40話
[もしかしたら「人斬り抜刀斎」という方は、かなりの実力を持つ魔法使いなのかもしれません。]
[ぷっ!]
[剣術に関する動作が全く見られないのもそうだし、偏見から 離れてみると話が簡単になります。
剣士というフレームを一度 離れてみて下さい。そうすれば魔法使い特有の動きが見えます。]
[プフッ!]
[例えば、このジェスチャーは「ルーン」を描く基本動作です。呼吸するのと同じくらい当たり前の行為なので、魔法使いなら体に染み付いているはずです。ここの映像の2分31秒の地点を詳しく見てみると......]
[ああ!マジで何言ってんだ、このクソみたいな話をずっと聞いてなきゃいけないのか?クソ、この米袋を被ったバカどもは何を見ても全部魔法だって。万物魔法使い説かよ、何だよ?]
[さ、米袋とは何ですか!魔塔公式ローブです!厳然と 希少性 等級も刻まれている名品ですよ!]
[......正直、バカさ加減で言えば肉体派には敵わないでしょう?今ここにいる一人を見ても、会話が全く通じないじゃないですか。これはまるで目の前に獣や 野蛮人を座らせているようなものじゃないですか。]
[は、エクスキューズミー?チンピラ、今俺に向かって言ったのか?]
[先に手を出したのはそっちでしょう!]
[いい加減にしろよ!おい!てめえ、ぶっ殺すぞ!]
ピーーーーー。
[ただいま画面調整時間です。]
* * *
トップランカー、ジョーの正しい生活ガイド 第1番。
一日働いた者は、一ヶ月休め。
人間とは常に消耗されながら生きる動物である。
呼吸することにさえエネルギーを使うのに、労働で莫大なエネルギーを消耗したのなら、当然きちんと充電する方法も知っておくべきだ。
「それで?要約すると、遊びたいし休みたいけど、家で死体のようにゴロゴロするにはお母さんの目が気になるから、俺たちを呼び出したってことだろ、今。あなたの休みに協力しろって。」
ジオが断固として答えた。
「うん。」
「こいつマジで殴ろうかな......?」
「えー、ジオがそう言うのはいつものことじゃん?ほっとけ。ちょっと小腹が空いたけど、トーストでも頼む?ここのトースト美味しそう。」
「私は熱いのは嫌。かき氷。」
「ジオ、あなた金あるのか?」
ジオは堂々と答えた。
「ない。」
「一発だけ殴らせてくれ、頼む。うん?」
「我慢しろ、我慢しろ。じゃあ、かき氷も頼むし、トーストも頼むか。」
拳を握ったチャン・セナをヤン・セド人当たりの良い顔でなだめた。
[あなたの聖約星、「運命を読む者」様がそこのお嬢ちゃんや、友達に優しくしてあげなさいとアドバイスしています。]
「お星さま、まさか今私の味方じゃないの?」
[何言ってるんだ、このお兄ちゃんはいつもいつもあなたのことばかり考えているとムキになっています。]
[ただ友達が3人しかいないのに、その子たちまで失って一人ぼっちになるのが心配だと、うちの子の交友関係はこんなにも難しいものなのかとため息をついています。]
私の聖位から、PTAの疲れが感じられる。
もちろん、間違ったことではない。
あまりにも狭く深く付き合う人間関係のせいで、友達と言えば目の前の二人と今は不在のソル・セラのたったの3人。
彼らはキョン・ジオのたった3人のマグル友達だ。
同じ幼稚園出身だということで、こちらと関わることになった哀れな人たちだった。
「うちのママは何だって私を幼稚園に行かせたんだ、この疫病神と。ああ。あ、もっとガツガツ食えよ!ああ、口に付けるなよ!」
「マジでチャン・セナ、母親みたいな性格......」
口元をゴシゴシ拭いてくれる手がとても痛い。
頭を掴まれてもがくジオを見て、ヤン・セドはニヤニヤ笑った。
「ちょっと優しくしてやれよ、セナ。ジオが痛がるだろ。ところでジオ、あなたはどうするんだ?塾変えるのか?オプティマスとかいうところ潰れたんだろ。」
「潰さなきゃ!トラウマを刺激するようなことある?ジオが運が良いから良かったものの。巻き込まれてでもしたら!恐ろしい、恐ろしい。」
「運もそうだし、韓国もすごいよな。いざとなると、どうにかして英雄が一人ずつ現れるみたいだ。「ジョー」もそうだし、今回の「人斬り抜刀斎」とかいう人もそうだし。」
「そうだよね。すごい人たちだよ、本当に。あ、ちょっとチマチマ食うなって言っただろ!ガツガツ食え!」
その「ジョー」であり「人斬り抜刀斎」の背中をバシッと叩きながら、ジオは、顔をしかめた。
ジオは沈鬱につぶやいた。
「......セラはいつ来るの?」
「また自分を可愛がってくれる人だけ探して!いつも都合の良いことばかり聞こうとして!」
「いつ来るの......?」
「専攻の授業で抜けられないんだって。終わったらすぐ来るって言ってたから、もうすぐ来るよ。実はセナも今日必修なのに、こいつはただサボって来た......」
「セド!何でそんなこと言うの!大学の門もくぐったことのない子に!」
「セナ……私は気にしてないもん……」
満レベルのツンデレに向けられたジオの切ない眼差しに、チャン・セナの耳が真っ赤になる頃。
カフェのベルが鳴ると同時に登場するソル・セラ。
そしてジオが待っていたモデル体型の美女は、来るなりいきなり原子爆弾を投下した。
「ジオ、あなたの妹、最近恋愛してるんだって?」
「クリスティーナとジロクの話なら、さっきみんなに全部話した......」
「いや、違う!」
「鍾路 四大天王登場シーンのことなら、私は全く知らない話......」
「違うってば、バンビじゃなくてグミ!あなたの末っ子グミのことだよ!なんか外国人の彼氏ができたみたいだって、私の妹が言ってたんだけど?」
娘しか二人いない家の長女ソル・セラ、その妹はソル・ニア。
ソル・ニアと言えば、キョン家の末っ子グミと一番仲の良い親友、大親友だった。
つまりこれは、信憑性99.9%の話。
かき氷を食べていたジオのスプーンがガシャンと落ちた。
キョンの姓を持つ人間には、強力な遺伝子が一つ伝えられてくる。
キョン・ジロクにもあり、キョン・ジオにも当然あるまさにそれ。
カチコチに凍り付いたジオを見て、チャン・セナ舌打ちをした。やれやれ。
「シスコン、ボタンが壊れたね。」
名前:キョン・ジオ
年齢:早生まれの20歳。
(星印)(下線) 特徴:重度のシスコン患者。
「え、どんなぶっ殺してやりたいヤンキー野郎だ、クソ......!」
私のグミ!
隠されていたこの地域のシスコンの極みが、かき氷の器をひっくり返して飛び出して行った。
* * *
妹のグミはキョン・ジオの痛い指だと断言できた。
家族愛の強いジオにとっても、特に痛くて気になる指。
もちろん、最初からそうだったわけではない。
キョンジオは非常に狭いテリトリーを持って生まれた人間であり、そんなジオにとって「妹」というポジションは最初から持ち主が決まっていた席だった。
キョン・ジロク。
彼女と同じ年に生まれた弟。
同じ年の最初の月、1月1日にジオが生まれ。
その年の最後の月、12月31日にジロクが生まれた。
名前さえも似せて付けられた同い年の兄妹は、まるで双子のようにいつも一緒に成長した。
同じ記憶と同じ物を共有し、ほとんど全ての瞬間を共にした。
よく言う愛着関係が完璧に、また非常に強力に形成されたのだった。
一心同体のように育った兄弟がいるのだから、何の不足も感じるはずがない。
そしてそうやってぎっしり詰まった キョンジオの輪の外に、3歳年下の妹キョン・グミがいた。
未熟児で生まれたグミは、幼い頃から体が弱かった。
ダサい名前を付けなければ長生きできないという迷信に頼らなければならないほどに。
生まれたばかりの頃はいつも病院にいて、家に帰ってからもいつもお母さんの目と手を必要とした。
おかげでジオとジロクの世話は主に父親のキョン・テソンがしていた。しかし、彼が死んだ後にはほとんど〈銀獅子〉の手に 任されて育った。
お母さんを奪われたと嫉妬したり、子供っぽくそんなことはしなかった。
そんなことを感じるほど繊細でもなく、周りの関心が足りなかったわけでもないから。
ただグミに愛情があるのか誰かに聞かれたら、ジオは少し困った。
どこか他人みたいな妹。
ジオが感じるグミとは、まさにそこまでだったから。
もし、あの日がなかったら。
「キョン・ジオ、あなた行ってみなきゃいけないんじゃない?」
「どこに?」
「家。さっきあなたの妹が具合悪いって、お母さんから電話があったじゃないか。早く家に帰ってみろって。」
「うん。でも来なくても良いって言ってたけど。」
「誰が?」
「あの子が。電話して聞いてみたら大丈夫だって。必要ないって。」
ジオが13歳、グミが10歳の時のことだ。
友達と遊ぶのが一番楽しい時で、パク・スンヨの催促が面倒に感じられたのも事実。
電話の声が少し悪く聞こえたけど、あの子はいつも具合が悪いから。
その程度ならまあ。
そう大したことないと思っていた幼い日の夕方だった。
「おい!」
何かがおかしいと気づいたのは、汗で濡れたキョン・ジロクが真っ青になって 走ってきたとき。
「クソ、あなたマジで!たかがゲームのために、あなた......!」
込み上げて言葉が出ないキョン・ジロク。ジオの手首を掴む手は熱くて熱くてたまらなかった。
荒い手つきに引かれてジオが到着したのは病院の救急室。
ベッドに横たわり、痩せて小さな体をハアハアさせている妹の前だった。
急性肺炎。
危うく死ぬところだったそうだ。
ジオは呆れた。
たかがそれで?
その時点のキョン・ジオはすでに覚醒者だった。幼いながらも、世界で最も強力な魔法使いだった。
その程度、指を鳴らせばきれいに治って余りある。
命さえあれば病人でも生かせる。そんな人の妹なのに、たかが肺炎ごときで......
その簡単なことをしなかったせいで、この子を殺すところだった。
「大丈夫だって言ったじゃん?」
大丈夫だって言うから、本当に大丈夫だと思った。
「必要ないって言ったじゃん?」
必要ないって言うから、本当に必要ないと思った。
グミは、ジオを責めなかった。それでもグミは言った。
目を覚ました自分の目の前に立つジオをじっと見つめながら。
「私のせいで怒られた?ごめん。」
幼いジオは悟った。
「あなた......どうして私をお姉ちゃんって呼ばないの?」
ずっと落ち着いていたキョングミ。
ジオよりも幼いグミがその言葉に歯を食いしばった。古くさい何かをいっぱい込めて吐き出した。
「どうやって?」
「......」
「私、あなたの妹じゃないもん。」
幼い妹の言葉からは、恐ろしいほど寂しい匂いがした。
ジオは後ずさった。
肩の上に降りてくる、ある重み。
ついにキョン・ジオがキョン・グミのお姉ちゃんになる瞬間だった。




