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12 13人の暗黒騎士

アーサーが自分の領地であるゴガン州に帰る日がきた。


「ランカスター公爵、兵糧や武器をお貸しいただき心から感謝します。」




「できる限り早く、州都ハイデに届けるように致します。ところで王子様、ゆっくりとお休みになることができましたか。」




「はい。とても良い休日を過ごすことができました。ところでク――」


 公爵が顔で合図をして、アーサーは思わず言葉を止めた。




 アーサーの見送りのため、公爵の多くの家臣に加え、クラリスの2人の異母姉であるパトリシアとエレノアが満面の笑みで控えていた。




「王子様。折角ですから一直線にハイデまで急いでお帰りになるのではなく、このランカスター州とゴガン州の境である峠の頂上では是非ゆっくりして、景色を味わってください。」




 アーサーは公爵の言う意味を理解した。




「メイナード、帰りましょうか。」




「わかりました王子様。護衛はお任せください。」








 アーサーとメイナードの主従は、帰り道を進んでいた。


 やがて州境の峠を越えようと馬を走らせてたが、峠の頂上では2人の人影があった。




 クラリスと侍女のメイだった。




「クラリスさん。やはりここで見送っていただけるのですね。」




「アーサー王子様、『やはり』とはどういうことですか? 」




「お父上がクラリスさんがこの場所で待っていて、見送ってくれると教えてくれたのですよ。」




「どのようにですか? 」




「あくまで私の推測です。帰り道、この峠の頂上ではゆっくりして景色を味わうようにと教えていただいたのです。」




「そうですか、私の父上ですから娘のことも全部お見通しですね。」


 そう言いながらクラリスは、青い瞳の魔眼でゴガン州全体を見渡した。




「王子様、ここから見ると御領地はかなり荒れています。険しい顔で生きている人々ばかりです。是非豊かな土地に変えて、住んでいる住民の皆さんを幸せにしてあげてくださいね。」




「はい。新米の領主ですが一生懸命にがんばるつもりです。」




「お嬢様。例のものです。」


 侍女のメイがクラリスに何かを手渡した。




「アーサー王子様。とてもすばらしいことを思いつきました。何もかも自分で抱え込み、責任を一手に負ってしまう王子様の悪い癖は良い所でもありますが直りません。だから、これから私がお助けします。」




 そう言うと、クラリスはアーサーの前に握った手を差し出し、その手を開いた。


 すると、彼女の手の上にあったのは種だった。




 それから、クラリスは峠の頂上の開いている空間を選び、そこに種を投げた。


 そして、その場所に向かって詠唱した。




「土の精霊、光りの精霊、水の精霊、風の精霊、緑の精霊よ。真実に至る魔女の血を引き継ぐ者の願いを聞き届け、そして助けよ!!! 」




 すると、種から根が出てそれはだんだん大きくなり、あっという間にとても背の高い木になった。




「クラリスさん、これは? 」




「ハイペリオンです。この世界で最も背が高くなる木です。そして、私の魔力で成長した木ですから、この木から見える全ての情報を私に教えてくれます。」




「この木からはゴガン州全てを見渡せますね。」




「はい。それで、アーサー王子様が収めるゴガン州に何か異変が発生した時には、私が王子様をお助けするために必ず駆けつけ、その御負担をできる限り減らすためにお助け致します。」




「ありがとうございます。なぜか、心の中がとても軽くなりました。…………いつまでもここにいたいのですが、家臣や住民達が待っています。ここで一時、お別れです。」




「そうですね。お仕事がたくさんありますからね。では、一時、お別れということで。」




 アーサー王子とメイナードは、クラリスとメイに深くおじぎをして州都ハイデに向かって馬を動かし始めた。




 クラリスとメイの2人は手を振って見送っていたが、やがて見えなくなった。




「お嬢様。少しだけ前進できましたね。おめでとうございます。」




「メイ。何を言っているのですか? 」




「あれ、お嬢様は意識していらっしゃたと思ったのですが。『一時』という言葉です。お互いに、再び何回も会いたいという気持ちを確認していましたよ。」




「そうでしたか………………とてもうれしいです。」




「さあ、帰りましょう。お嬢様、このハイペリオンの木の枝の一つはアーサー王子様にフォーカスしています。お嬢様が魔眼を使えば、王子様の自室の様子もいつも見られますね! 」




「プライベートに関することなので、たまにしか見ません。ほんのたまにですよ。」




 侍女のメイはスラッとした美しい人間の娘だったが、瞬時に大きな鳥の姿になった。


 胸が白いムナジロカラスで、クラリスを乗せるとすぐに空に飛び立った。








 悪しき心を映す世界はいつも夜だった。


 人間はいないが、人間の感覚だと天と地、重力が逆のように感じられた。




「暗黒騎士『ねたみのザラ』入ります。」


 魔王城の大広間で、ザラが魔王アスモデウスに謁見しようとしていた。




「ザラよ。御苦労だった。それで、あちらの世界に美しき心を守る強い者が現われたのか? }




「はい。誠に恐れ多いのですが、英雄になろうとしている者が私の姉と一緒におりました。」




「ほほう。真実に至る魔女を継ぐクラリスが英雄と一緒にいたと――。2人はお互いに共鳴し合い強い力を生み出そうとしているのだな―― 」




「ザラが良い情報をもってきてくれた。他の暗黒騎士の意見を聞こう。」




 大広間には強い力をもつ暗黒騎士が控えていた。




 その数は12人、ザラも入れると13人だった。

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