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437話

「コ、ゴホッ!ゴホン!なぜ……なぜだ?」


「また鼻血出すかと思ってマジ焦ったじゃん!」


「な、なぜなんだよ!そんなもの集めてどうするんだ!」


「……?なんとなく?」


「なんとなく?マジかー、いや、すごく気になるんだけど?どうして……?まさか、生き返らせてくれって言うのか?まさか!星座が神様かなんかだと思ってんのか!」


「神様じゃないの?」


「……まあ、そうだけど」


「まあ、でも、そういうわけじゃないし」


生き返らせてくれるなら嬉しいけど……。


サルバは淡々と舌打ちをした。


「死んだら終わりだろ、何を生き返らせるんだ。流れに逆らって泳いでも、戻って来られないんだよ。漁師の常識だ」


「……」


「それよりは、まあ……懲らしめてほしいんだよ」


「懲らしめる?」


「うちの親父は悪神より格上なんだろ?お前も数日会ったんだから分かるだろ。この世界がどれだけめちゃくちゃか」


潮風を浴びながら、サルバは上半身を欄干の向こうに乗り出した。




夕暮れ時。


黒い海水の上に染み込む赤い水が血のように見える。


神を祀る神官たちが先頭に立って奴隷制を広め、奴隷になりたくなくて皆が自分の代わりに他人を奴隷にするために自ら枷をはめる場所。


高い海に上がれなければ、いくら叫んでもわめいても声一つ届かない絶望のピラミッド。


一生この地獄で生きてきた海賊の青年は、それだけこの世界にうんざりしていた。


「だから偉大なる星座様、うちの親父を懲らしめてください、このクソみたいな黒い海をどうにかしてください。お願いでもしてみたくて密輸業者にあれこれ集めてもらってるんだけど」


「……」


「ただの、まあ、希望的観測だよ」


サルバは厭世的な冷笑を浮かべた。


「分かってるよ。宇宙のてっぺんにいる人に、俺がどうやって会えるんだ。俺は神官でもないし、海賊の端くれだから一生この海に閉じ込められて出られないのに」


「……」


「とにかく……ピョルヤもそれを望むだろうよ。自分の復活よりは」


「…………ピョルヤ?」


どこかで聞いたことのある名前だ。


黙って聞いていたジオが片方の眉をピクリと上げた。


「だから要するに、探してる人は後悔する前に早く探せってことなんだけど……ついでに聞くけど」


サルバはパッとジオを振り返った。


「ちょっと聞くけど。一体どういう関係なんだ?お前と不滅槍は」


「わ、来た!」


「クゥ!ついに!」


「……?」


聞こえないふり、興味ないふり、同じ空間に存在しないふり!


息を殺して二人の会話に神経を尖らせていた海賊たちが、わっと立ち上がって駆け寄ってきたのは同時だった。


「そうだ!キャプテン!どういう関係なんだ!」


「聞きたくてマジで気が狂うかと思った!」


「親の仇だって言ってなかったか?なのに不滅槍は迷わず槍を投げて助けてるし!」


「災厄の双子の態度もあれは何だ?まるで王様をお迎えに来た家来みたいじゃないか!」


「あ~、副船長は何で聞いてもいない自分の話があんなに長いの?待ってる間にお尻にデキモノができるかと思った!」


「そうだ、そうだ!さっさと本題に入れよ!」


「ううう!身の上話ううう!」


「告白もできないで失敗して、ううう!情けない!」


「…………クソ、そんなに聞きたかったらお前らが聞けよ!なんで盗み聞きしてんだ!」


「あれ?甲板で騒いでるのは聞いてもいいってサインじゃなかったっけ?」


「そうだよな。何だよ、分かってるくせに?ここは紛れもなく共有スペースだぞ!」


「共有スペースってなんだ!出てけ!さっさと出てけ!」


顔を真っ赤にしたサルバが激しく足を蹴り上げたが、効果はなかった。


ボコボコに殴られながらも、キラキラした目でジオを見つめる海賊たち。


「さっきあの双子の女が【キング】って言ってなかったか?」


「キングってどういう意味だ?災厄の双子もキャプテンと同じ宇宙人だったのか?」


「はあ」


マジでうるさい海賊団だ。


ホン家の双子が退場した後も、チラチラ様子を伺うだけでなかなか近づいてこないから、警戒されてるのかと思ったのに。


「まあ、いいか……」


船は現在、順調に進んでいる。


今、沈みゆく夕日が完全に沈んだら、幽霊船が先頭に立って1階の門を越え、闇に乗じて聖戦の前に接近するだろう。


そして聖戦に向かったキョン・ジロクがこちらに合図することになっている時刻は、遅い夜明け。


そうしてバンビと合流する瞬間、このくだらない海賊ごっこも終わりだ。


必死に秘密を守る必要ももうないってことだ。


「そろそろ明かしてもいい頃合いだ。フフ」


ジオは鼻をすすった。


うるさくてネジの外れた未開人たちだけど、言葉の通じない未開人らしく、それなりに遊んでくれる面白さもあった。


「ちょっと劣化版ミニオンズって感じかな」


こんな奴らなら、いいかも……!


温かい笑顔を浮かべたジオは、晴れ晴れとした気持ちで咳払いをした。



コホン。

「さあ、注目。エヘン。あのさ」


「うんうん!」


「驚くなよ?お前たちだけに教えてやるんだぞ?」


「うんうん!」


「実は私は、いや、違うな。とりあえず私の肩書きから教えてあげる」


あることも知らなかった肩書きだけど、すごく長くて大げさで、めちゃくちゃ強そうなのが、バハムートから聞いた瞬間から気に入っていた。


得意げになったジオは、誇らしげに言った。


「コホン!この私は【全能なる黄金魔術と全知なる母なる木の帝王】である!」


「……おお」


「1億2千万の銀河を統べ、この星系で最も偉大な魔法使い、つまり【星座】であり」


「おお……?」


「個人的には、お前たちが『不滅槍』と崇めているキョン・ジロクの、実の、姉、だ」


「おお……」


どうだ?


「驚いたか?びっくりしただろ?」


めちゃくちゃひっくり返ってるだろ?


キャハハ。


後ろ手に組んで笑いながら、期待感で膨らんだ頬で海賊たちをチラッと見回すと。


「えー、なんだよ……」


「相変わらずだな……最後までふざけてる」


「教えたくないなら言葉で言えよ、言葉で!こっちはもういい年なんだから、いくらキャプテンでもひどすぎるだろ」


「チッ……!」


「ど、どうしたんだ?」


慌てたジオが両手を振り回した。


「あ、いや。お前ら?マジだって。マジなんだって!お前らキャプテンのこと信じられないのか?あ、そ、そうだ!キョウル!お前ら名前が同じだって不思議がってたじゃん?覚えてる?あれ実は同姓同名じゃなくて、そいつなんだよ~ランキング海戦の時遅れてきたのも、そいつが記憶を失っても私のことを忘れられなくて付きまとってきたから遅れたんだぞ?ウケるだろ?」


「エヘン、ペッ」


「……!」


「もういい加減にしろ!もうみっともないぞ!」


「こ、このクソ野郎ども……!マジだって!」


「おい~、ピーター隊長がラジオ直したってよ!」


「マジか?!」


「雰囲気が台無しになるところだったけど、タイミング最高だな~!こんな日に音楽がなかったら寂しいだろ!」


星座を無視した海賊たちが、わーきゃー言いながら甲板のラジオに向かって駆け寄っていった。


「もしもし……?」


ジオがこっちを見ろと片手を高く上げたが、驚くほど誰も関心を示さなかった。


ボリュームをさらに上げているのか、音楽の音だけが大きくなっていく。


「クソ……あの未開人ども……!」


「ハッ。〈ゴミ捨て場の太陽〉?うちのテーマソングにピッタリじゃん!」


「キャー、マーキュリー!何してるの?早く一曲歌ってよ!」




ヒューイ!


海賊たちが意地悪く口笛を吹きながら手招きした。


ジオと目が合ったサルバがニヤリと笑う。


むすっとしているジオの頬を指で軽く突っついて、甲板の中央に歩いて行った。


そして誰かが投げてくれた酒瓶をひったくり、マイクのように握った。


「フフン!それでは、うちの星座様に捧げます」


海賊たちがドッと笑い転げた。


ピーターが嬉しそうな顔で駆け寄ってきて、ジオに肩を組んだ。


「さあ、行きましょう、自称星座様!上席にお通ししますよ!」




『7-A:あの生意気な下等生物ども……!』


『バベル:最高管理者、泣いてるんじゃないでしょうね?強くならなければなりません』



慰めるムスリたちのメッセージを全部いらないと拒否しようとした瞬間だった。


サルバが歌い始めた。


ジオは思わず顔を向けた。


美しいお嬢さん


夏が来るね僕は行かなきゃ


「……おお」


「なかなかやるな」


みんながマーキュリーから探した理由が分かった。


しかめっ面だったジオの眉間が、いつの間にか緩んでいた。


どこへ行くの


偽りの子供たちが踊る場所眠れる父が待つ場所旗を上げろ、コンパスを回せ黄金なんて興味ない


「ラムを持ってこい!」


偽りの子供たちよ階段を積み上げたのか無駄なことだ僕は太陽だ一番下から昇る太陽だ!


泥棒と乞食、孤児と囚人僕たちはそして


「海賊だ!」


「世界を手に入れた海賊だ!」


合唱した海賊たちが酒瓶をカチンとぶつけ合った。


戦闘に疲れて倒れていた残りの団員たちも、一人二人と目を覚まして合流していく。


歌声が大きくなり、盛り上がりが増した。


いつの間にか船長のエンカンも一緒になって踊っている。


ある銀河旅行者から「善良なサマリア人」の話を聞いて、船長が感動して名前を付けたという海賊団。


「素敵な話じゃないですか、ご主人様お兄様?隣人がどんな姿をしていようと、困っている彼はあなたの隣人だから助けなさい!」


「躊躇うこともなく!」


「迷うこともなく!」


結局、名前の通り一日生きるのも大変な乞食や泥棒が集まってきた海賊団。


その癖が抜けず、怪しさ満点の宇宙人の魔法使いとも躊躇なく肩を組む奴らばかりが集まった場所。


ただ流れるままに、海の教えのように……。


「……大したことないな」


私は何でこんな簡単なことができなかったんだろう?

キョン・ジオは揺れる波の動きを全身で感じながら、そっと目を閉じた。


平和だった。皮肉にも。




☆☆☆



そして海賊たちの歌とロマンの夕日が海面下に落ちる頃……。



「ハッ?門だ!」


「バベルの門だ!ま、マジで1階だ!」


「ええっ?」


「な、何?」


私、いつの間にかうっかり寝てたのか?


バッと起きたジオが目をパチクリさせた。


いつの間にかあたりは薄暗くなっていた。


わいわい騒ぐ海賊たちの声につられて、のそのそ歩いていくと――



「ヒヤア……?」


「めっちゃデカいな」


黒く伸びたバベルマウンテンの壁の真ん中に、黄金で細工された門枠が空の果てまで高くそびえ立っている。


韓国のバベルの塔では見られない姿に、海賊たちのように首を傾げて感嘆していると。



タッ!


サマリア号の横にしばらく停まっていた幽霊船から、一人の人影が降りてくる。


甲板に着地した彼の目は、暗闇の中でも鋭く光っていた。


ジオと視線が合ったのもつかの間。


再び顔を背けてサッと見回すと、操舵手のほうへためらうことなく直進していく。


「出てきてください」


「わ、私ですか?どうして……?」


「どうしてって、じゃああの門の向こうの海に自信でもあるんですか?」


3年が経ち、何倍も進化した黄金眼。


ついに自分の目の効用を身につけた、ホン・ヘヤが、気難しそうに顎でしゃくった。


「今からこの船の舵は私が取ります」




☆☆☆


【最初の課題が付与されました】


【挑戦を開始しますか?】


【警告:該当クエストは個人専用特殊課題であり、地域レベルおよび各聖者の現在のレベルを超過した内容を扱います。閲覧または遂行する際、精神力に永久的な損傷を受ける可能性があります】


【デバフ:状態異常が活性化されました】


【弱化】燃焼 - 覚醒者が超越界に露出しました。格の隔たりにより精神力が持続的に消耗されます。


【強制】混乱 - ストレス低下数値によって行動が制限されます。症状が悪化すると視力制限および狂気などの障害が付加されます。


【被害】呪い - 超越界があなたを凝視します。確率によってランダムに発動します。



【覚醒者の精神界固有特性が反応します!】


【固有特性、不屈の意志(伝説)により、すべてのデバフが強制解除されます】



「……」


過去のログを素早く見ていたキョン・ジロクの視線が、現在メインに浮かび上がっている槍――


つまり、解除されたクエストウィンドウに向かった。

超越クエスト/個人専用/



【覚醒者キョン・ジロクの12昇天課題】


| 第1業 | ■■■ ■■【ロック】

- 授与者:第13集合官アクヤ


| 第2業 | 毒の克服【進行中】

- 授与者:第13集合官アクヤ


- 世の中のすべてのものが毒である。自ら進んで猛毒を噛み砕く者だけが、孤独から自由になる資格を持つ。最も危険な罠で毒によって死に、毒によって目覚めよ。


- 必要条件:解毒(1回)


- 難易度:中


- 現在遂行点数:65/100



【注意事項】

• 聖約星権限制限

•解毒時、神聖および治癒スキル使用不可

•解毒関連本人以外の助力禁止



横顔を伝って冷や汗が滑り落ちる。


しかし、拭うことも、悟られることもできない。


キョン・ジロクは平然とした態度を崩さず、正面の能無しどもを斜めに見つめた。


「マジか……」



聖戦の中の祈祷室。


ジン・キョウルとペク・ドヒョンが揺るぎなく向かい合っている。


特級功績である不滅槍がすぐ目の前にあったが、鋭い敵意はひたすら互いだけに向けられたまま。


「……こいつらとこんな形で一緒にいたくないんだけど」



マジでクソみたいな三者会談だった。


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