99話
「戦力を分けます。」
現在時刻午後4時38分。
次のモンスターウェーブまで残り時間はおよそ20分。
陣地を構築する時間も、その価値もない。城壁は今まで持ちこたえたのが不思議なほど、すでに耐久力が尽きているのはとうに昔のこと。
したがって、守城戦はありえない。
防ぐためには、白鳥がずっとそうしてきたように、城門前の雪原だけが戦場として適切だ。
過去の話をすべて聞いたキョン・ジロクの判断はそうだった。
「橋と城門、二つのチームに分けましょう。速戦即決で。」
「城都は捨てないのか。」
シナリオのフェーズが変わった。
本格的に攻略が始まったという意味。バベルの塔の性格上、難易度は急速に変化した。
モンスターウェーブ程度なら問題なく防げるとしても、「大悪魔」という変化が加われば、状況がどう転ぶか誰にもわからない。
彼が目覚める前に必ず攻略を終えること。それが最善だった。
したがって、これは結局時間との戦いだ。
絶対的に時間が足りないせいで、塩の橋の方だけに集中しようと言っても、きっと皆納得しただろう。
じっと白鳥が見つめる。
キョン・ジロクは淡々と首を横に振った。6年だったか。
感銘を受けるどころか、人として少し恐ろしくもあったが……。
「こちらは善意や仁義などではありません。『塩の橋』に何があるかわからない以上、後方を手薄にするわけにはいかないからです。」
戦略的な判断にすぎない。
口元をさっと拭ったキョン・ジロクが再び眉をひそめた。
「問題は、その分ける戦力がないということだが。」
現在シナリオの中にいる覚醒者の数は全部で22人だが、ここにいるのはたった5人。
キョン・ジロク、白鳥、ペク・ドヒョン、ナ・ジョヨン、そしてキョン・ジオ。
子供に変わっている残りの者は探しても無意味だ。呪いが解ける可能性も低いし、解けたとしてもキョン・ジロクと大差ないだろうから。
ペナルティで能力値がすべて制限されている以上、キョン・ジロクは現在少し強い一般人程度にすぎなかった。
「状況はあまり良くないな。」
もちろんデウス・エクス・マキナ。
ありえないほどの詐欺キャラがこの隙に図々しく紛れ込んではいるが……キョン・ジロクはジオの方を確認した。
やる気は微塵もないようだ。
「当然か。俺を元に戻したから、自分のやるべきことはすべて終わったと思っているんだ。」
正体を隠すのも仕事だが、決定的に39階は特殊ステージ。聖位スキルが不可能なので、「適業スキル」、つまりキョン・ジオで言えば魔法だけを使わなければならないのだが……。
覚醒者の特性がいくつか集まって開花する「適業タイトル」。
「特性」が生の才能なら、適業タイトルから生じる「スキル」はより専門的な領域だった。
たとえば、一見似ているように見えても、ファーストタイトルがレンジャーである人の追跡スキルと、他の職業群が使う「追跡者」特性は、質的な面で次元が違うという意味。
完全に専門領域であるだけに、習得して使いこなすのも上位スキルであるほど難しい。
普段から頭を抱えるほどスキルの方は嫌がっているのに、心が動かないことに乗り出すはずがない。
「あれはいないものと考えよう。」
キョン・ジロクは気まずそうに口を開いた。
「……私がこの状態なので、事実上運用可能な戦力は3人、程度です。」
「ふむ、私を除いたか。」
彼の表情ですべてを理解したペク・ドヒョンが頷いた。白鳥が少し首をかしげる。
「4人ではないのか?」
「その、ジオさんはバビロンの支援チームなので。」
我慢している表情のバンビの代わりにペク・ドヒョンが答えた。
まったくの間違いではない。一応公式的にはバビロンのデスクチーム(期間雇用)所属ではあるから……。
ああ。白鳥が短く頷いた。
「そうか。重要なことではない。3人でも、4人でも城門には1人いれば十分だ。私一人残る。」
キョン・ジロクが即座に否定した。
「一人ではだめです。」
「フェーズが変わった状況で、モンスターウェーブも以前と同じだとは限りません。」
「万が一、変数が生じても、あなたたちが攻略を終えるまで持ちこたえればいいだけのことだ。」
「危険でしょう。」
その言葉は他の誰でもないキョン・ジロクが言うので少し笑えた。
「バビロンギルド長、最も危険な場所ばかりを探し回る男の口から出る言葉ではないと思うが。」
「宗主。」
二つのギルドの長が正面から視線がぶつかる。
「……。」
キョン・ジロクはまだ若く荒削りだが、判断力が悪くないリーダーだ。
この短い間に彼は白鳥の本心を、白鳥はキョン・ジロクが自分の決定を理解したことを確認した。
短い静寂の末、発せられた低音は静かだった。
「ジロク、君が城門を捨てる決断を下していれば、私は意地を張ってここを守ろうとしただろう。」
「……。」
「荷を軽くしてくれてありがたい。」
複数の視線。白鳥は彼らを一通り見渡し、城壁の向こうの雪原を凝視した。
まだ静かなその先を。
「仲間を信じて待つのは、過去6年間してきたことではないか。大きく変わらないように見える。」
今この瞬間にも吹雪は激しくなっていた。ためらっている時間はない。白鳥は終止符を打った。
「城門は私が引き受ける。」
現在時刻午後4時45分。
攻略隊二つの組、分散。
* * *
カアア、キエエエク!
人間と怪物、そして大自然の戦いだった。
吹き荒れる吹雪の中では、視界の区別はもちろん、一歩踏み出すことさえ困難だった。
ファアアク-!
ジオは手の甲で頬を拭った。ペク・ドヒョンが斬り倒した怪獣が倒れる際に飛び散った血だった。すぐに凍ったのか、少し拭っただけで終わった。
「ああ、もう。踏むのが雪原か、死体畑か?」
すでに4回目の襲撃。
走っていた馬からは少し前に降りた。雪のせいでこれ以上乗ることができなかったからだ。
山間盆地に位置する城都アドミヤ。
端の塩の橋へ行く道は険しいことこの上なかった。
城郭側に近づくほど地形は険しくなり、橋へ向かう道だったという310段の階段は万年雪に覆われて見えもしなかった。
おかげでまたリアルタイム登山中。
上り坂を登りながらジオがぶるぶる歯ぎしりした。バベル、お前。
「に、二度もこのクソみたいな山道に登るなんて……!」
江原道から帰ってきてどれくらい経ったと思ってるんだ?キング・ジオの身に一体何が起こってるんだ。もしかして雪岳山で登山客の怨霊でも憑りついたんじゃないか?
「出たらすぐに占い師に厄払いしてもらうんだ、悪い奴ら。」
「ジョ、ジョジョ様、ハア、ハア。大、大変、お辛いでしょう。ハア。」
「お前は大変どころか、もうすぐ死ぬんじゃないか……。」
「ジョヨンさん、大丈夫ですか?だから普段から運動してください。」
「クッ。ジムはもともと新年に契約して行かないものだから……ヒュウ!」
むせび泣くせいでよろめいた、ナ・ジョヨンを後ろの襟を掴んだジオの手。
ナ・ジョヨンが感謝するとすすり泣いたが、ジオはいつの間にか別の場所を見ていた。無表情な顔で、歩いてきた道のずっと遠くを。
「……お星さま。」
【ええ。4秒前です。】
しかし、聞くまでもなかったようだ。
すぐに目の前の虚空を埋め尽くすカウントダウンの文字。
[3、2……1。]
[「安全地帯」が解除されました。]
[緊急!「城都アドミヤ」にモンスターウェーブが発生します。]
--!---!
ゴォン、ゴゴォン、ゴゴゴゴ!
激しい吹雪に遮られ何も見えなかった。ただ……遠くから響いてくる冬の大地の振動と怪獣たちの叫び声。
「キョン・ジオ、早く来い。」
「……。」
抑揚のない口調。
ジオはキョン・ジロクをじっと見上げた。塔ではこいつこんな顔をするんだな。
この上なく感情的な目で無感情な言葉を吐く。
「決めたら振り返るな。」
「……振り返ったのではなく、どれくらい来たか確認しただけだ。」
ヒュウウウウ-。
吹雪の中で再び道を登る足取り。
現在時刻午後5時01分。
アドミヤモンスターウェーブ、開始。
* * *
カラスの争う谷に
白鷺よ、行くことなかれ。
怒れるカラス、汝の白さを妬むゆえ、白く白いものに黒き汚れをつけんとするなり。まことに黒き汚れつけば、洗い清む道なし。
「また白鷺歌を口ずさんでいらっしゃるのですか、お祖父様?」
「宗主、雪が降っておるのではないか?白い鳥を探すには良い日であろう。」
「まだ宗主ではありません。」
「神獣が証明し、他の者たちもすでにそう思っておるのに、こう呼ぼうがああ呼ぼうが、何か関係があるのか?」
「……少し怖いです。私はうまくできるでしょうか?」
「ほう……。ひょっとして、ご本人がなぜこの詩が好きか、宗主に話してやったことがあったか?」
「ただ白鳥が好きだとだけおっしゃっていました。」
「実は、白鷺は厄介な鳥じゃ。一度巣を作ると、周辺の木が枯れ、害虫がわく。」
「……。」
「しかし、誰もその白い鳥を悪く言わぬ。そのような些細な欠点などでは隠せない白さを生まれ持っておるからじゃ。」
「……。」
「白鷺はただ黒い汚れをつけなければ良いのじゃ。本来の白さを守っているだけでも清廉の象徴となり、高潔の表象となって多くの者が手本としようとするであろう……。」
より剛直に。
より潔白に。
そうして。背負った重みに耐えてきた白鳥のやり方だった。
突破口、と呼んでもあまり変わらないだろう。しかし。
「それは正しかったのだろうか?」
グオオオオ!キアアアアク!
目の前、津波のように押し寄せてくる敵。白鳥は剣柄を握り直した。
「……[白き剣、ただ青き海を割るのみ。] 」
[適業スキル、9階級極上技術 - 最終奥義〕
「解頽宗 第11式 白剣割蒼海」]
スサアアアク!
真っ白な剣気が立ち上り、死体の海が二つに割れる。
疲れて威力が多少落ちたが、斬り倒した数はざっと千匹あまりの怪獣。
しかし、敵は減っていない。
「それは……本当に正しかったのだろうか?」
白鳥は息を整えた。
現在時刻午後5時37分。
キョン・ジロクが正しかった。
変数は危険だった。
以前とはまったく異なる様相のモンスターウェーブだった。多くても数百だった数は、現在肉眼でも1万を超える。
斬り倒しても終わらない。殺しても蘇る。まさに地獄。
「そう生きることが果たして正しかったのだろうか?」
自らに投げかける疑問と疑念が止まらない。
白鳥はハンターより人として生きたかった。
ついに、人だからこそ限りなく偉大になれたが、また人だからこそ限りなく脆弱になる瞬間がしばしば訪れた。
まさに今のような時がそうだった。
「……クッ!」
よろめき、立て続けに敵を斬り倒した白鳥が一瞬バランスを崩した。
一瞬だったが、危機はそれよりも早かった。斬り倒したばかりのその場所で再び立ち上がる魔鬼の群れ。
グオオオオオオ!
空はもう見えない。
頭上に垂れ込める黒い影を感じながら、白鳥は剣柄を強く握った。呻き声が漏れた。
「……ダビデ。」
私は、白い鳥はそう生きることが本当に正しかったのだろうか?
そして、その終わりのない問いに対して答えを出したのは……。
「[来たれ、極光よ]」
[適業スキル、10階級究極呪文 - 王霊
「アポカリプス(Apocalypse)」]
もう見えないと思っていた空、まさにその空からだった。




