57話
* * *
雪岳山の奥深く。
霧が龍の雲のように稜線にかかり、フクロウの鳴き声が一つ二つ聞こえ始める時刻。
「……ロ様!大長老様!」
「あー……クソガキ、マジでうるせえ。」
「酷い……。」
「何が酷いのさ?どこで火鉢でも拾ってきて茹でて食ったのか。」
「……悪口に使う慣用句は本当に日に日に増しますね。基礎書き取りはまだ30点も取れないくせに。」
「何だとコラ?」
「あ、知りません!ちょっと起きてください!伝書鳩が来たって言うんですよ!」
背伸びをして大声で叫ぶ童子。
まるで壁のような巨岩。
その上、雑誌を顔に被せて横になっている人影に向かってだった。
両手を合わせた叫びが谷にこだまするように響いた。
それでも山は山であり、水は水である。ぐったりと伸びて死体のように微動だにしない影。
雑誌に押された呟きが続いた。
「伝書鳩だか何だか、知るか。ファッキンクソ。消えろ、クソくらえ……クソみたいな貧乏くじ人生……」
「バビロンから来たって言うんですよ!」
「……何?」
雑誌をぺいっと払いのける手。
コスモポリタン3月号が遥か遠くに転がり落ちた。
「どこに?」
「バ、ビ、ロ、ンですよ!」
「……この良心も腐った、汚くてみすぼらしい金持ち、いや、クソ、魔石スプーン野郎どもが、ここがどれだけ安全な場所だと思って、よくもまあ!」
むっくりと起き上がったチェ・ダビデが、ここ数日間の習慣になった獅子吼をソウル方向に向けて放った。
「そんなに!全部持って行かなきゃ気が済まなかったのかああ!」
「また始まった……。早く降りてきてください!宗主様がお探し……!」
ヒュッ。パサッ。
「……だそうです。」
約400メートルの高さの巨岩。
そこをまるで花壇の階段を下りるように着地した怪物が、アードゥドゥと老いた音を立てて腰を叩いた。
「白鳥の頭が私を探してる?」
「はい。」
「だったらそれを先に言えよ、この間抜け野郎。」
神経質そうに頭を掻きむしる手。
最近新しく脱色したという薄紫色の髪が、おかげでボサボサから大ボサボサになった。
「色んな意味で自然人みたいな人……」
僧服をあんなにヤンキーみたいに着こなせる人も、世の中にこの女だけだろう。
童子のけしからん考えを読んだかのように、ぽんと尻を蹴る足。
「何してるの?心の中でまた私の悪口言ってたでしょ?」
「い、いえ。」
フウ、フウ。
長く響くフクロウの鳴き声。にやにや笑っていたチェ・ダビデが、さっと後ろを振り返った。
「フクロウの鳴き声がうるさいと、ろくなことが起こらないんだよな。」
「……行くぞ。白鳥はどこにいる?」
「修練館にいらっしゃいます。」
「へえ。当然そうだろうな。」
チェ・ダビデは鼻で笑い、風の流れに身を任せた。本館まで行くにはそれで十分だったから。
「おい。おい。しっかりしろ。」
「うう。私は置いて行ってください……。」
乗り物酔いでよろめく童子。
背中をばしっと叩いてやったチェ・ダビデが、ずんずん先に歩いて行った。
滝の音と霧が絶妙な雲の中の霊山。
一般人は立ち入りが不可能な禁地。三国時代から続いてきた結界と陣法で隠された場所。
韓半島武脈の継承。
ギルド〈ヘタ〉
大長老を見た門員たちが黙礼して道を開けた。
「鳥頭が私を探してたって?」
「大長老、宗主をそのようにお呼びにならないでくださいと何度……」
「ああ。小言ストップ。当の本人は何も言ってないのに、なんでお前らが騒ぐんだ?」
こいつらに話しかけた私がバカだった。チェ・ダビデはむかつきながら直進した。
敷居をいくつか越えると、ある瞬間押し寄せてくる蘭の香り。
眉間が溶けるように和らいだ。
「やあ、白鳥頭。白鳥や、白鳥や。」
円木造りの床の中央。
正座で黙想中の白鳥。
一枚の墨絵のようだ。
チェ・ダビデは静かに少し離れた場所に座って待った。数分後、落ち着いた声が響いた。
「ダビデ。」
「何。」
「気分はもう晴れたか?」
奥ゆかしい外見とは相反する低音。
しかし、あの女が座っているその重い席とはよく似合っている。
「私たちと縁のない者だっただけだ。些細な縁にまで心をすり減らす必要はない。」
「……分かってる。」
「分かっていればいい。」
〈ヘタ〉の主人、白鳥が静かにまぶたを持ち上げた。
「鹿の方から伝書鳩が来たそうだ。会同の日程を変更すると、明日13時に。」
「ふうん。」
「無礼な通告ではあるが、大きく問題になる日程ではない。お前さえ同意するなら、一緒に行ってみようかと思うが。」
「へえ、マジかよ。おい、この白鳥頭。もしかして私がそいつらに会いたくなくて行かないって言うんじゃないかと思って、さっきあんなに慰めたのか?」
「否定はできないな。」
「マジかよクソ、この可愛いクソ。」
「言葉に気をつけろ。」
「分かった、分かった。」
足を伸ばして座ったチェ・ダビデが、けらけら笑いながら頷いた。そりゃ、行かないと。行かないとね。
「針に行くのに糸が行かないわけにはいかないでしょ。」
「針じゃなくて糸だ。」
「黙れ。」
ギルド〈ヘタ〉。
会議への参加確定。
* * *
「安全特区内の自宅提供に、ソンジン本社キャリア採用及び家族保護プログラム支援……これが、全部本当ですか?」
「契約書に嘘を書いて入れるわけないでしょう。」
「契約金自体もすごいのに……」
ソウル某ホテル、スカイラウンジ。
ミシュラン三つ星の韓定食から始まり、典型的なコースだった。片側ではクラシックの旋律が続いていた。
流れてくるこの曲まで、全て繊細に計算されたものだった。
今、あの家族が見入っている契約書に刻まれる署名一度のために。
ジョン・ギルガオンは柔らかく言葉を続けた。
「それだけの価値のある人材ですから。私も結局は商売人なので、理由のない投資はしません。」
「うちの子がそれほどですか?等級が高いとは言われていますが、こんなに平凡なのに……。私は正直、お金とかよりも、子供が危険にならないか心配なんです。戦闘系でもないじゃないですか。」
「お母さん。」
「黙ってなさい、あんたは。」
「それなら尚更、こちらと契約なさるべきです。」
のんびりとした笑顔。
成功した有名人の笑顔には、自然な力がある。
そしてそれが世界的に指折りの強者なら、倍以上だ。
「大学やチームを組んで自分たちだけで臨機応変に、攻撃的に動いていく他のギルドとは、私たちは違います。例えるなら、D.I.はギルドのような『会社』です、お母様。」
「……」
「体系的な協業。それが私たちの性格です。」
「……」
「そして娘さんはご存知のようですが、お二人はよくご存知ないようなのでご説明しますと、D.I.はディフェンス・アンド・イノベーションの略です。」
防御と革新。
「韓国で私たちより安全で、安定的なギルドはないと、あえて自負して申し上げることができますね。」
ピン。
エレベーターの前。
追いかけてくるだろうと思っていた。
ジョン・ギルガオンは手首の時計からゆっくりと視線を離した。
「理事、私が本当に、本当に……」
「聞いていますよ。」
「……私が本当にそれだけの価値があるんでしょうか?等級がなぜこんなに出たのか分からないんですが、私は本当に……」
「ナ・ジョヨンさん。」
スーツの中にシャツよりもTシャツを好んで着る男。
ハンターよりも芸能人が似合うと言われ続けてきた、現大韓民国のランキング3位。
ポケットに手を突っ込んだまま、ジョン・ギルガオンはナ・ジョヨンを見下ろした。
「他人が言う戯言は、聞かないでください。」
「……」
「成人ならファクトを基に計算して判断しないと。自分自身に関しては特に。」
「……」
「ナ・ジョヨンさんに関するファクト、分からなければ私が言ってあげましょうか?」
一つ。韓国で現れたヒーラーの歴代最高等級はAA級だ。
二つ。現役で活動しているAA級ヒーラーは、昨日まではいなかった。したがって。
「三つ。ナ・ジョヨンは今、現役唯一のAA級ヒーラーだ。」
「あ……」
「聖女、神医、許海公主……世界的なヒーラーが大勢いるのに、ハンター宗主国というこの地には、これまでネームドヒーラーが一人もいませんでした。」
「……」
「そろそろ出てきてもいい頃だと思いませんか?」
私はそう思うけど。
ふっと笑ったジョン・ギルガオンが、エレベーターの中に足を踏み入れた。
「まもなく39階攻略が始まります。経験を積むには最高の舞台でしょう。明日はそのための5大ギルド会議議が開かれる予定ですが……」
「……」
「明日、ご自宅までお迎えに行けばよろしいでしょうか?」
……
微かな肯定だったが、ハイランカーの目にははっきりと見えた。
そのまま閉まるエレベーターのドア。
降りてきたホテルのロビーには、彼の唯一の秘書がジョン・ギルガオンを待っていた。
ジョン・ギルガオンは少し眉をひそめた。
「成功したかどうか聞かないのか?上司を一人で送り込んでおいて。」
「理事ならきっとうまくやられると思っていました。」
「大企業の理事にもなって、一人でいたくないんだけど……」
「あら、ご冗談を、私が人見知りするのにどうしろと?他の秘書を探すか。そして厳密に言えば大企業ではなく、大企業系列会社でしょう。さりげなく持ち上げないでください。」
「ビビアン、私と話す時はせめて私を見ながら話してくれないか?」
「無駄にイケメンだからプレッシャーなんです。」
「10年以上一緒に働いた上司に、まだ人見知りするなんてありえるか?ただのチャット中毒なんだ、あなたは。」
文句を言ってみても、相変わらず片手には携帯電話、片方では虚空のチャットウィンドウばかりちらちら。
ビビアン・ウエストウッドを愛するマチルダヘアカットのビビアン・キム。現韓国ランキング21位。
バベルのニックネームは明日免許更新。
「ところで、あなたはいつまでチャンネルで私のことを知らないふりをするつもりなの?」
「職場の同僚とチャットルームでまで会うなんて想像してみてください。どれだけ恐ろしいですか?アルファ様はただアルファ様でいてください。」
「はあ……」
夜の空気を吸い込みながら、ジョン・ギルガオンはため息をついた。滑るように車が彼らの前に止まる。
ドアを開けると、まず軽やかに乗り込むビビアン。
続いて乗り込みながら、ジョン・ギルガオンが軽く言及した。
「明日はこちらの座席は三つだと連絡しておいて。」
「やっぱりうまくやられると思っていました。」
「口だけは達者だな……」
ギルド〈D.I.〉
会議への参加確定。




