78話
「どうして何も言わないんだ?」
キョンジオはじっとチェ・ダビデを見つめた。
「何か事情があるなら、大まかにでも教えてくれれば、聞いて気が変わるかもしれないだろ。」
「……え、まあ。」
「様子からすると、ただ事じゃないみたいだけど。」
初めて会ってからというもの、チェ・ダビデは決して自分から話を持ち出さない。
ギルドへの加入を勧めるのも、食べ物を調達してくるなどの、間接的で原始的な(無知な)方法以外には全くなかった。
正直、本当にちょっと……馬鹿みたいだった。
「こいつ、一体どうやって生きていくつもりなんだ?」
見ていると、もどかしくもなった。
キョンジオはこれまで、自分に頼み事をする人々を数えきれないほど見てきた。
中にはペク・ドヒョンのように正面からぶつかってくる善人もいれば、チャン・イルヒョンのように周囲から入ってくる政治家もいたし、ユン・ガンジェのようにすがりついてくる弱者もいた。
チェ・ダビデはそのどれにも当てはまらなかった。
彼らに劣らず、切実に助けを必要としている目をしているくせに。
気まずそうに、チェ・ダビデが答えた。
「なんだよ、その……お前が日陰にいたいご隠居上級者だって言うから?」
純粋で。
「同じ武道家として理解できないわけでもないから尊重してあげたかったけど、状況が私の思い通りにならないんだから仕方ないだろ?」
もどかしくて。
「かといって、意地っ張りの奴を無理やり折るのも嫌だし、ただ待ちながら……私なりのやり方で説得してるってわけ。」
率直に。
高くなった山の風に、チェ・ダビデの野獣のような髪がなびく。
チェ・ダビデがニヤリと笑った。
「それに、クソ、お前が言ったじゃないか。ヘタにお前が必要な理由は何なんだって。恥ずかしくて、その言葉を聞いてどうやって頼み込めるんだよ、この悪い女!」
砂漠で、街で、地獄で。
どん底を這いずり回りながら、必死に生きてきたチェ・ダビデには、プライドなどなかった。
彼女にプライドが生まれたのは、〈ヘタ〉の名を背負ってから。
千年間続いてきたその名前が、自分の惨めで見栄えのしない名前の前に付いた、まさにその瞬間からだった。
〈ヘタ〉のプライドがすなわち、チェ・ダビデのプライドだ。
だからチェ・ダビデは誰にも、どこにも助けを求める言葉を口にできなかった。
「ああ、もういい、いい!こんな話続けて何になるんだ?雰囲気ぶち壊すだけだ、クソ。」
パシッ!
ジオの背中を叩く手。
瞬間、よろめくジオをチェ・ダビデがあわわと支え直す。
ごめん、ごめん。力の加減ができなくて。
「この無知な……。」
「悪かったって。なあ、ドジェ、お前今日、雪岳山最後の日だろ?」
「どうして分かったの?」
「見れば分かるだろ。憂鬱そうな僧服を着てないじゃないか。行こう!見せたい場所がある。」
生まれつきの「異邦人」。
所属する門派内でさえ問題児扱いされるせいで、チェ・ダビデにも友達といえば、白鳥とちょろちょろ後ろをついてくる童子僧しかいなかった。
おかげで心の中は相変わらず複雑でも、ここ数日楽しかったことは否定できない。
手と手が絡み合う。
ジオは自分の手とは全く違う、ごつごつとした硬い感触を感じた。
チェ・ダビデが囁いた。笑みをたっぷり含ませて。
「しっかり掴まってろ、シスター。」
ヒュッ!
ヤッホー!ジオと童子僧を引っ張ったチェ・ダビデが、そのまま背を向けて雲の上に身を投げた。
落下、後ろに落ちていく。
風と雲の間。チェ・ダビデの笑い声が長く響いた。
「どうか。次からは一人で行ってください。」
「……クソ。私のセリフだ。」
坊主頭、お前、マジでいいこと言うな。
蒼白になったジオが口を塞いだ。ウッ。
[あなたの聖約星、「運命を読む者」様が、あの駄馬みたいな乱暴者が今、どこの大事な子猫ちゃんを連れてきて強制スカイダイビングさせてるんだと憤慨しています。]
[うちの可愛い子、大丈夫?すごく驚いたでしょう?オロオロしながら「運命を読む者」様がハンカチを心配そうに振っています。]
「あ、ソーリー!楽しくてつい!」
「こ、殺してやる……。」
「えー、でも早く着くからいいだろ、そうでしょ?大げさに騒ぐのはやめて、周りを見てみろよ。」
誰が大げさだって、ムカついて一言叫ぼうとしたジオは、ハッとした。
塞いでいた口を離すとすぐに、ふわっと香ってくる花の匂い。
「……。」
ザーッ。
伸びをしたチェ・ダビデが、浮かれた口調で呟いた。
「白鹿潭に負けてないだろ?」
山の中腹、雲の中の湖。それを取り囲む霞草畑。
風が吹くたびに、花びらが水面をかすめた。
「私が雪岳山で一番好きな場所だ。皮肉なもんだよな……あの忌まわしい悪夢の3月が、こんな絶景を残したなんて。」
「……悪夢の3月?」
「ああ。」
チェ・ダビデは指を立てて、湖の向こう側を指差した。
霞草畑の中央に、真っ白な碑石が鎮座していた。巨大だった。
「昔、悪夢の3月に開かれた雪岳山1級ゲート、そこがまさにここなんだ。」
「……。」
「死者の半分がここに埋められたらしい。うちのヘタで残った遺体を収容して、その護国英霊を称えて建てられた碑石がそれだ。」
凄惨だった戦場の痕跡は、もうどこにもなかった。
深く抉られた大地の傷には雪が降り、雨が溜まって湖となり、血に染まった土地には数百万本の花が咲き誇った。
ジオは碑石に向かって歩いて行った。
近くで見ると、白色ではなかった。
「銀色だ。」
「まあ、『銀獅子』だからな。」
追悼碑の下には、色とりどりの献花が置かれていた。青く真っ白な霞草畑の中で、ひどく浮いた色だった。
「もう何人か来たのか……?」
チェ・ダビデが呟いた。
「毎年4月1日頃に来るんだ。ちょうど人が雪岳山を訪れる時期だしな。」
「私もそれで来たの。」
「え?」
「パパ。うちのパパも、その3月に死んだの。」
「……ああ。」
ジオはぼんやりと碑石を見上げながら呟いた。
「月渓寺に位牌があって。それでこの山に来たの。」
びっしりと刻まれた名前。一番下には、彼らの仲間であるハンターたちが魔力で刻んだ文句が残っていた。
ジオはそこで、見慣れた文字と魔力を発見した。
[生榮死哀]
生きては栄光、死しては哀悼されん。
[安らかに]
ウン・ソゴンと虎の文字だった。二人とも、自分の性格通りの文句だった。
悲しむ老将と、その後ろでタバコを吸う男の姿が目に浮かぶようだ。
彼らもまた、毎年ここを訪れていたんだ……。
キョンジオはゆっくりと悟った。
幼いジオは、キョン・テソンの死後、ほとんどウン・ソゴンの邸宅で育った。
幼年期のほとんどをそこで過ごしたので、毎年3月、4月も同じだった。
その大邸宅の構成員は全員、銀獅子たち。
虎を含め、皆ウン・ソゴンと長い時間を共にした、獅子の最側近たちだった。今は現役を退いた……。
それなら彼らもまた、この悪夢の3月を経験したのだろう。また、幼い子供の前では一度もそれを見せず、毎年ここを訪れていたのだろう。
銀獅子たちも、ジオの家族たちも、皆そうやって。
キョンジオが無造作に捨ててきた時間の中に、数多くの悲しみが子供への配慮と共に隠されていた。
考え事が多くなった。ほんの少し。
湖畔に腰掛けたジオ。
その背後、少し離れた場所で〈ヘタ〉の二人が声を潜めてコソコソと話していた。
「……だから、いきなり何のお墓に連れてきて、こんな騒ぎを起こしてるんですか!」
「いや、クソ……。私がこの時点で『うちのパパも』なんてセリフが出てくるなんて想像もしてなかったんだよ、この野郎?それなりに頭を捻って、一番目の保養になる最高の場所に連れてきたのに、クソ、クソ。」
「聞こえてますよ……。雰囲気を作る暇も与えないんですね、あの人たちは。」
「知りませんよ。大長老様、本当にまともにできること一つもないくせに!だから目を覚ましたまま鼻を削ぎ取られるんですよ!」
「なんだと?」
「正直、前から本当に!三長老様が大長老様を嫌っていることなんて知らない人はいませんよ。何年もそうやってやられてきたくせに、たった数日優しくされただけでデレデレして!権限を全部譲ってしまって!」
「デ、デレデレとはなんだ!この野郎!あの白狐はその時は本当に優しかったんだ!」
「バカ……。」
「じゃあ、長老院と元老院から問い詰められた時、大長老様がやったことじゃないって言えばよかったじゃないですか!何も言えずに、やってないことまでうっかり全部認めてしまって!」
「う、ぐ、とにかく!権限を与えたのは私が与えたのは間違いないから、まあ!そ、そういうことだ!」
「政治工作に引っかかったカモそのもの……。」
「みんなが怒るから、見かけ倒しの多血質だからって、また一緒にカッとなって!解決すればいいじゃないかって、ありえない条件まで全部受け入れてしまって!」
「それは……!」
「それも宗主代行職の退任までかけて!宗主代行が何かの冗談ですか?」
「……。」
「ただでさえ派閥争いで門派もバラバラなのに!代行職まで奪われたら、内部の裏切り者たちは喜んで家門内の機密だの、スキルだのなんだの全部喜んで外部に持ち出すでしょう!」
「……。」
「それじゃあ宗主様が帰ってくる前にヘタは本当に崩壊してしまうんですよ!」
「……。」
「……。」
……え?




