30 第1の国の災厄3
クラリスが聞いた。
「エクスポーションは誰が作ったのですか。」
「内務大臣のボウです。1年くらい前、父様の国王が重い病気にかかり、宮廷医師も直せないお手上げ状態になりました。それを完全に直してしまったのが、旅の途中で王都にいたボウです。」
「そのような名前の高名な医師は知りませんが。」
「ある日の朝、ボウは城門の前に立ち自分は力が強い魔術師だと名乗りました。そして、真実に至る魔女の第一の弟子だとも話し、手に浮かんだ四葉のクローバーの紋章を見せました。」
アーサーが聞いた。
「クラリスさん。お母様の紋章は四葉のクローバーですか。」
「はい。そうです。幸運の女神に祝福されなければ、高度な魔術を完成できません。ですから、母親は四葉のクローバーを自分の紋章と定めています。」
「体に浮かぶのでしょうか。」
「――――わかりません。実は生まれてから今まで、私は母親の姿を見たことはありません。私を産んで双子の妹のザラを産むまでのわずかな瞬間に、城から姿を消してしまったのです。」
「すいません。気になさっていることを想い出させてしまいました。」
「問題ありません。母親と話すことはできますから。」
そう言うと、クラリスは目を閉じて母親と意識をつなげ始めた。
「私は真実に至る魔女を継ぐ者クラリス。偉大なる魔女の長クリスタ、真実に至る魔女に聞きたい真実があります。意識をつなげてください。」
「クラリス、クラリス。」
母親が自分を呼ぶ声が聞こえた。
「母様。お聞きしたいことがあります。母様の弟子の中で、母様の紋章の四葉のクローバが体に浮かぶ者がいますか。」
「いますよ。1人だけ。『いました』といった方がよいのかもしれませんが。」
「それは誰ですか。」
「ボウという魔術師です。でも今は闇落ちして暗黒騎士「身勝手のボウ」になってしまい、魔王アスモデウスの家臣となっています。」
「暗黒騎士なのですが! その人がミレーネ王国の内部大臣となって、魔王の血が混ざったエクスポーションを大人達に飲ませ永遠の命を補償しました。その代わり子供を育てることを放棄させました。」
「クラリス。今、大災厄の第1の国にいるのですね。そのままほおっておくと、そのエクスポーションを飲んだ人々の体内の血は全て魔王の血の影響を受け、魔族になってしまいます。」
「母様。もうこの国のほとんどの大人が魔王の血を体内に取り込み、少しずつ影響が現われ始めています。ご年配の方が、野獣のような力を使い始めたのです。」
「そうですか。大変な事態になっているのですね。魔王の血を体内に取り込んでしまった人々を救える方法はもう知っていますね。」
「はい。反対の力をもつ英雄の血を体内に取り込むことです。でも魔族である魔王と違い、アーサー王子様は人間です。たくさんの血を体から抜き取ることなどできません。」
「クラリス、心を強く持ちなさい。そのようなことをしなくても、英雄の血の力を使う方法が絶対にあるはずです。」
「母様。おしえてください。」
「ごめんなさい。大災厄は、真実に至る魔女を継ぐ者と英雄になる者だけが助け合い、自分達だけの力で抗わなければ止めることができないのです。」
「難しいです。」
「困難の壁が目の前に立ちふさがった時、あきらめたらそこで終わりです。一生懸命壁を見て壊すことができる場所を探すのです。私の愛するかわいい娘に最大の幸運を!!! 」
クラリスが母親のクラリスと交信していた間、その内容を回りの人は知ることができなかった。
しかし、驚くことが起きていた。
母親との交信が終わり、クラリスが目を開けると自分の立っている回りのみならず、洞窟前の平地いっぱいに四葉のクローバーが生えて、その花がいっぱい咲いた。
母親のクリスタが娘のクラリスを励ますため、魔法を使ったのだった。
「母様。ありがとうございます。私はきっとやり遂げます!!! 」
「クラリスさん。何かわかりましたか。」
「はい。体に四葉のクローバーが浮かぶ母様の第一の弟子がいたそうです。名前はボウ、今は闇落ちして暗黒騎士となり魔王アスモデウスの家臣になってしまったそうです。」
「突然、この平地いっぱいに四葉のクローバが生えて白い花々が咲き始めたのです。何か意味があるのでしょうか。」
「これは、私の母親が私を世界一愛しているあかしなのです。私は戦います。決してあきらめはしません。絶対に魔王の血を取り込んだみなさんを救います。」
ジェシカ王女が深く頭を下げた。
「クリスタ様、それにアーサーア王子様、メイ様、メイナード様。私の国の国民のためにお力をいただくことに心から感謝申しわげます。」
年長の子供がおずおずした口ぶりで、ジェシカ王女に言った。
「王女様。魔王の血を力を消すためには、英雄であるアーサー様の血を体に取り込まなければなりません。それは大量の血です。」
「まあ!!! そんなことをしたらアーサー王子様のお命も危なくなります!!! 」
驚いたジェシカ王女にクラリスが笑顔を作って言った。
「御心配なさらないでください。アーサー王子様の血を抜くなんてことは絶対にしません。ただ、数滴いただかなくてはいけないと思いますが。」
「私の数滴の血の力を、ミレーネ王国の数万人のみなさんに届けなければならないということですね。」
「そのようなことができる魔法が何かあるはずです。一生懸命考えてみます。」
そう言ったクラリスには皆目見当がつかなかったが、「何か絶対にある。」とクラリスは自分に強く言い聞かせた。
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