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15 王子は誘惑される3

ララが次にアーサに会ったのが、武術大会から数年後のことだった。




 その数年間、ゴード王国は名君であるヘンリー国王の元、国力を大いに高めた。


 国内はとても豊かになり、他国のねたみを買うこととなった。




 その結果、複数の国が連合してゴード王国に攻め込み、豊かな土地や財宝を奪おうとした。




 連合軍は辺境のゴガン州に侵攻した。




 その兵力は12万だった。


 完全な楽勝ムードの中で、連合軍の軍議が始まっていた。




「明日の戦略だが、みなさま誠に申し訳ない。戦略を考えても全く無駄である。なぜなら、我ら連合軍は12万、それに比べ、ゴード王国が抑撃に出している軍は1万人。勝利は確実である。」




 連合軍の戦略参謀になっているルーン王国のガトリング将軍が、集まっている各国将軍に告げた。


 それを聞いて、出席していた各国将軍達はみんな、ゆかいに笑った。




 しかし、1人だけ手を上げた者がいた。




「ロンバルディア王国のララか。なんだ、話せ。」


 子供の頃、武術大会で負けたことがあるガトリングは、イライラしながら言った。




 ララが立ち上がった。


 あざやかな赤い髪、その緑の目はエメラルドよりも美しい光っていた。




「みなさん。お忘れですか、ゴード王国軍を率いているのは、あのアーサー王子です。警戒しなくては――御存知でしょう。王国内に現われた魔物を全て退治し、英雄降臨と言われています。」




「1人がいかに強くても、12倍の兵力差をひっくり返すことは無理だな。」


 年長の将軍がルルの意見に反論した。




「どうでしょうか。あの王子は人間離れした力をもっています。そして、目的を達成するために未来をしっかり見通します。結果を得られるのであれば多少のリスクを負って進む人です。」




「ララどのは武芸大会で、あの王子に負けたからな。よく御存知と言うことか。」


 ガトリングが自分のことを棚に上げてララを茶化した。




「そうです。私はあの王子に負けました。だから、あの王子のすばらしさを知っています。」




「非常識だ。戦いの前の軍議で敵の総大将を讃えるのですか。いやはや、だから女性の将軍はいかん。」


 彼女に対する批判を述べる将軍もいた。




 その時だった。


 伝令が、相手のゴード王国の軍に異変があったことを急報した。




「失礼します。ゴード王国の軍に援軍が加わったようです。その数約5万人。旗から見ると、ランカスター公爵の軍です。」




「あの、ゴード王国の歴史史上、最高の将軍であり軍略家と言われたランカスターか。しかも、自分の配下の軍を全て進軍させてきたのか。注意しなければならないな。」




 みんなに動揺がするのを見て、ガトリングがそれを沈静化しようとした。




「たとえ、ランカスター公爵軍の援軍が加わったとして総勢6万人。こちら側の半分の兵力しかありません。これを逆転するのは、ほぼ不可能でしょう。」




 これまで安易に考えてきたのに、改めてリスクを受け止めて悩みたくないという気持ちが多くの将軍にはたらき、結局、楽勝に終わってしまうのに違いないという総意は変わらなかった。




 ただ1人、ララだけは自分の配下の5千人のロンバルディア軍は、他国と異なる別の動きをしようと考えていた。








 次の日の朝、戦いが始まった。


 2倍の兵力の相手に対し、ゴード王国軍の先陣は勇敢に攻撃をしかけてきた。




 ところが、その先陣はとても弱くすぐにでも崩壊しそうだったが、1人の槍使いの超人的な働きでようやく陣形を保っていた。




 しかし、それも時間の問題で、やがて連合国軍に押され、完全に敗走し始めた。


 それを見て、連合国軍は大喜びで雪崩を打ったように追撃に入った。




 ララはそれを見て違和感を感じた。


(丁寧に物事を考えるあの王子が、意味が無く先陣に攻撃をさせるはずがないわ。)




 彼女は、ロンバルディア軍を大きく戦場の外側を迂回うかいさせて、ゴード王国軍が逃げていった場所を確認しようとした。




 すると、山々に囲まれた狭く細長い場所の外側に出た。


(まるで、外から見るとまるで鳥かごのような地形。この中に味方の連合軍は閉じ込められる。)




 彼女は副官に告げた。


「帰還します。」




「えっ。将軍、戦いの真っ最中ですが、どこにですか? 」




「もちろん。国に帰ります。早くこの国から出ないとひどい目にあいます。」




 その後、まるで鳥かごのような地形に閉じ込められた連合軍は大敗北を喫した。


 それぞれの国は、出陣させた軍勢の半分近くを失った。








 ロンバルディア王国だけは軍勢を少しも損なわなかった。


 しかし、戦後、連合軍に加わった各国から、単独撤退したことに批判が殺到した。




 国王はやむを得ない判断をした。


 ある日、王宮にララを読んだ。




 謁見の間に入ると、その場には多くの重臣達と父親の騎士長も控えていた。




「ララ。このたびの戦いで唯一、おまえだけがゴード王国の王子のわなを見抜き大切な我が国軍を無傷で撤退させたくれた。その攻は極めて大きい。」




 そう言った後、国王は無言で、同意を求めるように厳しい顔で騎士長を見た。


 騎士長も厳しい顔でうなづいた。




「ララよ。ほんとうに申し訳ない。このままだと我が国は、先の大敗北のはらいせに、連合軍の他の国から攻め込まれる。それを回避するには…… 」




「国王陛下。私に死ねということですね。はい。我が国の大切な戦士の命を守り、我が国が他国に蹂躙じゅうりんされるのを防ぐために名誉ある死を迎えることができます。ありがとうございます。」

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