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95話

セーフゾーン(Safe Zone)。攻略中途放棄が可能な安全地帯。


ジオのお星様は塔を出ることをそれとなく促していた。


暇さえあれば塔へ行けと、念仏のように唱えていたのにどうしたことか。ジオは毛布を寄せながら、しぶしぶ呟いた。


「嫌だ。あなたのキョン・ジオはお断りします。」


聖約星が「世の中のルールなんてくそくらえ」あるいは「バベル? まあ、にいにが遊んであげる」モードで出てくるのは今更珍しいことでもない。


口だけで軽く言うだけでなく、実際にそうだった。


勝手に開きまくる聖痕から、厳しく制限された現実干渉も自分の気の向くままにしてのける。


ジオもまた、幼い頃から気づいていた事実だ。


ああ、私のお星様は「基準」から外れているんだな。よその家の星たちとは違うんだな。


しかし、基準から外れるということは、様々な意味に解釈される。ジオはそれも幼い頃に悟った。


「覚醒」で目が開かれ、未知の感覚が呼び起こされ、目の前に新たに開かれた世界……。


手ぶりに従って揺らめく世界魔力と、息をするたびに揺れ動く体内の真螢力を感じた瞬間、九歳の覚醒者、世紀の天才は思った。


「21秒。」


今横になっているこの大学病院を、埃の山にするまでに要する時間。


無意識的な計算だった。


スキルや呪文のようなものを特に習得する必要もなかった。ただ、それが「可能」だった。


まともな世界が一夜にしてトイワールドに転落した気分だった。


そうして、人と世の中をありのままに見ることが難しくなるにつれて、子供の目はますます醒めていく頃……。


不意に押し寄せた、魔力暴走。


血に濡れた虎と、笑いながらも恐怖を隠せないセンターの人々。そのすべてを見ながら、幼いジオは悟った。


「基準から外れたものは危険だ。」


S級怪物、キョン・ジオの非公式訓練は中学校まで続いた。


長年努力した部分はひたすら、持っている力に対するコントロールのみの訓練を行った。


一度たりとも、もっと強くなろうと努力したことはない。


キョン・テソンを見て、弱いものがどれほど簡単に消え去るかを学んだとしたら、強いものがどれほど簡単に壊してしまうかを、自分自身を見て学んだから。


それに、お星さまも大して変わらない。


ある意味では、最も危険な部類に属すると見るべきだった。


それどころか、この宇宙級の無法者は、世の中の基準さえ一人の人間に置いていた。


ジオを除くすべてを消し去ってしまう、盲目的な偏愛。少しも他のものにかかっていない。


そんな者の言葉をむやみに全部聞いていたら、この世は終わりだ。


暖炉の前。ジオは顎を突いた。声は低かった。


「唆さないで。シナリオに無理やり乱入して何をするつもり?」


【唆すとは。バベルの小賢しいやり方が気に食わなかっただけのこと。】


「調子を合わせることにしたなら、黙ってやって。バベルに目をつけられてペナルティを負うつもりはない。この区域の狂犬は私一人で十分だ。」


【見ると案外保守的なところがあるのを知っているか?】


「もともとどこに行ってもトップは保守的だ。そうでなければ体系が維持できないから。」


基準から外れたルールブレイカー。秘めている危険性がある。何にも簡単に揺さぶられてはならない。


キョン・ジオは知っている。常に不動心を保つ必要があるということを。


お星さまの手綱をぎゅっと握って、ひたすら自分で方向を定めなければならなかった。


人の過ちは個人を成長させ、ハンターの過ちは戦友と分かち合うことができるが、王の過ちは数百万を殺し、歴史を後退させる。


「まあ、それに大したことでもないじゃない? バンビだけ連れて行けばいい。ついでにドビーも連れて行って。」


【ふむ。】


「お星様が入ると、無駄に騒がしくなるだけ。人のことは人に任せておけ。」


【無情な顔で人間を論じるのか。】


「何よ。キングの世界平和維持くらいにしておけば?」


トントン、トントン。枕を整えて横になった。中世の背景だからか、手触りからしてひどく粗末だった。


慣れない寝床。体はぐったりする。


だるそうな目を瞬きながら、ジオが呟いた。


お星様、正直に言って。


「お星様、このシナリオ気に入らないんでしょう?」


さらにだるそうに星が答えた。


【このうんざりするほどつまらない世の中に、私のお気に入りがお前以外にいると思うか?】


「……ったく。許可してあげる。」


【何を?】


「キングジオに子守唄を歌ってあげるという、小細工を許可してやる。」


【知っているか?】


「何?」


【お前ほど馬鹿げたことを可愛らしく言うやつはいない。宇宙を探しても。】


そうして、私は全銀河と星系を渡って、今またここにいるということを。


夜が更ける。


小さな炎の前で眠る小さな恋人。


お星さまは、懐かしさと切なさで顎を傾けた。決して届かない、口づけを届けた。


低いハミングは夜通し続いた。雪国の夜を包み込みながら。




* * *


は……クソ。ありえない。


キョン・ジオは憤慨して叫んだ。


「風邪だと。私が風邪だとおお!」


「ジオさん。みんながかかる風邪を、去勢された人のように苦痛に叫ぶ必要は……。」


「ジョジョさまーーー!。私が無能で、無能でえ。悪いドビー! 意地悪なドビー!」


「ジョヨンさんもそこまで絶望する必要は。」


「黙れっ! 無能なワンコめ! これも全部そっちがうちのジョジョ様を雪の中に突き落としたからじゃない!」


「そ、それは私ではないです。厳密に言えばテディという名の、ベアという名前の熊が犯した悪行です。もちろん不注意だったことは認めますが……!」


「いい。一人になりたいから、みんな塔から出て行ってください。」


「クッ、こんな状況で鼻声が可愛すぎると考えてしまう私は本当に救いようのないクズ……!」


「心の声が全部聞こえてますよ、ジョヨンさん。」


カタコト、ゴトゴト。


川の流れに沿って、馬車が安定して転がっていた。


数日早く来たから雪道に慣れた、ナ・ジョヨンのおかげだった。手際よく整備を終えると、ライトを浮かべて道を溶かした。


ずっと騒がしい御者席の二人。しかし、こちらはもう冗談を言う元気もない。


ジオは仰向けに馬車の奥に寝転んだ。額がズキズキした。


風邪だなんて、本当にありえない。


AA級ヒーラーの聖力が効かないことからしてありえないが、百歩譲って何かがこじれたとしても。


「なぜ私の呪文まで効かないんだ。」


聖力系列ほどの威力はないとしても、高位魔法使いらしく使える呪文を二つ三つは知っている。「キュア・クリティカル・ウーンズ」だとか、「再生の息吹」だとか。


ところが、全部効かなかった。不思議なことに。


「こうなると星位ではなく、私を弱体化したんじゃないか?」


まさか、チョンノダンジョンのように強制バランスパッチ? 最強キャラ逆差別? ジオは疑念を込めて手をパチパチさせた。


[職業スキル、5階級上位呪文 - 「星のカデンツァ(Cadenza of Stars)」]


無詠唱、ノーアクション。


魔法実現のためのいかなる準備や段階もなく、呪文が発動される。


文字通り技巧的なカデンツァ。真昼の馬車の中に星の光が華やかに散りばめられた。


走る馬たち、泳ぐイルカの群れなどなど。多彩に虚空を染める。


精霊魔法の一種として、邪悪な心を消し去り、味方の士気を高めるとか……。


色々仰々しいが、派手さの割に実がない見せかけ用の魔法だった。今のように試しに使ってみるのにちょうどいい。(キョン・ジオ基準)


「ふむ。魔力は無事なのに。」


「う、うわあ。」


「わあ……。」


感嘆にジオがちらりと振り返った。


馬車の隅、小さくうずくまって座っている子供たちが、こちらから目を離せずにいた。


連れて行かなければならないと、ナ・ジョヨンが強く主張して乗せておいて、絶対にうちのジョジョ様を邪魔するなと脅したせいで、あんなかわいそうな姿になっていた。


「ドビー、あいつは本当に狂ってるのか天使なのかわからない。」


「何見てんだ? 魔法使い初めて見たか?」


「はい。」


即答だ。ジオは少し気まずくなった。


「……記憶もないくせにどうしてわかる? 前に見たかもしれないじゃない。」


「そうだとしても、記憶にない過去に見たかもしれないけど、記憶できないからとりあえず今は初めて見ると言います、と答えると長すぎるじゃないですか。」


「……何だ、この予想外のタイミングでずかずか入ってくるエキストラの生意気さは?」


「J、こっちに来なさい。」


「ああ、どうして? 僕、あのキラキラをもっと見たいのに。」


Fが慌てて少年を後ろに引っ張った。


生意気な子供。名前は「J」というらしい。こいつめ。ジオは寝転んだまま足をぶらぶらさせた。おい。


「コピーした七人の小人たち。お前たち性格もだんだん同じになっていくって言ってたけど、違うじゃないか。あいつは生意気さがずば抜けてるのに。」


「あ、完全に同じになるわけではなくて、少しずつは違いがあります。Jが私たちの中でも特にそういう方で。」


ためらいながら付け加える。実は。


「一番、もう長く残っていないから……やりたいようにさせていることもあって。」


Fの言うとおり、Jは子供たちの中で一番幼く見えた。目分量で五、六歳くらい? うーん……。


「余命宣告されたやつに偉そうにしたら、サタンが友達になろうって言い出すだろうな。」


友達はかなり選んで付き合うジオが、そっと目から力を抜いた。


「そう……一生懸命生きて、うん。元気出して、来世では必ず良いところで生まれてくるんだぞ、約束だ!」


「何よ、あの姉さん、気分悪い。」


「J、J! 具合の悪い人じゃない、放っておいて!」


おやおや? その具合が悪いのが風邪のこと言ってるのか、本格的に泥仕合を始めようとした瞬間。


「ジョ、ジョジョ様! もしよろしければ、ちょっと出てきていただけませんか?」


ナ・ジョヨンの呼びかけだった。


いつの間にか馬車もかなり速度が遅くなっている。ジオは腕を伸ばした。


ぴゅっ。布をめくるとすぐに頬を打つ吹雪。そして……。


「めちゃくちゃだな。」


それ以上の感想は難しい。


薄氷の張った川の流れに沿って、遥か遠くに見える低い城壁、その前。


雪原のあちこちから立ち上る煙と、足の踏み場もないほどに埋め尽くされた死体。


「へえ。完全に絵に描いたような廃墟じゃないか。戦争でも起きたのか?」


「ジオさん。それよりあそこ……。」


慎重にペク・ドヒョンが指し示す方向。ジオの目が細められた。


パタパタ、破れた旗がはためく。


バサバサという音と共に着地する数百のカラスの群れ。白色の雪原が一瞬にして黒色に染まる。


死体を追いかける彼らが餌とする、この戦場でも最も多くの死が覆いかぶさっている場所……。


生存者はたった一人だった。


一抹の乱れもなく、しゃんと背筋を伸ばしたまま廃墟に立っている。


誰か確認したジオが、思わず失笑した。いや、まるで集まれ攻略隊かよ。


「ドラゴンボール探しでもないのに、何一つ一つ……。」


連合攻略隊総人員二十名。


〈黎明〉を除いた5大ギルドの優秀な人材が選抜されたが、人々の脳裏に記憶された名前はたった三つ。


一つは〈バビロン〉のキョン・ジロク。もう一つは〈D.I.〉の神聖、ナ・ジョヨン。


そして最後に……。


カアッー、カアッー!


カラスたちが鳴いた。吹雪の中で剣士が顔を上げる。


死の黒鳥たちの中で、一人孤高な白鶴(はっかく)


韓国ランキング4位


〈ヘタ〉の宗主、白鳥がそこにいた。


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