ランカーのための正しい生活ガイド

80話

* * *

雪岳でキョン・ジオが発つ前日の午後。

パタン、タン。

「王手（おうて）です。」

「だからさっき青（チョン）が包（ポ）を取るべきだったんだ。そうなると思った。」

「いや、人の性格ってやつは。横から口出しは誰でもできるって？口は……。」

タバコの煙が濃く立ち込めるガラス温室。

木の将棋盤を一つ置いて、三々五々頭を寄せ合う人々。不満そうに将棋の駒を弾き出した老将が、キセルをトントンと叩いた。

「そこの副代表は、参戦されないのか？」

「私は将棋より、麻雀の方が好みです。種目を変えていただけるなら考えてもいいでしょう。」

片方のソファ。ゆったりと座っていた虎が、新聞を一枚めくりながら言った。

ソウル、ギルド〈銀獅子〉ロサ戦。

戦場から退いた老いた獅子たちの憩いの場。

もはや現役で はないが、昔も今も〈銀獅子〉の一つの軸、最も重く、堅固な軸を支えている獅子たちが集まる場所だった。

片腕のない獅子が舌打ちをした。

「坊や、それは中国の遊びじゃないか？それではいかん。国産を愛さねば、国産を。」

「将棋も起源をたどれば原産地は中国です。入ってきて変形しただけです。」

「なに！」

「ちっ、その国産ときたら。お前さんがいつも隣でそう言うから、うちのお嬢様も身土不二だ、興宣大院君だと言って外国のものを遠ざけるんじゃないか？英語の点数もその通りだし、このグローバル時代に。」

「お嬢様……。」

虎が人差し指で顎を撫でた。彼が困惑を感じる時に出る癖だった。

「何を言うか！朝鮮人が英語が少しできないからといって、それがどこか欠点なのか！うちの可愛い子は何も悪くない！」

「可愛い子……。」

「それでも、あの子を大学には行かせないと！高卒のままにしておくつもりか？今の時代はそうじゃないんだぞ。階級主義だのなんだの差別がどれほどひどいか、うちの犬っころが後で社会に出て傷ついたりしたらどうするんだ、まったく。」

「犬っころ……。」

どこまで行くんだ？虎がコーヒーを一口飲んだ。苦かった。

「あの人が……大学に行かせないわけないだろう！昔だったら、やむを得ず、領議政をしても五、六回はしたであろう国の宝に、ひどい言い草はないだろう！」

「……。」

「ちょっと、領議政とは。お嬢様がどこか足りなくて、つまらない官僚なんかやっているとでも言うのか？聞いてると少し不愉快だな。」

平然と座っていたかと思えば、乱入してくる人がもう一人追加。

盤面はさっきの将棋盤よりもさらに熱くなっていた。

領議政だ、大将軍だ、いや、王になる相だ、と激しい議論が続いたのもつかの間。

再び、片腕のない獅子が将棋盤をドン、と叩きつけた。

「要点は、物事の順序が間違っている、ということだ。言うなれば、今はどんな時代だと思っているんだ、外国のひょろひょろを学んでいる場合か、ということだ。あいつらが朝鮮語を学ぶべきだ。韓国は昔の韓国か？」

「ふむ。うちのお嬢様が変わるのではなく、世の中が先に変わるべきだ、と……。聞いてみると十分に一理ある話だ……。」

「話が出たついでに。副代表！教育部長官と約束を取り付けてもらえないか。今座っているやつは柳家（ユガ）のやつだったか？」

「柳家（ユガ）のやつは去年死んで、権家のやつが入り込んでいるはずだ。」

「若いのがもう死ぬとはどういうことだ？」

「若いとは。天寿を全うして老衰で死んだそうだ。まるで世の中に私たちのような老いぼけしかいないと思っているのか？」

「ええい……。柳家（ユガ）のやつは如才なくて話がよく通ってよかったのに。新しく来たやつはどこか仕事をしているのか？」

「これから見守らないと。」

「今回も外国語だのなんだの言って、うちの子を大学に落としてみろ、こいつら。ただでは済まさないぞ。」

タプコル公園だ。

権力を持った国粋主義の親ばか老人が集まるタプコル公園が、ここに現実化していた。

こんな人たちが隣で持ち上げて生きてきたのだから、あの子の性格がああなるのも無理はない。虎は新聞を置いた。

「教育の件は、できれば放っておいてください。」

「ん？なぜだ？」

「一人のために体制を覆すわけにはいきません。そもそも芸術家とは、公教育によく馴染まないものですが。ゴッホも、檀園（タヌォン）金弘道（キム・ホンド）も、大学を出て認められたわけではないでしょう？」

見ていると、こいつが一番ひどかった。

涼しい顔で檀園（タヌォン）金弘道（キム・ホンド）が墓から飛び出してくるようなでたらめを言っている彼に、秘書がそっと近づく。

「副代表様、ご連絡が入っておりますが。」

「……連絡？」

「はい。」

ところがそれが……。

さらに身を低めて囁く秘書。無表情で少し首を傾けて聞いていた虎の目元に、柔らかな気が宿る。

見ていないふりをしながら見ている老獅子たちが、互いに呟いた。お嬢様の知らせのようだ。

「……どこに行かれたのかと思えば。」

持ってこい、と軽く手招きする。

銀の盆の上にきれいに置かれた、ガラスのカナリア。基本メッセンジャー魔法だった。基本と言うにはあまりにも高級な運用だったが。

虎の人差し指の上にカナリアが降り立つ。

鳥がくちばしを開けてさえずった。指定した受信者にのみ聞こえる声が広がる。

伝達が終わるとすぐに光となって消えるカナリア。

じっと、自分の手の中に降りてくる光の粒子を見つめる。微笑みが広がった。深い愛情の深さが垣間見えたかと思えば、再び隠される。

虎は席を立った。

「一体何をしているのか。」

板橋から飛び立ち、雪岳から飛び立ち。

東にポンチョク、西にポンチョク。洪吉童（ホン・ギルドン）でもあるまいし。

本当にお忙しいことだ。毎日家にばかりいた子が、一体どうしたことか。

「そろそろ失礼します。」

「良い知らせか？顔色が良くなったな。」

「まあ、良いにしろ悪いにしろ、いつも待っている知らせですから。」

「それは知らせではなく人ではないか。」

椅子に掛けておいたスーツを虎は手に取った。

「代表には、うまく言っておいてください。私が十分に話し相手になってから帰ったと。」

「だから、駄々をこねる前に プレビューに訪ねてこいと言うんだ。忙しくなければお嬢様も連れてきてくれ。」

晩年に生きる楽しみがないと言って、老獅子たちがぼやいた。軽く言っても、軽い言葉ではないだろう。

失笑とともに虎はロサ戦を出た。

恐れ多くて入れず、外で待機していたスヘン・ウォンたちがその後ろについていく。

ガラスの床を 通り過ぎる靴の音が、幾重にも響き渡った。

「報告の順位が低くて先ほど申し上げられませんでしたが、センター側からも連絡が来ております。」

「それは後で。」

チイ、と虚空で火が燃え上がる。

魔術師用のタバコ。濃い煙を吐き出した虎が、後ろに視線を投げた。

「安致山（アン・チサン）は今何をしている？少し会いたいと伝えてくれ。」

* * *

雪岳、会合当日。

チェ・ダビデは服飾を整えた。

長い髪はきつく 結び、腰に布を巻いた。どんな模様も、色もない白衣（白衣）の韓服。〈ヘタ〉の制服だった。

もしかしたら着ることは、今日で最後になるかもしれない。

「大長老様……。」

ドアを出る直前、童子僧が濡れた声を出した。チェ・ダビデは笑った。

「これまで苦労かけたな、サム・メク。」

会合が開かれる本館へ行く道。

場所一つ一つを 通るるたびに、ここでの記憶がよぎっていった。

ポクソルが降り注いでいた日の最初の出会いから、フローリングに並んで座って庭を眺めていた最近の最後の記憶まで。

タアン。

両側に開くドア。

神獣、海泰の巨大な彫刻が天井に鎮座する場内。

真ん中の上席は空いている。そのすぐ隣、右側の席にチェ・ダビデが着席した。

「大長老……。」

「すまないことになった、5長老。」

「そのお言葉は？」

「ああ。手ぶらだ。」

5長老がぎゅっと目を閉じた。

チェ・ダビデを除けば宗主の最も近い側近なのだから、当然の反応だった。

そして彼らが座ってから 時間がたたないうちに、次々と入場する長老たちと元老たち。

皆で一緒に入ってくる姿に、会合の結果はわかりきっていた。

目が合うと3長老がにっこり笑って手を挙げる。

「あの白狐め……。」

悔しいが、今更どうしようもない。すべて無駄な話だ。

チェ・ダビデは目をそらした。

タアン、タン。

竹箆の音とともに鐘が鳴った。

会合の開始を知らせる音だった。

形式的な手続き、無意味な話がだらだらと続いた。そして。

「……それでは大長老が約束された条件のうち、一つも履行されなかったため、宗主代行職解任に関連した可否に移ります。」

場内に竹の盆が入ってきた。

音もなく酒杯が回った。

今、その杯が満たされたままであれば、可（カ）。

空の杯であれば否（プ）だった。

咳の音が響いた。小さな咳の音が大きく感じられるほど、場内は静まり返っていた。

確認いたします。落ち着いた声が響き。

「可（カ）。……可（カ）。」

目分量で見ても、空の杯はほとんどない。

天井のヘタを見つめながら、チェ・ダビデはゆっくりと目を閉じた。

記憶の中の最後、白鳥の声……。

「君が私ほどここに心を寄せられていないという事実、知っている。」

君にとってヘタとは、集団ではなく一人の名前なのだろう。

「それでも……ここは。」

この名前は、私と「君」のヘタだ。

「ヘタを頼む。」

「わかったよ、クソ、まだだ。」

チェ・ダビデは再び顔を上げた。

「少し待ってくれ。」

そう口を開いた瞬間だった。

「そう。待つとしよう。私の杯がないわけではないだろう？」

聞くに堪えないほど鋭く嗄れた声。ここにいる者なら誰もがその理由を知っている、栄光の勲章だった。

「悪夢の3月」当時、立ち上がったのは、ヘタたちだ。

その中で最も前に立って戦い、それに火魔が永久に首に傷跡を残した1世代「ハンター」。

〈ヘタ〉の大護法、ホン・ゴヤが嗄れた声で笑った。

「みんな知った顔だな。老いぼれが久しぶりの帰郷なので、長年の友人も同行した。」

その声に続いて、一列の足音が続く。

ヘタ人たちとは全く異なる歩き方。

見慣れないスーツを着た者たち、しかし胸元の記章だけは鮮明なほど見慣れたものだった。

「獅子」ウン・ソゴンの左腕、アン・チサンが丁重に挨拶をした。

「銀獅子から来ました。長年の恩、そして長年の兄弟に信義の返済のために。」

「兄弟の恩人はまた別の兄弟だ。銀獅子はいつも君たちヘタの隣にいるだろう。」

沈黙する場内、ホン・ゴヤが歩いて行き杯を持った。見せつけるかのようにそのまま空にした。

チェ・ダビデはその場面を見つめていた。

「会合は心配しないで。」

「友達の友達はまた別の友達。君も、ヘタも「友達」を見る番だから。」

声が聞こえるようだった。

「友達」。チェ・ダビデが声に出して笑った。不思議なことに、涙が出た。