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108 フォー ユー(あなたへ)

  やがて、大量の魔族が美しき心を映す世界に侵入してきた。




 エルフ軍団の射手が多数の矢の雨を作り、魔族の数を半分以下に減らした。




 さらに、聖水の堀に落ち、消滅する魔族も多数いた。




 しかし、やはり上級魔族は陣地へ接近してきた。




 陣地の最前衛には、英雄アーサーが1人で待受けていた。




「最も強い魔族から戦い、ここを通さない! 」




 アーサーは個々の上級魔族のオーラを感じ、最も強い上級魔族に剣を振るった。




 その他の上級魔族はアーサーがいる位置を抜けたが、そこには最強の2人がいた。




 メイナードとシンのチームがお互いに連係して、効率よく数を減らしていった。




 戦いに全力を尽くすことができるよう、やがてザラとルルの2人に交替することになっていた。




 たまに、このチームの防線線をすり抜けてしまう上級魔族もいた




 その場合は、アサシンの暗殺集団とエルフ族の中の剣の名手達が討ち取った。




 しばらくの間、侵入した魔族達は完全に討ち取られていた。




 しかし、最前衛で戦っていたアーサが見る魔族の数は全く減らなかった。




(魔王がいないのに、なぜ魔族達は戦いを止まないのだろう。)








 ところが、永遠に続くと思われた魔族の姿がピタッと止まった。




 やがて、後衛から連絡があった。




 それは、悪しき心を映す世界との境を監視していたエルフからのものだった。




「突然。魔族達が悪しき心を映す世界に戻り始めました―― 」




 アーサーは外に出て天を見上げると確かにそのとおりだった。




「どうして? 」




「アーサー王子様。これでもう10の災厄は防がれました。この美しき心を映す世界は守られたのです。」




 びっくりしたアーサーが後ろを振り返ると、そこには最高の笑顔のクラリスが立っていた。




 2人は全力でかけより、抱き合った。




「やった―――― 」




 アーサーはクラリスを抱きながら回転した。




「どうしてもわからないのですが、魔王アスモデウスはどこに消えたのでしょう。」




「私が全ての魔力を使い、最高に複雑な転移魔術を構成して転移魔術をかけたのです。無限の距離、無限大の次元の先へ。今後、アーサー王子様と決して出会うことのない空間です。」




「私は魔王アスモデウスに勝てたかもしれませんし、逆に負けたかもしれません。でもクラリスさんは最高の魔術で私を守ってくれたのですね。」




 クラリスはうなずいたが、心の中では真実を隠していた。




(アーサー王子様が振るったあの剣の一撃は魔王に達し、英雄は魔王に勝ちます。その後、英雄は次の魔王に変化しなければならないのです。美しき世界の守護者である私と敵対し憎悪する相手として。」




「クラリスさん。なんで戦いは終わったのですか。魔王アスモデウスが消えたことが原因ですか。」




「違います。私が美しき心を映す世界と悪しき心を映す世界の運命を、両側に乗せている天秤を壊したのです。魔王アスモデウス様の協力があったからできたことです。




「魔王の協力ですか??? 」




 その後、クラリスは自分が体験したことを話し始めた。




「予期しないことでしたが、魔王アスモデウ様が転移した無限大の距離、無限大の次元の先の空間に私の精神も一緒に転移してしまいました。危ない状態でした。」




「大魔術を構築した反動ですね。」




「はい。そのこともありましたが。もう一つ、私の精神をボロボロにしていたのは、この10番目の災厄の終わらせ方です。このままでは、2つの世界の戦いの後、全てが消滅することがわかっていました。」




「そうなんですか。私の何倍もの困難な問題を考えていらっしゃたのですね。」




「その時、私の精神は魔王アスモデウス様とその空間で出会い、励まされました。未来の道のありかをさがすようと。その励ましのおかげで私は災厄の原因である天秤のありかを見つけることができました。‥‥




‥‥幸いなことに、その時いた空間から天秤がある空間までは近かったのです。さらに魔王アスモデウス様から、全魔力を私にいただきました。それで魔王様は消えてしまいました。」




「すると、2つの世界の未来のために犠牲になることを選んだのですね。なんて立派な方なのでしょう。」




「天秤がある空間に転移した私は、急いで空間を破壊しました。きっと、それが10災厄を防ぐことのできる唯一の道だったのでしょう。」



 ‥‥



 その時、アーサーはあることを想い出した。




 とても小さな子供の頃、家庭教師のショウが本を示しながら話してくれたことだった。




 それは、歴史に残っている200年前の英雄の話だった。




「王子様。この英雄は10の災厄を防ぐため、最後に魔王との一騎討ちに挑みました。そして見事に勝ったのです。それから200年、災厄は訪れていません。」




 ショウは本を閉じてから、とても真剣な顔で続けた。




「隠されて、あまり知られていない、とても大切な話しがあります。」




「まだ、お話は続くの? 」




「それは、魔王変化です。災厄を防ぐため魔王に勝った英雄は魔王に変化してしまうのです。彼は全てを犠牲にしてそれからの永遠の時を生きるのです。愛する人とも別離して―― 」




 アーサーはとても大切なことを想い出した。




 彼は全てを悟り、クラリスを抱き寄せると口づけした。



                   ‥‥‥‥‥‥‥‥


 誰にでも、必ずその時はやってきます。




 自分の未来が困難だらけで、高い高い壁がふさぐ。




 それは、あなたの心を最高に痛めつける。




 大声で泣きだしたい。




 だから、未来に続く道は全くないように思えるはずです。




 しかし、未来をしっかりと見てください。




 あっ―― 




 あなたが魔眼持ちの魔女ではなくても良いのです。




 必ず、回りに生きる何億の存在、




 不思議な手があなたを助けてくれるはずです。




 あなたは必ず見つける。




 壁を避け、壁に穴を開けて、壁を壊すことは必然なのです。




 どうぞ、幸せをつかまれることを心の底から祈っております。




 私が暮らすこの時から、何十年、何百年後の方々へ、




 私が暮らすこの世界から、無限大の距離、無限大の次元を隔てた方々へ、




 美しき心を映す世界、及び悪しき心を映す世界の守護者~




 真実に至る魔女~




                  クラリス・ランカスター

お読みいただき心より感謝申しわげます。


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