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452話

ナ・ジョヨンが首の後ろを押さえて気を失いそうになると、ファン・ホンが慌てて支えた。


激しく何度も揺さぶると、ナ・ジョヨンがぼんやりとした目をぱちくりさせる。


「ここは………?ここは......どこですか?」


「……!だめだ、戦友よ!しっかりしろ!我々の使命!世を救う希望はお前と俺しかいないことを忘れたか!戦友よおお!」


「黎明ギルド長様……?」


「そうだ!俺だ!わかるか?」


「うう……。わ、私はどうなったんですか?確かにものすごい精神的ストレスを受けて頭の中が真っ白になったことまでは覚えてるんですが……!」


「もういい!忘れろ!苦痛な記憶を何度も思い出すんじゃない!」


「と、とても恐ろしいことを聞いた気がします……!」





ファサッ!チョロチョロ…………。


「・・・。」


「・・・。」


互いに抱きしめ合い、戦争映画に劣らず悲壮な台詞を唱えていた二人の男女がぎこちなく振り返った。


「あ。」


両手にそれぞれ茶葉と急須を持った白鳥が、物静かな顔で軽く頭を下げた。


「邪魔をしたならすまない。洋食を食べたら胃の調子が悪くなったのでな。すぐに淹れて片付ける。」


ファン・ホンが驚愕して唇を震わせた。


「何だ、お前……………お前の手に持ってるそれ、三昧真火じゃないか?六道仙道でしか見ないような……いや、今、三昧真火で湯を沸かしてるのか?」


なぜ?一体なぜ!


「電気ポットがあるじゃないか!コードを挿せばいいんだ!コードとコンセントがそこにあるじゃないか!」


「茶をなぜ電気で沸かす?おかしなことを言うな。」


「・・・!」


「……こ、こいつ……………!」


首の後ろを押さえるファン・ホンを押し退けて、ナ・ジョヨンがむっくりと起き上がった。


もう我慢できない!


「いい加減にしてください!今、お茶が問題ですか?こんな状況でお茶を召し上がるとは!いい加減にしてくださいよ、宗主様!そ、それに……………!」


ナ・ジョヨンが両目をぎゅっと閉じた。


「茶の香りは一体なぜこんなにも甘美なんですか!うう!」


「わかるか。天銀観の茶だ。銀獅子が新年ごとに同盟に贈るものだ。ロサ戦の秘密の茶園で栽培すると聞くが、市場には公開しない茶種らしい。」


「え?何だよそれ!俺も同盟なのに一度もそんなものもらったことないぞ!」


「うむ。同盟の基準には個人差があるのかもしれない。」


「・・・!」


再び固まってしまったファン・ホンは眼中にないかのように、白鳥が穏やかな顔でゆっくりとお茶を淹れた。


「そなたたちと分けるようにダビデが用意してくれたのだが、そうでなくても一人で楽しむには気が引けていたところだ。一緒に飲むか?」


「はい……………って、違う!」


かろうじて正気を保ったナ・ジョヨンがギラギラと目をむいた。



「ダビデ様?今、ダビデ様が私たちと分けて食べるように用意してくださったとおっしゃいました?私たちが一緒にいるという事実を外部者、つまり他人に漏らしたんですか!」


「………………?それではいけないのか?」


「う、ううっ。」


「戦友よ!」


倒れるナ・ジョヨンを慌てて支えながら、ファン・ホンがむっとして叫んだ。


「当たり前だ!ま、まさかそれを言うか!お前は秘密もないのか!」


「秘密だったのか…………初耳だ。」


「常識。世の中には常識的に!というものがあるじゃないか!今、ヒーラーと俺とお前は指名手配!地球全体に悪者として烙印を押されて逃亡中の犯罪者じゃないか!なんて頭の悪いやつだ!」


ようやく白鳥の表情が深刻になった。


犯罪者?


「私が?」


「そうだ、お前だ!ここにお前以外に誰がいるんだ!俺は今、幽霊と話してるのか?」


「いつからだ?そなたたちの話がまとまらないのは今に始まったことではないが、今回は特にそうだ。」


何だって?


まさか仲間たちの目の前でリアルタイム共犯切り?


人性を超越した展開にファン・ホンが顎を外した瞬間、遅れて正気を取り戻したナ・ジョヨンが声を荒げた。


「何を言ってるんですか、宗主様!私たち今まで一緒にやってきたじゃないですか。そ、そ、そ、それ!」


「それ?」


「な、な、な、な、な………………」


「ジョヨン。言葉をはっきりさせろ。言葉をきちんと締めくくらないのも良くない習慣だと前に言ったはずだ。」


「拉致!拉致ですよ!ラチイイイ!」


つらい。とても。


ナ・ジョヨンは手のひらに顔を深く埋めた。


「もう取り返しがつかない…………もう私たちは終わりだ…………社会に戻れない体になってしまった…!」


白鳥の顔がさらに深刻になった。


「ジョヨン、そなた、もしかしてまだ寝ぼけているのか?体調が良くないなら適度に休むように。」


「ごまかさないでください!目の前に迫った私たちの現実を否定しないでください!それならこれ!」


両腕を広げたナ・ジョヨンが、これ見よがしに四方を指し示した。


「見てください!窓は偵察用のが一つしかない99.9%の完璧な密室!ソウルの都心から遠く離れた京畿道の片隅の人里離れた田舎!指紋とパスワード、虹彩の3つがすべて一致しなければ外部から絶対に開けられない鉄壁のセキュリティ!そして決定的に置かれたこの内部の鉄格子!」


ファン・ホンが補助するように、部屋の真ん中に置かれた鉄格子をガタガタと揺さぶった。


「絵に描いたように完璧な犯罪アジト…………!こんな場所でなんと一ヶ月も過ごしておいてそんなことが言えますか?それでは私たちが今までやってきたことを宗主様は何だと思っていらっしゃったんですか!拉致でなければこれは何なんですか!」


白鳥が即答した。


「脱出ゲーム?」


「………………!ば、ば、脱出ゲーム!こんな脱出ゲームがどこにあるんですか!一体何を言ってるんですか!」


「あいつ、どうかしてるんじゃないか!」


「犯罪場所を偽って作った部屋に自ら閉じこもって遊ぶのが最近の若者の遊びのトレンドだとダビデから聞いたが。」


「え?そう聞くとそれなりに説得力が……………いや!偽って作ったんじゃないじゃないですか!閉じこもって遊んでるんじゃなくて隠れてるんですよ、隠れてる!人にバレるのが怖くて外に出られず身を隠してる!」


「そうだ!髪の毛一本見られるのが怖くて出前一つ頼めないのに!脱出ゲームってなんだ!頭おかしいのか?」


「そうです!」


怒ったマルチーズのようにワンワン吠え立てる二人。


黙って聞いていた白鳥が頷いた。


「ようやくわかった。だからずっと外に出るなと言っていたのか。」


「そうです!それです!」


「はあ、やっと話が通じるな!」


「わかった。」


「………?何だ?急に刀をどうしたんだ?」


「……!宗主様?宗主様!ちょっと待ってください!またどこへ行くんですか!急に荷物をまとめるのはなぜですか?」


ここで過ごした時間が少なくないので、まとめなければならない荷物も多かった。


外泊するとヒョン・ソワンが用意してくれた済州島産のそば枕、関心がないふりをしながらも何をしているのかずっと覗き込んでいたダビデのために別途書き留めておいた日記帳などなど。


きちんとインベントリを整理した白鳥が、失望感を隠せずに二人を振り返った。


「戦時状況でなければ、いかなる犯罪行為にも協力することはできない。先に言っておけばよかった。」


「何?あ、あいつ、何を言ってるんだ、あいつ!今さら何を悟ったんだ!お前の世界の平和は遊びか!」


「助けてくださるとおっしゃっていたのに、なぜ……!ちょっと、口を尖らせて……ま、まさか拗ねてるんですか?!脱出ゲームキャンプじゃないからって?!」


「……」


ヘタの人ではない者たちとの合宿生活が初めてなので、それなりに楽しんでいた白鳥がノーコメントで通り過ぎた。


ファン・ホンとナ・ジョヨンが慌てて彼女のズボンの裾をつかんでしがみついた。


「行かせない!どうしても行かなければ俺を踏んで行け!」


「ホン。きちんと横にならなければ踏めないだろう。離してきちんと横になるように。」


「だめです!行かないでください、宗主様!ううっ、この地獄に私たちだけ置いて行かないでください!私たちを見捨てないでください!」


ナ・ジョヨンが鶏の糞のような涙をぽろぽろこぼした。


なぜなら、白鳥がこのパーティーを離れたら本当にまずいことになるからだ。


「あの狐」は平凡な人が太刀打ちできるレベルではなかった。


白鳥という頼もしい後ろ盾がいなくなれば、ファン・ホンと二人だけでこの拉致生活を耐えなければならないのに……。


「だめだ!」


ナ・ジョヨンは焦った。


「脱出ゲームキャンプだと勘違いしてもいいです!もう何も言いませんから!」


外食でも外泊でも以前のように好きなようにしてくださいと、付け加えようとした瞬間。


「脱出ゲームキャンプ?」


「……!」


「……!」


ひ、ひっ……!


真っ青になったナ・ジョヨンとファン・ホンがそのまま凍りついた。


そんな彼らの頭の間からサラサラと流れ落ちる薄青色の髪。


ぞっとするほど良い香り、また耳に刻まれるように甘い美声が感覚を濡らした。


「面白そう。また俺抜きで遊んでるの?」


拉致被害者、失踪3週間を超え、地球を騒がせている張本人。


そして白鳥がこの拉致を犯罪ではなく単なる遊びだと勘違いさせた元凶!


まるで浴室から出てきたばかりのように、白いバスローブを羽織ったキッドが濡れたまつげを震わせながら笑ってみせた。


「寂しいな。俺も仲間に入れてよ。見ての通り、俺はいつでも準備万端だよ、ダーリンたち。」


「うぎゃあああ。」


「きゃあああ。」


拉致犯たちが声にならない悲鳴を上げた。


口もきけない彼らをしばらく見守っていたキッドが肩をすくめて身を起こす。


ゆっくりとした足取りで部屋の真ん中を横切り、鉄格子の中に入っていく姿が余裕そのもの。


ふかふかのベッドにどさりと横になり、読みかけの本を手に取る姿がとても自然だった。


どの角度から見ても拉致された被害者とは見えない姿。




パラパラ。


静寂の中でキッドがページをめくる音が平和に響く。


傾国傾城の美男の読書時間。


名画以外の何物でもない風景だった。矛盾した内容でなければ······。


「負けるな。ナ・ジョヨン······!」


やっとの思いで勇気を振り絞ったナ・ジョヨンが、泣きそうな鼻声で叫んだ。


「か、帰って!お願いだから帰って!もうあなたの国に帰ってください!」


隣のファン・ホンも加勢して懇願した。


「ヤンキーゴーホーム!プ、プリーズ!」


「あらまあ。」


キッドが優しく微笑んだ。


「うん。だめ。聞き入れない。聞き入れるつもりはない。諦めて。」


「ああ……。終わった……。」


鉄壁のような拒絶に悲恋のヒロインのようにへたり込むナ・ジョヨン。


「そ、戦友よ!大丈夫か?!……ま!お前は血も涙もないのか!人がこうして懇願したら聞くふりくらいしろよ!帰れって、ちょっとは帰れ!お前に会ってからいいことが一つもない!」


「ダーリン、どうしたの。」


パタン。本が閉じられる。


いっぱいに折りたたまれる目元。見る者を思わず緊張させる特有の狐の笑みが誘惑的で。


「言ったでしょ。」


「……!」


「あなたが無主の塔を『どうやって』知っているのか教えてくれるまでは、この拉致、終わらないんだから?」



拉致28日目。


いつの間にか生気が満開になり、キラキラと輝く顔でキッド(前職:マフィア、国際テロリスト、世界観メイン悪役)が明るく笑った。


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