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79話

* * *


ハゲの坊主に似た童子のファクト暴走。


目の前で機関銃のような唾を浴びせられていたチェ・ダビデも、センチメンタルぶってこっそり聞き耳を立てていたキョン・ジオも、皆一瞬ポカンとした。


キョン・ジオは思った。


「あいつ、今ヘタって言ったよな?」


ワルルマンションでもないのに〈ヘタ〉ですか?ここで?


いや、白鳥が塔に入ってからどれくらい経ったと?


まさか、一年や二年でもないのに、たった数週間でまともだったギルドが崩壊……?


「チェ・ダビデ……怖い……!」


歩くマイナスの手そのものだ。


童子がたった数分でまくしたてた事件の要約整理本を見ただけでも、仲間割れを含めた政治工作で無事だったものがない。


花札賭博に一度座れば、自分の家の権利書だけでなく、親戚の家の権利書まで売り払ってしまうほどの途方もないカモっぷり!


ジオは再び思った。


「あいつとは絶対に仲良くならないでおこう……。」


近づきもしないようにしないと。うん。


そう固く決意していた時だった。


急に沈んだ声でチェ・ダビデが呟いた。


「こんな時、ホンゴヤ大護法さえいてくれれば……。」


「そうですね。ホン大護法様が会合にいらっしゃって、大長老様の味方さえしてくだされば、退任だ何だ全部ひっくり返るのに……。」


チェ・ダビデよりもさらに沈んだ声で童子が呟いた。


「でも、家門のことで門派を離れた方を、どんな名分で連れてこられるんですか……?お孫さんの病状が深刻だと聞きましたが……。」


「私の臓器でもあげようか……?」


「どうかくだらないことばかり言わずに、抜刀斎様を誘惑してみる考えでもしてください……。退任無効の条件の一つだったじゃないですか。」


「亡くなった父のセリフまで出てきたのに、どうしてそんなことできるんだ……?」


「本当に口で身を滅ぼし、また敗北するタイプだな……。」


あいつらがどうこう言い続けていたが、もはやジオの耳には届かなかった。


渓谷から寺に戻る道、ある明け方。


ホン・ヘヤが言った言葉が回想のようにジオをかすめていった。


「とにかく、ウォルゲサで私のことをよく知っている理由もそれだよ。ウォルゲと私たちの家門は切っても切れない仲だから。ヘタともそうだし……。」


「ヘタ?」


「うん。ヘタが雪岳で保護している無脈、そこの陣法と結界を管理している当代の大護法が私たちの大叔母様なの。」


「ほほう。」


「今はタルヤの治療のためにずっと蔚山にいらっしゃるけど。はあ…… 'ジョー'さえ見つけられれば本当に……。」


「おお、寒くなってきた。早く入ろう。」


片方の耳で聞いて、片方の耳で聞き流していた会話。


ふむ、ヘタ関連で何かとよく聞く気がするな。


まあ……全部雪岳に集まっているから、もしかしたら当然か?


……とやり過ごしたが、今はわかる。


山の風が吹く。ジオの短髪がなびいた。


ロダンの考える人のポーズで座ったキョン・ジオがぼんやりと思った。


「カモは……私だった……!」


チェ・ダビデではない……。


この巨大な仕掛けに引っかかったのは、まさにキング・ジオだった。


これまであった全ての出来事がパノラマのように脳裏をよぎった。


ウォルゲサのソンウォルダンへの配属、やけに薄かった障子戸、月夜の散歩で出会ったホン・ヘヤ、108拝を避けて逃げ回って出会った童子、寺の食事の菜食虐待で久しぶりのバーベキューにホイホイ乗せられたこと、突然の慰霊祭で最後の最後に延長されたテンプルステイなどなど……。


全ての出来事を遡っていくと、太初に「あの僧侶」がいた。


「すぐにお帰りになりますか?遠いところからいらっしゃったのに、しばらく滞在されてはいかがですか?」


「ボヒョン……。」


ボヒョン僧侶……。


あなたは一体、どこまで見越してこの仕掛けを仕組んだのか……?


生仏の柔らかな微笑みが幻影のように衆生キョン・ジオを見下ろしているようだった。


[聖約星、「運命を読む者」様がまさか全部意図してやったわけじゃないだろうと、偶然が作用した部分も あるはずだと必死に精神勝利します。]


ジオは席から立ち上がった。


「あ、ハッ、や、あいつ立ち上がった。早く起きろ。おお!トジェ !もう帰るのか?」


バタバタとこちらに駆け寄ってくる〈ヘタ〉の二人のバカ間抜け。童子が顔色を窺いながらジオを見ている。


元々気の毒な印象だが、事情を知ってみるとさらに哀れだった。


「帰られるんですか?気持ちの整理は全部終わりましたか?」


「終わったよ。」


色々な意味で。


キョン・ジオは広大な山並みをぐるりと見渡した。


カスミソウ畑も、湖も相変わらず美しい。その真ん中に銀色で立っている追悼碑も。


風に乗ってこちらにパラパラと飛んでくる、ざらついた薄紫色の髪の毛さえも。


「本当に……長い3月だった。」


全ての人に心を開く必要はないが、また、あまりにも無関心である必要もないようだ。


それがジオが出した結論だった。


キョン・ジオはぼんやりと雪岳を見ながら呟いた。


「ダビデ。」


「……うん?」


「私はお前が純粋で間抜けだから好きなんだ。」


だから、できればこれからも変わらないでくれ、私の推し。


振り返ったチェ・ダビデは、怒るべきか、笑うべきかわからないという顔だ。


だからジオは笑った。


「私の名前は。」


「……。」


「キョン・ジオだ。ジオ。親しい人はジョーって略して呼ばれている。」


「……ああ。」


「チェ・ダビデ、私と友達になるか?」


ざわわわー。


カスミソウが揺れた。


昔から雪が多く、神の気が強いため、その名をつけて雪岳。


雪岳山の吹雪のように舞う花びらの中で、チェ・ダビデが頷いた。



うん。なる……。


その上に幼い頃、テレビの中で見たあの顔が重なる。


ジオは失笑しながら振り返った。


「会合は心配しないで。」


友達の友達はまた別の友達。


お前も、ヘタも「友達」の恩恵を受ける番だから。






* * *


日付が変わる間際の時刻。


ウォルゲで聖霊草が咲き始めた。


月の影が完全に満ちると同時に満開になる星輝。


この瞬間はいつ見ても全く慣れない。


ホン・ヘヤはぼんやりと腕を伸ばし、空中の星の光に触れてみた。


火星訓練所での一週間。


そこで過ごした短い期間は、これまでのホン・ヘヤの人生の前提を変えてしまった。


期待していた覚醒者等級はたったのE級が出て、少しも期待していなかった縁は意外な答えをくれたから。


ペク・ドヒョンが教えてくれたこの聖霊草は、ずっと不安定に生きてきた少年ホン・ヘヤを安定させた。


ホン・タルヤは発作が減り、ホン・ヘヤは余裕を見つけた。


執着的に追いかけていた「ジョー」の行方を手放しただけでも視野が変わった。


周りも振り返るようになり、内心心の中に抱いていた目的のない恨みも薄れた。


「ゆっくり行けばいい。」


ペク・ドヒョンは信じろと言った。


ただ信じて、時を待てと。


「方向を見失わなければ、道は、目的地に到達するようになっている。」


分厚い眼鏡の奥で黄金眼が光った。


そして……もしかしたら、その「時」というものが、彼が考えていたよりもはるかに近くに来ていたのかもしれない。


タッタッ。


岩に踏み出す軽い足取り。


数日の間に慣れたリズムだ。ホン・ヘヤは嬉しそうに顔を上げた。同時に悟った。


「ホン・ヘヤ、口に気をつけろ。」


「……兄さん?」


「お前はいったい、自分がどんな時代、どんな世界で生きていると思っているんだ?」


この狂った世界には、お前が想像もできない境地の強者たちが存在する。


「彼らの中の誰が、いつお前のそばにいるかもしれないということを常に肝に銘じて生きろ。」


「……。」


「その方にはきちんと謝罪するように。」


ペク・ドヒョンがそう、冷たく言った理由。


巨岩の上で小さな女が身をかがめた。座った姿勢でじっと彼を見下ろしている。


「何よ。」


「……。」


「言う前に気づいちゃったのね。」


わあ、あんた勘がいいわね。確かにあの子は目がいいみたいね。


キョン・ジオ、魔術師王ジョーが顎を突いた。


「ええ。私が「ジョー」よ。」


軽い声とは裏腹に影は重くなった。


存在感が、格がどんどん拡張する。いつの間にか渓谷を全部覆った影。


黒い龍の影だった。


ワールドランキング1位、国内ランキング1位。


現代と世界の名前、「魔術師王」ジョーが笑った。


「ペク・ドヒョンの頼みだけで動くには、私の身代金がちょっと割に合わないから。こちらの条件も聞いてくれたら、いや……「聞いてもらえたら」嬉しいんだけど。」


当然、するわよね?





* * *


雪岳を離れる朝。


ウォルゲの住職、ボヒョンが尋ねた。


「いかがでしたか、雪岳での四日間は?」


「ただ……人が思ったより多いということくらい。」


「もともと遠くから見れば土地が見えますが、近くで見れば人が見えるものです。」


「お坊様は何が見えましたか?」


如来と似ているが、人の顔で名僧が優しく微笑んだ。


「因、そして縁が見えました。」


「……。」


「全く、何を。カモでしょう。」


星、月、霧、そして山。


キョン・ジオはぼんやりと雪岳の全景を眺めてから振り返った。


二度と振り返らない足取りで自分の道を進んでいった。


3月の終わり、4月の始まりだった。







* * *


そして……。


数日ぶりにソウルに到着したジオを待っていたのは。


「なぜ、なぜ……一体なぜ!」


「マジか。」


「一体なぜ携帯電話の電源を切っておられるんですか!」


非常にやつれた顔色のチャン局長、チャン・イルヒョン局長だった。


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