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97話

6年だと?何だって?


今度は冗談なんかじゃないってことがすぐに分かった。


足の踏み場もないほど死体で埋め尽くされた城門の外の風景。一日二日じゃないだろうとは思ってたけど。


毎日そうやって、なんと6年も。


たった一人でモンスターウェーブを防いでいたって?ジオは呆れた。いや、それよりも。


「馬鹿もほどほどにしろよ」


腹が立った。


冷たい声。張り詰めた静寂の重さだけによく響いた。


畏敬の念か、あるいは驚愕で、白鳥を見ていたみんなの視線がこちらに向く。


焚き火を真ん中に置いた二人。


同じ温度の前にいても鮮明に対比された。ジオの眼差しが冷たく、白鳥に向けられた。


「いくら内と外の時間概念が違うからって、6年も経てば外でも時間が経ってるって思わないのか?待ってる人たちのことなんか眼中にないのかよ」


玄関の前から離れられなかった家族たちの背中、一人で雪岳の重みに耐えていたチェ・ダビデの背中。


待つことしかできなかった者たちの背中が次々と浮かんだ。


「ああ。ここの人間がただのNPCじゃないってのは分かったよ。こいつらも生命で、みんな大事な人間だってことにするよ。それでもそっちのエゴだって思わないのか?」


ミクロだ、マクロだとギャーギャー騒ぎ立てて問い詰める真似、こっちも大嫌いなんだよ。


エゴで言えば誰よりも圧倒的なワン トップだから、めちゃくちゃ身勝手なこともよく分かってるんだけど。


「あいつは私とは違う」


人にはそれぞれの役割があるんじゃないか。


「お前は『白鳥』だろ。自分の立場はよく分かってるはずだ」


「……」


「もっと重要で、そうでないものが何かくらい、それとなく区別しなきゃならないんじゃないか」


他の人たちは黙っていた。


正確には、割り込めなかった。ペク・ドヒョンははっきりと、そしてナ・ジョヨンはぼんやりと分かっている事実。


今、誰が誰に尋ねているのか。これはバベル時代の暴君が君子に投げかける質問だった。


「もっと重要で、そうでないもの……」


白鳥がジオの言葉をもう一度噛み締めた。


突然降り注いだ非難にも表情の変化はない。ただ穏やかな湖のような顔で肯定した。


「『優先順位をつけろ』。よく聞く言葉だ。祖父がいつも私に言っていたことだ。小さいものを追いかけて大きいものを失うことになる、といつも叱っていた」


「小貪大失の愚を犯してはならない。小宗主」


その度に小さい白鳥は問い返した。


「小さいものを見ることができない者が、どうして大きいものを見ることができるのですか?」


「……」


「私はいつも些細なことばかりだった」


相変わらず小さい白鳥がキョン・ジオに答えた。


「器が小さく、視野が狭く、単純で遠くを見ることができない人間だ」


「……」


「私の名前、私の家門、私の民族、私の国……。ずっと目の前に迫ったものを守ってきただけだ」


一つのことしかできない石頭。そうやって些細で単純な一歩一歩で作られたのが今の白鳥だった。


「私の立場が何であろうと、それは今も変わらない」


「はっ。目の前のどうでもいい奴らを守るために無駄な時間を過ごしてる間に、外のお前の人たちがめちゃくちゃになっても?」


「すべての可能性を計算して、いちいち軽重を量っていたらどうやって前に進むことができるだろうか?」


瞬間、言葉に詰まった。


ジオは穴が開くほど白鳥を見つめた。どういうわけか彼女から目を離すことができなかった。


白鳥が言った。


「人が見えたから人を救った」


「……」


「これによりどんなことが起ころうとも、決定に後悔はない。もちろん……」


悲しくはあるだろう。


白鳥の静かな呟きが散らばった。しばらく遠くを見る。


ジオもつられて見た。


白い雪国、そして名前を失った子供たち。


塔のミッションフィールド。


階層別シナリオが進行するところ。ここが現実なのか仮想なのか誰も知らない。


当然ゲーム空間じゃないか、と言う人もいた。しかし、一度でも塔を経験した者たちは違った。


彼らは口を揃えて言った。


そこに本物の「人」がいると。自分も死んで、彼らも同じように死ぬ、もう一つの現実の世界だと。


頑固じじいが呟いた。


「我執だ」


「信念だ」


石頭君子が答えた。


「遠い危機を防ぐために目の前の人を見捨てる真似は、とてもできない。愚かであろうとも、それが私の信念であり、私の些細な大義だ」


剣士は剣先にどんな迷いも乗せない。


鞘から抜いた瞬間、斬らなければならないのが剣であり、白鳥は剣士だった。


三国第一剣、高麗第一剣、朝鮮第一剣……そして大韓第一剣。


そのすべての歴史の下で生まれた瞬間から今まで、一度もそうでないことはなかった。


「愚かなのは分かってるんだな」


「分かっている。そなたの非難はもっともだ。エゴという言葉も否定できない」


「……」


「しかし、剣士にとって信念は剣と同じで、剣が折れた剣士は剣士ではない」


「……」


「もっと非難しても構わない。しかし……」


安全地帯が活性化された城都。


激しい吹雪の代わりに雪の結晶が落ちてきていた。手のひらに落ちてきた雪をそっと握りながら白鳥は淡々と謝罪した。


「すまない。私は今日死んでも剣士として死ぬだろう」


6年。約2千日、5万時間。


この息苦しく、愚直な石頭が一振りの信念を守るために城郭で一人で耐え抜いた時間。


武道に忠実であろうと星との誓約さえ拒否した人間であることを改めて実感した。


凍土に咲いた一筋の蘭のような女。正直な視線でジオを見つめる。


ジオも真剣に見つめ返した。


同時に思った。


「秩序善良の名台詞、マジで勘弁……」


このほのぼのどころか熱い展開、マジで慣れない。マジありえない。


私の人生のジャンルまた変わったのか?


実はこれ、どうしようもない最強主人公の強制更生物だったり、悪霊払い、回心、みたいなのさせられてる途中?


土下座して今まで悪くてすみませんでした、罪を償えばいい雰囲気なのかよ。


「降り注ぐ信念ビームに三浪ヴィラン昏倒……!」


遺言のような名台詞に同族に出会った秩序善良二人はすでに感動の坩堝だった。片方で口を押さえて号泣している。


「宗主様……!」


「さすがヘタ……!」


「パーティー構成マジで終わってる」


誰が組んだんだよ?今すぐ出てこい……。


なんか秩序善良グラデーションでもないし、好きなの選べるビュッフェかよ?


「世界を救いに帰ってきた」のペク・ドヒョンから「光よ!」の癒しナ・ジョヨンも飽き足らず、今度は「人が見えたから救っただけ」のセイント白鳥……。


酔っ払ってカラオケで違う部屋に間違えて入ったサタンの気分だ。後退する間もなく歓迎してくれる天使たちに無理やり捕まった感じ。


サタン親友候補キョン・ジオは強烈な目眩を感じた。


【不快だ……】


【いくら反対に惹かれるからって、どこでこんな奴らばかり選んで拾ってくるんだ?】


「ふう。それでも私だけが堕落してるわけじゃなくてよかった」


密かにジオが安堵の息をつくと、白鳥がまた言った。


「実は」


「まだ何か」


「こうは言っても最近、心的な葛藤があったのだが、そなたと話しているうちに私自身も整理がついた気がする。10年くらいは楽勝だろう。感謝したい」


「あ、うちのナ・ジョヨン様はそういう方なんです!もともと物事をよくご存じで賢明なので、悟りを与えてくださって……!」


「ええ。一見軽薄に見えても、見えるものだけがすべてではない方です」


「名前はナ・ジョヨンというか。ナ・ジョヨン……なるほど。只者ではないとは思っていた」


「もうやめてくれ、翼のない天使たち……」


かわいそうなヴィランを放っておいてくれ……。


ここぞとばかりに推しを猛烈に営業する狂信者と、客観的なふりをするけどどうしようもない愛の伝道師、ボイスフィッシング担当にぴったりな韓国第一剣のコラボ。


「ランカーチャンネルが炎上しなくて圧倒的感謝……」


とても正気でチェ・ダビデの名前を見る自信がない。ジオは慌てて話題を変えた。


「……お、おい、ホイバホイバ。それで、その花とかいうのを燃やせば全部元に戻るってことか?」


「ホイバホイバじゃなくてフィトゥル……。あ、いえ、違います。元に戻るわけではありません」


ナ・ジョヨンがびっくりして見つめた。


「え?さっきは止まると……」


「神託では『止まる』と言っただけで、戻るとは言っていません。神託はありのままを言うだけですから」


「そ、それじゃあどうすればいいんですか!戻る方法はないんですか?」


「ジョヨンさん」


ペク・ドヒョンが制止した。声を低めて囁く。


「なぜ驚いたのかは分かりますが、私たちとは関係のない話です。シナリオの特殊性による外的な変化は攻略時にリセットされます」


「ああ……」


取り戻せないのは死だけ。


白鳥が付け加えた。


「聞くところによると、悪魔が眠ってから10年くらい経ったそうだ。状況からして、その時がこのシナリオのスタート地点だろう。だから他の者も長くても10年。呪われていてもまだ生きているはずだ」


「よ、よかった……」


そう言いながらもナ・ジョヨンは相変わらず泣きそうな顔だった。おずおずとフィトゥルに尋ねる。


「でも、私たちはそうだとしても……この方たちは……どうにかする方法はないんでしょうか?助けたいです」


「まったく。お人好しなんだから」


ジオはつまらなそうに顎を突いた。


少し離れて小さく集まって座っている子供たち。そちらを見て、フィトゥルがしばらく唇をモゴモゴさせた。暗い表情だ。


「これをあると言うべきか、ないと言うべきか……」


「小人。見栄えだけ取り繕ってないで早く白状しろ。うちのドビーをじらすな」


「ジョ、ジョジョ様!優しい……!」


「どこが……?」


呆れたが、フィトゥルは黙って白状した。


「愛です」


「……は?」


ポツンと飛び出した愛の話。


ジオと仲間が一瞬首を傾げる中、フィトゥルは真剣だった。


「本当にそうです。伝わってくる話ではそうです。愛する人が『本当の名前』を呼んでくれれば戻ると。しかし、ご覧の通り」


フィトゥルが苦笑した。


解呪法を知った時にはすでにみんなが変わってしまった後で……。


「誰が誰なのかも全く分からず、自分の名前も覚えていない状況なのに、どうして可能でしょうか?ない方がましな方法です」


「……ふむ、古典的ですね。愛から始まった呪いだから愛で解けるのが王道ではありますね」


今回のシナリオはいろいろな意味で童話のようだと言いながらペク・ドヒョンが頷いた。


ジオはじっとフィトゥルを見つめた。


「ふむ」


「それ、必ず愛する人でなきゃダメなの?恋人?」


「え、さあ。違うんじゃないですか……?老若男女みんな変わってしまったのに、みんなに恋人がいるわけじゃないから」


「私もそう思います。童話のキーは結局、真心ですから。たぶん大切な人を見つければいいはずですが……」


「それならいいや。やってみようじゃないか」


キョン・ジオが立ち上がった。


歩みに迷いはない。降り注ぐ訝しげな視線。意に介さずそのまま歩いていく。


サクサク、サクサク。


雪の上を踏む足音。


白い息が立ち上った。


ジオは近づいて両頬を包み込んだ。驚いて見つめる「J」。


ゆっくりと、ジオが笑った。


続くいたずらっぽい囁き。


「おい。この馬鹿野郎。聞こえたか?」


「……」


「もう帰ってこい、バンビ」


家に帰ろう、キョン・ジロク。


愛するマイ ブラザー、私の弟よ。


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