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96話

屍山血河の雪景色の中の剣士。


クリシェのような光景でも、見る者を圧倒する力があった。


あの女の剣一本が背負った歴史を思えばなおさらだ。


カタカタ、コツ。


止まっていた馬車が再び動き出す。


雪で白く、すすで黒く、血で赤い道。障害物の多い道の上で、車輪は容易に進めなかった。


そしてゴトン! ついに引っかかって止まるかと思いきや。


キエエエッ!


まだ死に切っていない死体が飛び出してきたのは、不覚にも一瞬の出来事だった。


馬車を急襲する影と、驚いて騒ぐ馬たち。しかし、ジオは反応しなかった。


先に動いた人を見たからだ。


「……[白鷺しらさぎ飛び立つ、一点の雪のごとし。]」


解箝ヘタ宗 第一式。


白鷺一点雪。


サアアッ!


音もなく静かな一刀両断。


真っ二つになった怪獣の死体の上に軽く着地する。そのまま視線が合った。瞬間、ジオは有名な修飾語を一つ思い出す。


「人間的な怪物モンスター。」


現存する最上位ランカーの中で、唯一「聖約」を結んでいない、純粋な人間。


しばらくジオの方を見ていた視線が、落ち着いて一行をさっと見た。空中に白い息が立ち上る。


「少し……。」


白鳥が口を開いた。


「遅かったな。」


面白みのない女。頭の固い女。


しかし、すべての剣士が夢見る理想であり、生涯をかけて到達しようとする目標地点。


大韓民国第一剣、白鳥。


韓半島に位置する大多数の武道門派および宗派の源流が〈ヘタ〉であり、そんな〈ヘタ〉の主であり、当代の宗主がまさにその人だった。


天上界ランカーは例外なく有名だと言うが、白鳥と、数人はその意味が少し違っていた。


キョン・ジロクとファン・ホンがデビューする前、誰もが認める韓国を代表するビッグ3の一人だったからだ。


海外ではこう表現することもあった。


[韓国ハンター界は絶対的な一人の君臨の下、老将、君子、俳優で構成された三つの軸が均衡を保つシステムである。]


名声だけを言っているのではない。それ以上のものが彼らにはあった。


例えば、誰もが忘れられないあの時のあの場面とか。


「悪夢の3月」の余波で一時閉門していた〈ヘタ〉が、新しい宗主と共に帰ってきた翌年の追悼式。


追悼献詩の朗読を終えた〈ヘタ〉の新しい主が顔を上げた。


「私は、『ヘタ』は。」


全国民が見守っていた生中継だった。国旗を背景に長い髪がひるがえった。


「誇らしい太極旗の前で。」


正面、そして直視。


哀愁も、感情もなく、ただ清らかな眼差しで彼女は誓った。


「祖国と民族の安定のために、身と心を捧げて忠義を尽くすことを固く誓います。」


「白鳥」。国家がその名を記憶した瞬間だった。


強烈だった初登場から10年。


確かに白鳥は最も強いハンターではない。最も人気があるわけでも、最も尊敬されているわけでもなかった。


しかし、現時点でこの国で最も信頼できるハンターの名前を挙げろと言われたら、それは断言するが白鳥だった。


「気をつけろ。こちらは特に道が険しいから。」


先頭に立って雪道を歩く後ろ姿。


吹き荒れる吹雪にもびくともしなかった。あまりにも凛としていて、吹雪が弱く見えるほどだ。


ジオは内心感嘆しながら頷いた。やはり……。


「国X銀行モデル……国民的びっぷ!」


信頼のアイコン、大衆好感度のバロメーター。あの銀行の広告は誰でも撮れるものではない。


どこぞのビール広告でも撮っているチェ・ダビデ氏とはレベルが違うと言えようか。


もちろん、国民的ビップの頂点、ジョー様には及ばないが、国民的剣士のタイトルくらいは十分に持って歩けるだろう。


「めっちゃ親近感わく。」


パクおばさんの貯金通帳にあるまさにその顔ではないか。


カカオペイやハンターペイを愛用する、キョン氏三兄弟とは異なり、あの銀行の熱心な顧客であるパクおばさんのおかげで、ブロマイドからあらゆるグッズまで見なかったものはない。


ドンドン! 


雪を適当に払い落とした白鳥が城門を叩いた。


「私だ。開けろ、フィセン。」


「……フィセンじゃなくてフィトルだって言ってるじゃないですか!」


「ああ、すまない。フィバ。」


「まさか国民的剣士までバカじゃないだろうな。」


まさか、祖国の希望なのに。


疑わしいやり取りを無理やり無視しながら、ジオは城門を見上げた。


見るからにみすぼらしい門。


その場しのぎなのが明らかな木の板の破片から、すすなど。死闘の跡がそのまま残っていた。


前に何かたくさん置いてあるのか、門を開けるのにも時間がかかる。ナ・ジョヨンがためらいながら尋ねた。


「親しそうに見えますけど、宗主様はここにどれくらいいらっしゃったんですか?」


白鳥があっさりと答えた。


「100年ほど。」


「……え?」


「ずいぶんと長かったな。」


「……。」


「あ、あ、あの、少し遅れたって!」


音もなく驚愕する人々。


ジオでさえ顎を落としているのに、さっと振り返った白鳥がゆっくりと首を横に振った。しまった。


「冗談だ。みんなユーモアのセンスが足りないな。」


キョン・ジオが白鳥を殴ろうと手をならす。


「……離して、これ離して! 祖国の希望ってなんだよクソ!」


「ジオさん! 我慢してください!」


「ジョ、ジョジョ様、お気持ちは分かりますが、私の顔に免じて!」



ゴトン、ギイイッ。


「白鳥! 私の名前はフィバでもないって何度言えば……! え?」


城門を開けた小僧がたじろいた。その後ろに見える人々はかなり多い。全部こちらにも見覚えのある顔だ。


ふむ。ジオは馬車の中の子供たちと彼らを交互に見た。これ、七人の時は分からなかったけど……。


「確かに、同じ顔が三十人くらいいると気分がめっちゃ変だな。」


そして城門の中にそうやって一行が足を踏み入れたのと同時だった。


[シナリオアラート ━ 特別区域┃グリーンゾーン:豊かな省都アドミヤ]


[「安全地帯セーフゾーン」を発見しました。]


[覚醒者を確認。セーフゾーンが活性化されます。]


[非活性化までの残り時間 - 00:02:59:58]


……。


……?


誰ということもなかった。


一斉に片方を振り返った。無表情で立っている白鳥を。




* * *


「まずは腹ごしらえだ。四時間後には再びモンスターウェーブが始まるだろうからな。」


バベルが与える休息時間はほんのそれくらいだ。火種の前に座った白鳥が、非常に手慣れた手つきで何かをポンポン投げ入れた。


「何入れたんですか?」


「サツマイモ。」


「こいつ……。」


ちょっと食ったことのある奴なのか? 冬には焼き芋が定番ではあるな。ジオが深刻そうに頷いた。


「私のは、中までよく焼いてくれ。」


「パサパサすぎるだろう。」


「趣味を尊重」


「分かった。」


キャリア30年の焼き芋屋の親父の如く作業に入る白鳥。


その間、ペク・ドヒョンは注意深く周囲を観察する。広場の床の焚き火と仮設のバラックまで。これは……。


「……戦時モードですね。いつでも城壁に行ける。」


「約七百から千。毎日押し寄せてくる奴らの数だ。戦争と何ら変わりはない。」


淡々と答えた白鳥が彼らをちらりと見た。


「ところで、バビロンの超新星が元々攻略隊の一員だったのか。D.I.のジョヨンは確かに記憶にあるが……。」


「あ、違います。私たちは救出隊、というか一種の後発隊なので。」


「私たち?」


少し首をかしげる無表情。


ペク・ドヒョンがぎこちなくジオと彼自身を指すと、ようやく分かったかのように短くため息をつく。


「ここの子ではなかったのか? 知らなかった。」


「ナイキのアノラック着てる人に何言ってんだよ? この無礼な鳥頭。」


「ジョ、ジョジョ様。」


「現代語が堪能で驚いたが。バベルの翻訳が素晴らしいと感嘆するべきではなかったな。」


あのー。それを今気づいてもどうすれば……?


天上界の古参勢に挟まれた新人ニュービー経歴新人ニュービーが、おっかなびっくり針のむしろを体験している時。


当の白鳥は気にも留めず、よく焼けたサツマイモを取り出してジオにスッと差し出す。


「受け取れ。外もずいぶんと時間が経ったようだな? 救出隊が来るほどなら。」


「あ、ありが……あちっ! クソなんだよ! めっちゃ熱い!」


「ひえっ、ジョジョ様! 大丈夫ですか? 私が剥いて差し上げます! あ、はい。だから早く他の人たちも探して、早く攻略を終わらせなければなりません。もしかしたら川に口でもつけたら……」


「手がそんなに柔らかいから熱いものも持てないんだ。ふむ、川とは? 塩川のことを言っているのか。」


「私の手がどうかしたって言うんですか!」


「ジオ、ジオさん! 私はジオさんの手が好きです。ええ。そうです、宗主。少しでも飲んだらあのように変わってしまうと……。」


「どうか一度に一つの話題だけで喋ってくれ、このよそ者ども。」


傍観していたフィトルと市民たちの目がどんどん腐っていった。幸い、めちゃくちゃだった会話は遅れずに正常な軌道に戻る。


「誤解しているな。」


断固とした否定だった。


注目が集まる。白鳥は火種からゆっくりと視線を離した。


「川は原因ではない。接触すればより早くなるだろうが、それだけだ。ここに留まればどうあっても彼女のようになる。この国全体に下された呪いのせいで。」


「『彼女』ですか?」


白鳥がフィトルの方に目配せした。どうやらこの話は直接聞く方がいいだろうから。


生存者「フィトル」。


元々は卑賤だったが、最も記憶していることが多く、アドミヤ生存者たちの代表となったホームレス。彼が落ち着いて口を開いた。


「元々ここ、省都アドミヤは豊かな夏の都市でした。しかし……あのソルトブリッジの恋人。」


フィトルの手が遠くを指した。


城郭の向こうの端。


今は崩れた城の裏手、川を中間に置いて省都と雪山を結ぶ橋。「ソルトブリッジ」だった。


「まさにあの橋で秘密の出会いを重ねていた一組の恋人によって、すべてが変わったのです。」


アドミヤ城主の娘ジオルサ。


そして彼女に不滅の誓いを立てた騎士であり、首都の千年公爵。


保養地として有名なアドミヤを彼が訪れて結ばれた偶然は、互いに救いである運命として花開いた。


しかし、一介の田舎城主の娘と首都の公爵。貴賤結婚が成立するには王の認可が必要だった。


首都へ向かった公爵が省都を空けた期間はわずか数日だった。おそらく彼は、そのほんの短い間に彼女があんなにもあっけなく自分から離れるとは思わなかっただろう。


無残に死んだ恋人の遺体を抱きしめたまま、公爵が絶叫した。



う、ああああ!


血を吐く叫びに空が裂け、凍えるような怒りに大地が凍り付いた。


偉大な千年公爵。


誰もが竜の血が混ざっているだろうと畏敬していたその栄光ある青年は、実は竜でも、人でもなかった。


億劫の怒りと憎悪で殻を剥いだ大悪魔が宣言した。


「彼女に永遠を約束した。だから私がジオルサの祭壇に捧げるこの終末もまた、決して終わらないだろう。」


永遠の冬の始まりだった。


「吹雪が始まると同時に、ハンセン病のような伝染病が流行しました。その次には人々が理由もなく倒れ、日が暮れると、その死体たちが起き上がり……そうして……。」


人々は許しを請うためにあらゆる供物を捧げた。その中には城主の娘とそっくりの女性もいた。


大悪魔は冷たく嘲笑った。


「良いだろう。お前たちが彼女をそう記憶したいのなら、機会を与えてやる。」


死亡当時、ジオルサの年齢は十七歳。


生き残った生存者全員があの年齢、あの姿の彼女と似ていき、どんどん若返っていった。


怪物にすぐに殺されることはないが、より悲惨で遅い死の呪いだった。


パチパチ、パン。火種が弾ける音。


背景説明は終わった。静寂の中で白鳥が尋ねた。


「ここに来てどれくらい経った?」


一日経ったので、ジオは四日、ペク・ドヒョンは二日、ナ・ジョヨンは八日目だ。


彼女が頷いた。幸いだな。


「よそ者がここを訪れた時、変わる時点が七日からだと聞いた。」


「え? 私は一週間以上経ってる、あ、もしかして……!」


「そうだ。理由はともあれ『悪魔』の呪い。おそらくジョヨン、お前は聖力を、私は破畺の法力を持っているから影響から逃れているのだろう。」


〈ヘタ〉のルーツは神獣と仏教だ。


神獣の法力と仏家の功力。両方とも備えた白鳥もまた、邪なものを死滅させることに長けた人物だった。


「では、攻略法はその悪魔を倒せばいいんですか?」


「はっ、何を言うんだ!」


ペク・ドヒョンの挑戦的な問いに、フィトルが真っ青になって驚いた。白鳥が首を横に振る。


「一国を滅ぼした悪魔だ。メインシナリオでもそこまで難易度が高くはない。」


「それでは……?」


「問題に答えがあるのではないか。39階の答えはソルトブリッジだ。そこへ行かなければならない。」


急いでフィトルが付け加えた。


「大悪魔は数年前に眠っている状態です。ソルトブリッジの向こうの祭壇に、城主の娘が彼にプレゼントした花があるのですが……。」


省都アドミヤに下された最後の慈悲、最後の神託だった。


大悪魔の心臓も同然のその花を燃やせば、呪いが止まると。


「簡単。」


ペク・ドヒョンが思った。


予想と違ってあまりにも簡単だった。白鳥ほどの人物が今まで終わらせられなかったのが不思議なほど。


そしてまさにその瞬間、よぎるある悟り。


四時間間隔で訪れるというモンスターウェーブ。しかし、それはセーフゾーンが活性化された時の話。つまり。


「セーフゾーンが点灯しなければ、モンスターウェーブは終わらない。それではここは……。」


崩れる。


粉々に、また完全に。


「……まさか、この者たちを守るために動けなかったんですか?」


静寂が訪れた。


吹雪は止まっていない。


消え入りそうで消えない火種。それを黙って見下ろしていた白鳥が呟いた。


「セーフゾーンが活性化されると、退化も、モンスターウェーブも、しばらくは止まるようだ。しかし。」


「セーフゾーンは覚醒者がいなければ活性化されません。」


覚醒者保護のための領域だから当然だった。バベルの塔が気にかけているのは、ひたすら塔を登る人々だけだ。


「ソルトブリッジへ向かうためには必ず城壁を通らなければならない。いつかは来ると信じていた。」


「そ、そんなに、どれくらい、どれくらい待っていらっしゃったんですか?」


切羽詰まったナ・ジョヨンの問い。


「君子」白鳥が答えた。


「6年。」


キョン・ジオも応えた。


「狂った人……。」


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