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35 第1の国の災厄8

 ふいに、暗黒騎士「身勝手のボウ」の姿が消えた。




「お嬢様。ボウはいったいどのような魔術をかけたのでしょうか。」


 侍女のメイが聞いた。




「空間を無限大にしたと言っていましたが、魔術師は自分がかけた魔術の根源に関係することを絶対に口にしないのが常識です。少し歩いて見ます。みんな、私の後に続いてください。」




 3人は前に歩いた扉への通路を歩き始めた。


 最初は、普通に自分達が動いている感覚があった。




 ところが、しばらくすると、自分達の回りの空間が歩き始めた場所に戻ってしまった。




「もう1回歩いて見ましょう。今度は私の魔眼で見て見ます。」


 クラリスの魔眼が輝き、そのまま再び歩き始めた。




 結果は前と全く同じように、自分達の回りの空間が歩き始めた場所に戻ってしまった。




「クラリスさん。全く同じことが起きました。」




「ジェシカ王女様。わかりました。やはりボウは自分の魔術の構築を隠していました。空間を無限大にしたのではないのです。わかりやすいようにします。」




 そう言うと自分の前と後ろを指さして詠唱した。


「カラード! 」




 すると、クラリスの少し前の空間が板状に黄色になった。


「後ろを見てください。」




 そう言われて、ジェシカ王女とメイが後ろを見ると、同じように空間が板状に黄色になっていた。




「歩いて見ましょう。」




 3人が歩き、前の黄色の板状の空間と、後ろの黄色の板状の空間の距離が広がっていった。




 そして、一定の距離になると再び距離は一番最初の長さに戻ったのだった。


 あたかも伸びたゴムが元に戻ったかのようだった。




「ボウは、私達が歩く方向の一定の長さの空間の前と後ろを、この世界の空間から切断する魔術を実行したのです。ですから、私達は一定の決まった長さしか歩けません。」




「クラリスさんはどうされますか。」




「空間のつながりを元に戻します。」




 その後、クラリスは自分達の前と後ろを指差し詠唱した。




「真実に至る魔女を継ぐクラリスが命ずる。この世の場所と場所はつながるのが真実。我の力で虚偽を正す。場所はあらゆる場所と完全につながれ!!! 」




 一瞬のことだったが、クラリスが2人に言った。




「早くここを出ましょう。自分の魔術が破れたことをボウが知れば、本格的な戦いをこの王宮の中でしなければなりません。宝物庫の空間の一部が切断されているようにカモフラージュしました。」




 3人は走り出し、急いで宝物庫を出た。




 そして、ムナジロガラスになったメイの背に乗り、急いで王宮を飛び去った。




 やがて、空を飛んで子供達の隠れ家がある山の上についた。


 


 洞窟の中に入ると、もう立ち上がれるようになったアーサーがメイナードとともに3人を出迎えた。




「3人が無事で帰ることができてよかったです。その様子だとうまくいき、魔王の血に支配された人間を呼び寄せる笛が手に入ったのですね。」




「はい。アーサー王子様。少し暗黒騎士『身勝手なボウ』と接触しましたが問題なく切り抜けることができました。」




「計画はいつ実行しますか。」




「突然ですが。明日の朝にしたいと考えています。その理由は、明日中には笛を宝物庫から奪い、私達が逃げ出したことがボウにわかってしまうからです。妨害される前にやってしまわなければなりません。」




「それでは急がなければなりません。僕の血をとりますか。」




「お願いします。ミレーネ王国の国民を救うためには、アーサー王子様の英雄の血が必要なのです。もう、お体がだいぶ良くなられているようでしたら。今からいただいてよろしいでしょうか。」




「どうぞ。どうやって血を採りますか。」




「はい、それでは、おけがをしていない右腕を前に尾だしください。」




「こうですか。」


 アーサーはクラリスに向かって右腕を突き出した。




 すると驚くべき早業で、クラリスはその右腕のかみつき、すぐに口を元にもどした。




 突然なことで、見ていたみんながあっけにとられたが、アーサーの右腕にはあるかどうかわからないくらいの、ほんの小さな傷跡がついていた。




「アーサー王子様。英雄の血を確かに3滴いただきました。」




「3滴だけで良いのですか。」




「私の体内の魔術源に英雄の血の能力が混じり合い、明日の朝に行う魔術を完成させます。明日、私とアーサー王子様の子供のような魔術が出現するのです。いやらしい意味はありませんよ―― 」




「お嬢様。『いやらしい意味がある』などと誰もが思いません。考えすぎです。」




「そうですか―― 」




 クラリスの顔の全面が真っ赤になっていた。








 翌日の早朝、みんなが既に起き出して洞窟の前に立っていた。


 大勢の子供達もそこにいた。




 今日の役割分担は、クラリスが東部平原にある低い山脈の頂上に立ち、魔術を使い朝日が昇る直前にその上空の空間に英雄の血のカーテンをかける。




 クラリスのそばには、アーサーが護衛役として警護する。




 次にジェシカがミレーネ王国の上空を縦断し、朝日が昇った瞬間に笛を鳴らし国民たちを外に出させ、朝日を浴びさせる。




 ジェシカのそばには、メイナードが護衛役として警護する。




 全ての移動はムナジロガラスになったメイに乗って行う。




 そして最後には、みんなが集合して王都キプロに向い、暗黒騎士「身勝手なボウ」と対決する。




 大鳥になったメイの背に乗り、4人が出発しようとした時、大勢の子供達から拍手が起きた。




 ミレーネ王国では、戦場に向かおうとする兵士を拍手で送り出し、あたかも勝利で凱旋することが決まっているような雰囲気を作り幸運を呼び込む習わしがあった。




 クラリスは心の底で誓った。




(世界の災厄の始まりを必ず止めます。みんなの幸せを取り戻します…… )

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