486話
「じゃあ、魔術狩りって何でしょう?今まで見せてきた姿もそうですし、完全にフィジカルで勝負する狩猟職だと思っていましたが。」
「ああ、それはですね。私が使う魔法以外の魔法は全部偽物だという意味で魔術狩りと言います。本物の魔法が出たら、他の偽物の魔法は全部萎縮するんですよ。」
「えっ………?なんだか豪胆な言葉ですね。」
「それは見守っていればいずれ分かるでしょう。」
「そうですね。今回のマッチは魔法使い対魔法使いですから。」
「役立たずのくせに……!」
せっかく仕掛けた罠が無意味だった。
平然と舞台に上がってきているキョン・ジオを見て、腹の中で怒りがこみ上げてくる。クォン・ララは唇をぎゅっと噛み締めた。
「いいわ。全部いらない。」
「二人の魔法使いの中で、より真理に近い魔法使いは果たして誰なのか!魔法使いたちの真剣勝負が今から繰り広げられます!」
もう信じられるのは自分自身だけだ。
迫り来る運命から私を救えるのは、私自身だけ。
クォン・ララは口を動かした。
「「私、人間の娘、祖先の遺財。神を否定し、摂理に逆らい、存在を疑問視し、運命を疑い、ひたすら神秘と奇跡を盲信するべく、深淵なる虚無と真理に私を捧げます。私の正当な資格と原罪をもって呼ぶので、応えよ。原始の最初の欺瞞者たちよ。」」
魔法使いとして行うために必要な基礎条件は、4次元の肉体とその向こうを領有することを許された修行者、魔師の魂。
続いて、また無限の可能性を証明する血統、神経、回路、刻印、眼、また種の限界と認知範囲を超越した演算。
そのような堅固で体系的な土台の上にそびえ立ちながら発揮するのは、最後に詠唱、そのための約束された手印と術者の言霊が込められた真言。
そして、このすべての過程は、魔法使いが本来の力として強制的に止めた刹那の刹那の中で行われ、4次元の現実世界ではまるで秒速の時間で成し遂げたかのように具現化される。
平凡な人々の耳には機関銃のように感じられたクォン・ララの詠唱が、今やそれを超えて、速さが全く聞き取れないレベルに達していた。
「「崩れながら積み上げた源泉の中の野獣たちの偽りの千手と万手が私の罪、私の名前を裏付ける。脳壊□壞。逆上。度魂。満開。」」
深呼吸。
「よし。」
息を深く吸い込んだクォン・ララが、目を見開き、指を逆さまに立てた。
「「それによってここに私の城を構築する!」」
「適業スキル、7階級高位領域系増幅広域呪文………………」
「超越超意、脱界越唱」
「魔術真霊-「魔法使いの城(眞)WizardCastle」」
「超越?!」
「真霊を使うだと?たかが4階級のやつが?」
「いや、まさか!実物で具現化するウィザードキャッスルは7階級魔法だぞ!あれは本物の『城』だ!」
4階級の魔法使いのくせに7階級魔法を具現化したのも仰天することなのに、さらにそれが魔術真霊?
ドーム内部の空間魔法を維持するために留まっていた魔法使いたちの方から激しい騒ぎが起こった。
「こ、これは何でしょう?!初めて見る光景です!競技場に城、文字通り城が現れました!」
「ウィザードキャッスルには違いないようですが、どこかおかしいです!ウィザードキャッスルは普通、陣法として使われ、形態が現れても線でしか存在せず、ご覧のように三次元の形態ではないんですよ!」
「イ・オンジュキャスターがおっしゃった瞬間に情報が入ってきました!魔術真霊だそうです!」
「それは何ですか?」
「私もよく分かりませんが、入ってきた説明を見ると、スキルを超越した魔法だそうです!」
「え?そんなものがあるんですか?!」
魔法であれ、剣術であれ、その何であれ、覚醒者の「スキル」として存在するすべての適業スキルは、バベルという限界の中に留まる。
しかし、その力はバベルが覚醒者が使いやすいようにスキルという枠に閉じ込めただけで、実在する力自体は無限だった。
それゆえ、優れた覚醒者たちはある瞬間、スキルを脱し、その向こうで真体の異能を扱う方法と触れ合うことになる。
それがまさに「超越」。
超人が超越者になるために踏み出す始まりの地点だった。
クォン・ララが呼び出した「魔術真霊」は、そのような超越魔法の一部。
ここで魔術真霊とは。
ジオは軽く笑って顔を上げた。
巨大な城の影が頭上に、垂れ込める。
四方を囲み、締め付ける城壁の威容に圧倒された観衆が悲鳴を飲み込んだ。
「あう、中継陣としてこんなことを言ってはいけませんが、これはちょっと怖いです••··••!」
「私もそうです。圧倒的ですね••·••!」
「ジ・キョン選手は対応できるでしょうか?」
「これをですか?、どうやって?」
「..」
「…視聴者の皆さん、どうやら勝敗はここで決まると思われます!」
バリアが重畳して駆動中なのでご安心くださいという案内放送が、ドーム内部に再び鳴り響いた。
あっという間にドーム内部を占拠したクォン・ララの城壁が、止まることなく恐ろしい速度で魔力と生力を吸い込む。
この中の流れが徐々に彼女の名の下に服従するのが感じられた。
魔法以上の魔法という魔術真霊らしく、威力的な姿。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
視線が交差する。
口をパクパクさせながら絶え間なく詠唱を重ねているクォン・ララが、目を皿のようにしてジオを凝視した。
充血した両眼には嘲笑も、油断もない。
映し出されているのはただ、切実さ。
ジオはふと思った。
「これはちょっと誤算かも。」
4階級魔法使い、アイドルクォン・ララ。
虎の恐ろしさを知らない子犬のように突っ込んでくると思っていた。
だから、ちょうどいいと、炎上目的の餌として利用すればいいと思ってこんな、場を組んだ。
キョン・ジオは魔法使いとして生まれ、必要な結果を得る魔法使いの思考方式は大体そんなものだから。
そして舞台がセッティングされた。
望み通り完璧に。
しかし、どういうわけだろうか?
炎上目的だった餌は何の才能を発揮したのか、身の丈にも合わない超越魔法を呼び出し、血眼になってジオにぶつかってくる。
「なぜ?」
聞いたこともない事情を知る由もない。
しかし、これだけはよく分かる。
ジオはまさにこの瞬間、魚たちが餌にかかるように本物の力をちらつかせながら、できるだけ長くクォン・ララをもてあそびながら対峙するという計画を廃棄した。
挑戦者が自分が持っている最高の切り札を持ってきた。
それならば、王座として喜んでそれに見合う切り札を見せてあげるのが当然だから。
空の雲が城壁に遮られて消える。
影が完全にキョン・ジオを覆った。
クォン・ララの魔術城、緑色の鬼の城が口を大きく開ける。
「おお!!」
「う、危ない!ジ・キョン選手、危ないです!」
ジオは退かずに立っていた。
見つめる両眼には揺るぎがない。
肉体の境地を超越して自然に真体を体得する肉体派とは異なり、魔法使いたちはもともと見えない無形のものを取り扱う者たち。
当然、ハードルはさらに高くなるしかない。
それゆえ、魔術真霊を扱う者たちもまた、魔法使いの中でも選ばれたごく少数。
しかし。
「私はそのごく少数の中でもたった一人だからな。」
魔法の外の本物の魔法という魔術真霊?
せいぜいスキル超越じゃないか?
キョン・ジオはただの人間に過ぎなかった時代、すでにそれをはるかに超えた「聖痕超越」まで成し遂げた前科があった。
星と連結されたスティグマを閉じ、ひたすら純粋な力で成し遂げた異能の最終形を、まさにこのソウルの地で具現化したことがあった。
星座に上がり、時間という4次元概念から、脱したが、あえて言えば、ジオにはすでに数万年前のことになった記憶。
その昔の思い出が吹き荒れる。
流れ去り色褪せるものとは異なり、永遠に老いない、魔法使いの黒檀の髪が突風に舞い上がった。
キョン・ジオは自分に降り注いでくる巨城を避けなかった。
「城を持ってきたって?」
それで?
魔法使いの武器は魔力。
それゆえ、魔法使い同士の戦闘は、世界の魔力を誰がより強固に支配するか、それをめぐって争う「領域」の争いだ。
そしてそのの領域は、
「私の区域だ。」
私の領地でそのくだらないおもちゃの城を片付けろ、未熟な魔法使いよ。
「・・・!」
膨張する魔力に耐えていたクォン・ララの目が驚愕で大きくなる。
「私の演算が.....!」
逆演算だ!追いつけない-認知した直後に対処し始めたが••••!
クォン・ララの額を伝って冷や汗が流れた。
「ない!」
逆演算。
逆配列。
逆定立。
逆定義。
逆、そして逆。
魔法がそのまま食い尽くされる!
クォン・ララは四方の破裂音を聞いた。
彼女が築いた法則が崩れ落ちる音だった。
今まで掌握して築いた王国の法則を、そのままキョン・ジオが受け返して征服していた。
より高い数、より良い数で。
まるで教えを授けるかのように。
後輩魔法使いの攻撃を先輩魔法使いが受け止めながら見せられる手としては、まさに完璧に近い方式。
「ふざけないで!望んでない!」
クォン・ララは血が出るほど唇を噛み締めた。
視線が刹那にまた交差する。
犯人は計り知れない、彼らが数百年にかかる計算を秒速で成し遂げているにもかかわらず、あの魔法使いの表情には動揺一つない。
キョン・ジオの顔はただ静かだった。
その深さと広さを永遠に知ることができない海のように。
クォン・ララをじっと見つめていたジオが手印を結ぶ。桃色の指が優雅にルーンの線を描いた。空から地へ。
「宣布する。」
その瞬間、クォン・ララの視界に映ったのは、生々しい血気で輝く唇。
それにクォン・ララは敬虔な気持ち、しかし同時に極度の恐怖を感じる。彼女は思った。
「悪魔。」
あれは悪魔だ。
人であるはずがない。
「「退去。」」
『魔術、開門』
『領空化-断片』
『王領宣布』
グオオオオオオ。
「え、え?!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!!!あれは!」
魔法使いたちが、がばっと立ち上がった。
黒色。また、終わりのない黒色。
あっという間に黒で覆われる競技場。
巨大な暗黒がベールのように舞台と観客をかすめた。
世の中の色が強奪された中、音のない影が身を起こし、巨大な手で緑の鬼の城を掴み取る。
暗闇の中で観客たちが一様に首を傾げ、遥かにその動きを追った。
やがて広がる、ぞっとする破裂音。
すべてのものが一握りの塵に戻る。
起きた砂埃は、やがてそよ風となり、ぼうぜんとした観衆の前と後ろを悠々と過ぎ去った。
競技場には沈黙だけが残る。
城壁崩壊。
誰もが目撃した。
クォン・ララの完敗だった。




