500話
冬は即座に世界を止めた。
計算なしに無意識のうちに引き寄せた外の力に、世界と世界律が過負荷で軋む。
風が止まった。
時間が止まる。
驚愕してこちらを見ていた番人たちも、遠くのペク・ドヒョンとバッド・リー・オドも、壊れたジオバンニの力によって再開された中継を見ている人々も、ワープポータルの向こうのランカーたちも、手一つ動かせずに衝撃にそのまま凍り付いたキョン・ジロクまで。
皆が一瞬にしてそう停止した。
太古の外神はそうして皆を止め、すべての瞬間を捉えたが、たった一つ。
その懐の中で散っていくキョン・ジオの息を引き留めることはできなかった。
「冗談、言わないでくれ。お前をこうしてまた送るわけにはいかない。私がどうして、どうしてお前を……」
だめだ。
これが現実であるはずがない。
止められなかった血が、どんどん広がっていった。
赤く染まる白いドレスがあまりにも鮮明で、ぞっとした。
自覚する間もなく涙がこぼれ落ちた。
ジン・キョウルは子供のようにどうすることもできず、懐の恋人だけを何度も何度も抱きしめ直した。
そうしたところで無駄なことだった。
「ふ……、狂ったやつめ。よく聞け」
キョン・ジオは悟った。
長い遺言タイムは贅沢だ。
残された時間は、ほんの一瞬にも満たない。
星座の格が散っていった。まとっていた星の光が粒子となって漂う。
彼が震えながら、恐れ多くも手を触れられずにいる槍の刃を壊し消し去りながら、ジオは残った力で彼の胸ぐらを掴んだ。
この言葉だけは、必ず残さなければならなかった。
「死ぬな」
「………………何?」
「従って死ぬな」
そんなクソみたいなこと、二度とするな。
世界を壊すな、お前を壊すな。
「全部、そのままにしておけ」
私が愛したものを、そっくりそのまま残しておけ。
封印される瞬間でさえ、決して光輝を失わない、最も偉大な魔法使いの黄金眼。
間近でそれを見つめ、すでに光が消えかけていたジン・キョウルの眼差しが激しく揺れた。
中から逆流してくる血を、平然を装って再び飲み込みながら、キョン・ジオははっきりと警告した。
「め、いじ、ろ……」
「……」
「私が、お前を、助けたんだ」
涙で濡れた彼の頬を包む、いつも冷たい小さな手。
誰よりも愛らしいが、彼にはいつも無慈悲だった手に宿る、生硬な感触がキョウルの神経を呼び覚ました。
ほんの数分前に彼が自分の手で嵌めた指輪だった。
永遠の愛を、また不変の心を約束して。
忘れていた指輪の存在に気づくと、心が抵抗する間もなく崩れ落ちた。
ジオの血で濡れた彼らの結婚指輪は、元の姿を区別することさえできなかった。
震える手でジン・キョウルはジオの手に指を絡めた。
行かないで。行かないで。
「私にどうしてそんなことを言うんだ」
従って死ぬなだと?
私に、生き続けろと?
お前がいない世界を?
「お前が私にどうしてこんなことを!」
引き裂かれるような絶叫が爆発した。
私を置いて行かないで。
私を見捨てないで。
「覚書」
限界だ。これ以上無理に耐えれば、世界律が壊れてしまう。
キョン・ジオは力を込めて再び言った。
「覚書、1条」
「……」
「分かってるだろう」
この女、今何言ってるんだ?
信じられなかった。
ぼうぜんとしたジン・キョウルの顔から、無力感にまみれた涙がとめどなくこぼれ落ちた。
ジオが今何を言っているのか、知らないはずがない。
彼もまた、はっきりと覚えている誓いだった。
[覚書]
[真名:冬、■■■■■]
[上記本人は……このためにキョン・ジオが要求した下記の条件に、いかなる異議も唱えずに従うことを誓約します。]
[1. キョン・ジオの傍を離れない。]
[2. キョン・ジオの同意なしに、世界律に違反した操作を行わない。]
[3. キョン・ジオが好きな人々と仲良くするために努力する。]
「……ふざけるな」
「は、は……」
「そんな風に使うために署名した覚書じゃない。こんな風に……」
一つ。キョン・ジオの傍を離れない。
二つ。世界律に違反しない。
すべてキョウルの手足を縛る条項。
自分の手で真名を書き渡すことによって、彼自身さえも違反できなくなった誓いだった。
ジン・キョウルは悟った。
彼はもう、前回のようにキョン・ジオを追って死ぬことも、世界をひっくり返すこともできないのだと。
すべてキョン・ジオがそうさせた。
この忌々しい、愛してやまない彼の偉大な魔法使いが。
ジオはにっこり笑った。
一体運命とは何なのか、状況をこんな風にするのか、キョン・ジオにも分からなかった。
しかし理由は分からないが、なぜか心の片隅が妙にすっきりした。精神も、いつにも増して冴えている。
槍に刺された衝撃で、私はついに狂ってしまったのか?
あるいは。
「もしかして、あれか」
キョウルと自分がしつこく繰り返してきた苦しみを、ついに断ち切ったという、勝利の解放感?
キョウルはもう、自分の命を捨てることはできない。
キョン・ジオと死をやり取りすることはできなかった。
自分の手でそうさせた。
私がまた勝った。
長かった彼らの戦争を、今ようやく終了したような気がした。
古くからあった古い感情が、ようやく結びつくような感じ。
解き放たれた運命の足枷が、身軽だった。運命から勝ち取った勝利が嬉しかった。
そうだ。
この、どれだけぶりに味わう勝利なのか?
だからだろうか、らしくもなく漠然とした考えまで浮かんだ。
ろくでもない破片化だの、私が台無しにしたキョン・ジロクだの、結局はすべてうまくいくのではないかと。
あなたとのひどい運命まで、私がこんな風に見事に打ち破ってしまったのだから。
長い間、勝利の感覚を忘れていた。こんなにまともな気分が、どれだけぶりだろうか?
だから泣いている彼を見ながらも、狂った人のように何度も笑みがこぼれた。
ジオは血の混じった唾を飲み込みながら、両手で彼の顔を包み込んだ。
普段のいつもの日と変わらず、しかしこれまで以上に眩しく微笑んだ。
この次があることを、そしてこの次はこれまでとは違うことを知っているから。
「私は、帰ってくる」
「……」
「ちゃんと待っていろ」
「……」
「よろしく」
私の弟たち。私の家族たち。私の友人たち。
私が狂おしいほど愛する私の世界を。
そしてあなたを。
それが最後だった。
キョウルを包んでいた指先が星の光となり、星の光は光となって消えていく。
いつものように眩しくてまともに見ることさえできない光ではなく、ただ暖かく、安らかな光として。
軋んでいた世界律の騒音が止まる。
沈黙していたバベルが最後、最後のメッセージを表示した。
[星座、キョン・ジオが封印されました。]
『最高管理者が不在です。』
『全バベルシステム、稼働停止。』
『緊急安全モード起動。』
『世界律が波長調整に入ります。』
☆☆☆
『万流天秤オープン。』
『バベルネットワーク、緊急警告。』
『最高管理者の不在により、全バベルシステムが稼働停止しました。』
《すべてのプロセスが中断します。》
《安全モードに緊急転換されます。》
《調整プロセス:進行中》
《予想復旧時間:測定不可》
《安定化作業により、すべての機能が制限されます。全管理者は、調整プロセスが完了するまで待機状態を維持してください。》
《波長調整および安定化の促進のため、世界律が介入します。》
《停止。》
《エラー発生》
《エラー発生》
『運命の車輪が胎動します。』
星系時間線は、世界樹が率いるハブの「メインストリーム」で構成されている。
そして星座は、そんな世界樹の主人であり、母親、すなわちセフィロトの木を意味した。
そうして宇宙秩序を維持していた根の中の根、セフィロトの木が封印され、すべてのネットワークは現在、機能不全に陥った状態。
世界律が耐えた線をはるかに超えた。
それに万流を率いる超越秩序、
「運命の車輪」が動いた。
『運命が強制調整に入ります。』
『コストを再算出中……』
現世界線を維持するコストは、すべて星座が一人で負担していた。
そして星座がそうしてすべてのコストを負担することになった理由は、計り知れない歳月の間維持されていた宇宙の秩序をキョン・ジオが壊し、「世界復旧」という前代未聞の作業を行ったからだった。
運命は考えた。
それなら、元の状態に戻せばいい。
どうせ現状を維持していた星座も、もう動けないのだから、全部中断して、残った残余コストで星座の空白を埋めればいい。
封印は一時的なこと。
不在が永遠ではないはずだから、空席を埋めるための応急処置だった。
運命はそう決断した。
『原因:最高管理者の状態変異による既存プロセスの維持不可』
『措置:既存プロセス(世界復旧)の初期化および新しいコスト調整開始』
『最高権限命令確認。』
『命令を実行します。』
『命令:復元初期化』
『掲示者:運命の車輪』
『対象:バベルネットワーク内のすべての世界』
『復元プロセスを初期化します。』
『世界律がコストを再調整します。』
『運命と世界律の安定化作業により、星座キョン・ジオの改変現実がすべて無効化されます。』
「あなた?どうしたの?」
「スンヨ」
来たな。今だ。
彼が去らなければならない瞬間だ。
すべてのものが元の状態に、順理を取り戻していた。
キョン・テソンは戸惑った顔で自分を見ている、何年経っても変わらず愛らしい妻に向かって笑った。
「一人に多くの荷物を背負わせてごめん」
「……テソンさん?」
「俺が本当に……とても申し訳なくて。ごめんという言葉なんて力がないと分かっていながらも、そんな言葉さえあなたに言えなかったのがずっと心残りだったんだ。でも、うちの娘のおかげで言える」
「どうしたの、何か変なものでも食べたのか。私、怖くなってきたわ」
「俺を許さないでくれ。スンヨさん」
「……」
「苦労ばかりかけた夫の何が見たいのか、毎晩泣いたりもしないでくれ」
毎年苦労して山まで登って線香を焚いたりもしないでくれ。
キョン・テソンはパク・スンヨをそっと抱きしめてみた。
この人は、そんなに強い人ではない。
彼が無理やり強くさせただけだ。
全部、見栄えの悪い夫のせいだった。
その事実が申し訳なく、心が痛くて、とても許してくれとは言えない。
それでも。
「それでも、俺に少しでも埋め合わせをする機会があるなら」
「……」
「俺が、来世では必ずもっと強くて、もっと素敵な人になってあなたを探しに行くよ。本当に苦労はさせないから」
「あ、あなた……」
知らなくても、何か直感が働く瞬間。
今、パク・スンヨがそうだった。
理由の分からない涙が、とめどなく溢れてきた。
キョン・テソンは笑いながら、そんな妻の濡れた目元を拭ってあげた。
若い頃に予期せず別れ、二度と会えないと思っていた彼女の年老いた姿。
こうしてでも会えることに、許されない猶予を、また幸せを彼に与えてくれた娘が、ただただありがたく、健気なだけだ。
「うちの子たちは、本当に立派に育ったな」
「テソンさん、ううっ……」
「ジオも最後まで頑張るだろう。あなたが一生懸命育てた、うちの娘じゃないか」
だから信じて待っていてくれ。
『無効化により、改変されていたデータが消去されます。』
『警告。データ消失にご注意ください。』
ヒューイイイイ……
「………………あら?」
パク・スンヨはハッと我に返った。私としたことが。
「どうしてここに?いや、グミの帰宅時間なのに、何をしているんだ」
仁川大戦争が終わってから、もう数週間。
しかし、戦争が過ぎ去った余波は小さくなかった。
セッピョル洞のある家族には、とりわけ。
家の長女が国を、世界を救った後に、それだけでは気が済まなかったのか、ペク・ドヒョンという覚醒者を蘇らせて消えてしまったからだ。
世の中の誰もが騒いだ。
ランキング1位、キョン・ジオが死んだと。
しかしパク・スンヨは考えが違った。
もしかしたらと、静かに哀悼式は行いながらも、心の片隅ではずっと娘が笑って帰ってくると信じていた。
いつものように、わがままな食べ物の好き嫌いを言いながら、パク女史と母親を生意気に呼びながら。
お互いに打ち明けてはいないが、彼女の息子も、末娘も、皆同じ気持ちだろう。
だから。
「私から、ちゃんとしっかりしなくちゃ」
なぜか心の片隅が、妙に寂しくて寒かったが、そうでない日があっただろうか?
「そうでしょ、あなた?心配しないで。私、頑張るわ」
テーブルの上に四季を通じて飾られている家族写真。
その写真の中の夫の顔を愛おしそうに撫で、パク・スンヨは目元に溜まった涙を拭いながら、急いで動き出した。
そうだ。泣いている暇はなかった。早く温かいご飯を用意して待っていなければ。
家族の誰がいつ、家に帰ってくるか分からないので……。
☆☆☆
そしてそうして、6年が過ぎた。




