっ! そんなに安いのですか! 値段は自由に決められるのですか? 」




「いいえ。この国全体を動かすためという理由から、国のお役人が統制しています。」




「この国全体を動かすとはどういうことですか。」




「さあ、私も詳しいことはわかりません。でも、ゾルゲ様のおっしゃるように不正役人が私腹を肥やすため、何か悪いことをしているのではないでしょうか。」




「御主人様。いろいろと教えていただき、ありがとうございました。ただ、私はきちきちの路銀で旅をしている貧乏人です。何も商品を買うことができません。申し訳ありません。」




「いいですよ。気にしないでください。私の方こそ、あなたとお話できただけで心がおどり、すばらしい時間を過ごすことができません。それでは、これを! 」




 店の主人が髪飾りを手にとり、メイに渡そうとした。




「御主人。困ります、ただでいただく訳には参りません。」




「いいえ、もらってください。この髪飾りはあなたが付けることで、最高に輝くでしょう。この髪飾りがこの世に生まれた意味があるというものです。」




「ありがとうございます。でも、お気持ちだけいただきます。」




 メイは丁寧に断わり、他のみんなが待っている場所に戻り、聞き取ったことを報告した。




「ゲルマ共和国ですか。幼い頃、家庭教師だったショウから聞いたことがあります。この世界で初めて、王が治めない国として誕生したのだと。産業が栄える豊かな国と聞きましたが。」




「国が農産物や工芸品の取引値段を統制しているなんて、少しおかしいですね。確かめる必要があります。このゲルマ共和国の政府を、他国の王子として訪問してみましょう。」




「えっ! ゴード王国の王子だということを明かされるのですか。」


 メイナードが心配した。




「事情を聞かなければ、あのゾルゲという暗黒騎士に対抗できません。。大丈夫です。この国は私の国とは全くなじみがなく、外交上の問題点もありません。」








 4人は、共和国の政治の中心になる政庁を目指した。




 アーサーが受付で身分を明かすと、担当の役人は顔色をかえた。


「ゴード王国のアーサー王子様。今少しお待ちください。」




 しばらくして、かなり高い地位の高官が奥の方から現れた。




「王子様。今日はゲルマ王国の政庁をご訪問いただき心から感謝致します。私は最高執政官の第1補佐官ヤードです。ところで、他の3人の方は? 」




「我が国の公爵家のクラリスさんと侍女のメイさん、そして、我が家臣の騎士メイナードです。」




「みなさん。我が国へのご訪問を心から歓迎致します。」




 それから4人はヤードの案内で中に通され、広い廊下を歩いた。




 両側には政庁に勤務する多くの職員から控え、アーサー王子に対する正式なおじぎをした。




 ある部屋の前でヤードは立ち止まり、4人に対して言った。




「ここは我が国の最高施政官シャーロッテ様の執務室です。執政官は既にこの中でお待ちです。」




 ヤードは扉をノックした。




「執政官様。ゴード王国のアーサー王子様一同を御案内しました。入室してよろしいでしょうか。」




「どうぞ。」




 女性の声がした。

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