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104 恐るべき真実2

戦いの時は近づきつつあった。




 美しき心を映す世界側では、守りを最優先にする方針が決定された。




 たとえ法則が変更されたとしても、魔族が美しき心を映す世界に長時間滞在できないと予想した。




 たくさんの鏡を用意して、侵入してくる魔族達に、太陽の光りを放射して動きを止めることにした。




 エルフ軍団の陣地は、その回りを聖水で満たした堀で囲んだ。




 さらに、上級には聖なる金属で作られた防御柵を張り巡らせた。




 主力武器は、全てのエルフが持つ弓矢であり、矢じりも聖なる金属で作られていた。




 魔族を抑撃する準備が整った後、テントの中で軍議が開催された。








 司令官となったアーサーが出席者に聞いた。




「皆さん。これで、美しき心を映す世界に侵入してくる魔族軍を迎撃する準備は整いましたが、何か問題点はありますか。」




 彼の問い掛けに、年長のエルフが心配な点を話し始めた。




「侵入してきた魔族軍と遠距離の場合はかまいません。しかし、たぶん、われわれの弓矢の雨をかいくぐり、近距離に接近してくる魔物もいるに違いありません。その場合の対応は? 」




「近距離まで接近してきた魔物に対しては、弓矢だけではなく、剣や槍で戦うことも必要になります。ところで、エルフの方々の中で、剣や槍を使う戦士はどのくらいいるのでしょうか。」




「エルフは本来弓矢が得意なのですが、中には時々、剣を振るうのが巧みな者も現われます。ただし、全体の10%以下しかいません。」




「そうですか。広範囲になりますが、後は私、メイナード、ザラさんでカバーするしかなさそうです。」




 アーサーがそう言った時、クラリスが告げた。




「アーサー王子様。他に助けていただける方々がこられています。どうぞ、お入りください。」




 中に入ってきたのは、アーサーが知っている最も最強の人物だった。




「シン。なんでここに。」




「アーサ王子様。御活躍はサラセン王国にも大きく鳴り響いています。ところが、クラリスさんからあなたをお助けできないかとの伝心魔術を受けたのです。元々、私はあなたの家臣ですから、参りました。」




 そう言うと、シンはメイナードと目を合わせて笑った。




「今日は、私がアサシン(暗殺集団)の中から選抜した選りすぐりの者200人を連れて参りました。」




「ありがとう。シン。私の重荷がだいぶ軽くなりました。」




 クラリスはさらに言った。




「他にも来られていますよ。どうぞ、こちらへ。」




 彼女が呼び込むと同時に中に入ってきたのは、純白の甲冑をきた騎士だった。




「ララさん。」




「アーサー王子様。私は魔女の国の女王クリスタ様に、魔王の呪いを解いていただきました。今は完全に美しき心を映す世界の守護者クラリス様を守る純白騎士です。」




 そして、美しい緑色の瞳でアーサーと目を合わせた。




「あり、ありがとうございます。」




 ほんの一瞬だけだったが、どぎまぎしたアーサー見て、クラリスは厳しい目でにらんだ。




「うん! 」




 彼は咳払いした後、話し始めた。




「シンさんと暗殺集団、そして純白騎士が加わったことで、カバーできる陣地の範囲が大幅に広がりました。」




 その時だった。




「司令官様。守護者様。空の様子が変だよ。」




 とても小さな妖精が、事態の急変を告げにテントの中に入ってきた。








 アーサー達は外に出て空を見上げた。




 こちらの空の天井から見える悪しき心を映す世界の空の天井が、ぎっしりと魔物の影で覆われていた。




 アーサーが言った。




「あれは、全てドラゴン。ドラゴンの上に多くの魔物が乗っている。いよいよ攻めてくるのか。」




 やがて、美しき心を映す世界の太陽の光りが点滅し始めた。




 何回か点滅した後、点滅は止まったが、太陽の光りは非常に弱くなった。




 そして、天井から風が吹いてきた。




 風はしばらくすると止まったが、エルフや妖精達の中に咳き込む者が多くなった。




 クラリスが気づいた。




「美しき心を映す世界の光りや大気が、悪しき心を映す世界のものと混ぜられています。やがて、魔物であっても、こちらの世界に来ることができるようになるでしょう。」




「全軍に最大限の警戒をとるよう告げましょう。」




 アーサーの指示に基づき、美しき心を映す世界の陣地は最大限の警戒に入った。








 ところが、かなりの時間が経っても、境界に留まっている魔族軍に動きが動きがなかった。




「なぜ? 攻めてこない? 」




 アーサーにとっては、魔族軍の動きが停滞していることが不思議だった。




 しかし、そのうち、大きな動きがあった。




 境界に留まっていた魔族軍のうち、最も巨大なドラゴンが動き出した。




 そしてそれは両方の世界の境界を越えて、美しい世界に侵入した。




 わずか一匹だったが、最大限に巨大なドラゴンだった。




 その上に、ただ一つの影が見えた。




「魔王アスモデウス!!! 」




 顔を知っているザラが叫んだ。




 魔王は美しき心を映す世界の空のかなり高い高度で、巨大ドラゴンを止めた。




 そして、地上の隅々にまで聞こえるような大きな、よく通る声で告げた。




「美しき心を映す世界の守護者よ。我は多数の命を瞬時にして消すような無益な戦いは全く好まない。そこでこうしょう! お互いの世界で最も強い者が一騎討ちで戦うのだ。」




 魔王の申し出を聞いた瞬間、アーサーはすぐに決断した。




「私が出ましょう。私が全ての責任を背負って戦います。みなさん、任せてください。」




 すぐにクラリスが反論した。




「だめです。だめです。だめです。だめです。だめです‥‥‥‥ 」




 彼女はただ、そう繰り返すだけだった。




 そして、繰り返しながら泣き出してしまった。




 美しい大きな青い瞳からは、大粒の涙が絶えることなく流れ落ちた。




 それを見ていた回りの人々は大変驚いた。




 ザラが姉を慰めた。




「お姉様。大丈夫ですよ。私はアーサー王子様の力をよく存じてします。私の見立てだと、魔王よりも王子様の方がかなり強いと思います。」




「だめです。だめです。だめです。だめです。だめです‥‥‥‥ 」




 シンが言った。




「クラリス様。私はずっと前からアーサー王子様のことをよく知ってします。英雄として、喜んで大きな責任を背負うことのできる方です。責任を背負わないという選択はできない方です。」




「だめです。だめです。だめです。だめです。だめです‥‥‥‥ 」




 その後、誰が慰めてもクラリスの様子は変わらなかった。








 魔王アスモデウスが雷のような大きな声で、地上に告げた。




「英雄アーサー。史上最強の男。私と戦うのは必然。」




 アーサーはそれを聞いて1歩踏み出した。




 踏み出した後、振り返り、泣いているクラリスに向かって、深くおじぎをした。




 そして彼は、魔王が空に浮かんでいる直下に向けて歩き出した。

お読みいただき心より感謝申しわげます。


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