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53話

「お前、コナンか?」


行く先々で事件を起こして回るのか? アルバイトの面接ですら、こんなに平穏じゃないなんて!


「不思議と、やけに騒がしいと思ったら、必ずお前だ、このろくでなし! お前がどうしてここにいるんだ?」


矢継ぎ早に降り注ぐ小言の爆撃。


休むことなくリズミカルに、そして面白おかしく畳みかけるのは、一日や二日やった腕前ではなかった。


ポップコーンを食べるような気持ちで、〈バビロン〉のギルドメンバーたちは、タガが外れたギルド長と彼の姉だという人を見物していた。


「お前、来い!」 


まるでドラマに出てくる財閥の御曹司のように、勢いよく乗り込んで連れ出した14階。


指を突きつけ、顔を真っ赤にして怒るキョン・ジロクとは対照的に、とても穏やかな表情の聞き手。


「チベットスナギツネだ」


「チベットスナギツネみたいだ。ほとんど境地に達しているぞ、あれ」


今回の公募で採用するデスク職は、彼の直属ではあるけれど。それに、デスク職にしては驚くほどのハイスペックではあるけれど。


最終面接が終わる前に、このギルドのオーナー、キョン・ジロクにすぐに情報が伝わったのは、タイミングの妙と言ってもいいだろう。


「何がそんなに面白いんですか? 皆さん集まって」


「ああ、ドミ様。そうではなくて、今、下の階が大騒ぎになっているんですよ」


「何の騒ぎ?」


「今日、秘書チームの面接でしょう。これを見てください。今上がってきた履歴書のコピーなんですけど」


差し出された履歴書を、ドミは好奇心いっぱいに眺めた。どこを見ようか。おお。おお、B級? 名前は……


「え?」


「どうされました?」


「いや、ちょっと待ってください。この名前……」


「ああ、苗字ですか? そういえば、ボスと同じ苗字ですね。珍しい苗字だと思いますが、偶然にしては珍しいですね。さすがドミ様の観察眼。私たちは今まで等級の話ばかりしていました」


いやいや。偶然にしては珍しいどころの話じゃない。


ピーナッツを剥いていたドミの手が止まった。記憶回路がパタパタと回転する。ある日の会話だった。


「キョン・ジオは、何も考えずに生きているようでも、家族のことはそれなりに考えているほうだ」


「姉さんの名前はジオだったのか」




……大事件だ!


ドミはすぐにボスルームに駆け込んだ。


「それで? あの人が本当にリーダーの姉さんだって?」


「想像していたイメージとはかなり違うな」


「たった11ヶ月しか違って生まれてないって言ってなかったか? 似ていてもおかしくないのに、全然似てない」


「そうだね。弟は退廃的なシカなのに、姉さんは……子猫ちゃんだ。わあ、カテゴリーが全然違う」


「口を慎めよ。シスコンに聞かれるぞ」


トン。





ひそひそ話すギルドメンバーたちの頭上に叩きつけられる書類の束。


騒がしい場内をざっと整理したサ・セジョンが、まだ言い争っている兄妹のほうへ歩いて行った。


「見ている人もいるのに、身内のことは家でやってくれませんか?」


いくら気が楽でも、ここはあなたたちの家の居間ではありませんよ。


水差しを渡し、注意を促すサ・セジョン。冷たい水を飲んで落ち着けという意味だった。


おかげで少し熱が冷める。周りも見える。


キョン・ジロクは椅子にどっかりと座り込み、うんざりしたように言い放った。


「みんな出て行け」


「そうだ。出て行って仕事しろ。弟の見舞いに来た姉を見物しようと集まった軍人みたいに、みっともなくひそひそ話はやめろ」


「悪いけど、兄さんも」


「……俺も?」


右腕が微妙に寂しそうな顔で聞き返したが、キョン・ジロクは容赦なく頷いた。ああ。お前もだ。


そうしてぞろぞろと出て行き、二人きりになった室内。


荒い手つきでキョン・ジロクが前髪をかき上げた。


「一体何を考えているんだ?」


「アルバイトが必要だっていつも言ってたじゃん」


「ああ、それは……! 俺が今何の話をしているのか分かってるのか? ギルドメンバーはまだいい。お前とは格が違うからな。でも、天上界の奴らは別だ。」


「あいつらがここにどれだけ頻繁に出入りしているか知ってるのか? さっきも……いいや。それとも、今さら正体を明かす気になったのか?」


「頭がおかしいの?」


「じゃあ、なぜだ!」


椅子にだらけていたジオが姿勢を正した。真剣な面持ちで両手を組んだ。


「ここじゃなければ、江原道カンウォンド行きだ」


「……」


「このまま俗世を離れるには、あまりにも無念だ、弟よ」


「……」


「ジョーミングアウトは絶対にしない自信がある。誓う。ジョーは完全にこの分野のベテランだから」



「はあ……」


「食費と交通費だけ出してくれ。そうすれば、一生懸命おとなしく静かに座っているだけだから」


あの忌々しいジョジョオタクめ……頭が痛い。


ストレス性の偏頭痛である確率100%。キョン・ジロクはうめきながらこめかみを抑えた。


「……お母さんには何て言うんだ?」


「バビロンで民間人を採用しないことは、三歳児でも知っている。お前が仕事をしていると言うとする。そうすれば、どこなのか母さんが調べるだろうし、ここだと知られるのは自然な流れだ。何て言い訳するんだ?」


ジオは黙って虚空を開いた。


トン、指を弾くと、ポン、キョン・ジロクの手に一枚の紙が落ちてきた。


何だこれは?


「……20XX年 ギルドバビロン デスク職 期間制民間人特別採用公告?」


この野郎、書類偽造までしたのか……?


あまりにも巧妙なので、さらに戸惑う。


まるで最初からそこにあったかのように、「民間人特別採用」という言葉が自然に溶け込んでいた。


「ゲーム以外ではワードの画面一つ開けないような、どうしようもない引きこもりが……まさか金を使ったのか? 誰かを雇ったのか?」


「ノンノン。よく見てごらん」


だからよく見た。


そして感嘆した。


詳しく見てみると、コンピューターで文字を修正したのではない。魔力だった。魔力が一粒も感じられないほど、恐ろしいほど細密なコントロール。


「狂った才能の持ち主……」


「母さんにはもう全部話した。合格したらアルバイトをして学費の足しにして、親孝行すると言ったら、肉スープをご馳走して送り出してくれたよ」


「どうりでクソ」


アイロンで完璧にプレスされたシャツから、きっちりと額を出したヘアバンドまで。


あの浪人生の精神状態では絶対に出てこない服装だと思ったよ。


「メイドバイマザーだったのか……」


涙で濡れたハンカチを振る母親の幻影が見えるような錯覚に陥る。


見かけとは違って、この界隈では一番の親孝行息子であるキョン・ジロクの心は、落ち葉のように崩れ落ちた。


そうして整理されたような状況。


受付番号021番 キョン・ジオは、(それなりに)おしとやかに膝を揃えた。謙虚な応募者の姿勢で尋ねた。


「それで……ボス、私は合格ですか?」






* * *


〈バビロン〉秘書チーム所属 マ・ウリム。


あだ名はマ鬼軍曹。


「鬼軍曹」というあだ名を持つ人たちが大抵そうであるように、彼もまた、気難しい性格では誰にも負けない男だった。


備品の無駄遣いは絶対に許さない。遅刻は絶対厳禁。勤務怠慢は処刑に値すると信じている人。


そういう意味で、最近彼はまさに「天敵」に出会ったと言ってもよかった。


「キョン・ジオさん、またどこに行った?」


「ミーティングルームですよ。飲み物のトレーを持って、今入って行きました」


「何? 今ごろ? お客様がいらっしゃってからどれくらい経つのに、今入って行く?」


「ちょっと遅いじゃないですか、ジオさんは」


キャッキャッと笑う秘書たちと、イライラしているサポーターは、ここには彼一人だけのようだった。マ鬼軍曹は胸をドンドン叩いた。


「今、笑い事か? 職場を何だと思ってるんだ? 末っ子が足りないところがあれば、たしなめて教えることを考えなければ!」


「あら、何をそんなに怒ってるんですか? 可愛いじゃないですか。どうせアルバイトだし」


「そうよ。まだ産毛の生えたひよっこじゃないですか。小さな子がティーバッグを持って悩んでいる姿は、可愛いだけでしたよ。本当に厳格なんだから、鬼軍曹様は」


「こ……こいつら……良心のかけらもない俗物め!」


可愛いだと? ふざけるな。


マ鬼軍曹は、あのキツネたちが仕事のできない新入りにどれほど冷酷になる冷血漢なのか、よく知っていた。嫌がらせは基本で、職場での陰湿ないじめはオプション。


涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら逃げ出した子が、トラック一台分はいる、トラック一台分。それなのに。


「お前らも、コネの前ではどうにもならないってことか」


数日前、面接室で起きた事件は、口コミで広まって久しい。


ギルド長の直属命令が下されたため、みんな口をつぐんでいるが、すでに内部では知らない人がいないほどだ。


いくら韓国社会が、数人挟めばみんな知り合いだという、狭くて狭い社会だと言っても。


ただの知り合いでもなく、遠い親戚でもなく。


「ボスの家族だなんて……」


それも、同じ年の1月、12月に生まれるという偶然で、ほとんど双子のように育ってきた姉だという。


大事に大事にされているという噂は、すでに広まっていた。


「どれだけ大事にしているのか、名前も教えてくれなかったから、最側近の数人を除いて、ロイヤルたちも今回初めて知ったそうですよ」


「聞きました。ドミ様や最側近たちも聞いてはいたけれど、一般人だと思っていたそうですよ」


「だって、何の経験もないし、ハンター関連の仕事は絶対にさせないように、ヨンボス(若ボス)が徹底的に阻止したそうだから、あえて言うなら一般人と変わらないでしょうね」


「過保護ね、過保護」


「でも、一目見ただけで、ちょっと弱々しく見えるじゃないですか? 前に見た末っ子は、すらっとしていて健康そうだったのに。姉さんだけあんなに小さくてひょろひょろしているから……過保護にしたくなるのも無理はないわ。私は理解できるわ」


「確かにヨンボスの立場からすれば、どうしても自分のような強者の基準で見てしまうから、そう感じるんでしょうね」


「それにしても、どうしてB級も出たんだろう? さっきトレーを持つ姿を見たら、ちょっとぶつかっただけで倒れそうだったのに」


「もしかして、ヤングボスが護身用としてライセンスを取らせてあげたんじゃないですか?」


「まさか。小説を書け、小説を」


「でも、あり得るわ」


ハハホホ。


おかげで最近は、集まるといつも、まるでアパートの班長会議のように、噂話に花を咲かせてばかりだった。


誰かが口火を切ると、雀のように群がって騒ぎ立てた。


「末世だ、末世」


普通のコネでもなく、ギルド内で最高の権力者の家族なのだから、火が消える気配はなかった。


単純な好奇心だけを維持する人から、うまく取り入って損はないという人、仲良くしていればおこぼれがもらえるかもしれないという人。


みんなそれぞれ自分の都合の良いように立ち回ろうとしていたが、マ鬼軍曹だけは一本筋の通った顎を上げていた。


「せめて俺だけでも軍紀を正さなければ。汚い俗世に染まらない一羽の気高い鶴のように」


「ああ、ジオさんが来た」


机を力強く叩きつけながら、マ鬼軍曹が立ち上がった。


「おい、キョン・ジオさん!」


一羽の鶴というよりはゴリラ。


威嚇するように胸を張り、険悪な顔をこれでもかと作ったマ鬼軍曹が、ジオにドスドスと近づいて行った。


「仕事は本当にこんなやり方でやるつもりか?」


「はい?」


「お茶の準備は、ともすれば些細なことに見えても、細心の注意を払わなければならない部分だと言ったはずだが!」


「ああ」


「いつまで同じことを繰り返して言えば分かるんだ? こんなことは当然、先輩がやるべきことだ!」


「あ、すみません……?」


「謝るべきだ! 今度からこんな重要なことは、必ず先輩である私に任せるように!」


うちの可愛いお嬢様、この重いものを持って、どこか怪我でもなさいませんでしたか?


急いでトレーを奪い取り、マ鬼軍曹がジオの肩の上の埃をポンポンと払った。


会社生活20年目。サラリーマンの涙ぐましい処世術だった。


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