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393話

「しかし、これ一つは知っておけ。」


「何を。」


「【無限の心には定められた寿命はない。ただ、その首を斬ることができる唯一のものがある。】」


ヒュッ!


彼が持った合金の杖の先から飛び出した剣が、軽く空間を切り裂く。


コウンと人魚の死体、男の血痕が一瞬にして闇の中に消える。


冷たい光沢を放つ杖を片方の虚空に投げ入れ、悪魔がジオを振り返った。


「【人。】」


「……」


「【有限な彼らが常に無限の心の首を斬る。だから、この星系全域に人より残酷で恐ろしいものはないということだ。】」


続いて倒れたジョン・ギルガオンの方をちらっと見て、軽く足を踏み鳴らす。


現れた影が口を開け、ジョン・ギルガオンをそのまま飲み込んだ。


ジオは彼がジョン・ギルガオンをリムジンの中に移動させたことを感じることができた。


手慣れた処理だった。


一瞬にして後処理まで全て終えたキョウルが、ジオに近づいてきた。


近くに寄り添い、じっくりと彼女を見つめる。


「無理に強がる必要はない。」


低くうなる声が優しかった。


「恐ろしくて怖いものには、常に立ち向かうことだけが君のやり方だったと知っているが……私を見ろ、ジオ」


そして、それよりもっと優しい手つきで顎をそっと撫でる。


まるでとても貴重なものを扱うように。


ジオは抵抗せずに顎を上げた。


彼を見つめた。


いつもそうであるように、彼の方からぐっと身をかがめてくれているので、急な身長差にも首が痛くなることはなかった。


見つめ合う視線の中で、キョウルが囁いた。


「【望むなら世界を君の足元に、死さえも君を飲み込めなくした、真実の君の運命が君のそばにいるのではないか?】」


「……」


「この私は永遠よりもさらに永遠だ。世界で唯一の、君だけの単純で不変の永遠だ。」


悪魔が、ジオが名前をつけた「キョウル」がにやりと笑った。


少しばかりおどけて目尻をくしゃくしゃにしながら。


「分かったか?私の前では、君はいくらでも弱くなってもいいという意味だ。」



手の速さでは誰にも負けない男が、いつの間にか自然にジオを自分の腕の中に抱きしめていた。


ぎゅっと抱きしめられたその胸は広くて固い。


ジオは息苦しいとぶつぶつ言いながらも、額を彼の胸に押し当てた。


空の星は多くて無数にあるけれど、彼女だけのこの星からは北風の匂いがする。


あまりにも乾燥していて過酷で、息が詰まるようなキョウルの風の匂い。


しかし一方、キョウルは最も偏愛の激しい季節でもある。


自分を支配する者には、躊躇なく崩れない永遠の城壁となってくれる。


額をこすりつけたジオが、胸にすっかり埋もれたまま呟いた。


「……疲れた。」


「そうか。」


「眠いし、血の匂いを嗅ぎすぎて鼻も痛いし、胃もむかつく。吐き気がする。」


「そうか。そうだったか。」



喉の奥で笑い声が響く。


抱きしめる力が強まる。


彼の手が頭を包み込むのが感じられた。


髪の間を通り過ぎる指に、ひどく敏感になっていた体がだるくなった。


「ただ寝たい……。何も考えずに。少なくとも20時間は死んだと思って寝る。」


「ああ。そうしろ。」


キョウルはコートの襟を広げ、ジオをすっぽり包み込むように抱きしめ上げた。


笑いが狂ったようにこみ上げてきた。


いつの間にか力をすっかり抜いてしまったのか、全身がぐにゃぐにゃだ。


当然のように自分を抱いて奉れという態度がおかしくて。


弱くてもいいと場所を設けてやったら、しめたとばかりにべたーっと寝転んでしまう。



「可愛くてたまらない。」


バベルよ、見えるか。


この愛らしい猫が私のものだ。


込み上げてくる気持ちを抑えきれず、小さな頭にキスを浴びせていると、キョウルは結局ビンタをもう一発食らった。


それでも笑ってしまうのを見ると、もともと狂っていたのがさらに狂ったようだ。


彼は消えない笑みを浮かべながら囁いた。


温かい耳たぶに口づけをしながら。


「ご苦労様。家に帰ろう。」





「それではすぐにお入りください!はい?キョン・ジオハンター!聞いてますか?冗談じゃなくて本当に搭乗ゲートの前です。私が送った認証ショット確認しましたよね?フランス行きの飛行機に今乗りますよ、このまま乗りますか?」



「ああ、分かったって。」


「約束しましたね!私、通話録音全部できるの知ってますよね!」


声が嗄れてひび割れたチャン・イルヒョン局長の叫びの向こうで、「分かったって、分かったって言った!」と騒がしい歓声が上がった。



まるで首領様の帰国ニュースを迎えた某国家公演団のような反応。


ジオは気まずそうに電話を切って睨みつけた。


この身がどうにかして断ち切った俗世なのに……。



「恩を仇で返すのね。」


「国家の仕事です。国民の義務ではありませんか。よくご存知でしょう。」


受け取った携帯電話を内ポケットに入れながら、ウィ・ムクジュンが肩をすくめた。


その一瞬の動作にも角がしっかり立っている。


軍人出身らしく。


苦労したおかげでウィ・ムクジュンは体重が少し減ったが、前日の夜に比べればとても顔色が良い。


サントロペ特有の白い日差しが、要員の日に焼けた顔を明るく照らす。


顔のあちこちにある傷跡が、まるで勲章のようだった。


「何を知ってるって言うの。」



ふん。


ジオは顎を突き出し、ウィ・ムクジュンと一緒に下の風景を眺めた。


港に隣接するレストランの低い屋上。


小さな港町の全景が一望できる場所だ。


青い地中海と接するサントロペの港には、昨日から巨大な医療キャンプ団地ができていた。


ヒーラーをはじめとする医療スタッフが、忙しそうにテントのあちこちに出入りしているのが見える。


そして、そんな彼らを巧みに指揮するジゼル・ジュヌイの姿まで。



簡素な手術服にチョッキを着た聖女は、銀の鎧を着ていた時よりも少しばかり輝きは少ないが、それよりも何倍も神聖に見えた。


彼女は高位ヒーラーの中では珍しく、医師免許まで取得した稀有なケースだ。


鋼の心臓を持つ献身的な仲裁者。



誰も愛さない心を持って生まれた上に、信心もあまり深くない冷淡者だが……。


自分を導く星に従い、その意思に従って人類に自分を捧げて奉仕することで、存在の使命と安定を見出した戦闘狂聖女。


「世の中には本当に変わった奴らが多いんだな。」


おかげで退屈はしないけど……。


「……ありがとうございます。」


その時、ふとウィ・ムクジュンが言った。


「局長も伝えてくれと言っていました。大韓民国が危うく犯罪者の手に落ちるところだったと、この借りは忘れないから帰国したら国情院に一度-」


「国情院の報告を聞いてあげたわけじゃないんだけど?」


「……」


暖かい海風が黒髪を撫でて過ぎていく。


ウィ・ムクジュンは彼女の横顔を見つめた。


まだ幼さが残る頬と、綿毛のように揺れるもみあげ、しかしそれにもかかわらず成熟した目……。



立派に育った。


祖国の誰よりも。


妙な郷愁と感傷が湧き上がり、ウィ・ムクジュンはしばらく沈黙した。


キョン・ジオを初めて見たのは、彼が国情院に異動したばかりの25歳の新入社員の頃だった。



高校を早期卒業後、陸軍士官学校から情報司令部特殊任務隊まで。


軍人として最高の精鋭コースだけを歩んできた青年は、自信満々だった。


そして現実は、待ち構えていたかのようにそんな青年の青春を躊躇なく踏みにじった。



どれ一つとして容易ではない。


新しい時代は残酷で、犯罪は過酷になり、祖国は脆弱だった。


殉職した特殊工作要員たちは「名もなき星」として国情院の玄関に刻まれる。



日に日に増えていく先輩たちの星を数えながら、彼は堪え難い無力感を感じた。


そんな現実を全てひっくり返したのが、まさに……ジオだ。



大韓民国初のS級の出現だ。


当時、彼はトラウマで現場にずっと出られないでいた。


国の禄を食む身で、ただ遊んでいるわけにはいかず、国内の機関をあちこち転々としていたが、センター研究所もそのうちの一つだった。



噂のあの子がよく滞在していた場所。


見える場所にいるから、ただ見ているだけだ。


言い訳は良かった。


彼はその良い言い訳をしながら、その子供が訪問するたびに毎日その周りをうろついていた。


そうして、トラウマから回復した。



「ありがとう。」


挨拶は思わず口から出た。



ウィ・ムクジュンは短く笑った。


ジオが彼を見る。


「君も見たように、定着できずにあちこち彷徨っている奴だから、いつ返せるか保証はできないけど…。ちゃんと覚えておけ。いつか必ず返すから。」


「あのね。おじさん。」


手すりに腕をかけながら、ジオは軽く失笑した。


「好意は好意としてしまっておいて。」


「え?」


「力量もないくせに、生意気なこと言わないで。食後の運動にもならないようなことで、生意気なこと言うな。」


「何?」


ウィ・ムクジュンの口が呆れたように開いた。


生意気?10年以上国情院のブラックとして活動しながら、一度も聞いたことのない言葉だ。


「ありえないインナーサークルに入ってきていることを知らないわけではないけど…」


もしかしたら、定着できなかったのではなく、しなかったのかもしれない。

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