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7話

バベルネットワーク


[おめでとうございます、韓国!]


[バベルの塔 ━ 38階クリア!]


[ギルド「黎明」が勝利の鐘を鳴らします。]


[国家 大韓民国 ━ バベルの塔39階が解禁されました。]


夜11時頃だった。


各自、その日のやることを終えていた人々が同時に顔を上げた。


何人かは窓際に近づき、遥か遠くの外を眺める。


微かな鐘の音。


ジオも目を覚ました。


塔から響き渡る鐘の音だった。




バベルの塔は、一つの階の最終関門に到達すると、その終わりに鐘が一つ現れる。


全ての試練を乗り越えた攻略隊がそれを鳴らす瞬間、次の階が開放され、攻略も完全に 終了されるのだった。




「あの時の、鐘を鳴らす時の手応えがマジでたまらないんだよな。」



ジオの弟、バンビはそれを究極のカタルシスと呼び、笑顔を浮かべていた。


いくら必死の生死線を彷徨い、どんな代償を払ったとしても。


死ぬ気で塔を登り続けるランカーたちは、すでにそこに中毒を受けているかもしれない。






バベルネットワーク


▷ ローカル ─ 大韓民国


▷ 国内ランカー1番チャンネル


| 3 |


アルファ: お疲れ様でした。ファン社長


| 8 |


ダビデ: マジでヤバイ奴...... これを一日でやってしまうとは


| 12 |


サンサン: 運が良かっただけです。私たちが途中で諦めて、立て続けに三回目の挑戦でしたから。残念ながら順位変動はないようですが。


| 6 |


夜食王:どこにいるんだクソガキ すぐに座標教えろや


| 4 |


白鳥: 皆も知っていると思うが、次は39階だ。30階台のラストなだけに難易度も極悪だろう。不必要な犠牲を防ぐため、前回の29階のように各ギルドの精鋭たちが集まってほしいものだ。


| 8 |


ダビデ: おい1位 見てるか? 今日、宣陵に来てたらしいけど、いつまで紙秘主義なんだよ マジで 。


| 1 |


ジョー: ㅇㅅㅇ


| 1 |


ジョー: 紙秘主義(x) 神秘主義(0)


| 4 |


白鳥: 紙ではなく神だ。



| 5 |


バンビ: ジョー様 今どこにいますか



チャンネルではいつも潜水してる、ジオだが、ダビデの言葉には時々現れて答えた。


なぜなら、チェ・ダビデはジオの一番のお気に入りだから。


見るたびに心が温かくなる。 心身の癒しになるとでも言おうか。




「やっぱり私くらいなら、勉強をしなかっただけで頭は悪くない方だよな。」



私たちみんなの自尊心のために、テレビなんかにはチェ・ダビデみたいな子たちだけが露出されるべきだと思う。


そうすればパク・スンヨも娘の明晰さを少しは理解するだろうに。







ブー。


ママの息子│010-7351-xxxx






━ x月xx日 ━


おい


おい おい


家に帰ってこないのか


マジでお前 今日、生きていけるのかよ。



ジオは横に寝返りを打った。


明かりの消えた家。 天井は低い。


ペク・ドヒョンの家は大学街に位置する分離型ワンルームだった。


大家の性格に似ていて、かなり綺麗だったが、悪臭の匂いがプンプンした。



正直意外。 キレイな顔をして苦労なんて全く知らなそうに見えるのに。


一つしかないマットレスを快く客に譲ったペク・ドヒョンは、台所の方に布団を敷いた。


後ろを向いて横になっている白いTシャツの上から肩甲骨が浮き出ている。


ジオは夜目が利いた。





「ちょっと遅い質問かもしれないけど。」


「......寝れませんか?」




「一人暮らし?」


「はい。」


「どうして?」


「ええと、兄弟はいなくて....... 子供の頃の事故で両親とも亡くしました。 中学校までは親戚の家で過ごし、その後はずっと一人暮らしです。」


「こうして一人で?」


「ええ、こうして一人で。」





ペク・ドヒョンが笑みを浮かべた声で答えた。 淡々としていた。


「じゃあ学校、いや、仕事かな?」


「人より早く社会生活を始めました。 事情があって数日前に辞めましたが。 それにしても、いきなり身元調査ですか?」


「知らない男の家なのに、ある程度は知っておかないと。」


「知らない女なのはこっちも同じなのに不公平ですね。 僕はあなたの名前も知らないのに。」





ジオが驚いて顔を上げた。


「え、私の名前知らないの?」


「知りません。「ジョー」...... そして、魔術師王。 ああ、来る途中で教えてくれた早生まれの20歳ということまで。 これが僕が知っている全てです。」




ふむ。


近くから聞こえた音にペク・ドヒョンがハッと目を開けた。 びっくりした。


いつの間にかジオが顎を突いて枕元から彼を見下ろしていた。


窓際の月明かりだけが薄暗い夜。


体を丸めて小さくうずくまっているジオは、まるで猫のようだった。


例えば...... 奇異なほどに、「人間」ではないかのようだった。


限りなく幼くも見え、また限りなく老獪にも見える。


月夜の下、人の目では読み取れない意味深な何か。


奇妙だった。


「知ってるふりめっちゃしてたのに。」


「......ああ。」


「回帰したんだって。 なんで知らないの?」


「それをどうやって?」





「このお兄さん、マジで何も知らないんだな。 私が何を見ているのかも知らずに名前を教えたのか?」


「......よくは分からないけど、似たような経験はしたことがあるから。」




会ったし。


名前を聞いたし。


彼が答えると、全て分かったかのように笑った。 隠していた顔を見せてくれるまでした。


その瞬間の笑顔があまりにも印象的で、どうしても忘れられない。


ペク・ドヒョンは生唾を飲み込んだ。




「近い.......」




起きたいのに起き上がれない。


横になっている彼の視線がジオの額から唇まで滑るようにかすめた。 ジオが失笑した。


「深い仲では全くなかったんだね。」


ペク・ドヒョンが答えた。


「そんな仲に...... なりたかったんです。」





でも、あまりにも遠かった。


いくら彼女が有名になり、神聖として崇められても。


そうなる前から、ずっとこの人は頂点にいた。 不変の王座の主人だった。


どうしても、届くことができなかった。


世界が終わる瞬間までも。


だから今のこの距離がペク・ドヒョンは実は信じられない。




「会話はたった一度。 その後は何度か遠くから見かけたのが全てです。 ......今日のことは、勝手なことをして申し訳ありませんでした。」


「ジョー。」


「......はい?」


「ジオ。」




チャンネルのニックネームは一度設定すると変更ができない。


それを知らずに黒歴史を積み重ねたランカーたちがたくさんいるが、ジオは幸いにもそうではなかった。





単純なことを好む性格らしく、名前さえも。


「ジオ。 私の名前。」


「......」


「だから、全く知らないわけでもない。」


だからそんな顔をするなって。


見てる人が変な気分になる、この2回目の人生を送ってる主人公様。






* * *




「マジかよ。」


「どうした?」


ギルド〈バビロン〉。


国内5大ギルドの一つで、メンバー全員が上位ランカーで構成された少数精鋭型ギルドだ。


最上位ランカー、バンビが幼いリーダーとしてチームを率いており。


純情派代表である彼のギルドらしく、バベルの塔攻略に狂った筋金入りの純情派たちの集まりとしても有名だった。




「どうしたって、うちの家の疫病神のせいだよ。」


「浪人中のお姉さんのこと?」


「恥ずかしいから小声で言ってくれ。 殺すぞ。」





〈バビロン〉の副ギルド長、12位ランカーのサ・セジョンが苦笑した。


「恥ずかしいことなんていくらでもあるだろ。 浪人がどうかしたか?」


ああ、なんで何度も浪人って言うんだ? バンビは神経質そうに舌打ちをした。 そして、真剣な口調で呟く。



「ジオのせいだけにするわけにもいかないんだ。 大学がおかしいんだよ。 勉強をしなかっただけで、あの子は生まれつき頭は悪くないのに。 もしかして入学不正とかそういうの?」


「......ああ、そうですか?」


「兄さんが調べてみてくれないか? 兄さんの家は財閥じゃないか。 大学街と闇のコネクションとかないのか?」




この歪んだシスコン野郎。


一日二日見ている光景でもない。 サ・セジョンは手慣れた様子で話題を元に戻した。


「それで、お前の姉さんがどうしたんだ?」


「、、、、、」


「何?」


「家出したんだ!」




このクソみたいな役立たずの猫。


毛を全部むしり取ってしまいたい。 マジで家出をしたのか? 外の世界がどれだけ危険か分かってないのか?


落ち着きなく 行ったり来たりと歩き回るバンビ。



会議の時間に合わせて入ってきたギルド員たちがその様子を見て、コソコソと噂をする。


なんだ、どうしたんだ? トイレに行きたいなら行けばいいのに、なんであんなにウロウロしてるんだ?






「リーダーどうしたんだ?」


「姉さんが家出したらしい。」


「あらら。 姉さんが家出することもあるだろ。 どれだけ息苦しいのか。 大韓民国の長女の苦労を知らないんだね。」



ジオがどんな人間なのか全く知らないギルド員のドミが同情して言った。


バンビは当然激怒して叫んだ。 おい、分かってから言えよ!






「カードも持たずに出て行ったんだぞ!」


「......?」


え?


無理論 無脈絡 無唐突なギルド長の急発進にギルド員たちが状態異常に陥った。


そんな周囲の反応を確認したバンビは、怒りがこみ上げてくるという表情だ。


胸を叩きながら一場演説を始めた。






「事態の深刻さが理解できないのか? 母さんがカードを停止させ、すっからかんで出て行ったんだぞ! ご飯も食べかけで、この寒い中、薄着のサンダル履きで!」



お前らサイコパスか?


同僚たちの非人間性に呆れ果て、バンビがくるりと後ろを向いた。


言いながらすでに頭の中では〈マッチ売りの浪人生ジオ〉が再生された後だった。




ドミは疑わしく慎重な口調で周囲に聞いた。





「あいつ今まさか泣いてる......?」


「マジでお前らに失望した......」


「マジで20歳のボスに仕えるのは大変だ。」





壁に手をつく20歳の部下を見ながらサ・セジョンが舌打ちをした。


カッとなって攻略の途中で塔を飛び出したり、会議の直前に雰囲気をぶち壊したり。


いくら感情の変化が激しい時期だとしても、ここまで来るとまだギルドが潰れていないのが不思議なくらいだ。


S級じゃなかったら、とっくに反乱を企てていたのに。 なんで怪物たちはみんな揃って人柄に問題があるんだ。




聖位、あなたたちの趣味はどうなってるんだと一度問い詰めてみたいものだ。



ハンター界の稀な常識人であるサ・セジョンは、物悲しく書類を整理した。





[バベルの塔39階攻略関連5大ギルド協力提案公文]


[ギルド バビロン ━ 「チュートリアル」関連戦力補強(新入部員募集)建議案]


ついに開かれた39階から、すぐそこに迫ったチュートリアルシーズンまで。


重大なイベントが目前に迫っていたが、〈バビロン〉の会議は今日もダメなようだった。






* * *


同じ時刻。


苦痛を受けている人がここにもう一人いる。




「........」


ペク・ドヒョンはたった二日間でダンジョン化した家の中の風景を見て沈黙した。


見ている人もいないのにテレビはつけっぱなし。


何重にも重なったアイスクリームの空き容器、食べかけのジュースのコップと菓子くず、乾ききらないままくちゃくちゃになっているタオル......


何よりもあの盛り上がっている布団の山。


ヘッドホンをつけたまま熱心にキーボードを叩く小さな後頭部が左右に揺れている。




ヤップ、ヤップ! 口で効果音まで出している。






トスン。


ペク・ドヒョンの両手からテイクアウトしたチキンとアイスクリームの袋が落下した。




「あ、来たの? 今回はハーゲンダッツで間違いない? 前回みたいなアイスを買ってきたら、次の電車はミンチ行き、ミンチ行きです。」


チョロチョロと走ってきたジョーが袋を漁り、またチョロチョロと走って行った。


寸分違わず元の状態、元の位置に。







「......世話をする、ってのは元々こんなに大変だったのか......?」


[特性、「いいように使われる執事」が追加されます! ファイティング!]


天国にいらっしゃるお父さん、お母さん。


私、ペク・ドヒョン、今年で25歳、人生2回目。






一瞬の選択で取り返しのつかない育児地獄の扉を開けてしまったようです。


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