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427話

今、何て?


「どなたですか?」


聞き間違いじゃない。


確かにキョウル、そしてドヒョンって言った!



キョン・ジオが目に力を込めた。


キングの面子がある。


「まさかここで~聞き間違いだろう!アホな私!」


と、わざとらしく首を左右に振って、運命的にすれ違う場面を演出するわけにはいかない。


そんな時代遅れの展開は1990年代のドラマを最後に絶滅した。


このエリアのサイダーパス(痛快な解決をする人)は、ためらわずにすぐ行動に出た。



「?おい、おい!こら!この狂った野郎、どこ行くんだ?」


「いや、離してください。離散した恋人と執事が再会する直前なんです。サツマイモ(もどかしい展開)は反対です。買いません。」


「何?また何を言ってんだ、クソ。お前マジで狂ってるのか?」


「ああ、そうだ。」



サルバを振り払おうともがいていたジオが、再び海賊たちを振り返った。


「そうだ。韓国人の情があるから、別れの挨拶はしないと。」


「さようなら、未開な海賊の皆さん。」



「……。え、はい……?」


ぺこりとお辞儀をすると、きょとんとした状態で、うっかり一緒にお辞儀をする海賊たち。



ジオは爽やかな笑顔と共に片手を高く上げた。


では、これで。




「キャプテン・フック・ジョーは、皆さんのしょぼい世話を捨てて、専用の足拭きマットたちを探しに出ます!皆さんもお幸せに~ピース!」


「……?!」


「キャ、キャプテン・フック?!ちょっと-!」



無料海賊体験楽しかった。


さらばだ、野蛮人ども!


乗り換えるタイミングが来たと見るや否や、ためらわずに海賊たちと手を切ったジオは、そのまま人混みを縫うように進んだ。



1番埠頭にうじゃうじゃ集まった群衆は、そんな中でもハイロード・キョウルだの、提督ペクだのと興奮して騒いでいる。



「それでも、どうにかこうにかちゃんと辿り着いたじゃないか?」


感心することこの上ない。


ランカー(上位プレイヤー)の心配はするもんじゃないという大衆の常套句がふと思い浮かぶ時点。


もちろん片方はランカーでも何でもないペット悪魔だけど、執着レベルMAXのハーレムの男たちの中でも、トップじゃないか。



「2日でもお星様基準では、実は遅い方だと言える。」


満足げに頷いたジオが、人混みの中からひょっこり顔を出すと。


「バベル:最高管理者、ちょっと……ちょっと待ってください。何かおかしいです。」


「ん?」



その時、再び沸き起こる歓声。


続くバベルのメッセージを確認できないまま、ジオは群衆につられて正面を見た。




パタパタ-!


一番最初に目に飛び込んできたのは、眩しいほど巨大な飛行船。


硫黄の匂いが漂う黒い霧の海特有の毒スモッグを背景に、スチームパンク風の金属飛行船が埠頭全体を占拠していた。


黄色の海風が吹くたびに、物見やぐらに付いた旗がひらめく。


一つは黄銅色の古風なスペードとハートが合わさった紋様。


もう一つは……。


「祈る黒い竜!あ、あいつの旗です!」


「ニーズヘッグ?」


敵意の虐殺者。ラグナロクの悪竜。


誰が見ても魔術師王の象徴であり、キョン・ジオの最初の創造眷属であるその黒竜だった。


「へえ。なかなかスケールが……。」


「[聞け、偉大なる暗黒の海の息子たちよ!眠れる聖戦から神託が下った!]」


夢中になってその圧倒的な軌跡を見物していたジオが、はっと我に返った。


人為的に増幅された音声。


埠頭の中央に設けられた壇上で、ある老人が血相を変えて叫んでいた。


「[我らの父が仰せられた!まさにこの6層海、お前たちの溶鉱炉で、どんな歴史にも残らない、しかし同時に全ての海の歴史を覆す竜が胎動するだろうと!]」


高い地位であるに違いない神官の老人を中心に、黒色の海軍制服姿の屈強な男たちが護衛するように立っている。



皆一様に精悍な目をしている。


不動の姿勢で立っているにもかかわらず、全身から殺気と聖力をぷんぷん漂わせているのが、一目で海賊たちが言っていた異端審問官たちだとわかる。


「[その者は、脆弱な人間の体を使っているだろうが、その中にはどんな災いも飲み込めない若い血が流れている!]」



そしてそんな彼らの真ん前に……。


ジオは目をぱちくりさせた。


「[嵐がまさに彼であり、怒りがまさに彼の力であり、覇道がまさに彼の道であろう。お前たちは私に代わって海に臨んだ帝王を探し出せ!]」



無表情に立っている、丈の長い将校用黒色ブリッジコートを着た二人の男。


腰をきつく締めるベルトから、ぎっしりと留められたボタン。


肌一つ露出しない全身の制服が、恐ろしいほど禁欲的であり、むしろ威圧的だ。


海軍の正帽は被らずに手に持っているため、他の審問官たちとは異なり、髪の毛がそのまま露出していた。


海風に舞う銀髪と黒髪。


非人間的に秀麗な横顔、またあっさりとしていて清らかな顔が、紛れもなくジン・キョウルとペク・ドヒョンだ。


この惑星に滞在した時間が彼らもまた少なくないのか、老いないキョウルは論外として、ペク・ドヒョンは若干大人びた姿……



いや、ちょっと待って。


「ちょ、ちょっと待って。タイム。」


なぜあの二人が一緒にいるんだ?


まさかその間に意気投合でもしたのか?


耳で聞いた時はそうかなと思ったけど、実際に一緒にいる姿を見ると、違和感が半端じゃない。


並んで立っているツーショットが、ぎこちないどころか奇妙なレベル。


つい数日前まで、片方は殺してくれ、片方は殺してみろと言っていた奴らが-


「え?」


ジオの眉間にしわが寄った。


初対面の老いぼれが熱烈に演説しようがしまいが、私ここにいるわよ!ぴょんぴょん飛び跳ねようとした体が、中途半端に止まって。


「何かちょっと……嫌な予感がするんだけど?」


そうじゃない。


私がここにいるのに気づかない?


半径200メートルもない距離なのに、私の愛~と叫びながら、息を切らして飛び出してこないって?


人だかりがものすごく多いのは確かだけど、あそこのペク・ドヒョンは、そのせいでそうなのかもしれないけど………。


「でも、あなたは人外で、私はそれじゃない。」


ましてや神官の方を見ているペク・ドヒョンとは異なり、キョウルは特有の倦怠感のある顔で群衆の方を向いていた。


「これはマジでおかしいんだけど?」


私たちの愛が冷めたみたいだから、倦怠期テストでもしてみようかな、というレベルじゃないようだ。


本当に、深刻におかしかった。


ジオは背筋が寒くなるのを感じた。


「ところで……キョウルは?私のキョウルはどこに行ったんだよ。声の出演もないじゃん?」


「は、把握中です。格が全く感じられないところを見ると、何か身に問題が起きた……あ、いえ、違います!バベルが失言しました!できるだけ早く調べてみます!」


行方不明になった格。


応答しない集合官。


二日間ずっと手がかり一つ見つけられなかったバベル。


何よりも。


同じ時間、同じ空間にいるのに-


「……!」



その時。目が合った。


深淵に似た無光の空虚な黒い瞳。


群衆を冷ややかに見下ろしていたキョウルの視線が、一瞬こちらに触れたかと思うと……そのまままた、戻る?


「マジか?」


ジオの口がぽかんと開いた。何なの、あれ。



どういう状況なの、これ?!


今、私に気づかなかった?この私に?


「バ、バ、バ、バベル?」


『バベル:だからバベルがおかしいってずっと言ってたじゃないですか!ご主人の格が全く感じられません。あれは本心でもありません。集合官の聖力がものすごく感じられるところを見ると、おそらく集合官の方が用意した一時的な肉体のようなのですが-』


「な、何だと!」


地下鉄1号線の狂人のように、わめき散らすと、わらわらと集まってくる周囲の視線。



遠くからペク・ドヒョンの肩がぴくっと跳ね上がったのは、まさにその瞬間だった。


すぐに視線がこちらに向かって突き刺さろうとしたその時。



「うぐっ!」


「お前マジで狂ったか?」


耳に届く、ひどく緊張した息遣い。


「う、うぐぐ!」


「黙ってろって言ってんだろ?マジで死にたくて気が狂ったか。ああ、クソ……生きててこんな狂った奴は初めてだ-何、何だよ?鼻血はまた急に何で出るんだ?」


マジで勘弁してくれ。


色々とやらかしてくれるな。


荒々しく悪態をついたサルバが、慌ててジオを抱えて人混みの中に身を隠した。


集まってきた彼らの周りの視線は、いつの間にかすっかり消え去っていた。


☆☆☆


「………………あの。さっき-」


ジオさんの声が聞こえなかったか、うっかり尋ねようとしたペク・ドヒョンが、はっとした。


ジン・キョウルがさっと彼を振り返る。


その視線がぞっとするほど無関心だった。


「総領。なぜ言いかけてやめる?」


「…………いえ。何でもありません。」


「わかるはずがない。」


たとえ聞こえたとしても、この者がわかるはずがない。


顔をしかめたペク・ドヒョンが、慣れたようにため息を飲み込んだ。


ジン・キョウルがそんな彼を穏やかにたしなめる。


「余計なことに気を取られずに集中しろ。「[眠れる父]」が事案の重要性について何度も強調されたことを知っているはずだ。」


「……はい。そうですね。」


眠れる父とは、黒海の唯一の君主であり、悪神であるバハムートを高める言葉だ。


彼を祀る神殿所属だから当然の呼称だったが………仕方がない。


あの男の口から他人を高める言葉が出るたびに、鳥肌が立つのは。


「あの傲慢だった究極の格が……………全く。」


お前の黒歴史マジで大丈夫なのかよ、と口から出そうになる言葉を必死に飲み込むのに必死で、なかった病気ができそう。


ペク・ドヒョンは、いつの間にか黙言修行でもしている気分だった。


黒層海に不時着してからもはや10年。


到着したばかりの頃、ペク・ドヒョンは、これくらいなら運が悪くない方だと思った。


落とされた場所が他の場所でもなく、神殿の中だったから。


ここを治めている集合官と何らかの裏取引をしたということは、キョン・ジオから聞いて知っていたこと。


「ペク・ドヒョンと言ったか?入国ポータルに記録がないぞ。何をしているんだ?密入国者だ。すぐに逮捕しろ!」


「誤解があるようです。集合官、バハムート様にお会いさせてください。きっと僕のことをご存知のはずです。」


「この宇宙人がよくもまあ、ここがどこだと思って嘘で父の名を口にするとは!」


「ちょっと待ってください!。少しお待ちください。この青年、密入国者にしては態度が非常に堂々としていませんか?人相もとても良くて、目から澄んだ精気が溢れているのが……嘘をつく人には見えません。そう思いませんか、ドヒョン兄弟?」


「……ええ、まあ。」


「ほら、ごらんなさい。そしてもうご存知でしょう。海から父の子が突然湧いてくる場合があるということを。」


「……!か、閣下。それではこの青年が、父が下された子だというおつもりですか?今回ハイロードになられたあの方のように?」


「それは私たちが判断することではないので、とりあえず聖戦に連れて行ってみましょう。」



顔相を見ろ。


そんな奴じゃない。


海賊王になったり奴隷として売られていった誰かとは異なり、純粋に顔のおかげで密入国者兼海賊ルートを回避することに成功したペク・ドヒョン。


そうして降り注ぐ神官たちの好意を受けながら、あれよあれよという間に聖戦に辿り着いたのだが……。



「…高等生物?ここで何をしていますか?なぜそんなことをしているのですか?」


「私を知っているのか?」


「……?頭おかしいのか?」


「なぜ急に記憶を全部失って……!」


「はあ……」


「全く落ち着きがないな。邪魔だ。行って海水を被ってでも来い。」


「……」


あの野郎、僕が今誰のせいで、運命にもない他人の家の悪神の腰巾着みたいなことをしていると思っているんだ。


奥歯を噛み締めたペク・ドヒョンが、遠い空をぼんやりと見上げた。


「ジオさん………」


一体いついらっしゃるんですか……?


「邪魔だ。」


「わかったからいい加減にしてください。誰が誰に落ち着けって言ってるんですか。」


「何を馬鹿なことを言っているんだ。」


「え?」


ペク・ドヒョンは遅れて気づいた。


今回の視線の方向はこちらではない。


人混みが集まってごった返している方をじっと見つめていたジン・キョウルが、そのまま隊列を離脱した。


「おい、どこに行くんだ?」


「確認することがある。」

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