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43話

* * *


「俺もあんな時代があったな。」


「どんな時代ですか?」


暗行御史アメンオサを信じてた時代。」


清潭チョンダムDマーケット、トリニティ館のエース、キム・デガンは爪の屑をフーッと吹いた。


「持ってなさそうに見えれば見えるほど何かあると思って勘繰るんだよな。それを固く信じてた。バカみたいに。」


「え、どうしてですか?そんなにバカにするほどのことですか?用心するのは正しいじゃないですか。チーム長もお客様を外見だけで判断するなって言ってましたし。」


「おい、新入り。チーム長は物を売るのか?実績を見ろ。この業界のトップは誰だ?」


「……先輩ですよね。」


「バカ。VVIPマーケティングの基本は何だ?選択と集中だ。0.1%の暗行御史を探してあちこち忠誠を尽くすより、99.9%のピョンサトを接待するのが真理だってことだ。」


「……」


「いつまで経っても李夢龍イ・モンリョンを探してろ。その間にできる奴らはとっくに卞サトに取り入っていい暮らしをしてる。そして……」


キム・デガンは顎を上げ、嘲笑で片方を指した。


売り場の向こうで、熱心に姉妹の後を追いかけているイム・サンインの方を。


「暗行御史候補にもほどがあるだろ。あれはちょっとひどすぎないか?マリン店のエースだったって言うけど、ああ、おじさんよ。名前が泣いてるぞ。」


「デガンさん、ルーカス様が上がってきてます。待機してください。」


「はい!よし、じゃあ釜山プサンのエースが女子高生のお守りをしてる間に、このソウルの本物のエースは天朝国チョンジョグクのサト様でもお迎えに行くとするか。」


香水をシュッシュッと振りかけながら歩いていくキム・デガン。


残された後輩は嫌な顔で首を横に振った。


「相手を完全に見下す悪役は、逆観光の前兆なのに。」


しかし、誰かが彼を見下し、また誰かが逆観光の前兆を感じようが感じるまいが。


釜山のエース、イム・サンインの心の内は急速に灰と化していくところだった。






*******


「これはどう?」


「妹さんの目は確かですね。この『ナルゼンダ家の黄金の涙』と申しますと、2級魔獣ナダの……」


「ダサい。」


「……コホン、甲殻から抽出した純粋な黄金とバベル山のルジェオクを合成加工した、準英雄等級の成長型魔玉として、職業群の制限なく……」


「超ダサい。」


「……」


「じゃあ、これは?」


「ああ!もちろんガンガニン魔鋼(鋼)の『金剛百個の棘』もまた、この上なく最高級の名品です!うちの店でも一つしかない金剛山クムガンサンの職人村の品で……!」


「お、彫刻だ。」


「……!ええ!そ、そうです!こちらをご覧いただければマイスターのサインまで……」


「粉々。」


「……」


「狂った奴の花束かよ?気が狂うほど棘が百個もなんで必要なの?」


「ふむ、言われてみればそれもそうね……」


「……」


「何か理由があるんじゃないですか?」


キョン氏姉妹が店を見て回って約1時間半。


現在までの実績、ゼロ。


イム・サンインのメンタルと希望も「金剛百個の棘」のようにきれいに彫刻されていた。


「難易度SSS級……」


難攻不落とはこのことだ。


顧客心理の把握にはそれなりに自信があったのだが。


イム・サンインは涙ぐんだ目で、後ろ手に立っている小さな女性をじっと見つめた。


白いを通り越して蒼白な肌。


だぶだぶのパーカーに隠された痩せた肩、細い印象の首筋、そして薄い髪の毛。


全体的にか弱いという感じがしそうだが、絶対にそうではないのは、おそらくあの顔のせい。


一歩引いてすべてを見下ろすような表情のせいかもしれない。


何も読み取れない無表情で一体何を考えているのか。


その上、筆で描いたようにすっと伸びた目尻と眉毛はまたどうだ?


その下の涙ぼくろ二つまで加わり、奇妙なだけだ……


「おい、イムのおじさん。仕事しろ。人の大事な顔ばかり見てないで。すり減るぞ。」


「……す、すみません!」


慌ててイム・サンインが頭を下げたその時。


「[ここはC級から入場可能だって言ってなかったか?さすがすごい国だな、韓国は。こんな幼い女の子まで上位ハンターとは]」


「[必ずしもそうではありません、ルーカス様。他人のライセンスでも入場は可能です。] 」


「[じゃあハンターでもない小娘どもが、希少等級以上の高等アイテムを勝手にいじくり回してるってことか?狂ってるな。] 」


突然の外国人の暴言。


イム・サンインは急いで自分の顧客の方を見た。


幸か不幸か、ヨンはリスニングができないのか表情の変化はなかった。


突然現れたこのヤンキーどもは何だというように、そっけない眼差しだけ。


それに戸惑いが少し収まると、すぐに怒りがこみ上げてきた。


歯を食いしばったイム・サンインは、ニヤニヤしているキム・デガンに近づき、声を低めた。


「これは一体……デガンさん!お客様同士の動線が重ならないようにするのはショッパーの基本じゃないですか。」


「あらまあ、申し訳ない。うちのお客様がお探しの物があるとおっしゃるので。どんな状況でもVIPの満足のために最善を尽くすのもショッパーの基本責務ですから。」


「それにしてもそうでしょう。さっきの会話をお客様が聞きでもしたら一体どうするつもりで……!」


「[サンインさん、どうしてそうなさるんですか?私たち正直になりましょうよ。一目見れば、ね?女子高生とプー太郎じゃないですかあ。聞き取れるって何を。じゃあお客様に、口を慎めって言うんですか?] 」


「ちょっと、キム・デガンさん!」


「[全部聞き取れてるけど。] 」


シニカルな口調、ハスキーな声。


広い売り場の中。


非常に低いトーンの英語が響く。皆の視線が一斉に片方に向かう。


濃い灰色の制服を着た少女。


キョン・グミ氏家門特有の目つきを鋭く吊り上げた。


「[聞き取れてるって言ってんだろ、このファッキン・バスタードども。] 」


慌ててその姿勢のまま凍り付いたショッパー二人。


しばらく彼らを睨みつけたキョン・グミが体を翻す。


そして片方にぼんやり立って、この状況が面白いというように見ているヤンキーども、彼らに向かってはっきりと噛み砕くように言った。


「[アメリカ人が馬鹿なのは有名だけど、まさかこれほどとは。外国に出たら口の管理をしっかりしろってことも習わなかったのか?]」


「[リトルレディ、言葉が過ぎるぞ。なぜそんなに怒っているんだ?]」


「[そちらが先にほざいた言葉を考えてみろ、この馬鹿なレイシスト野郎。私と姉さんは二人ともハンターだ。]」


「[おお、そうか?驚いたな。それについては謝ろう。人種差別主義者と決めつけられるほどだとは思わないが。ところで何級だ?]」


「[答える義務でもあると?]」


「[同じハンターだからジャングルのルールに従おうとしてるだけだ。弱肉強食(the law of the jungle)。強者は尊敬され、弱者は屈するのがハンターのルールだ。お嬢さんもハンターならよく知ってるはずだ。]」


「[……]」


プラチナブロンドと冷たい色の青い瞳。


典型的な外国人の外見を備えたアメリカ人男性は、隠さない傲慢さで言った。


「[俺はギルド・イージスのAA級ハンター、ルーカス・マローンだ。お嬢さんの前のその品が必要だから、購入意思がないならどいてくれるとありがたい。]」


その言葉に息を呑んだのはイム・サンインだった。


ため息が自然と出た。


このプライドの戦いはきれいに負けた。


弱肉強食、強者存はハンター界第1の法則であり不文律。


弱者が尊敬されることなど、その世界には存在しない。


さっきイム・サンインがちらっと聞いたところによると、こちらの姉妹はE級とB級。


AA級とは格が違いすぎるだけでなく……そんなことを全部抜きにしても。


他でもない〈イージス〉の名前の前だ。


「神の息子」が建てた、世界一の盾。


魔術師王くらいでなければ、じわじわと押しつぶせないような名前ではないか?


「キム・デガン、あの野郎が調子に乗ってたのはそういうことか。あんな大物が顧客だったとは……」


ため息を飲み込みながらイム・サンインは動いた。


まだ幼いからプライドがひどく傷つくかもしれないが、現実は現実。


うまく宥めて別の場所に移動させるつもりだったのだが……





********



「それいくら?」


英語が飛び交う状況の中に、ぽつんと割り込んできた韓国語二言。


今までさんざん感情を高ぶらせていた人々が一瞬気まずくなるほどかけ離れた口調でラスボスが顎を掻いた。


「……は、はい?」


「おじさん、答えないの?」


「あのペンダントいくらだって。」


もう一度強調するが、イム・サンインはエースだ。


釜山プサンの底を煮詰めて本社から上がってきてくれと直接呼ばれた本物のエース。


危機的状況でエースの計算機は高速回転した。イム・サンインは考えた。


「この狂おしいほどの堂々とした態度……!」


勘を信じろ。


これは「本物」だ。


この程度の賭けに乗れなければ選手ではないだろう。


大物がついに登場した。


それではこの状況でディーラーがすべきことは……


イム・サンインはしきりに乾く唇を湿らせながら言った。


「『金剛職人村』のマイスターのサインが刻まれた品は、おっしゃるのが……値段です!」


場を大きくすること!


「あらまあ、このおじさんったら。」


「……」


「商売上手ね。」


エース、イム・サンインの顧客は笑った。満足そうな笑顔だった。


感心して、また面白いという声で言う。


「計算機をよく回して覚えておきなさいよ、おじさん。」


「はい!」


「今この時点からあのペンダントの値段は『ダブル』よ。」


「……お、お客様!」


「あら、すぐにわかったわね?そうよ。」


虚空からブラックカードを取り出したキョン・ジオが指の関節の間でカードを転がした。質の悪いギャンブラーのように。


一面白い背景の売り場の中。


魔力加工した黒色のカードがゲーム盤のジョーカーのように一人だけ際立っていた。


そのカードの端を立ててジオが外国人を示した。


せせら笑うように口角を上げた。


「あのおっさんがいくら吹っかけても、そこからダブルを上乗せして。」


5億ウォンを吹っかければ10億ウォン。


10億ウォンを吹っかければ20億ウォン。30億ウォンを吹っかければ60億ウォン。


「それが私が言う『値段』よ。」


生意気なヤンキー野郎。


よく聞け。


これがまさに朝鮮のFLEXだ。


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