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25 暗黒魔術師キリヤ3

「お前はあの真実に至る魔女の娘、後継者なのか…… 」




 暗黒騎士キリヤはとても驚いた。


 魔術を扱う者であれば、誰もが真実に至る魔女の偉大さをよく知っているからだった。




「そうか。だから最強の呪いを解呪できたのか。真実に至る魔女の娘でその後継者であるのは、ほんとうのようだな。」




 キリヤが放った呪いは、はるか古代から多くの人々が呪った内容が悪しき心を映す世界に降り積もり、それを魔王アスモデウス凝縮させて悪の魔術師に贈ったものだった。




 その呪いを解呪できるということは、魔王アスモデウスに勝るとも劣らない力があるということだった。








 かってキリヤはグラン王国の宮廷魔術師だった。




 若い時から非常な勤勉家で、世界最高の蔵書を誇るグラン王国の大図書館にある魔術の本を全て読破したといううわさがあった。




「キリヤ。今日もこの暗い暗い図書館で読書ですね。」




 机の上の本に集中して読みふけっていた彼が顔を上げると、優しい女性の笑顔が見えた。


 第5王女のドロシーだった。




 王女らしくなく、勉強することが好きだった。


 そして、末娘らしく活発で、好きな人と一緒になって王宮を出ることを夢見ていた。




「ドロシー様。よくお会いしますね。いつもどのような内容の本を読まれているのですか。」




「キリヤにそう聞かれると心の底から笑ってしまうわ。魔術の本一筋の方とは全然異なり、いろいろな本を探して読んでいるのです。今日は、花のスケッチの本です。」




「花ですか。ドロシー様には失礼ですが、私にはどの花を見ても全く同じに見えます。」




「私ではなく、花々に失礼ですよ! 蝶や蜂にできる限り多くの花粉を運んでもらうため、ほんの少しでも美しく咲こうとがんばってアピールしているのですよ。」




「申し訳ありません。これから少しでも花々のことを勉強します。御存知ですか、花の中には魔術師の魔力を高めるものも多いのですよ。」




「まあ、また――ほほほほ―― 」




 キリヤはほんの少しだけ、魔力のようなものをドロシーに感じていた。


 そして、その気持ちは時間が経つに連れ、大きく強くなることを防ぐことができなかった。




 やがて、キリヤはその魔力のようなものが何かを知ることになる。




 ある日、宮廷内に大きな衝撃が走った。




「ドロシー様が宮廷を脱出され、駆け落ちなさったそうだ。」


「相手は、何の変哲もない若者のようだ。」




 宮廷の大廊下のかたすみで、家臣や侍女達がうわさ話をしていた。




 ちょうど国王に呼ばれて、その場を通り過ぎようとしていたキリヤはその話を耳にした瞬間、自分の胸に強烈な痛みを感じ、気持ちがとても暗くなった。




 キリヤは胸の痛みをがまんして、無理矢理歩いて国王の謁見の間についた。




 謁見の間の中に入り国王に向かって進み出ると、国王の顔が極めて険しいことに気がついた。




「キリヤよ。具合が悪そうだが、大丈夫か。」




「御心配をおかけして、申し訳ありません。さきほど歩いていたら急に胸が痛くなり、でも大丈夫です。しばらくすれば直ると思います。」




「そうか。それでは私の方からこの仕事を依頼しても問題ないな。」




「仕事ですか? 」




「王命を申し伝える。第5王女ドロシーを探し出し、その命を奪うのだ! あの者は我が国の敵国の若者と恋に落ち、駆け落ちした。」




「陛下、我が国の敵国の若者とは? 」




「花々の研究をしている植物学者だそうだ。敵国の人間は決してグラン王国に立ち入ることはないのだが、国境の平原の花々のスケッチに夢中になって我が国に侵入してドロシーと出会ったのだ。」




「花々のスケッチですか………… う! 痛い痛い! 」


 キリヤは胸を押さえてその場にうずくまった。




「もしかして。お前も私と同様に怒っているのか。」




 しばらくして、キリヤの心は冷酷な気持ちに支配された。


 すると、胸の強烈な痛みは全くうそのように消えてしまった。








 グラン王国の第5王女ドロシーと駆け落ち相手の若者は、国境に広がる平原にいた。




 ドロシーは若者に行った。


「早く、ここから進んで、あなたの国に入りましょう。」




「ドロシー。僕は植物学者だよ。しかも、ここには美しい花々がたくさん咲いている。まあ、僕は美しい花々よりも何倍も美しい君とここで出会ったのだからな。」




 その時、遠くから騎馬兵の音が聞こえてきた。




 その震動はたちまち大きくなり、植物学者の若者も重大さに気がついて、ドロシーの手を強く握り国境に向かって走り出した。




 しかし、無残にも2人はすぐに追いつかれ、騎馬兵に回りを囲まれた。




 ドロシーはその中によく知っている顔を見つけた。


「キリヤ! あなたがなんで追ってきたの―― 」 




 その問いかけに答えず、キリヤは下馬した。


 そして、フードを深くかぶり自分の顔を隠した。




「ドロシー様。あなた方2人がその上に立っている赤い花は、別名「血吸い草」と呼ばれています。」




「違う。この赤い花はスィートピーだ。」


 植物学者の若者が反論した。




「そんな名前、全然知りませんよ。私は魔術師ですからね。魔力を高め、魔術を発動させることができるのですよ。死ぬ前に覚えてください。」




 その後、キリヤは若者に向かって右腕を突き出した。


「発動せよ。思う存分、血を吸うがいい。」




「わあ―――― 」


 すぐに、若者が苦しみ始めた。




 そして皮膚はすぐにひからび、倒れ込んだ。


 最後にはドロシーの目の前で、ミイラになり亡くなった。

お読みいただき心より感謝申しわげます。


もしお気に召しましたら、ブックマーク、重ねて御評価いただけると作者の大変な励みになります。





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