499話
空が暗くなり、龍が鳴く。
鐘塔と星々が問う、壊れた子よ、何を失って彷徨っているのか?
私は子供だが子供ではなく、死ぬ方法を忘れてしまった。
私を悟らせる者は誰か?
星々が我先にと答えるが、暗くて一番先頭にいるのは月だ。
同じように壊れた月だ。
見よ。
私は十二回死ぬが死なないだろう、神だが神ではないだろう。
お前のところへ行く。そうして……
「空の、我々の狂わない循環が始まるだろう……」
「それはどうして急に?」
静かに四方に響き渡る声。
ホン・ヘヤは驚かず、顔を上げた。
ここはバベルの塔の最も奥深く、星夜の殿堂Hall of Starry Night。
星団が存在する場所として、天文よりも貴重に扱われる深奥だ。
アルタレコードを点検しに来るディレクター以外は誰も足を踏み入れることのできない立ち入り禁止区域だったが……現在、大韓民国のディレクターは二人。
たとえ同じ空間にはいられなくても、繋がっているのは当然だった。
「急にじゃなくて。……ああ、実は、ずっと引っかかってたんだ。ダルヤ、君の予言のことだよ。ちょっとおかしくない?」
「どの部分が?」
「とりあえず、「壊れた子」がキョン・ジオなのは分かってる。なぜ壊れたと言ったのかも、もう分かったし。」
キョン・ジオと番人たちは舞台を準備しながら、当然、塔にいるディレクターたちにも念を押しておいた。
だからホン・ヘヤも少し前にバベルの告知が出た途端、文句も言わずにすべてのシステムを遮断した状態。
久しぶりにやることがなくて手が空いたので、ずっと余計なことを考えていた。ホン・ヘヤは眉をひそめた。
「でも、ここで言ってる「月」はキョン・ジロクのことだろ。そうでしょ?違うって言わないで。」
「予言者は自分の予言を解釈できないの。知ってるでしょ、お兄ちゃん。」
「じゃあ、聞くだけ聞いて。問題はそこなんだ。「壊れた」月だって?キョン・ジロクが壊れるって?」
「うーん……」
「最後の段落で「十二回死ななければならない」って言うのもそうだし。まあ、死ぬけど死なないとは言ってるけど。予言が成立するためには、とにかくキョン・ジロクが壊れていなければならないってことじゃない?」
そんなことありえるのか?
「キョン・ジオの性格、君も知ってるでしょ。キョン・ジロクに何かあったら絶対黙ってないはずだ。これはそもそも成立可能な条件じゃない。」
「お兄ちゃん、あの人のことすごく気にかけてるんだね。分かるよ。お兄ちゃんにとっては色々な意味で深い人なんだろうし。」
「は?何言ってるんだ?」
僕が、あの狂った暴君を?
ホン・ヘヤはやや神経質そうに眼鏡をかけ直した。
「ダルヤ、頼むから、くだらないこと言わないで。僕はただ、君の予言が間違ってるんじゃないかって心配してるんだ。君はダルヤなのに、予言が間違ってたらダルヤじゃなくなるじゃないか。君のことを心配してるんだよ。」
「分かった。そうしておきましょう。」
「ホン・ダルヤ!」
「でも、お兄ちゃん。」
笑い声は静かに消え去った。
暗闇の中でホン・ダルヤが落ち着いて尋ねた。
「なぜ未来形だと思うの?」
「……え?」
「キョン・ジロクがなぜ壊れると思うの?」
予言者は感情もなく事実を告げた。
「あの人はもう壊れていたわ。私たちと塔で別れた時から。」
☆☆☆
「全知の悪魔!」
「何してるんだ、しっかりしろ!」
防御陣の軸が揺らぐことに驚いた番人たちが戸惑って振り返ったが、ジン・キョウルはなかなか集中できなかった。
揺れる彼の視線は、キョン・ジロクが現れた側に釘付けになっていた。
正直、衝撃だった。
なぜ今になって気づいたのだろうか?
塔から復帰した後、キョン・ジロクの格が再構成に入ったということ?当然知っていた。
しかし、課題の報酬だろうと大したことではないと思っていただけだ。段階を重ねるために土台を塗り替えることは、超越段階に入る者なら誰でも経験することだから。
ところが、生まれ変わるどころか、再誕生だったと?
「失策だ。」
「あいつ、アバターとして復活したんだ。」
エンジンを載せ替えるレベルではなかった。
格の上昇と再構成を完了したその時、キョン・ジロクは完全に新しい半神として生まれ変わったのだ。
前提条件はすでに十分だった。
キョン・ジロクはもともと根源自体がキョン・ジオから起源するから。
他の誰でもない、まさに彼が、太古の悪魔である彼が、星系の厳重な法則と道理をすべて無視してそう作った。
遠い将来、今この瞬間。
自分がキョン・ジオの第1格、最も致命的な対抗者を誕生させる土台を敷いているとも知らずに。
☆☆☆
ドーン•••!
落ちた三叉槍が重い音を立てた。
ジオの手から力が抜けた。
鋭く刃を立てて沸騰していた世界魔力も停止する。
風さえ止まったかのような瞬間だった。
ふと、ある記憶がキョン・ジオの頭の中をよぎる。
黒層海から復帰した直後だった。
どこかずっと気になっているバベルのせいで、何をしているのかとイライラしていると、チ・レイがためらいながら教えてくれた。
ジオの逆鱗が何なのか、彼らもよく知っているかのように、氷の上を歩くように慎重な口調で。
「7-A:星座。私の考えでは、それでもご存知であるべきだと思いまして••••。」
「7-A:更新された星系レコードによると、覚醒者「キョン・ジロク」は昇天課題遂行中、黒層海時間帯で7月7日5時頃に「死亡」したと記録されます。」
「7-A:原因不明の理由により数秒の間に復活しましたが、公式的には彼は一度死にました。」
原因不明の理由だと言ったが、キョン・ジオはすぐに理解した。
リンク。
ホン家の双子の世界眼を通して行われた「リンク」で、二人が完全に繋がったまさにその時だ。
生と死がすれ違ったその瞬間に、リンクがキョン・ジロクを捕らえて死から引きずり出したのだ。
そしてその時、
その言葉に自分は何と答えただろうか?
「とにかく今は無事だってことだな。それならいい、何が問題なんだ。」
死んでいないという事実に集中した。
死亡という言葉を聞いた途端、胸の片隅がとてもぞっとして、今度は自分が遅れなかったんだな。
過ちを繰り返さなかったんだなと、ただ安堵した。
「どこから間違ったんだ?」
私のせいか?
魔法使いのくせに、当然疑って絶えず質問する代わりに、不変の半分の存在にただ安堵して安住しようとしたから?
ジオの目元がピクピクと細かく震えた。
究極格の破片はそれぞれ独立した意識を持って動く。
それゆえ、根源に向けた彼らの感情スペクトルは非常に複雑多岐にわたった。
憎んで反抗したり、忠誠を誓って従順だったり、嫉妬したり、自由を渇望したり、共生して連帯したり••••。
ただ一つだけ共通して不変なことがある。
彼らは共存できないということ。
それが根源とアバター間の摂理だった。
キョン・ジオを欲しがって矛盾的に首を狙う目の前のジオバンニのように。
まだ自覚していない状態だから大丈夫だろうが、いつかキョン・ジロクも摂理に巻き込まれて-
「だめだ。」
私がキョン・ジロクを台無しにした。
私がキョン・ジロクに永遠に解毒できない毒を植え付けてしまったんだ。
「フフ……」
考えを読んだジオバンニが笑う。
しかし、奴に構っている暇はなかった。
このクソ野郎を殺せばキョン・ジロクも死ぬという言葉を聞いた時から、すべての戦意はすでに喪失した後だった。
そうでなければならない。暴れるアバターたちを処理するにはキョン・ジロクを殺さなければならないと?
私が?
この、私が?
失笑まで出た。
ジオは一度も感じたことのない恐怖に浸り、遠くに立つ弟を見つめた。
「ジロク。」
誰よりも幸せになる資格が十分にあるあの子に、私は、あとどれだけ苦難を与えれば満足するつもりなんだ。
指先が無力に痙攣する。
生まれてこの方、これほど自分が恐ろしくてぞっと感じられた瞬間はなかった。
「は、何がどうなってるんだか•••。」
キョン・ジロクは荒々しく前髪をかき上げた。
苛立ちと混乱が混ざった息がこぼれ出た。
姉の顔をした二人の魔法使い。
区別がつかないという事実がぞっとするほど途方もなかった。
俺がキョン・ジオを区別できないなんて、一体どういう状況なのか分からない。
父とバハムート・アクヤの言葉だけを聞いて、うっかり塔に入ってしまっては、キョン・ジオを置いていくことがずっと気になって。
悩んだキョン・ジロクは次善の策を選んだ。
そうしてギルドに足を向けただけだ。
ところが、バビロンへのワープポータルが開くなんて誰が予想しただろうか?
救いを求めるキョン・ジオの声を聞いた途端、反射的に体が飛び出したが、発動しようとした彼にブレーキをかけたのは、ほんのわずかな理性の一かけら。
「助けてくれ、だと。」
おかしいじゃないか。
水に溺れても意地でも一人で死ぬキョン・ジオなのに。
一生一人で歩むと主張して、それさえ懇願してしがみついてやっと手に入れた同行だった。
でも、あいつが助けてくれなんて言う?
「それも俺に?」
キョン・ジロクはジオにとって自分がどんな意味と重みを持つのか知らないわけではなかった。
彼はそんな類のバカではなかった。
スカイボックスから降りてきたキョン・ジロクが観客席、1塁方向の近くで立ち止まる。
そうして、
3塁方向のキョン・ジオとジオバンニ。
舞台の上のジン・キョウルと番人たち。
トライアングル構図の対峙局面。
すべてがキョン・ジロクが高尺ドームに現れてから10秒も経っていない刹那だった。
警戒の空白もまた、ちょうどその程度。
しかし、超越者たちの戦いはいつも秒速勝負、刹那に勝敗が決まるものだ。
「•••••ちょっと待て。」
一番最初に異変に気づいたのはキョン・ジオ。
いつの間にか手元が空っぽになっていた。
ジオバンニがいない。
当惑して落とした沈淪の三叉槍も!
ジオはハッと顔を上げた。そして。
星座の二番目の破片、ジオバンニ。
廃棄された未来の邪悪な可能性。
歪んだジオバンニはキョン・ジオを食い尽くして再び一つになることを望み、そんな彼にとって最も邪魔になるのは、かけがえのないキョン・ジロクではなかった。
最初から狙っていたのは、
ジオの運命。
ジオの業。
ジオの原罪。
偉大な魔法使いの唯一無二の敵であり、命よりも愛してついに許してしまった万古の仇。
長きにわたる永生でたった一人の恋人。
「久しぶりだな?「キョウル」。」
「……!」
すでに封印呪文の活性化を終えていた三叉槍の刃が金色に染まる。
この一撃は神ですら避けられないだろう。
ジオバンニの黄金眼も喜悦に染まった。
「最高管理者!」
「キョン・ジオ!」
「星座!だめです!」
分からない。
消去されていたバベルがいつの間にか現れて何か叫び、驚愕したキョン・ジロクの叫びが、また世界の力が彼女を遮ったが、足が止まらずに動いた。
純白のベールがひるがえる。
最後までドレスの裾についていた白い花びらがよろめきながら落下した。
限界を超越した魔法使いの眩い知性であれ、手にした星座としての強力な異跡であれ•••。
そのどれも思い浮かばず、何一つ計算できない瞬間。
キョン・ジオはそうして彼の胸に飛び込んだ。
ヒュイイイイイッ- クワジク!
「…ジオ?」
なぜこんなに愚かなのかと問うなら、こう答えよう。
キョン・ジオはいつも人であり。
彼はキョン・ジオが人の未練な感情で愛したたった一人の恋人だと。
「はあ…クソ。バカ野郎•••クトゥルフにもなって、こんなもの一つまともに避けられずに魂を抜かれてるのか?」
「愛しい人。どうか。」




