82話
* * *
ジオは真剣な顔でハンターイントラネットに接続した。
バベルネットワークが基本で提供するサービスの一つであるハントラネットは、虚空のポップアップウィンドウ状態ではなく、一般的な機械でも接続が可能だ。
まあ、コンピュータとか、iPad、携帯電話などなど。
徹底的に匿名が保障されるのも当然だったし、人間の文化のどこかでよく見て真似てくるバベルメイドらしく、利用するのもかなり楽だった。
ジオはキーボードを叩いた。ティモシー。
今日美容室に行くけどティモシーの髪型
ティモシー vs マッドドッグ vs ジョー
ティモシーの聖約星2人というのはマジ?国民詐欺じゃないの
ティモシーを見に空港に行ってきた後記(feat.チャン・イルヒョン局長)
ティモシーはジョーをなぜこんなに好きなの?
さすが意志の韓国人。
自分の気になることはあちこち聞かなきゃ気が済まないのが韓国人の種族特性じゃない?と思った。
ジオは軽快にクリックした。
[一般] ティモシーはジョーをなぜこんなに好きなの?
(匿名) │ 20xx. xx. xx.
いやマジかお前らこれ見た?(地下鉄広告写真)
何 、アイドルなの?最近江南駅の電光掲示板から行く先々でティモシーの顔が埋め尽くされてるんだけど、全部ジョーへのプロポーズじゃん
私たちが陛下を称賛するのは韓国人だから愛国心に酔ってふらふらしてるのは当然
でもこいつはアメリカ人が一体なぜこんなことしてるの?ジョーに千年分の借りでもあるのか?
コメント (+45) おすすめ 12 反対 1
- マジレスするとこいつのパスポートの色検索してみるべきだと思う 陛下を崇拝するのがまるで太極旗部隊のジョーオタレベル
- 愛国心に浸った状態で外国人に滅多に負けないけどティモシーはマジで認める ガチで「本物」っぽい
- 地下鉄に乗るたびに見るけど、最初は化粧品の広告だと思って見たらマジでビビった。こいつマジで何
- 私は正直ちょっと引いたわ,,寡黙なコンだと思ってたのに,,お騒がせコンだった
↳ - 私もティモシーのキャラ解釈失敗
↳ - ティモシー6年目のファンだけど、ティミー・リリーの性格は元々ああいう感じだよ。自分の地位が高いから記者会見とか重要な席でトーン&マナーを合わせているだけで。性格自体は限りなく明るいワンコ系だよ。好きなことや関心のあることに盲目的なタイプだし。
- アメリカで最近キングウィザードの人気がマジヤバいらしいけど、もしかしてそれが原因じゃないの
↳ - 何言ってんだよまるで子供じゃん
- 直接本人に聞いてみない限り誰も分からないだろう ジョーに聞いてみるとか
↳ - 陛下も知らないと思う
そうだ。お前が正解。
「マジで分かんない。」
「私も……。」
「……。」
「私もあなたのことマジで分からない。」
ジオがゆっくりと顔を上げた。頭の上に垂れ込めた、怒ったゴリラの影。
「さっき私があなたのこと何回呼んだか知ってる?」
「……知、知らない。」
「無断遅刻、無断欠勤して一週間ぶりに現れて、来るなりしてるのが……インターネット……?」
ギルド長直属の落下傘だからって、お前を放っておいたら私が寿命を全うできない。マ・サ感が本気で説教をしようと覚悟を決める瞬間。
「マ査監様!ちょっとこちらへ!」
「……後で話しましょう。」
急いで走っていくマゴリラ。
何だか雰囲気がすごく慌ただしい。ジオはくるりと椅子を回し、隣の席に滑り込んだ。
「おい、悲しみ。ギルドの雰囲気どうしたんだ?」
「みんな何だかどんよりしてて、まるであなたみたい。」
「そうでしょ……。私はいつもどんよりしてて、どこに行っても雰囲気を壊すし……生まれてこなければよかったのに……。」
「くだらないこと言ってないで説明して。」
もう悲しみのブルーパターンには騙されない。4月になってレベルアップしたキングジオは屈しなかった。
「だから……役に立たない脳なんかどうして持って生まれてきたのか……くだらないことばかり考えて……。」
「ごめん。」
私が間違っておりました……。
帰ってきたミセン、チャン・グレがひざまずいた。
悲しみ(本名:チェ・ソンヘ)は人生憂鬱歌4節まで歌ってから、元の会話に戻ってきた。
「どうやら……ギルド長様の復帰が遅れているから……。」
「商売一日二日やってるわけじゃないだろ?まるでバンビが塔に初めて入ったみたいだな。あいつ何か月も来ないこともあったのに。」
「でも……ジオさん。」
周りを確認した悲しみが声をひそめた。今回は韓国バベルの塔攻略史上最高の戦力じゃないですか……。
「魔の9区間とはいえ、うちのバビロンから……ヘタまで、5大ギルドのギルド長が2人も塔に入ったのに……。」
「ふん……笑わせる。」
「あの、ジオさんは……弟さんなのに心配じゃないんですか?」
ためらう声。平然としているジオが不思議そうな様子だった。ジオは頷いた。
「うん。全然。ちっとも。」
あのキョン・ジロクだぞ。他の誰でもなく、あのバンビ。
現在韓国、いや、もしかすると全世界を合わせても「一対一戦闘」でキョン・ジロクを打ち負かすことができる人はほとんどいないと言っていい。
それほど強いやつだった。
対人戦の王。戦闘の天才。
よっぽどの状況でない限り、自分の身一つ抜け出すのには何の問題もないだろう。
ジオは弟がどれほど喧嘩に天賦の才を持っているのか、またキョン・ジロクの聖約星がどれほど自分の鹿を執着的に大切にしているのかよく知っていた。
キョン・ジオとキョン・ジロクは秘密がない。
ジオが「ジョー」だという事実はキョン・グミも知っているが、それとは少し違った。
他人に言わないという聖約星についても互いに話しており、聖約星スキルや特性一つ一つまで知らないことはなかった。
キョン・ジロクは強い。そして……。
ジオは首にかけられた「イとの三戒命」に触れた。彼女にだけ見えるウィンドウが浮かび上がった。
[神聖なイとの三戒命]
[━ Second User: キョン・ジロク]
[位置: バベルの塔/韓国 | 状態: 若干疲労]
「ピンピンしてるじゃん、まあ。」
今日も異常なし。安全装置は正常に作動している。ジオの椅子が再びくるり、回った。
* * *
人生の苦い失敗
━ x月 xx日 ━
お時間のある時に一度ご連絡ください。お待ちしております。
あ、ちなみに「板橋の頼み」の件です
はあ、最近一体なぜこんなに頼んでくる人が多いんだ?
「朝鮮の浪人生がこんなに忙しくてもいいのか?みんな私が受験生だという自覚はあるのか?いつから大韓民国はこんなに受験生に寛大な国になったんだ、え?」
[あなたの聖約星、「運命を読む者」様がそう言いながら特に勉強しているわけでもないと書き込んだ後、慌てて削除します。]
[聖約星、「運命を読む者」様がバベルのやつマジふざけんなと虚空に八つ当たりしています。]
「全部見たぞ……。」
あのー。もしもし、お星様。
「誰とそんなに連絡を取っているんだ?」
「……え?おじさんを探したら本物のおじさんが来た。」
「何?」
片方の眉を少しひそめた虎が片腕を伸ばした。座っているジオを抱きかかえるようにして立たせる。
「道端に座るなって言ってるだろ。」
ふわっと香るシャワージェルの匂い。
ジオがじっと虎を見つめた。ネクタイのないシャツに濃い紺色のスーツ。
いつもと変わらないのに……。
何か言うことでもあるのかと虎が見てくる。ジオは首をぶんぶんと振った。別に。
「じゃあ来るまで立ってでもいろとでも言うのか。まるで罰でも受けてるみたいじゃないか。」
「近くのお前の好きなカフェに入ってろ。」
「もったいない。」
「少なくとも清潭で何十億も使ってた方が言うセリフじゃないだろ。いいから乗れ。」
指が鼻先を軽く叩く。幼い頃から続いてきた虎の癖だ。
「これやめてほしいんだけど。」
ジオがぶつぶつ言いながら角ばったジープに乗り込んだ。今日もやっぱり黒色だった。
道路を走り出した車が信号で止まる。
指でハンドルをトントン叩いていた虎が、いつものゆったりとした口調で呟いた。ヘタは。
「宗主が帰ってくるまで、うちの側で補助することになったと話した。」
気になるかと思って。虎がゆっくりと付け加えた。
「見ていると宗主代行が運営面でかなり不慣れなようだったからな。」
「うん、マジで。あいつは人の手を借りるのがマジで必要みたい。触るものみな壊すから。」
「親しくなったようだな。」
顎に手を当てたジオが考えた。親しくなったというより……。
「もう、『友達』だよ。」
虎の視線がちらりとジオの方へ向かった。
長生きはするもんだな。あのキョン・ジオの口から「セ」シリーズ以外の友達という言葉が出てくるのを見れるとは。
「お前も成長はするんだな。」
「え?人間なのに成長しないわけないじゃん?扱いがひどいな、このおじさん。」
自分が年を取らないからって他の人も年を取らないと思ってるのか。ぶつぶつ言うジオに虎が失笑した。
「それで?じゃあその『友達』の延長線?」
「何が?」
「月桂ホン氏。ホン・ゴヤ様と会うことになったんだって?」
ああ。
ジオが鼻の頭を掻いた。うんまあ、会うことになったよ。100%自分の意思ではないけど、あれこれと絡み合って。
「一種のギブアンドテイクだったというか。どんな人?ホン・ゴヤおばあさん。よく会ってたでしょ?」
虎は少し考えてから答えた。
「悪徳金持ち。」
「……え?」
「悪徳金持ち将軍、くらいかな。」
……え、急にマジで会いたくなくなってきたんだけど。
「キャンセルしようかな?急に風邪ひいたとか、家に不幸があったとか……。」
「『ジョー』が風邪ひいたって言ったら誰が信じるんだよ。感想は人それぞれだから一度直接会ってみろ。悪い人じゃないから。」
一言で先入観を植え付けておいて何言ってんだ?
そう思っていると、車の窓が開く。上に片腕をかけた虎の髪が揺れた。
ジオは違うところを見ながら聞いた。
「香水つけた?」
「ん?そんなわけないだろ。ハンターが何で。」
「グミはつけてたけど。」
「あいつはまだ子供だから。なぜ?」
「いや、匂いがちょっと違うから。」
タバコの匂いもしないし……。
元々敏感な方ではあったけど、最近やけに嗅覚がさらに敏感になった気がする。
「全部あの野郎のせいだ、黒幕キツネ野郎。」
「ああ。」
虎が指先で自分の前髪を整えた。濡れてはいないが、いつもより整っていない髪。
「シャワーを違うところで浴びてきたからな。」
「ほほう、大人の事情ですか?恋人?」
「いたらどうする?」
「え?いないって分かってるから聞くんでしょ。バカなの?」
そっけなくジオが呟いた。
どうせあんたは私のものじゃん。返ってくる否定は特になかった。
目的地が近づいてきた。滑らかにコーナーを曲がり車を止めながら虎が尋ねる。
「送り迎えまでしてやったんだから、何しに行くのかくらいは、そろそろ教えてくれてもいいだろ。」
その言葉にベルトを外そうとしていたジオが止まった。しばらく考える。
うーん、つまり。
「副業?」
「何?」
そういうことだ。
キョン・ジオはひょいと飛び降りた。ホテルの前に。




