453話
どうしてこうなった?
これは夢だ……。
ナ・ジョヨンは目をぎゅっと閉じた。
そう、このすべての悲劇は、あの時から始まったのだ……。
☆☆☆
28日前。
「申し訳ありませんが、どういうことでしょうか……。突然、うちの理事は何で……。ひええええっ?!ま、まずい!」
攻略隊が出発したことは、バベルの塔周辺の空っぽの空を見れば分かる事実。
絶叫したナ・ジョヨンは、真っ青になって足を踏み鳴らした。
「ど、どうしよう?私、どうすればいいの?本当にバカみたい!私はいったい何てことを……!世界の悪を一日も早く処断しなければならないという義務に取り憑かれて、もっと大きな使命を見逃してしまうなんて!私、私、私はゴミだ!私にきっと失望したはずなのに!どうしよう!くええええん!ゴミドビー!悪いドビー!」
「泣くな。落ち着け。そうしたからといって、行ってしまったジョーが帰ってくるわけではないだろう。」
「申し訳ありませんが、宗主様はTですか!」
「T?私は白鳥だ。」
「だ、大丈夫です!話が通じない!」
「ヒーラー、まさか本当に忘れて行けなかったのか?」
ファン・ホンが信じられないという顔で割り込んできた。
「ミスするにもほどがあるだろう、一体何をやっているんだ?緑茸のやつ、攻略プランが狂うのを一番嫌うやつなのに、どうするつもりだ。後始末できるのか?」
無断で攻略隊を抜けるなんて。
それも他の誰でもないヒーラーが。
冗談で済ませられるような事案ではなかった。
バベルの塔に登るということは、命をかけるという意味と一脈相通じていた。
塔攻略の純情派が、ダンジョン脱獄派よりも大衆に尊重され、称賛されるのもまさにそんな理由からだ。
入った瞬間、いつ帰ってこられるか、生きて帰ってこられるか、誰も、登攀する当事者たちさえも保証できない場所だから。
別に塔に狂ったキョン・ジロクレベルでなくても、ファン・ホンも巨大集団を率いて塔に出入りする〈黎明〉のギルド長だ。
命の重さについては誰よりもよく知っていた。
珍しく真剣なファン・ホンの反応に、ナ・ジョヨンの肩がさらにすくんだ。
「やめろ。ファン・ホン。ジョヨンも反省しているではないか。関係当事者でもない者が過度に責めるのは見苦しい。お前も言ったように、後始末は攻略隊とジョヨンの役割ではないか。」
「まあ……そうだけど。」
「ジョヨン、お前もあまり心配するな。もう起きてしまったことだ、反省して、攻略隊が無事に帰ってきたら、その時適切な処罰を受ければ済むことだ。」
「うう……宗主様……優しい……」
「ダビデもこんなことがたまにあって、その罰として山の頂上に数ヶ月間もぶら下がっていたことがあったな。」
「こ……え?」
「その後は二度としなかったな。もう地位があるので塔に行くことは減ったが、行かなければならない時は、誰よりも模範的に率先している。」
「………………はい?いや、はい?」
「実話か………………」
ナ・ジョヨンとファン・ホンの顔が真っ青になった。
「ん?どうしたんだ?」
「なぜ?なぜ?ちょっと!人を山の頂上に縛り付けるなんて、なぜ縛り付けるんだ!まるで原始時代じゃないか?それは厳然たる犯罪じゃないか!」
「一日二日でもなく数ヶ月とは……!ダビデ様は大丈夫なのか?どうしてそんな、残虐非道なことを……!」
「………………?名山の情緒を体で受け入れながら、自分自身を振り返るのは、先祖様たちの代から代々受け継がれてきた長年の修練法……」
「ところで理由を聞いてみよう。なぜそんなことを?それだけ大事なことをすっぽかしたんだから、理由がないわけではないだろう。」
「あっ!」
ナ・ジョヨンが慌ててキャリーケースを振り返った。
しかし、まだ目覚めていないのか、相変わらず静かなキャリーケース。
ハンカチに何日も徹夜して祈りの呪文を刺繍しておいた甲斐があった。
安心したのも束の間、再び込み上げてきたナ・ジョヨンが、むやみにキャリーケースを足で蹴り始めた。
「うっ、お前のせいだ!全部お前のせいだ!この悪い悪党!お前さえいなければ!」
「………………?!うわ、うわうわ!なぜ急にキレるんだ?ヒーラー、お前、こんなキャラだったのか?」
「止めないでください!隠れ家も何も、今すぐ東海の海に行って投げ捨ててやる!」
ああ。
「そういえば……黎明ギルド長様!こういう方面では専門家ですよね?」
「ん?」
周囲をぐるりと見回したナ・ジョヨンが、声を低めてファン・ホンに囁いた。
「キャリーケースごと投げたら……水に浮きますか?それとも映画で見たみたいに、中に石でも入れなければいけないでしょうか……」
「何言ってるんだ、こいつは……?」
「いや。だから、さ、人を投げたら……」
「ひ、ひええっ?!」
ファン・ホンがびっくり仰天して、慌てて後ずさった。
「く、狂ったか!人をなぜ投げる?お前、頭がおかしいのか?サイコパス?ど、どうしてそんな恐ろしいことを!お母さん。怖いよ!」
「ち、ちょっと待ってください。そうじゃなくて……!」
予想外の反応に戸惑ったナ・ジョヨンが、悔しそうに声を荒げた。
「いや、でも、ヤクザじゃなかったんですか?!コンクリート詰めのドラム缶とか得意じゃないですか!」
「こ、このガキ、頭がおかしいのか!税金をきちんと納めて、大統領府で大統領と一緒にご飯も食べる善良な21世紀のヤクザに、言えないことないのか!今はいつの時代だと思って、そんな狂ったことを言ってるんだ!」
絶望したナ・ジョヨンが、がっくりと座り込んだ。
「うう!じゃあ、私はどうすればいいの!どうすればいいのよ!こんな常識的な反応だとは思わなかったから、ソロプレイすればよかった!無駄にパーティーメンバーを求めて!まだ証拠隠滅もできていないのに、全部バレてしまったじゃない!」
「はっ?!お、お、お前、まさか今ここに人が入っているって言ってるのか?!はっ………………!」
慌てたファン・ホンが、我知らずあたりを素早く見回して、ハッとした。
あれ?
「ち、ちょっと!ストーップ!白鳥!お前、どこに行くんだ?!」
「休憩時間は終わった。帰らなければ。」
こ、こうやって足を洗うと?
あっさりと?
何事もなかったかのように無心に退場する白鳥の姿に、ファン・ホンが口をあんぐり開けている瞬間。
「うう……。だめだ……!あ、違う。単独犯行ではないと、共犯者がいると自白すれば刑量が減るかもしれない……。幸い、ここにはヤクザもいるから、ジョヨン、落ち着け。大丈夫……。」
「いやいや、全然大丈夫じゃないから!こっちは全然大丈夫じゃないから!」
あいつ、人の身を滅ぼそうと企んでいるのか!
ナ・ジョヨンのぞっとするような独り言に、真っ青になったファン・ホンが、慌てて白鳥を捕まえた。
「どうしたんだ?もうお前と話して時間をたくさん費やしたのだが。」
知らんぷりして背を向けるマイペースな白鳥と、パニックに陥って嘆く道連れナ・ジョヨン。
二人の女の間に挟まれて、とんだ災難に見舞われそうなファン・ホン(職業:大韓民国No.1ヤクザ、特技:国家情報院要注意人物)が必死に食い下がった。
「ま、まずは、事情!そうだ!こいつの事情は聞いてみるべきじゃないか?あいつを助けると言ったのは誰だ!俺が言ったか?お前が言ったんじゃないか!海太宗主が、ひ、一言で二言言うような真似をしていいのか?!」
「ふむ。」
一理ある話だ。
納得した白鳥が頷いた。
待っている一行と関係者たちに少し申し訳ない気もするが、目の前の困っている者がより優先されるべきだった。
キャリーケースに人を詰めたとは、なかなか独特な趣味だが……。
「ジョヨン。カバンを私が開けてもいいか?」
「……!」
「……!」
返事まで待つ必要はなかった。
白鳥は、ずんずん歩いて行った。
座り込んでいたナ・ジョヨンが慌てて立ち上がり、ファン・ホンが何か言おうとしたが、白鳥の方が早かった。
キャリーケースの前に立った彼女が、袖を一度軽く払った。
すると、音もなく切り落とされていくキャリーケースの鍵。
「だ、だめ!」
必死なナ・ジョヨンの叫びに、ファン・ホンは目を覆おうと腕を上げた。
目の前に鮮明に現れるであろう変死体の姿を予想して。
ところが。
「……え?」
「ん?」
門が開くようにパカッと開いてしまったキャリーケース。
そしてその中にうずくまった姿勢でぐっすり眠っている、傾国傾城の外国人美男子。
降り注ぐ真昼の日差しに、独特極まりない海と空の色が混ざった髪の毛が宝石のようにキラキラと輝いていた。
「……」
「………」
「……」
この人は……。
三人が同時に沈黙した。
「あ、だめ……!」
遅れて我に返ったナ・ジョヨンが駆け寄ってきて、慌ててキャリーケースを整えた。
閉めようと全身で必死に押してみるが、鍵が壊れたキャリーケースは簡単には閉まらなかった。
「み、皆さん……!私が全部説明します!説明できます!うう、通報なさるとしても、どうか私の話を先に聞いてみてください……!」
「解放団団長?」
「……え?」




