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67話

* * *


「今日だ……!」


今日が「約束」された日だった。


マヌミッション研究センターのセンター長は、慌てて廊下を駆け抜けた。


隔離室と低温倉庫、人のいない中央管制室をすべて通り過ぎ、自分の個人研究室に入った。


セキュリティシステムが作動した外では、非常警報灯が鳴り響いている。録音された機械音が連続して侵入者警報を知らせた。


センター長は肩を震わせて笑った。


この程度はすべて予想していた範囲内だ。


協会だろうと、国の犬どもだろうと。


匂いを嗅ぎつけて追いかけてくる者などいくらでもいるだろう。もちろん、予想していたよりやや早いが……。


「遅いぞ」


狂ったように笑いが出た。


いや、実際は本当に狂っているのかもしれない。彼はクスクス笑いながら金庫を開けた。


ガタガタ震える腕によって落ちてくる書類の山。センター長は悪態をつきながらしゃがみ込み、それらをかき集めた。


過去6年間の研究資料。


彼の人生すべてが込められた宝物だった。


「長かった。本当に長い時間がかかった……」


最初の始まりは取るに足らない、ギルドごとにいくらでもいる補助研究チームの一介の研究員に過ぎなかったが、今は違う。


今日の彼は革命家だった。


このじり貧な世の中に革新的な風、「解放」を呼び起こす革命家。


最も古い文書綴り、最初の研究日誌を拾い上げたセンター長はハッとした。じっとそのファイルを見つめながらつぶやく。


「ウィソや、ユン・ウィソ。うちのいい子、ウィソ」


「この間抜け野郎、ありがとう」


もし高校生のユン・ウィソが奴隷契約で〈インバイブ〉に縛られていなかったら。


平凡なテイマーだと思っていたユン・ウィソが勝手に成長して妖精竜と契約していなかったら。


だから妖精竜の血を薬物化できるという端緒を、一介の研究員だった彼が発見していなかったら。


彼は今ここにいなかっただろう。


もちろん、容易な道ではなかった。


ユン・ウィソを屈服させることから、研究を持続するまで、簡単なことは一つもなかった。


薬物研究は国の厳重な管理下にあり、ギルド内部の説得さえ難しかったのだから……。


「私の話を聞いてください、ギルド長様!」


「おい、市場にいくらでもあるのが覚醒剤だ。ダンジョンからハンターたちが毎日持ち帰るのがバベル製覚醒ポーションだというのに。ところが工場製?一体どんな頭のおかしいやつが求めるんだ。メリットがない。もうやめろ」


「それらとは次元が違います!これは完全に苦痛を忘れさせます。人類という種族の限界が、足かせが外れることなのです!完成さえすれば、これは市場の、いや、時代の革命になるでしょう!」


「狂ったな……。荒唐無稽な話である上、たとえそれが本当だとしても、それは麻薬と変わらないじゃないか。正気か?」


このままむなしく終わるのか?


本当にこうして行き詰まるのかと彼が挫折しかけた頃。


反転のきっかけは、思いがけず訪れた。


突然、一夜にして国民の逆賊になったギルド。


没落の道を歩み始めたことが、彼にとってはむしろ転禍為福の機会として作用した。


荒唐無稽な話だとか、正気ではないとか。


偽善ぶって反対していた上層部も、結局彼の研究にギルドの死活がかかっていることを悟り、全面的な支援を始めたのだった。


そうしてギルド〈黎明〉、巨大ギルドの傘下に入ることになり、顔色をうかがうため、ひっそりと水面下に身を潜めることにはなったが……。


何であれ、研究の進捗がないことよりは苦痛ではなかった。


「ちくしょう、一体なぜうまくいかないんだ……?」


「お疲れのようですね。何かお悩みでもおありですか?」


よく行く居酒屋の、初めて見る美男子だった。


まるで魔法にでもかけられたかのようだった。初めて会う仲であるにもかかわらず、一抹の警戒心さえ抱かなかった。


むしろ、とても懐かしい人に久しぶりに会ったかのように……。


誰にも言ったことのなかった悩み事が、すらすらと口から出てきた。彼の秘密の研究に関することまでも。


男は笑った。美しい狐の笑みで。


「その悩み、私が解決できるかもしれませんよ」


結局、妖精竜の「高潔さ」が問題だと言った。


純真な幻獣種によくあるリミットと変わらないから、ただ「壊して」解放してやればいいのではないか、と囁きながら。


彼はテイマーの召喚獣が逆召喚されない方法を教えた。


自分の世界に帰れない妖精竜を地下に縛り付けておくのは、とても簡単なことだった。


その後も悩みが生じるたびに彼を訪ね、そのたびに彼はとても簡単に答えを出してくれた。


そうだ。


まるで「神」のように。


「私は神に会ったんだ。神の使者に会ったんだ!」


結局、このすべての道は神が私に下した使命。


私によって、もはや人類は苦痛を受ける必要はない。この意味もなく情けない闘争から解放されるだろう。


解放。


そうだ、これは「解放」だ。


クフフ。


センター長はすすり泣くように笑った。込み上げてくる戦慄を抑えることができなかった。


「新時代だ!私が、私がやり遂げた!私の手で人類に自由をプレゼント……!」


「アホんだら、何言うとんじゃ?」


バサッー!


舞い散る紙切れ。ついさっきまでセンター長が抱きしめていた資料だった。


獣が食いちぎったかのようにバラバラに引き裂かれて舞い散る。そして、あっという間にひっくり返る視界。


「があああ!」


倒れたセンター長が悲鳴を上げた。なめらかな革靴が彼の手の甲を踏みつけていた。


冷たい声が背中に降りかかる。


「黙れ。誰に向かって大声を出してるんだ?」


「シーッ。優しくしろよ、セム」


「うぎゃああああ!」


「うるさいぞ、コラ。耳が聞こえなくなるわ。静かにしろ。静かに。ここは会社じゃないか、会社」


ポン、ポン。


センター長の頬を蹴る派手で騒がしい色のスニーカー。


スニーカーの持ち主が膝を曲げて座った。


口笛を吹きながら床の書類綴りを拾い上げ、ざっと目を通す手。センター長は震える目で彼を見上げた。


「うわあ。このクソッタレどもめ。よくもまあ、こんな可愛いことをしていたんだな」


「……え、」


「どこぞの誰の許可を得て?」


職業柄、いくらマスコミ露出を避ける人でも、見間違えるはずがなかった。それもそのはず、彼は。


「ファン・ホン……!」


傘下ギルドの実質的なオーナー。


〈黎明〉のギルド長、ファン・ホンがニヤリと笑った。


「ああ。誰が許可したんだ?こんな悪ふざけ、俺の縄張りで」


センター長は答えなかった。ただ、震えるばかりだ。


まあ、どうせ答えを求めての質問でもなかった。


よっこらしょ。ファン・ホンは腰を伸ばして立ち上がった。


ポケットからガムを取り出し、包装を剥がす。疲れた、糖分が足りなくて死にそうだ、と肩をぐいぐい揺らしながら。


部下たちがウナ・セムの足元からセンター長を荒々しく起こした。


スーツの裾をパタパタとはたくウナ・セムが、乾いた口調で告げる。


「東灘倉庫の品物はすべて回収して処理しました」


「そうか」


「ところが、倉庫の連中の話では、センターの方でも似たような動きがあったとか……。我々以外にも気づいた者がいたようです。通報が入ったみたいです」


「へえ……。おい、ウナ・セムよ。これは一体何の恥さらしだ?ちょっとまずくないか?こっちは何年も付き合っていても今頃気づいたんじゃないか?」


「申し訳ありません、ヘッド」


ファン・ホンが眉間にしわを寄せた。


表に出さなくても、彼は今かなり機嫌が悪い。何か怪しい気配がしたので、39階攻略にもわざと人員を割かなかったのだが……。


妙な臭いが本当に臭くて鼻につくとは。


「麻薬か」


尻尾をつかんだという知らせを聞くやいなや、すぐに釜山から駆けつけた道だった。


法と不法の境界線を綱渡りのように生きる彼らでも、それなりのルールはあるもの。


裏社会でも麻薬は第一の禁忌だった。


「大韓民国は麻薬清浄国じゃないか?しっかり頼むぞ。こんなことでは、俺がブルーハウスに行くとき、どんな顔で大統領と向かい合って飯を食えばいいんだ?」


「はい……」


「俺が恥ずかしくて生きていけない、本当に」


「わかりました……」


ぶつぶつ言い始めるヘッドを、ウナ・セムがまた始まったな、という表情で見つめるその時。




ゴゴゴゴーン!



パサッ、ひびが入る室内。


ファン・ホンとウナ・セムが同時に顔を見合わせた。


建物全体を揺るがす響き。外部ではない。


これは明らかに彼らの足元、地下から上がってきた振動だった。


「ク、クフフ……」


一人だけ反応したのは、隅のセンター長だった。


ウナ・セムが近づき、その頬を強く掴んだ。


「お前、何か知っているな?言え」


「間抜けな奴ら……誰がバカだ?」


ついに「約束」の時が到来した。


すでに同志たちは自由の神薬を飲み、「門」に向かって走り出したのはずいぶん前。


それも知らずにふざけているとは。


割れた眼鏡の向こうで、センター長の目がギラギラと光った。どうしても笑わずにはいられなかった。


「遅いぞ、お前らも、あいつらも……!」


遅れて駆けつけたこの愚かな者たちは、すべて「解放」時代の開幕を祝う生贄になるだろう。




* * *


そして……。


火が消えないことから、かつて夜のイカ釣り船とも呼ばれた都市。


板橋テクノバレー。


そのビル群の真ん中の夜空に、巨大な竜の咆哮が響き渡った。






バベルネットワーク


[下位ローカルチャンネルのお知らせ]


[━ゲートオープン]


[城南板橋┃推定レベル:Checking…….]


[ローカルチャンネルのセキュリティレベルが低いです。ご注意ください。]


[下位ローカルチャンネルのファイアウォールのセキュリティレベルが低いです。外部ウイルス感染の危険があります。ご注意ください!]


[警告:悪性ウイルス検出]


[外部からテラフォーミングを試行中です。]


[Warning!Warning!Warning!]


[ローカルサーバー━国家大韓民国]


[城南板橋┃推定レベル:Error]


[危険!悪性コード、《魔界化》が進行します。]


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