417話
「夢か。」
初めて味わう火の玉の痺れに呆然としていると、いつの間にかこの家…。
今この時点•••••。
人間生活に執着して世界まで戻したという星の狂気がリアルタイムで伝わってきて、恐ろしいほどだった。
こんなにも平凡で日常的な日常だなんて。
「これは人形遊びのレベルじゃない。」
星系のどんな上位格もこんな遊戯を楽しんだりはしない。
ここまで没入してから一体どうやって抜け出すつもりだ?
パク・スンヨが今度はイチゴを手に取る。
バハムートはひどく怯えた様子で口を大きく開けた。
「そうそう。バハ、この子は、どうしてこんなに食べられないんだろう?さっきキムチも一口食べて全身真っ赤になって•••。それでもイチゴは韓国のイチゴが最高よ。ある時にたくさん食べて行きなさい。」
「パク女史。最近イチゴは金の値段よ。その高いものを、もったいない・・・。あげないで。メイドとして使うのに癖がついちゃう。」
「メイドだなんて、この子は、他人の家の可愛い息子にひどい言葉を。あらまあ。まさか・・・・・親がいるの?」
「シーッ、キョン・ジオ!お前今、口の利き方がなってないぞ!お前がそんなことしてたら親の顔に泥を塗ることになると、私が一体何度言えばわかるんだ!」
「スンヨ、落ち着いて•••••。」
「落ち着いていられる?ソンヨンの母親が昨日私に何と言ったか知ってる?ソンヨンはどこに行っても謙虚すぎて、もどかしいほどなのに、あんたの娘は謙虚じゃなくてもいいからいいわねって、あの憎たらしい女が!」
「褒め言葉じゃない?」
「褒め言葉なわけないでしょ!あんたがそんな言葉の裏も読めないから、あのハワイのイルカツアーの時も他の家のおじさんたちにいいようにされるんじゃないの!ああ、腹が立つ。」
「パパ。··ハワイに行って、おじさんたちのロマンスファンタジー貴族令嬢話法にやられてきたの?」
「ちょ、末娘?そうじゃなくて•••。」
「いいから。キョン・ジオ、早くバハに謝って。お母さんの前で。」
「いや•••はあ。もどかしい、本当に。」
「ところでキョン・ジオ、こいつ本当に集合官で合ってるの?いくら見ても詐称みたいだけど。あまりにも、お粗末じゃない。」
「義弟がここで一番ひどいよ、今。」
「クソ、義弟って呼ぶな、•••••いいえ、お母様。そんなことありません。私は悪口なんて言ってません。」
「……」
もう全部放り出して逃げてしまおうか?
バハムートはクラクラする目をぎゅっと閉じた。
☆
『7-A:おっしゃる通り、第13集合官アグヤは星間集合官の中で最も古い支配者です。』
「うむ…?一番古いのは第28星間の「使徒」オールド・サウルではなかったか。」
『7-A:いいえ。サウルは2番目で、時間を換算するとアグヤより約8万年ほど誕生が遅いです。アグヤが長い間キョウル眠期に入っていたため、ご主人様がご存知なかったのかもしれません。』
「キョウル眠?」
『7-A:はい。およそ20万年ほど••••••』
「理由は?」
『7-A:倦怠感による自我暴走防止でした。』
「よくあることだな。」
驚きもしない。キョウルが鼻で笑った。
うんざりするほど長く生きるやつらの中にはまともなやつは珍しい。
そんなに長く生きてきたくせに、どうして人間型を保っているのかと思ったら、キョウル眠で逃避するタイプだったってことか。
「無駄に若く見えるわけだ。」
子供、趣味の救いようのない変態だと思ったのに。
「じゃあ、キョウル眠から覚めるやいなや星を探しに来たのか?」
『7-A:おそらくそうでしょう。アグヤは集合官の中でも「太古の軸」とかなり密接な存在なので………。』
「星に愛着が大きいんだな。」
星系が最初に誕生した時に立てられた万物宇宙の骨組み、[太古の軸]はバベルを誕生させた力だ。
バベルがすなわち星も同然なので、アグヤの立場からすれば親のように感じる可能性が高かった。
地球のハブが正式開通する前に我先にと駆けつけた理由があったんだ。
『7-A:おっしゃる通り、アグヤは星に最も友好的な側に属するでしょう。ご主人様があまり警戒されなくてもいいと思いますが。』
「しないよ。どうせ最終決定者がカモだと烙印を押した状況で何をすればいいんだ。」
寝る場所だけは驚くほどよく見つけて寝転がる方じゃないか。
その方面では断然宇宙一だろう。
恋人を思い浮かべる異星の神の口元に、やむを得ない笑みが浮かんだ。
「うわ。マジか。」
「おい、おい。あそこにいる男を早く見て。」
川沿いをジョギングしていた人々が、そんな彼を見て憑りつかれたように立ち止まる。
視線が磁石のように集まってきた。
『7-A:うーん、ご主人様。外見を少し……多少下方修正された方がよろしいのではないでしょうか?』
「なぜ?」
『7-A:今はあまりにもフィルタリングができていないので••••••一般の原住民に過度な影響を与えます。視線が不快ではありませんか?普通、ご主人様のように上等な外観を持つ格の場合は、顕現される時に微細にフィルターをかけるのですが、私がして差し上げ-』
「知るか。」
『7-A:。はい?』
「頭おかしいのか?朝から馬鹿なことを言うな。」
ジン・キョウルが眉間にしわを寄せた。
同じ人間だとは信じられない被造物を堂々と見物していた周辺の通行人たちが、また感嘆の声を上げた。
「顔で誘ったんだ。」
『7-A:…はい?』
「お前たちの王のことだ。顔で誘ったんだよ。私が。」
あの無情で冷酷な女をどんな苦労をして誘惑したと思ってるんだ?
外見だ、外見。
渾身の全身勝負で本当にやっとのことで。
そんな状況で他の人間たちが正気を失おうが、本気で知ったことか?
キョン・ジオがどれほどひどい面食いか知っている以上、ありえない。
たぶんあいつが顔をもう少し見ていなかったら、彼は容赦なく捨てられていたんじゃないか?
あまりにも可能性のある話なので、想像するだけでゾッとする。
「この見事な顔とスタイルの良い体で、あの毒婦の前頭葉を丸ごと溶かして手に入れたのに、どこでそんな馬鹿なことを••••••。」
『7-A:……。』
羞恥心も体面もない男らしい発言に、管理者が思わず沈黙したが、彼は気にせず走り続けた。
「美貌ナーフは死のみ。」
無駄に究極格にもなって、毎朝早くからジョギングしていると思うか?
ジン・ギョウルの座を手に入れたからと、恋人の部下たちに「ご主人様」と呼ばれるからと、だらけて美貌が衰えたら終わりだということを知っているからだ。
「ああ。そうだ。」
『7-A:わかりました。わかりましたから。ご主人様が美男計を使いこなしたってこと、わかりましたからもういいです。』
「バハムート・アグヤの領域は黒海だったか。」
『7-A:はい?ああ、はい•••••!第13星間「黒層海土」を支配しています。』
中位管理者の返答と共に、何か考えにふける顔。
その後、会話はそれ以上続かなかった。
運動を終えて帰宅した家。
入るなり、週末だからとリビングのソファにだらしなく寝そべっているジオが見えた。
その隣には、きちんとしたパジャマ姿のバハムートも。
昨日は何を考えているのかずっとぼんやりしていたが、一日で適応を終えたのか、それなりに顔色が良い。
「ハーゲンダッツの方が美味しいってば?こいつ、どうしてこんなに口が悪いんだ?お前の惑星にはアイスクリームもないのか?」
「あるもん!高級アイスクリーム。」
「誰が舌足らずな声を出しているのか。ぶりっ子するなら隣の育児ものに行ってろ。」
[ああ、クソ!それなら閉鎖言語を使わせてくれ!]
「生意気言うな?韓国に来たなら韓国語を使えってんだ、コラ。それに今、シって言ったか、シイ?全宇宙の主人様にシイイ?」
「うるさいこと言ってないで寝てろ。」
脇腹を蹴るジオの足蹴りに、チュチュバーを口にしたバハムートがドサッと倒れる。
すっかり泣きそうな顔で自分の場所を探してソファの下に降りていく姿が、実に……。
汗で濡れたTシャツを脱ぎながら、ジン・キョウルは内心感心した。
「あいつ、あれは生まれつきだな。」
初対面でぞんざいな扱いにも平気な顔をしている時に気づいた。
あんな風にわざわざ押さえつけなくても、自ら序列の最下位に直行するなんて。
キョン・ジオのような加虐的な暴君にはまさにうってつけの獲物。
ピッ、ピッピッ- カチャ。
「…何よ。ああ、クソ。目が腐るからまた脱いでるの?あんた本当に狂った変態野郎なの?」
「運動してきた。運動。」
とにかくあの鹿は、他人の家にインターホンも押さずに暗証番号を入力して上がり込んでくるくせに、言えない言葉がない。
ため息をつくのもつかの間、キョウルはシャワーに行く前にキョン・ジオを笑って振り返った。
「義弟。」
「ズボンまでここで脱いだら殺すぞ。」
「義兄がお前の課題を一つ解決してやったぞ。」
「…何?いきなり何の話を-」
「近道を開けてやるから、ありがたいと思ってもいいぞ。」
わけがわからず戸惑うキョン・ジオの顔。
何?騒ぎにジオもサッと立ち上がってこちらを見る。
キョウルは可愛い恋人にウインクをしてから、悠々と浴室に入っていった。
☆
「…軌道を変えるって?」
「そう言ったはずだ。」
顎を突いたジン・キョウルがジオに向かってニヤニヤと笑った。
シャワーを浴びて出てきた彼の頬は、水分を含んでしっとりとしていた。
「最初のボタンから難しく留める必要はないだろう。集合官ともかなり親しくなったことだし、第13星間を次の目的地に繋げるつもりだ。」
ジオは眉をひそめた。
ああ、何言ってんだ。
「バベルの塔に触れて業報ビームをまともに食らっておいて、また捏造をしようってのか?」
「・・・!」
な、何!
横で聞いていたバハムートがひっくり返った。
口にくわえていたチュチュバーが床に落ちる。
な、何を捏造する?バベルの塔を?
「ま、まさか、じゃああの男が!」




