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407話

雪岳霊山。


山稜のカスミソウの湖だ。


チェ・ダビデ自身が一番好きな場所。


悪夢の3月が血と涙で咲かせた数百万本の山の中の華園。


悲劇が眠り、その上に哀悼と哀愁が代わりに位置するそこがチェ・ダビデの目の前に見えた。


湖の穏やかで静かな水面の上に、白っぽい花びらがそっと落ちた。


舞い散る花の香りが鼻先をくすぐる。


チェ・ダビデはぼんやりと青い空を見上げた。


「全部夢だったのだろうか?」


そうかもしれない。


ダビデ自身の命より特別で大切な友人を失い、嘘のように再び機会を与えられた。


これからは私が守らなければ。


雨が降ろうと雪が降ろうと、いつもそばにいてくれるのが友達だと教わった。


ジオはいつも私にとってそんな友達だったのに、私は一度もそうしてあげられなかった。


彼女が目の前で死んで消えていくまで、何もできずにそう……。


だから今度こそ。


ただその思いにとらわれて動いた。


万悪の根源だった〈解放団〉の団長を捕まえるのが一番いいだろうが、すぐ近くにいる彼の部下が、優先。


しかも奴は、白鳥をヘテの鏡に閉じ込め、ほとんど死ぬまで追い詰めた前科があった。


ただでさえ焦っていたチェ・ダビデの心が焦るのは早かった。



「すぐにハヌルビを追い出さなければ!ハヌルビ、ハヌルビはどこにいるんだ?」


「ハヌルビ••?大長老様、以前の宗主候補だったあのハヌルビ様のことですか?あの方は昔々に俗世に戻られたじゃないですか。」


「何?!そんなはずは-シャン!サムメク、お前また奴に騙されたのか!私たちはまた騙されたんだ!」


「ちょ、大長老様?それがどういう、大長老様!」




どこにいるんだ?


どこにいるんだ!


不安で頭の中が真っ赤に染まった。


いつも彼女の中にいる半神が喜んで力を貸してくれた。


窮奇の嗅覚が痕跡を追跡した。


ズボンの裾をつかむ童子僧サムメクをぶら下げたまま風に乗って追いかけると、ハヌルビがそこにいた。


3長老チャ・メファと一緒に。



「•••!お前!よくも!この外敵の獣がどこだと思って尋ねてきた!」


「どいてくれ、チャ・メファ。頼む」


「ふざけるな。さっさと消えろ?!」


「雪岳からすぐに消えろ、1長老。その話を伝えに来たんだ」


「1長老••••?いきなり訪ねてきて何を馬鹿なことを••••••。宗主の怪物め、白鳥に言われたのか?そうなんだろ。あの偽善的な女-」



「その汚い口で呼ぶな!」


「今誰に暴言を吐いているんだ!」


「キャアアアアアク!ヨ、ヨボ•••·•!避けてください!早く!」


「お前、この!」


「だ、大長老!!ダメです!どうか落ち着いてください!」


慌てる悲鳴としがみつく泣き声。


混乱した。


窮奇がささやいた。


獲物を逃してはならない。


力を振り絞って捕まえるチャ・メファを無理やり引き離し、逃げるハヌルビの後を我を忘れて追いかけた。



いつからか、窮奇が言っているのか、自分が言っているのか区別できなかった。


周りに人がたくさんいるという事実は、すべてが終わった瞬間にようやく気づいた。


遠かった聴覚が、視覚が、触覚が•••••次々と戻ってきた。



赤く染まった自分の手と転がっているヘタ本剣。


そして息絶えて倒れている二人。


「…サム、サムメク?」


チェ・ダビデは雷に打たれたように悟った。


私は、一体何をしたんだ?





「全部お前のせいだ。この怪物め。」


「お前が生まれたから俺たちはみんな滅んだんだ。」




死んだ兄弟の呪いが耳から離れない。


チェ・ダビデはぼんやりとつぶやいた。


体が震えている。


チェ・ダビデは反射的に振り返った。


「また、私が全部台無しにした……。」


「違う。違うよ。今回台無しにしたのは私だ。」




声。




限りなく慣れ親しんだ……………!


「・・・・・・」


そして。






ザー……


薄紫色の荒い髪が風に乗って舞い上がる。


その向かい側、雪岳の吹雪のように舞う花びらの中で、何とも混ざり合わない黒髪が揺れた。


キョン・ジオが笑顔で言った。


「君は何も悪くない。純粋で間抜けな私の友達。」


「い、生きている………生きている………」


「私が欲を出したんだ。過剰に。」


「ぶぅぅぅ」


「ごめん。」


なぜ何を謝っているのかわからないが、正直よく聞こえなかった。


チェ・ダビデは道に迷った子供のようにうろうろしながら両手を伸ばした。


体が震え続けた。


抑えきれない涙があふれてきた。

伸ばした手に頬が触れ、生きている温もりが触れると、もう我慢できなかった。


チェ・ダビデはジオをわっと抱きしめた。



「死なないで•••死なないで、ふうう、私が、うん?私が守ってあげるから。必ず、ふう、必ずそうするから•••!二度と、二度と死なないで、ふうう•••。」


「・・・・・・」


「ふぅぅ、ジオ、死んだらダメなんだ•••••!」



「…バカだな。」


ジオはため息をついた。


この間抜け••••もう否定できない真実だった。



私はヘタを愛している。


取り戻せない純粋さを追い求め、一生賛美しかできない他の平凡な人々のように、目の前のこの純粋さをひたすら大切にし、愛した。




だからもう手放す時だ。


ついに認めなければならない時だった。


これ以上染めもせず、台無しにもせず、無理に抱きしめもせずに。



純粋さはありのままの時が一番美しいから。


「どうするつもりなの。この間抜けが。頭を使うことができないなら、生まれ持った本能でも使わなければ。取っておいてどうするの。」



「ふぅぅ・・・何言ってるんだ・・・。」


「何言ってるかって?これからは食べられるものと食べられないものくらいは区別しろってことだよ。」


今度からは友達になろうなんて言葉に、聞くこともな

くむやみに飲み込むな。



ジオは一歩後ろに下がった。


腕の中の温もりが消えると、チェ・ダビデは不思議そうに彼女を見る。


涙と鼻水でぐちゃぐちゃになって、めちゃくちゃ•••••本当に、バカみたいな顔だ。



我慢できなくてジオは笑い出した。


「あ、お前本当にバカみたい。」


「何だって?おい!」


「だから大好きだったのに。」


「え?」


「窮奇の悪性品を消すわ。」


「え.....?」


「それなりに神格だから触るのは難しいけど、それでももうちょっと苦しめられないように、お別れの挨拶兼私のサービス。」


「お別れ?お前、お前どこに行くんだ?またどこに行くんだ•••••私は一緒に行けないの?」


「・・・・・・。」


「迷惑かけないから。うん?ただそばに、私がお前を守ってあげなければならないのに•••ダメ?一緒に行こう。魔法使いが前衛なしでどこに行こうとしてるんだ····私が見ててあげるから。私、今度こそ本当にすごくうまくできるのに•••。」



返事がいつまでもないので、ぎこちなくこちらの様子をうかがう姿がかわいそうだった。


「•••••ダビデの家はここなのに、どこに行くっていうの。」


「あ。家。••••。」



チェ・ダビデの顔色が暗くなる。


本人がやらかした事故のせいだと思った。


そんな必要ないのに。


「チェ・ダビデ。顔を上げて。」



「………………あ、その、………何て言うか、お前は知らないかもしれないけど、私ちょっと色々あって-」


「ない。」


「え?」


「何も起こらなかった。もうすぐそうなる予定よ。」


「それってどういう…………。」


「起きたら、お前はいつものように自分の部屋で起きるだろうし、誰も死んでないからヘタはいつものように平和だよ。誰もお前と白鳥に触れないから、お前たちはただまた日常に戻ればいい。」


「そ、それどういう……どういうことだよ、それ?私がバカだからかな?私、理解がうまく………………」


声がだんだん小さくなった。


形容できない何かの予感がした。


チェ・ダビデはぼうぜんとジオを見つめた。


神話の一節のように輝くその金色の虹彩からどうしても目を離せなかった。


見つめ合った顔がぼうっとなる。


キョン・ジオは黙って周りを見回した。






ザー……


舞い散るカスミソウ。


悪夢のような3月を越えて、いよいよ4月の春。すべての要素があの日あの時と同じだった。


「私の名前は。」


「・・・・・・」


「キョン・ジオよ。ジオ。親しい人はジョーって略して呼ぶの。」


「・・・・・・」


「チェ・ダビデ、私と友達になる?」


「うん。おい、でも私今何か変な感じがするんだけど-」


「私はいい友達だった?」


「・・・・・・」


「答えて。」


「......な、なぜ急にそんなことを聞くんだ......?」


「ただ。気になって。」


釈然としなかったが、答えが決まっている質問だった。


チェ・ダビデは迷わず答えた。


「当然だろ。お前は私が持っている最高の友達だよ。すごく昔......お前が知らない昔からそうだった。」


「そう。」


ジオは明るく笑った。


「よかった。」






[選択したアイテムを使用しますか?]


[所有者、キョン・ジオがシナリオアイテム「残された波の泡」の対象として「キョン・ジオと関連するチェ・ダビデのすべての記憶」を選択しました。]


[アイテムの効果により、指定対象「チェ・ダビデのキョン・ジオ」が泡となって消えます。]



「さよなら。私の最高の友達。」




ザー……!



白っぽく舞っていた花びらが白色の泡に変わり、飛散する。


うねる雪岳の風の中でキョン・ジオは振り返った。



友達とは、最も微温的な温度の救済だ。


計算や取引という材料なしに、共感と絆という人の脆弱な本能だけで築き上げる、頑丈な城。


その城は冷めることもなく、熱くなることもなく、ただ消えない背景のように人生という軌道にとどまる。


ジオは今日、最も巨大な城の一つを崩した。


城が崩れたこの荒涼とした廃墟を決して忘れないだろう。


予言のような予感がした。


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