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433話

今になってようやくまともに気になり始めたようだ。


真剣になった彼の眼差しが以前とは違っていた。


しかし、ジオは少しも嬉しくなかった。


見物して鑑賞する目から、警戒と興味が込められた観察に変わっただけ。


相変わらず、自分が受けるべき愛情のようなものはどこにもなかったから。


キョン・ジオが失う、だろうと、一度も考えたことがなく、想像すらできなかったものが、跡形もなかった。


「私が誰か知ったら、こんなくだらない戯言を大人しく聞いてあげたことに驚いて気絶するだろうな。」


「簡単じゃないと思うけど••••••やってみろ。」


「私が誰かって。」


「ああ。」


「私は、キョン・ジオ。」


「......」


「聞いてもわからないだろう?」


「......うん。」


「期待してなかったよ。私もはっきりわかったから。」


涙はもう出なかった。


愚痴をこぼす相手ではないと悟ったから。


冷めていく心と同じように、ジオの顔も冷たくなった。


「記憶喪失イベント、正直大したことないと思ってたけど。」


今は「課題」のせいで制約がかかっている身だが、どうせこれは一時的なものだ。解除される瞬間、キョン・ジオとバベルが解決できない問題はほとんどなかった。


だから単純な時間の問題………………


腹立たしいし、とんでもないし、少しは裏切られた気持ちにもなったが、今さえ過ぎればどうにでもなると。


嫌だという口実で、あれこれ避けながらも、ジオは正確に何が怖くて逃げているのかもわからなかった。


しかし。


「政府は?………………」


元のキョウルなら、ジオに絶対にしなかったであろう言動。


自分に暴言を吐き、ぞんざいに扱う彼と向き合って初めて悟る。


こいつはキョウルじゃない。


「キョウル」はジオが名前を与え、彼がジオに愛を与えながら完成された存在だった。


キョウルではない彼は、本来こういうやつだ。


人間を限りなく馬鹿にし、必滅の者たちを嘲笑し、踏みにじり、無数の生の銀河を踏みつけながらも、罪悪感一つ感じず、ただ自分の欲望だけに忠実な外の悪魔。


人の皮を被った永生者の中で最も過酷な虐殺者。


昔のものと呼ばれるほど長い生を生きる彼にとって、「例外」は1億2千万個の銀河でただジオ一人だった。


互いの名前を名付け、互いを呪いとして縛り付け、生と死という戦争を激しく繰り返しながら、この銀河で最長の歴史を築いてきた仇であり、唯一の恋人だけが、この傲慢な外来神の例外だった。


彼が抹殺した銀河を元の状態に戻そうと消耗された星座の格がどれほどだったか?


「世界復旧」の規模がこれほど大きくなったのは、その影響が一番大きかった。


そうやって収拾しても、残存した殺業に究極の格が崩れるほど。


彼はひたすらジオにだけ自分を献身し、犠牲にした。


残虐な本性を殺して喜んで負け、彼女の愛が自分のものと同等であることを願いながら、血塗られた手で王座を築き上げた。


それが、「キョウル」だ。


だから格を失い、歴史を失い、愛を失って墜落し、例外さえ消えたこの男は、キョン・ジオの星ではない。


愛のない彼はキョウルではなく。


そんな彼にとってジオは何でもなかった。


未来のことがどうなろうと、今この瞬間、この時点でジオはキョウルを「喪失」したのだ。


キョン・ジオはついに自覚した。


経験した中で最もひどい喪失を。


ポツ•••


「バベル:最、最高管理者••••••」


「大騒ぎしないで。正気だから。」


「••海賊。血が出てるぞ。」


「......」


「聞こえないのか?血が出てるって言ってるんだ。」


キョウルが浅く眉をひそめた。


鼻血なのかバンダナが濡れて血がポタポタ落ちているのに、平然と自分だけを見ている様子がもどかしかった。



「何をするつもりだ。」


「.....」


「何をしているんだ!」


汚い土の地面に落ちた、跡と呼ぶのもためらわれる痕跡にも惹かれて追いかけた、まさにその血だ。


なのにそれが自分の目の前でポタポタ落ちているのに、飛びかかるどころか、妙に焦るばかりだった。


わっと顔をしかめたジン・キョウルが手を伸ばした。




パシッ!


「触るな。」


「…くそ。」


睨みつけるジオの視線を、キョウルがむかつきながら受け止めた。


憎たらしく払い除ける腕をへし折ってやりたかったが、この百億ウォンの耐久力がひどく低いという事実を忘れてはならない。


必死に思い出しながら、彼は強引にバンダナの端を掴んだ。


「触るなって。」


「じゃあ、私が触る前に、お前が解決すればよかったのに-」



・・・・・・パサッ


剥がされたバンダナが床を転がる。


ポタポタ落ちる血の雫と土埃が混ざり合って足元が汚れていくのに、目をそらすことができなかった。


キョウルがそのまま凍り付いた。


「......」


「.....」


路地裏に忍び込んでくる湿った海風。


めちゃくちゃになった黒髪。


肺腑まで襲ってくる血の匂い、赤く染まった蒼白な鼻筋、そして唇。


血に濡れたその顔を見る瞬間、ジン・キョウルは雷に打たれたように固まってしまった。


「……お前。」


喉が詰まった。


ひどく。


閉鎖言語がひどく裂けて出てきた。


「お前・・・・・・一体何者なんだ••••?」


その時だった。


ハイロードの意識世界が激しく揺さぶられるにつれて、音もなく周囲を包んでいた遮断幕が壊れる。


空間が壊れ、遠い騒音が響いてきた。




「海、海戦だああああ-!」


「ランキング海戦だ!ココ・チョラトゥがサマリアに突っ込んだぞ!」


「速報です!速報!絶対に折れないマーキュリー戦士!!!!」


「サルバ・ガスパルが死んだって?!」


「何してるんだ!早く錨を上げろ!早くマウンテン入口へ行け!早く!」


「大海賊たちの衝突だ!これは絶対だ、絶対に1層海が開くんだ!!」




「認めるよ。私が一度負けた。」


「......!」


ジン・キョウルがよろめきながら後ずさった。


急激に折れる彼の腰の下から、血が一握りわっと吐き出される。



反発力による逆流!


抗魔属性が無力なこれは-


「真なる魔力.....!」


油断した。


前兆もなく起きた力が、瞬く間に彼の内臓を荒々しくかき回した。


そしてよろめきながら壁に寄りかかるキョウルの横を通り過ぎる、無情な足音。


「おいおい泣いてしがみつくやつが負けるゲームなのに、私がクソ惨めに負けたと。でもこれは覚えおけ。」


「......」


「私は負けた勝負は絶対にひっくり返さないと気が済まない。だから私のレコードには敗北記録がない。敗戦も結局逆転勝利として記録されるんだ。」


反転のキー。


逆転の主人公。


「固有タイトル、「逆転の反王」が覚醒者の意志に応えます!」


「万流天秤があなたを見つめます。」


「偉大なあなたは絶対に屈服もせず、誰にも敗北もしません。」


バベルが主人に送る静かな応援に、失笑で答えたジオが歩みを止め、キョウルをちらりと見下ろした。


「言っただろ。」


「ケホッ......」


「大人しく『聞いてあげた』んだと。」


吐血しながらも、キョウルは呆れていた。


さっきまで下品なからかいに怯えて泣いていたやつが、本当に同一人物なのか?


抑揚のない口調がただただ生硬だった。


口元の血をさっと拭いながら、彼が顔を上げた。


手つきがひどく乱暴で、気分が落ち着かなかった。


血を流し、血を吐きながら狭い路地裏で見つめ合う二人。


「......は。」


その間に青ざめた顔色で、キョウルは我知らず笑った。


「このまま行くつもりか?重病人を置いて?」


ジオもせせら笑った。


「それが私のものだと思ったけど、違ったみたいだ。追いかけてきても構わないけど、また会う確率はゼロだから、今のうちにたくさん見ておけよ。」


「冷たいな••••••男を泣かせたことがあるだろう。」


「男だけ?範囲がケチだな、このおじさん。」


偉大な魔法使いの唯一無二の存在になろうと、億万年を費やしたキョウルの競争相手は、常に世界全体だった。


記憶喪失は明白な事故だが、その事故で自分が何に傷をつけているのか、この瞬間の彼は想像すらできないだろう。


「勝負が終わったら回収には来るよ。その時はおいおい泣いてしがみつきながら、ボコボコにされる準備をしてろ。」


「........」


キョウルは黙ってジオを見つめた。


どんな世界にも大気は存在するのと同じように、舞台が変わっても魔力もまた存在する。


主人の意志によって起きた世界魔力が、魔法使いの黄金の瞳の中で渦巻いていた。


過去十年、彼がこの海で一度も目撃したことのない波だった。



「ああ、それと。」


路地を出ようとしたジオが振り返った。


片足立ちの眼差しがひどく斜め。


「ロマンがなんだって?」


「私はロマンチストが好みなんだよ、クソ野郎。」


「......!」


例えば宇宙を私の足元に捧げるロマンチスト。


私一人を助けるために数億回自殺するロマンチックなクズのことだ。


答えは聞く必要がなかった。


足をパッと鳴らしたキョン・ジオが、そのまま未練なく消えた。


逆転を予告し、また別の逆転をもたらすための戦場へ。




☆☆☆



「......」


一抹の痕跡も残さない、すっきりとした不在。


今まで自分を捕まえていた者を、これ見よがしに馬鹿にする無詠唱空間移動だ。


「本当に甘やかしていたんだな。」


ハッタリや空約束などではなかった。捕まえたと思ったのは、本当にこちらだけの錯覚……………。


一人残された路地裏。


キョウルは声を出して笑い出した。


「ロード!どこにいらっしゃいますか?」


「こっちだ!こっちの方向だ!」


どんどん近づいてくる足音。


黒海神官には、悪夜から付与された固有のスティグマが存在する。


遮断幕が壊れるや否や、急いで上官の烙印を追ってきた異端審問官たちが、路地に入ってくるなり唖然とした。


「ハッ?ロ、ロード?!」


「ロード!ご無事ですか?血、血が!」


驚愕する彼らを無視して、キョウルは遠い空を見上げた。


雲の上に隠れていた聖戦の飛行船が低く下降中だった。


祈る黒竜の旗がひるがえる。


この海には存在しない生物だったが、キョウルがふと憑かれたように刻み込んだ紋様だった。


そしてその旗の後ろに…………


空の果てまでそびえ立つ黒い山。


第13星間黒層海のバベルの塔、すなわち「バベルマウンテン」が見える。


「ロード!状態が重そうです!早く-」


「ランキング海戦が開かれたそうだが。」



「はい?あ、はい!4位と2位が衝突しました。「門」が開かれる可能性が高く、たった今1層海の入り口前に待機せよという教皇令も下されたところです!」


層海が高くなるほど、上層の海へ向かうバベルの門は、オープン確率が極悪に低くなる。


その高い敷居に触れるためには、不意に訪れるドアオープンをひたすら待つのが正攻法だが………


抜け道はどこにでも存在する。


「門」は他の方法でも開かれた。


悪夜の代理人として、聖戦の教皇や摂政が直接開けてくれたり。


あるいは…………


まさにあのように。


この野蛮な海を代表する「勢力」たちがぶつかり合い、揺さぶられる刺激によってだったり。




トボトボ。


路地を抜け出したキョウルの足が、埠頭へ直行した。


吹き荒れ始めた荒波に、街はすでにさらわれてめちゃくちゃ。


黒海で有名な海賊たちで常に足の踏み場もない2階だが、埠頭に残っている海賊船もほとんど見えなかった。


ランキング海戦は必然的に海賊たちの戦場となるからだ。


「1層海が開かれるとは…………3年ぶりか?」


「ええ。海賊たちの我慢にしては長かったですね。」


「ならば、あいつも降りてくるだろうな。」


「え?」


言葉が終わると同時だった。



きいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!



「ハッ!」


「クッ!」


周囲の尋問官たちが我先にと呻吟し、耳を塞いだり、へたり込んだりする。


一帯を眩暈がするほどに、なぎ倒す呪いの鬼哭の声!


それと共に、天と海、両極を切り裂いて現れる神殺の聖槍。


金緑色の電雷が黒海を轟かせた。


この黒い海で知らない者のいない伝説の登場だった。


「 ゆ、ゆ、幽霊船だ!」


-「ま、まさか!デッドシップ!不滅槍の下海だ!!!」


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