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481話

ヘタの宗主が元の場所に戻ると、お人好しの秩序善良な人々と混沌善良なギャングスターの葛藤はさらに激化した。


「いや、でも切らずにちょっと聞いてくれよ、ヤクザ野郎!あの子がかわいそうなんだって!ここで勝てなかったら60過ぎの年寄りじじいに嫁がなきゃならないんだって、あの子はまだ19歳だよ!ありえないだろ?」


「ヘタ、お前らまさかお人好しの集まりか?ギルドレベルで大規模に慈善事業の授業でもやってんのか?」


「おい、人としてギルドには触るな。マジで。線を越えるなよ。」


「もどかしいんだよ。世の中に事情のない人間がいるか?お前は人間の世界の救世主でも気取ってるのか?事情があったらみんな助けに行くのか?ちょっと自分の身なりを見てみろよ、自分のことで手一杯なくせに、何を他人を助けようとしてるんだ。」


「足りない人間は人を助けちゃいけないのか?!あんたはそんなに偉くてヤクザみたいなことばかりしてるの?」


「おい、人として職業には触るな。家業だって何百回も言ってるだろ。」


「や、やめてください、皆さん!」


「だからこの無知な夜叉みたいな女を連れてきて、こんな騒ぎになってるんだ!」


「ああ、ファン・ホン様が女装参加だけを受け入れてくださっていれば……。」


「ありがたくてそう言ってるんだ!俺たちのところに来てくれて本当にありがとう!ありがとう、チェ・ダビデ!サンキューソーマッチ!」


「クソ野郎……。」


「……」


有言実行。罪人は黙るしかない。


鼻息でピンクの前髪がなびいた。頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜたファン・ホンが再びソファにどさりと音を立てて座った。


「それでどうするんだ?俺たちは優勝するためにこんな騒ぎを起こしてるんじゃないのか?イシューはイシューで覆い隠すやり方で。でもあの子が望んでいるのも優勝なんだろ。誓いまで立てて言うのを見ると、俺たちにジョーを止めてほしいってことだろ。そうだろ?」



ナ・ジョヨンがしどろもどろと答えた。


「はい。6区域でジ・キョン、いえ、ジョー様が上がってきたら、私たちにも不利になるんじゃないかと……。」


「魔術狩人ジ・キョンがジョー様だって?!」


「はい。間違いないです。」


「ジオ様がここにいるなんて、まさか……!あ、いや、そんな場合じゃない、ど、どうしよう?どうすればいいんですか、ダビデ様?!」


「落ち着いて、私の話を聞いてください。」


「し、試合に出られないようにしてほしいと言われました。私たちが断ると、誓いまで立てて、自分の言葉を信じずに犯罪者の味方をするのかと言って……。」


「被害者は来韓した外国のVIPの一人だそうです!身元が身元なだけに、殺人犯だと判明すれば処罰は避けられないでしょう?いくら魔術師王でも。でも、ララも被害者ですから。お二人が私を助けてくだされば、寛大な処置を求めると後で嘆願書を提出します。そうすれば刑を少しでも軽くできるはずです。」


「はあ、典型的な仲違いじゃないか。戦友よ、まさかその言葉を信じてるんじゃないだろうな?」


「わ、わかりません!私はわからないんです!ジオ様がここにいらっしゃることも今知ったばかりなのに……!どうすればいいのか本当に……!」


ナ・ジョヨンが泣きそうな顔で手のひらに顔を埋めた。長い茶色の髪が乱れる肩が華奢だった。


それを見て、チェ・ダビデはナ・ジョヨンが言わなかったクォン・ララの言葉を思い出した。


「お二人が本当にあの方と親しい知人なら、友達が間違った道に進むのを止めるのが当然じゃないですか?」


「ダビデ?」


「………………信じない。だから私のやり方でやる。」


簡単なことだ。


クォン・ララがキョン・ジオの罪を主張するなら、その主張が嘘だという証拠を見つければいいだけじゃないか?


必要なのは真実を明らかにすることだった。


そうすれば、助けを求める弱者の味方をしないというハンターとして感じる心の呵責も、他人の言葉に振り回されて知人を裏切るという人間として感じる罪悪感もすべて解消される。


「そうだ。犯人を見つければいいんだ!」


チェ・ダビデは席から勢いよく立ち上がった。


「おい、ペ・ミン!だから偉そうにするな、クソ野郎!お前だけがファーストラインなのか?私たちも1番チャンネルだ。顔を見たことがなくても、ジョーは私たちにとっても親しい知人なんだ!覚えてろ!」


「え?ダビデ様?急に何を言い出すんですか・・・ダ、ダビデ様!もうすぐ試合開始なのにどこに行くんですか!ダビデ様!おい!!!」


そのまま控室を飛び出していくチェ・ダビデ。


捕まえる暇もなくあっという間だった。


あっけにとられて消え去る後ろ姿を見ていたナ・ジョヨンが頭を抱えた。


「ジオ様の顔を見たことがないなんて、ダビデ様、あれは何を言ってるんでしょう?なぜあんな……?」


「宗主。」


「……」


ナ・ジョヨンの混乱した眼差しと低くなったファン・ホンの声。


この場にいる3人は[記憶]が完全な者たちだった。


白鳥が沈黙した。


「あ、だめです!おかしいです!この大会もそうですし、ダビデ様もそうですし、全部何かがおかしいです……!ジオ様がここにいらっしゃることを知ったので、いっそのこと行って私たちの事情を全部話して話を……え?あ、あ?あれ?!」


支離滅裂に言いながら立ち上がったナ・ジョヨンが辺りを見回した。


当惑した顔色が青くなったり白くなったりを繰り返し、魂が抜けた顔で二人を見回す。


「キ、キッド……!私たちの拉致対象はどこに行ったんですか?!このテロリスト野郎、一体いつからいなかったんだ?!」





☆☆☆


世界観最強者が公認した傾国の美女。

帽子とサングラスで隠しても隠しきれない美貌だった。


そっと集まってくる人々の視線を避けて、隅の方に立ち止まったマフィア(状態:拉致)、キッドは窓の外を静かに見つめた。


ビル群を横切る聖なる光の一筋。


その神聖さに賛美歌が自然と出てくるほどだ。


「ティモシーだな。」


わかりきっていた。

ティモシーの馬鹿正直な性格からして、行方不明になった友達を置いて本国に帰るはずもなく、それに……キッドは虚空の状態ウィンドウを指先でトントンと叩いた。




[ファーストタイトル:審判の継承者]

[*ねじれた世界律の選択を受け、宿運-役割が変動しました。]


世界がこれほど揺れ始めたのに、ここにティモシー・リリーホワイトだけがいないという絵も想像できなかった。


何よりも、あんな聖なる光を人の目を気にせずに振り回す過激なクリスチャンが「神の子」以外にいるだろうか?


ジョーが騒ぎを起こしてソウルに駒を集めたのだから、ここで明らかに「何か」が起こっているのは確かだった。



「一体何が起こっているんだろう。」


キッドは滑らかな顎を撫でた。


滅びて復旧した世界。


その「記憶」を持っている人々。


奇妙な結婚式。


命が危なくなったティモシー・リリーホワイト。


敵として指名された世界の王。


「バベルは、俺にねじれた世界律の選択を受けたと(3人のおバカな誘拐犯の言葉によれば)言った。世界を滅ぼしたことのある悪党を世界が選んだのはとても皮肉なことだ。」


しかもその宿敵がキョン・ジオ?


人類の救世主として名高い英雄を?

キッドは冷静に考え込んだ。


「名前からして[ねじれた]世界律だ。よりによって俺を選んだのだから、まともな世界律ではないだろう。」


それなら[正常な]世界律の選択もどこかに存在するはずだと仮定してみよう。



「うーん……」


審判者は一人ではない。キョン・ジオの敵は一人ではない。


それならこの結婚式はもしかして……キョン・ジオが自分の敵を一網打尽にするために仕組んだものなのか?


[審判者]たちを?


「こちらにこのような知らせが来たということは、ジョーにもどうにかして伝わったはずだ。バベルは強者をひいきにするし、現時点でランキング1位は魔術師王だから。」


しかし、審判者たちを処理するためにジョーがこの騒ぎを起こしたのだとしても、おかしな点は残る。


「それならティモシーはなぜ結婚式とは関係なく危険になったんだ?」


なぜ結婚式は続行されているのに、ティモシーは場外で足止めされているのだろう?


敵ならジョーはなぜティモシーを処理もせずに、あんなに騒がしく放置しているんだ?ティモシーは審判者ではないということか?


それとも……ティモシーを捕まえているのがもしかしてジョーではないのか?


「三つ巴?」


第3の勢力がまたいるのかもしれない。

描かれた構図に審判者とジョーしか存在しないのではなく、つまり三角構図……


「ブラザー・フォックス?」


「……?」


考え事を邪魔する声だった。英語だった。


突然邪魔されたキッドは腕組みをしたまま斜めに体を向けた。


「まさかと思いましたが、やはりそうでしたか。こんなところでお会いするとは。」


見覚えのない顔。初対面の白人だ。


がっしりとした体格に話すアメリカ北東部の訛りまで、典型的なWASPワスプタイプの若い男だった。


ティモシーのように金髪だったが、自由奔放なティモシーとは違って、つやつやと手入れが行き届いている様子。


しかし、思い出させたというだけでもキッドにとってはマイナスだった。


キッドは自分の友達を世間に知られているほど好きではなかった。


「いなくなったあなたを探しに、あなたの忠実な友人たちがマフィアと手を組んだのはご存知ですか?ええと……名前は何でしたっけ、オソリーニファミリーでしたっけ?」


「……」


「こんなに近くにいたとは。」


ずんずん歩み寄ってきた男が握手を求めるように手を差し出した。


初対面でいきなり親しげにしてくるこの男の正体をキッドもそろそろ悟ったところだ。


ずっと聞いていると聞き覚えのある声だったから。


「……支部長?!」


レイモンド・ロスチャイルドがにやりと笑った。


「顔を合わせて会うのは初めてですか?」


「聖なる魔の証人たち」、ニューヨーク総支部。



あっという間にアメリカを掌握した新興宗教。

そのインナーサークルが形成する気流から取り残されないように、キッドとティモシーも加入しておいた秘密クラブの支部長だった。


「支部長があの『ロスチャイルド』の後継者だったとは。偉い方を知らずに失礼しました。」


「私たちもクラブにイージスの二人の司令塔が自ら入ってきたときはとても驚きました。これで貸し借りなしですね。」


「そうですか。ところで……」


キッドは彼の手を避けずに笑顔で握り返した。


「クラブ内でのことはクラブだけに留めておく……秘密保持覚書に署名したはずですが、これでは毎回あの滑稽な仮面を被って会う意味がないんじゃないですか?ブラザー・タイガー?」


手ごわい握力にレイモンドが片方の眉をかすかにひそめた。キッドは失笑した。


「虎の仮面なんかを被るときから察してはいたけど……」


エゴが肥大化した男だ。体格だけを見て簡単に押さえつけられると思ったのだろうか?


キッドはさらににっこりと儚げに笑ってみせた。


「痛いですね。淑女の手つきにしては乱暴すぎますよ、ダーリン。」


「……淑女?」


キッドの人差し指が無言でレイモンドの口元を指した。


まだ完全に消えていない口紅の跡が滲んでいた。


「ミス・レモナ、でしたっけ?お似合いですよ。」


「……ハハハ。」


乱暴に口元を拭ったレイモンドが再び余裕を取り繕った。


「ブラザー・フォックス、私たちお互いのことをよく知っている仲ですから、難しい話はやめましょう。

率直に言って、味方ではないかもしれませんが、だからといって特に敵でもないんですよ。」


おそらく今は。



「私の主人がお会いしたがっているのですが、いかがですか?ブラザーにとっても悪い話ではないはずです。ああ、ブラザー・フォックスがどんな人か知っていますから、否定はしないでくださいね。」


「俺を知っていると。」


キッドがそっと微笑むと、レイモンドが何かを尋ねるように肩をすくめた。


「どうしたんですか。少なくともブラザー・イーグルと同じ種族ではないでしょう。」


そうだ。確かにキッドは、ティモシー・リリーホワイトが好きではない。


一人で輝いている神の子は、しょっちゅうマグルガ出身の貧しい子供を引きずり出してきて、骨の髄まで染み付いている敗北感を刺激してくるから。


「でも、だからといってあいつが私の友達ではないということにはならない。」


そして何よりも気に食わないのは……


「あら、セニョリータ・レモナ。マイ・ダーリン。」


キッドはとてもおかしなことを聞いたというように声を出して笑い出した。


「こちらも一応クラブの会員なのに、俺の前でそんな馬鹿げたことを言うのは困ります。」


「………………馬鹿げたこと?」


「俺たちの主人は偉大なアルカナの帝王であるジョー様ではなかったか?」


レイモンドの顔色が固まる。


睨みつける眼差しをキッドは悠々と受け流した。

仕方がない。


一目見ただけでつやつやと綺麗に育った金髪の坊ちゃんが、ドブネズミ出身のマフィアの前で悪党ごっこをしようとするなんて、気に食わないわけがないだろう?


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