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391話

「救済だ、私だ。私が来た。パートナー、私だよ。私を見て。え?しっかりして、グウェナエル……!」


お願い。お願いだから……!


厳しく訓練を受けた期間が無意味で、堅実に生きてきた人生が色褪せる。



寡黙さが自慢だった要員は、みじめに崩れ落ちてパートナーの名前をわめき散らした。


ウィ・モクジュンの引き裂かれるような絶叫がホールに響く。


人魚は切ない呼びかけにも目を開けられなかった。


死んだ者はいつもこうして静かだった。


「……」


ファン・ホンは黙って客席にどさりと腰掛けた。


血でびっしょり濡れた彼のスーツから血がぽたぽた落ちた。


慣れているように首の後ろの血痕を大雑把にこすって拭った彼は、内ポケットからワウガムを取り出してくちゃくちゃ噛んだ。


甘い匂いが慣れたように彼の残りの飢えを癒してくれた。



ファン・ホンの【門】は閉じたが、彼の鬼と阿修羅たちがなぎ倒して過ぎ去った痕跡は、無残に残留していた。


何の痕跡もなくきれいな人は、ここにたった一人だけ。


キョン・ジオが表情なくドマルソを見下ろす。


一面真っ赤な場所で一人蒼白なその顔が、まるで……。


「災厄」


ドマルソは思った。


私は生きている災厄を見ている。



「[誰がこんなことを……誰が送った?人魚たちがあなたたちのような者を知るはずがない……マーリンか?結局マーリンが動いたのか?]」


うっ!血が逆流した。


自分が展示していた人魚たちと全く同じ姿で開かれたドマルソの胸から、心臓がぴくぴく跳ねた。


鬼たちに食われたり、阿修羅たちに引き裂かれたりしなかった魔法使いたちは、皆その有様だった。


恐怖に怯え自分の体を見下ろしていたドマルソが、床をよたよた這った。


命令権者は幼い顔をしたこの女だ。この女さえ説得すれば生き残れるだろう。



「[そ、そちらの雇用主が誰か知らないが、また、私とまた取引しよう……!金?宝石?魔石?私は学派だ。一つの魔塔のグランドマスターだ!何でも言うことを聞く!どんな提案でも受け入れるから-]」


「韓国人だっていってるじゃん。」


「....!」


「韓国語で吠えろ。」


「……あ、あなたは……」


ドマルソは呆然とした。


不可解な状況に彼の唇が痙攣するように震えた。


「一体誰なの……どうして、一体誰なんだ……」


ジオは答えてくれる代わりに、バルコニー席に視線を投げた。


するとそこにうずくまって隠れていた者たちが、待っていたかのように両腕を上げてわっと立ち上がる。


「[降、降伏!降伏!味方です!!]」


「[私たちはフィクスド学派です!こちらは潔白です!私たちもパープレクシティ学派の狂った行いを聞いて確認しに来たんです!本当です!]」


重力に関係なく四方八方から降り注いでいた血の雨で血まみれになった彼らは、完全にうんざりした顔だった。


潔白と無関係さを証明しようとするかのように、慌ただしくローブをひっくり返して見せたり大騒ぎになった。



そしてその時。


「彼らの言うことが事実だ。」


ギイ、ドン。


ドアが開いて閉まる音と共に、一連の足音がホールに響く。


「[ま、マーリン?]」


「[生…生きてた……!]」


バルコニーから安堵のため息が漏れた。


しかしマーリン・グリムストームは彼らの方を振り返らず、そのまま直進した。


ずっと視線を固定したまま。


止まらない足取りに、場内の魔法使いたちはひどく緊張した。


あの「マーリン」だ。


普段から偏屈で、辛辣だと有名な世界魔塔主。


没落した囚人出身のあの老人は、ひたすら魔法的な才能一つで刑量を赦免され、今の地位まで上り詰めた。


世間に傲慢な魔法使いのイメージを確立したと言っても過言ではない者。


魔法使いたちの代表も同然の世界魔塔主が、この無惨な魔法使い虐殺を見過ごすはずがない。


ドマルソが大きく間違えたのは確かだが、今日この場で大変なことになるのは、あのボブカットの小娘だ。


見守っていた魔法使いたち皆がそう思った。


しかし。


「……!」


「え……?」


「[ま、マーリン?今何をしている……!]」


しかし彼らが見過ごしていたことがあるとすれば、今あの賢者の前にいる者は、偏屈な魔塔主さえも敢えて敵対できない魔法使いだという事実。


躊躇なく片膝をついたマーリンが、丁重に彼女の手の甲に口づけをした。



「全ての魔法使いたちを代表して謝罪する。」


「……」


「許してくれとは言わない。」


「……」


「ただ、無関係な者たちにはどうか慈悲を施してくれ。お願いする。」


翻訳魔法を経てさらに濁った賢者の音声が、場内に響く。


人間の限界の果てという9等級に到達した魔法使いの翻訳魔法だった。


この場の皆に理解できるように聞こえた。


魔法は選ばれた秀才たちの領域だ。


天才ではない魔法使いはいても、秀才ではない魔法使いはいないように、愚かな者は魔法の領域に入ることができなかった。



どさっ。


この空間の魔法使いたち全員が、誰と向き合っているのか、ようやく悟った。


四方八方から膝をつく音が響いた。


世界魔塔主が敬意を払う相手。


片膝をつく姿勢は、古くから「王」が受ける服従と尊敬の挨拶だった。


鼻持ちならない魔法使いたちからそのような挨拶を受ける相手は、この世にただ一人しか存在しない。



「魔。魔術師王……!」


「ジョー」。


この者、キョン・ジオだ!


ドマルソが驚愕に満ちた息を漏らした。


彼の目が絶望に染まる。


この多くの魔法使いたちを粛清しても、魔法使いたちに決して非難されないただ一人が、目の前の災厄だった。


彼をちらりと見たキョン・ジオが、マーリンに無心に尋ねた。



「パー、何?一体その学派は何なの?元々あったものなの?」


「混沌学派ですり後天学派の一つで、ミュータブル-消滅学派から分かれて出てきました。」


「消して。私の目に触れないようにして。」


「そうしましょう。」


魔法使いたちが唾を飲み込んだ。


学派一つが今絶滅した。


3大先天学派を除けば最も大きな規模だった魔法学派が!


「パープレクシティ学派所属の既存の魔法使いたちは、それでは-」


「いない。」


「……」


マーリンがジオを見る。


顔を向けて見つめ合ったジョーが、もう一度言った。


理解できないのかというように。


「『いない』と。もう。」


「……分かりました。」


取引はこれで終わった。


乱れたローブの裾を整えながらマーリンが立ち上がった。


「今……あれは何の意味だ?」


ドマルソの首が勢いよく回った。


「む、む、まさか……た、塔主!わ、私、私をこのまま見捨てるのですか?プ、フロリダはどうなるのですか!フロリダ魔塔のことを考えなければならないはずではありませんか!」


答える価値もないというようにマーリンが彼を無視して通り過ぎた。


魔塔主と同行していた魔法使いたちが、急いで他の学派の魔法使いたちを連れて後に続いた。


「マ、マーリン!マーリン!!!どこへ行く!クソ、マーリンこの野郎!お前がそれで塔主か!マーリイイイイン!」



端役たちが退場する。


舞台の上にはもう真の主役たちだけが残った。


キョン・ジオが一歩足を踏み出した。


「お、来るな!来るな、クソ!この女が魔術師王なら何でもありか?このクソみたいな……!来るな!!!」



ううううううう……!


波紋を描くように一帯に魔力が起こる。


黄金色。


星と王の色だった。



「た、た、助けてください……!お願い、も、もう二度と!本当に二度と、こんなことはしません、お願い、魔法が、神、神の領域が気になったんです、ご存知でしょう……?え?魔法使いなら誰でもそうするんじゃないですか、お願い、王よ、よ、容赦を、慈悲を、お願い……!」



チクタク。


時計の秒針が止まる。


世界の領域を区分していた境界が曖昧になる。


魂が起こった。



「……!」


ファン・ホンははっと顔を上げた。


かすかな歌声が始まっていた。


悲惨に死んでいった人魚の魂たちが歌う歌だった。


海のプリマドンナ、彼らが自らに捧げる彼ら自身の鎮魂歌。


魔力が波のようにその旋律を支える。


後ろ手に組んだキョン・ジオが、虐殺者の方へ上半身を曲げた。黒檀の髪が幕のようにドマルソの視界を覆う。



「神の領域が気になったと。」


「は、はい……!お願い……!」


「でもどうしよう。」


「……!」


見えるのはただ、ぞっとする金眼。


圧倒されたドマルソの瞳孔が拡張して。


星座が皮肉っぽく笑った。



「神がお前を許さないって。」



(チ・レイ。)

魔法使いは常に演算と共にある。


しかし超越した魔法使いには、もはやそのような過程は不要だった。


『地域専属担当者首席中尉管理者7-A、星座の呼び出しに待機します。』



ただ命令するだけ。


(こいつ含めここの魔法使いたち、削除して。残らず。)


『命令待機完了。』


『残りの寿命まで完全削除ですか?』


(違う。)


星の光が輝く目が、魂を失ったウィ・モクジュンの方へ届いた。


言ったように、死にすぎた。


(交換して。)


『対象指定が必要な命令です。』


(死んだ人魚たち。)


残れば地獄へ送って。


命令を受領した管理者とバベルが作業遂行を開始する。


崩れる照明の光のように、舞台の上から太陽に似た星の光が絢爛に散開した。


魔法の仮面を被った奇跡が命を受けて地上に降臨する。


一つの命には一つの命が。


心臓の血は同じように赤いから。


悲劇は喜劇に。


業報は借りに。


死者復活は誰にでも許された領域ではない。


誰も軽々しく耐えられないからだ。


それは超越さえ色褪せさせ、星さえ堕落させ、人ごときを永遠に生かす。


泣き声と似た歌声を聞きながら、神になった魔法使いはそっけなく振り返った。


行かなければならない場所がまだ残っていた。

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