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46話

* * *


どんよりしているという話を何度も聞いてきたからだろうか?


ソウルの空は彼が予想していたよりも澄んだ色だった。


「予想を裏切ることが多い国だな」


さっき行ってきたハンターマーケットでのこともそうだ。不思議の国のアリスにでもなった気分だ。


「副チーム長は?」


「中にいらっしゃいます」


無駄に広いスイートルームの中。


いつも人がごった返すギルドの建物にばかりいるから、さらにそう感じられた。


近くのソファに腰掛けながら、ルーカスはネクタイを緩めた。


タバコを一本くわえた途端、虚空から火がついた。


「サンクス」


「どういたしまして。でも手ぶらじゃないか?」


「ああ。口を滑らせてひどい目に遭ったんだ。虚しいな。韓国まで来た一番の理由を、着いた途端にふいにするとは……」


「ティミーが聞いたらざまあみろって喜ぶだろうな」


そうだな。想像に難くない。


どうして自分だけ置いて先に行けるんだと大騒ぎしたのに。


だが仕方ない。


あの「ティモシー」は、一緒にいるには騒がしすぎる存在だ。


申し訳ないが、遠い異国まで彼を追いかけるカメラたちと同行したくはない。


そのため、海外のスケジュールが入ると、ルーカスのような性格のギルド員たちは、数日前にひっそりと入国して、事前に余裕を楽しんでいた。


今回は新しい武器のセッティングも兼ねて、特に早く来たのだが……


意外なのは、そんなルーカスと一緒にソウル入りした人物だ。


「マラマルディ、ところで最近会ってる人はいるのか?そんな噂を聞いたんだが」


「ふむ?」


グイドが見ていた本を置いた。


肘掛けに肘をかけながら笑う。特有の狐のような笑みだった。


「誰が言ってるんだ?」


「サポーターたちが。どうしてティモシーと別行動しているのかと思ったら。予定を繰り上げて入国した理由がそれだったのか?韓国人か?」


「本当に秘密のない世界だな。サポーターたちまで私を詮索するとは。人気者の宿命だな」


「本当か?」


「さあ。会っているのは確かだ。浮名と言うには相手があまりにも幼すぎるだけだ……ティーンエイジャーだからな」


ルーカスの表情が微妙に固まる。


それをアメリカでも保守的だと噂のユタ州出身者の反応だと解釈したグイドが、くすくす笑った。


「冗談だよ、ハニー。私たちはただの友達さ。あの子は韓国語を教えてくれて、私は英語を教えている。ランゲージエクスチェンジとも言うだろう」


「……よかった」


「ええ。みんなよくやってるみたいだよ」


再び本を手に取るグイド。


横に置いた携帯電話が鳴ると、自然に持ち替えた。


それを見ながら、ルーカスは最後のタバコの煙とともに火を消した。静かに呟いた。


「そうか……そんなものか」


私も見たんだ、今日。


南イタリア訛りの英語を話す韓国人の女の子に会ったよ。


「ティーンエイジャー」に……







* * *


「銀獅子……いや、正確には銀獅子の『虎』、彼とどういう関係だ?」


「大したことないさ。イージスTOPチーム所属だと言ったはずだ。うちのチームの隊長はティモシー・リリーホワイト、TOPチームはつまり、イージスの中核を意味する。『インペラトル』、そのカードの所有者の中で唯一の韓国人が誰なのかくらいは知っているはずだ」


青い目の外国人は、じっと顎を撫でた。視線はこちらから離さないまま。


「彼がそれを任せるほどなら、ただの関係ではないようだが……不思議だ。私は君を初めて見る」


そしてニュアンスが変わったのはそのあたり。


独り言をやめて距離を詰めた。


より近づいた距離で、彼が頭を下げて囁いた。


「改めて自己紹介しようか。私はイージスTOPチームの情報策略部長、サーペント・ルーカス・マロンだ」


情報策略部。


主な業務は情報収集および処理、諜報、防諜、海外工作など。


その「情報収集」に各国のハイランカーたちの動向が含まれるのは、ごく当然のこと。


「これで状況が理解できたかな?銀獅子の虎……数年間その後を追い、執拗に観察して、もう新しいことはないと思っていたんだが」


これがどれほどの新しい「情報」なのかわからないな。


「返事までは期待していない。どうせ私が君を知ったこと、そしてその者がこの事実を知ることだけでも、私にはすでに十分な収穫だから」


期待していないという言葉通り、ずっと無反応でも気にせず、自分の言いたいことを言うルーカス。


その言葉を最後に去るかと思いきや、再びジオの方へ向き直った。


そしてほんの一瞬だったが、ジオはその者の無表情からためらいを読み取った。


「……そういう意味で、私もお礼を一つしよう」


もしかしたら私が過敏なだけかもしれない。情報を扱う者たちがよくそうであるように。だが……


「君の妹、英語が上手すぎると思わないか?」


まるでネイティブと……「とても長く」会話したことがある人のように。






*******



「ちょっと、ちょっと!お姉ちゃん!何してるの?」


「ん?」


「バス来たじゃない!早く乗って」


神経質だが、荒っぽくはない手つき。


ジオはグミの手に抱きかかえられるように引っ張られ、バスの座席に着いた。


すぐに小言が降り注いだ。


「いや、何度も呼んでもぼうっとして何してるの?聖約星とまたイチャイチャしてたでしょ?」


[聖約星、「運命を読む者」様が「義妹よ!この義兄は無実だ、無実だ」と膝を叩きながら訴えています。]


「人の目の前で違う世界に行かないでって言ってるでしょ……ああ、もういい。今日はまあ、許してあげる。お金もたくさん使ったし。今日ちょっとかっこよかったよ、お姉ちゃん。」


「グミ」


「何?」


瞬間、バスが発車すると、少し開いた窓から風が吹き込んできた。


窓側に座ったジオの前髪がめちゃくちゃになった。


それを見てグミがふふっと笑った。風が漏れるように。


細くて長い指が額を撫でた。


ジオは自分の髪を整えてくれる末の妹をじっと見つめた。


座高でも頭一つは軽く高く、一緒に行くとみんなジオより年上だと思うけれど。


本当はまだ幼さが残っていて。


笑うと目は三日月のように細くなり、頬は桃色に染まる幼い末っ子。


「これを誰がお姉ちゃんだと思うの?本当に。いつまで人の手を借りて生きるつもり?お姉ちゃんももう20代の大人だよ、どうしようもない人」


「……英語上手だったね」


「え?」


目を瞬くグミ。


ジオは唇を尖らせた。意図したわけではなく、無意識に。


つまりこれは寂しさの発現みたいなものだ。それもものすごく寂しい。


「マジで、マジで、マジで……」


「言葉遣い悪いよ。ちゃんと話しなさい」


「マジで、彼氏できた……?外人の彼氏?」


「何?」


「いや……セラから聞いたんだけど、グミの友達のボミが、グミに外国人の彼氏ができたみたいだって言ってたから。それに、さっき英語も本当にすごく上手だし……」


君の前に立つと、どうして私は小さくなるんだろう?


女子高生の妹といると、ポンコツレベルがカンストする世界最強キングジオ(惑星代表)。


目をまともに合わせることもできずにチラチラ見ながら、口は尖らせっぱなし。


罪のないフードの紐だけをクシャクシャいじっていた。


「……何よ、この長靴をはいた猫は?」


その様子を見て、気まずそうに感想を述べたキョン・グミが、すぐに論争を一蹴した。


「彼氏ってほどじゃないよ」


「……えっ!」


「まあ、男女の間は何があるかわからないけど」


「……ええっ!」


ジオは娘の前で情けない父親のように、いきなり駄々をこね始めた。


「私は嫌だ!反対だ!」


「うん。あんたの反対は無力」


「なんか嫌な予感がするんだよ!」


「その嫌な予感って言葉、私中学校の時から言ってたの知ってる?あんたのせいで失敗した私の恋愛が何回あるか知ってるの?少しは良心を持ちなさい」


いや、今回はマジでマジでガチなんだって!


オオカミ少年の気分ってこんな感じなんだろうな。駄々をこねた歴史が長すぎるせいで、何を言っても聞き入れてもらえなかった。


[あなたの聖約星、「運命を読む者」様が「今までひどかったもんな」と頷いています。]


[ふむ。兄から見ると、これはすべて片方の恋愛経験が不足して起きた悲劇のようだと言い、周りの誰か一人を早く捕まえて、ソロ脱出してちゃんとコミュニケーションを取ってみるのがいいとアドバイスしています。]


[聖約星、「運命を読む者」様が、ものすごく、とても近い、周りの人1と書かれた名札をご自身の胸につけています。]


「消えろ!」


ジオの眉が下へ曲がった。


雰囲気を壊さないようにこう言ったが、とても本気だった。


嫌な予感がする。


遠回しに言ったが、〈イージス〉のプラチナブロンドのヤンキーは、明らかにグミについて何か知っているようなニュアンスを漂わせていた。


「情報策略部長」にもなるような奴が、ありもしない言いがかりをつけてまで近づく理由。


「それが一体何だろう?」


[うちの義妹がすごく質の悪い男に引っかかったんじゃないかと「運命を読む者」様が顎を掻いています。]


「お星さま、何か知ってることあったら全部話して」


[あなたの聖約星、「運命を読む者」様が「この兄はうちのジオが望むことは何でもしてあげたいけど、未来に関するネタバレは世界律に違反する行為だからできない」と拒否します。]


[下手なお姉さんごっこするなって、先回りして何でもしてあげようとせずに、今できることだけしなさいと聖約星が優しく叱責もします。]


……図星を突くのはあり?


「心配だからだよ」


でも聖約星の言うことも正しかった。


さっきグミが「あんたたちがいなかったら何もできない人に見えるのか」と怒っていたのに、下手に先走ったらまた仲を悪くする可能性があった。


そうだ。そうだよ。


ジオは首を振って雑念を振り払った。


そして今できること、これをやろうとインベントリを開いたその時だった。


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