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102 第9の国の災厄8

アーサーが副王イブリースに勝ち、ゴード王国は再び人間のものになった。




 そしてイブリースの魔術が解けたことで、次元のはざまに閉じ込められていた人々が姿を現わした。




 国王や2人の王子、そして多くの家臣達が王宮に姿を現わした。




 さらに、王都イスタンの住民達が、自分達の住居に再び現われた。




 アーサー達は王宮の大広間でヘンリー国王に謁見し、これまでのことを報告した。




 そこには、数千人の家臣達が同席していた。




 ヘンリー国王は4人をおおいにねぎらった。




「アーサー、クラリス、そしてメイ、メイナード。我がゴード王国を含め、世界に起きようとした災厄をもう9か国も防いだのか。大変な功績に対し、心から感謝する。」




 アーサーが答えた。




「お褒めいただき、ありがとうございます。でも、まだ1か国に起こるかもしれない災厄が潜んでおります。最後まで油断しないようにがんばります。」




「ところで、ヘルムートに聞きたい。公爵の3女クラリスは美しき心を映す世界の守護者、そして、真実に至る魔女を継ぎ、ゆくゆくは魔女の国の女王になる立場だそうだが。」




「はい。そのとおりでございます。」




「そのことについて、私には非常に心配なことがある。魔女の国の女王は結婚できないのか? 」




 国王の突然の質問の意味を、その場にいた大部分の者はわかっていた。




 そして、一番胸を痛めたのはクラリスだった。




 ランカスター公爵は慎重に答えた。




「確かに、そう判断するのが常識かもしれません。しかし陛下、我が国が世界に誇る英雄と魔女は数々の災厄にも負けなかったのです。古い慣習に負けましょうか! 」




 公爵が良く通る声でそう言うと、大広間にいた多くの人々がみんな拍手をし始めた。




 拍手が止んだ後、ヘンリー国王がクラリスに聞いた。




「クラリスよ。最後に残った10か国目の災厄はどういうものだろう。はるか昔からの伝承によると、1か国でも魔族の国になってしまうと、災厄が完成しこの世界が全て魔族のものになるそうだが。」




「はい。そのとおりでございます。魔王アスモデウスにとっても最後の戦いですから、全力を尽くし最大限の力で襲ってくるでしょう。いわゆるラスボスです。」




 アーサーが国王に言った。




「自分達を信じ、がんばるだけです。これまで歴史に記録され、人間の世界を守ってきた英雄のように、最後までどんな事態になってもあきらめず、がんばります。」




 国王がメイナードとメイに言った。




「2人がこれまで、アーサーとクラリスを全身全霊で助けてくれたことに心からお礼申し上げる。残った最後の災厄との戦いにも勝てるように2人を助けてくれ。」




「はい全力でお支えします。」




「私の全てを尽くし、お力になります。」




 2人は深く頭を下げながら言った








 悪しき心を映す世界の魔王城のバルコニーに、魔王アスモデウスは出ていた。




 そこはかつては常闇で、光りが全く無かった世界だが、今は違った。




 高い空の上から、美しき心を映す世界の太陽の光が差し込んでいた。




「そうか。もう最後の戦いが近いのか。魔族の力は人間の力の数倍もある。普通に戦えば、100%勝つのだがな。ただ、人間の中には、あの魔女や英雄のように特別な力を持つ者が存在する。」




 そして魔王は歩き始めた。




 バルコニーを抜けて、自分の部屋を出て、階段を下り始めた。




 彼の通る両側には、さまざまな魔物がひざまずき敬意を示してした。




 最後に彼は、魔王城の城門の前に立った。




 巨大なトロールが、城門の両側に2匹立っていた。




 そして、魔王が着いたことを確認し、うやうやしく一礼し門を開けた。




 城門が完全に開けられると、魔王アスモデウスは城の外に出た。




 すると、見渡す限り、無限大の数の魔物がそこに控えていた。




 セイレーンがよく通る声で、叫んだ。




「アスモデウスに力を、アスモデウスに勝利を!!! 」








 王都イスタンの王城の前にある広場に転移魔法陣が構築されていた。




 多くの住民達がつめかけ、莫大な観衆がつめかけていた。




 国王ヘンリー、そしてアーサーの2人の兄、ウィリアムとギルバートが見送りに来ていた。




 ウィリアムがアーサーに近づいて言った。




「我が弟として、お前は私の最大の誇りだ。」




 次にギルバートも近づいて言った。




「犠牲にはなるな。お前が犠牲になるくらいなら、人間世界は滅んでも良い。」




 アーサーは一瞬驚いたような表情をしたが、その後、彼の大きな瞳は涙を必死にこらえた。




 国王ヘンリーが見送りにきていたランカスター公爵に聞いた。




「ヘルムート。クラリスの2人の姉の姿が見えないようだが。」




 ランカスター公爵が微妙ば表情で答えた。




「はい― まあ― 陛下、お察しください。」




 やがて、その時が来た。




 クラリスが詠唱した。




「我、9つの道を行き9つの災厄に出会う。そして、最後に10番目の道を行き最後の災厄に出会う。先人達が進んだ道と同じく、我にその道を進ません。」




 その瞬間、転移魔法陣の上に立っていた4人の姿が消えた。








 最後の転移はこれまでの転移と大きく違っていた。




 これまでは一瞬にして転移が完了したが、今度は長い時間だった。




 そして、4人は自分達が移動していることをはっきりと見ることができた。




 最後に彼らは行き着いた。




 クラリスはすぐに気がついた。




「あっ!!! ここは!!! 」




 美しき心を映す世界だった。




 アーサーが言った。




「美しき心を映す世界ですね。人間の国ではありませんが。」




「はい。確かにそうです。でも、ここは人間の心を形づくる者達が暮らしている国なのです。それは、妖精達。さまざまな多くの妖精が住んでいます。」




「妖精の国ですね。」




「そして、妖精達は人間界の人間の美しき心を大切に守る役目を果たしています。」




 クラリスにとっては、一番大切な場所だった。




 彼女は導かれるように歩き始めた。




 他の3人もそれに続いた。




 すると、回りには四葉のクローバーの白い花が咲き始めていた。




 そして、最後には白い花があたり一面に咲いている場所に出た。




 そこには少し小高い丘があり、登り口には純白の甲冑を着た者がひざまづいて待っていた。




「お姉様。お待ちしていました。戦いの準備は既に整っています。先陣は、この私、美しき心を映す世界の守護者クラリスの妹にして、守護者を守る純白騎士ザラが努めます。」




 ザラがクラリスを先導するように丘を登った。




 すると、見る限り全て、純白の甲冑を着込んだ戦士達がひざまづいていた。




 それは、どれくらいの数になるのか、わからないくらいの数のエルフの軍団だった。

お読みいただき心より感謝申しわげます。


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