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28 第1の国の災厄

 アーサーにとっては、長い間留守にする領地の経営が最も心配だった。




 それで、相談役のショウに10か国を巡らなければならないことを打ち明けた。




「ショウ。私はゴード王国の第3王子ですが、同時に英雄になり人間の美しき心を守り、魔王と戦う宿命があります。戦いの旅に出て、しばらく自分の領地であるゴガン州を留守にしなければなりません。」




 ショウは、すぐに微笑みながら答えた。


 それはアーサーの心の中を完全に理解し、思いやった優しい笑顔だった。




「私は王子様を一生懸命に支えることを人生の一番の目的としています。人間に訪れようとしている大災厄を防ぐため、10か国を巡らなければならないのなら、留守の間の領地の経営は私にお任せください。」




「ショウにいつも丸投げしてしまいますね。ほんとうに申し訳なく思っています。」




「英雄になるアーサー様を支えることができるのなら本望です。それから一つだけ意見を申し上げるのなら、アーサー様をそばで支えることのできるメイナードをお連れください。」




「メイナードがついてきてくれるのなら、一緒に行ってもらいましょう。」








 アーサーとクラリスの出発の日が来た。


 州都ハイデの城門の前に待ち合わせた。




 メイナードがアーサーに聞いた。


「王子様。馬に乗らなくいいのでここに集合するとは、どんな方法で他国に行くのでしょうか。」




 やがて、2人が立っていたそばに、円形の中に魔法文字が浮かぶ魔方陣が現われた。




 そして、魔方陣の上にクラリスとメイの姿が出現した。




「えっ! これは何だ。」


 アーサーは驚きの声を上げた。




「アーサー様。他国には私の転移魔法で瞬間移動します。魔王が実質支配する国に、英雄と魔女が侵入したことを、知られてはいけません。最も見つかりにくい場所に移動します。」




「そうですね。」




 その後、アーサーとメイナードの2人は魔法陣の中に入った。




 4人がそろった後、クラリスが詠唱した。


「魔王が見ることができない場所を選び、空間をつなげよ! ジャンプ! 」










 4人の立った場所は、ゴード王国から別の国に変わった。




 多くの木々が生い茂った森の中のようだった。


 まだ広間だというのに、薄暗い暗闇に包まれていた。




「ここは山の中みたいです。気をつけて歩いて、山を下りましょう。」


 クラリスの言葉にしたがい、4人は歩き始めた。




 しばらくするとメイがピタリと止まって言った。


「何かが動く気配がします。その数はざっと百ほど。人間のようですが、どれも小さいです。」




「メイ。もしかしたらゴブリン(子鬼)ですか。」




「いえ、お嬢様。魔族ではありません。これは………… 」




 森の茂みにがさがさという音がして、そこから現われたのは人間の子供達だった。




 みんなとてもやせ細っており、目だけが大きく見えて光っていた。


 それぞれ、気の枝と石などで作った簡単な武器を持っていた。




「あなた達、私達は敵ではないわ。戦うつもりは全くありません。」




「大人なのに変だね。」


「大人はぼくたちが生きていることも許さないから。」




 クラリスは笑顔でたずねた。


「お姉さん達に教えてくれないかな。君達のお父さんやお母さんはどこにいるの。」




 すると、クラリスの優しさを感じとった小さな女の子が答えた。


「私達をこの山に捨てて、去ってしまったのです。今、大人だけで町で暮らしています。」




「どうして、そんなひどいことをするの。お父さんやお母さんはあなた達を愛しているはずなのに。」




 年長の男の子が答えた。




「内務大臣が法律を作ったのです。このミレーネ王国を大人だけの国にするというものです。そのために、大人に永遠の寿命を与えると言っています。」




「永遠の寿命など考えられないわ。」




「いや僕は隠れて確かに見ました。病気がちでとても年をとったおばあさんが、内務大臣からもらったエクスポーションを飲んだ翌日から、何十歳も若くなったかのようにしっかり動き始めました。」




「エクスポーションをあなたは見たのですか。」




「はい。無気味な色をしていました。でも、僕は力が怪物のように強くなったおばあちゃんに、この山に捨てられました。両親は必死に止めたのですが、怪物のようなおばあちゃんに逆らえませんでした。」


 


「私の家族もそうよ。」


「僕の家もそんな感じでした。」




 クラリスの美しい青い瞳の魔眼が輝いた。


 彼女は真実を見た。




「クラリスさん。わかりましたか。」


 アーサーが聞いた。




「はい。恐ろしいことですが、エクスポーションはエクスポーションではありません。『魔王の血』なのです。」




「『魔王の血』を飲むとどうなるのですか。」




「魔王の血の細胞は、人間の細胞につぎつぎ襲いかかり、魔族の細胞に変えてしまいます。」




「大臣のエクスポーションを飲んだのは、何人ぐらいいるの。」




「僕達がここに捨てられた1か月くらい前から、各町や村に配られたので相当の人数になります。」




 アーサーとクラリスは、大変な事態になったと思い、お互いの目を合わせた。




「クラリスさん。どうすればよいのでしょうか。今度の大災厄で予言されているように、このミレーネ王国から、人間が魔族に変わってしまう悲劇が起こってしまいます。」




「だけど人間にとっては、年老いた体が若くなることは大変な魅力です。その魅力に負けてしまい『魔王の血』を飲む人は次第に増えるでしょう。」




「魔王の血を無効化する方法はあるのですか。」




「……あります。たぶん…… 」

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