20 傲慢のブルクハルト2
アーサーはメイナードを連れて、州都ハイデの城門の外に出た。
すると長身の暗黒騎士が1人、幅広いメインロードの真ん中に立っていた。
2人が出て来たことを見ると、暗黒騎士は言った。
「やっと来たな。英雄と呼ばれている者よ。私は『傲慢のブルクハルト』、魔王アスモデウス様から一騎討ちを挑むことを許された暗黒騎士だ。さあ、戦いを始めようか。」
メイナードが前に進み出て、ブルクハルトに願い出た。
「暗黒騎士様。切なるお願いがございます。私は英雄アーサー王子の家臣メイナードと申します。かなりの強者であるあなた様と、主あるじの前に一手お手合わせ願いませんでしょうか。」
「英雄の従者であるのならば、かなり強いのだな。よしよしわかった。俺の体慣らしにもなる。。まず、来るがよい。許すぞ。」
メイナードがアーサーに小さな声で言った。
「あの暗黒騎士とできるだけ長く戦い続け、王子様の参考になるようにします。」
「メイナード、ありがとう。でも、1つだけ必ず守ってください。もし実力差がかなりあるようでしたら、守りに撤し絶対命を落さないようにしてください。私が戦いを引き継ぎます。」
メイナードは槍を構えてブルクハルトの前に立った。
「ほう、槍使いか。そして、その構えとオーラからすると、かなりの実力者だな。かかって来るが良いぞ。10回は見てやろう。」
その言葉を受けてメイナードは槍を振るった。
素早い突きの連続だったが、10回ことごとく確実に避けられてしまった。
そして11回目の突きをメイナードが出した時、ブルクハルトが素早く力強い剣を振りおろし、槍をたたき落した。
さらに、剣を反対に振りメイナードを切り上げようとした。
その剣は、もう少しで彼の命を奪う所で止った。
アーサーが信じられないほど早く2人のそばに近づき、剣を振って軌道を止めたのだった。
「暗黒騎士様。私が戦いを引き継ぎましょう。メイナード、安心な場所に下がってください。」
「そうか。従者思いの良い英雄だ―― 10回は見てやろう。」
ところが、アーサーは構えるだけでなかなか剣を振るおうとしなかった。
「英雄よ。おじ気づいたか。」
アーサーは、なお剣を振るわなかった。
「それでは、こちらの方から行くぞ。」
それからブルクハルトは、嵐のように剣を打ち込み始めた。
アーサーは自分の体のそばのぎりぎりで相手の剣を防ぐしかなかった。
しかし、ブルクハルトの剣筋と勢いを少しずつ確実に体で覚え理解していた。
一方、傲慢なブルクハルトは、自分の勝利を完全に信じ、その瞬間をいつ迎えようかと考えていた。
やがてブルクハルトの剣の打ち込みを何回も防いだ後、次の打ち込みが始まろうとした瞬間、アーサーはこれまでになかった隙すきが生じたことを感じた。
(暗黒騎士の体に剣が届く……)
アーサーは思った。
ところが、ブルクハルトは剣を打ち込む動作を止めた。
「あぶない。あぶない。今、隙を見せてしまった。さすがに英雄だ。自信満々の俺の癖を見抜いて、この時が来るのを待っていたのだな。ただ惜しいかな、一瞬殺気が見えたぞ。それで私は全てがわかった。」
(残念、大きなチャンスを逃してしまった。)
アーサーは相手にわからないように心の奥で悔やんだ。
ブルクハルトは大きく後ろにジャンプして、アーサーと距離をとった。
「英雄よ。今までは人間どうしの戦いのように剣を交えただけだ。これは暗黒騎士と英雄の戦いだ。今からは、お互い人間には無い特別な能力で戦おう。私の能力はこれだ。」
そう言うと、ブルクハルトは剣を天に突き上げた。
すると、空の高い場所に黒い亀裂が生じ、そこから黒い光が剣に集まり始めた。
「悪しき心を映す世界からエネルギーをこの剣に集めることができる。この剣は暗黒剣となり剣のスピードと強さを100倍にし、人間では絶対に受けることができない。英雄にはどういう力があるのだ? 」
「英雄の力ですか。私は人間です。特別な力などありません。持っているのは勇気だけです!!! 」
「勇気だけだと―― ふざけているのか!!! 」
ブルクハルトは暗黒剣をアーサーに向かって振った。
アーサーは人間として精一杯その剣を受けようと思った。
その時、空の高い場所で黒い光りを放出している亀裂の横に、新しい亀裂が出現した。
そこから黄金の光りが放出され、アーサーの剣に集まった。
アーサーの剣はブルクハルトの暗黒剣を受けきった。
そして、暗黒剣をはるか遠くまではねとばした。
アーサーの剣の光に切られ、暗黒騎士はその場に崩れ落ちうずくまった。
「負けた。そんなに追い詰められたのに俺に勝てるのか。うっ、苦しい―― 」
あまりの苦しみに、ブルクハルトはその場に倒れ意識を失った。
空に大きな鳥の姿が現われた。
胸が白いムナジロカラスで、乗っていたのはクラリスで、やがて近くに降り立った。
「アーサー王子様。よかったです。」
「クラリスさん。何が起こったのでしょうか。」
「アーサー王子様が精一杯の勇気を示されたので、美しき心を映す世界のエネルギーとつながることができたのですよ。最後まで諦めなかったから、運命の神が微笑んだのです。」
「よかった。ところで暗黒騎士ブルクハルトはどうなるのでしょう。」
「悪しき心『傲慢』の呪いを受けていた者が、『傲慢』をこなごなに砕かれるような負け方をしたのです。自己否定し、最悪廃人になってしまう恐れがあります。」
「助けてあげることができますか。」
「なんとなくそう言われるような気がしました。あなたは、ほんとうに優しいのですね。それだから、私と相性が最高です。できる限りのことはしましょう。」
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