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390話

外では雨が降っているのに、ここでは血が降っている。


「[早くこちらへ!]」


パアッ!


マダムの声が響く場所から、神聖な銀光が絶え間なく湧き上がった。


四方を包み込む圧倒的な神聖さ。


ジゼル・ジュヌイの聖力だ。


ジョン・ギルガオンが呼び出したトランプ兵たちが、人魚たちと人魚たちの死骸を休むことなく劇場の外へ運んだ。


地下最大オークションだというが、どれだけ多くの人魚たちを隠していたのか、終わりが見えなかった。




[聖位固有スキル、'メソッド演技Method Acting'発動]



[嘘つきノート、キャラクター一覧29章 - ジゼル・ジュヌイ '聖母の慈愛深い手(守護騎士7階級神聖回復)' : 習得度78% | 熟練度89% | 理解度65% | 総合完成度54%]


[キャラクター理解の完成度が十分ではありません。]


[不足した没入で演技の効果が1/4に減少します。]




「ヒーラー系とは特に相性が悪いんだな。」



ひねくれた性格のせいか?


ジョン・ギルガオンは自嘲するように笑った。


彼は万全の備えに徹底している方だ。


病的にそうだった。


今回も万一に備え、ジゼルと会う間ずっと「研究」を活性化して準備をしておいたにもかかわらず、習得速度が予想以上に遅かった。


S級だからと侮るなということか。


圧迫するジョン・ギルガオンの手の下から赤い血が噴き出す。



パアッ!


ジゼルよりは弱いが、否定できない聖光が彼の手先から再現された。


ジゼルは自分のスキルが他人の手で繰り広げられると、最初は戸惑った様子だったが、すぐに「俳優」に関する噂を思い出したのか、むしろよく見るように聖力範囲を広げてくれた。



S級の中では珍しい人格者だ。


「もちろんそうなると思って堂々と使ったんだけど。」


今でなければいつS級聖女の治癒スキルを習得できるだろうか?


この程度の私的利益追求はジョーも文句を言わないだろう。



「[助けて…ください…]」


かろうじて息を吹き返した人魚が肩で息をした。


それでも血が再び流れるのを見ると、この者は生きた。


聖女が直接浴びせる聖力洗礼にも胸が開かない人魚が数十を超える状況。




「ジョーはなぜ中から出てこないの?!」


血の海の上で吐き気を催していたマダムが、蒼白になったままジョン・ギルガオンに叫んだ。




固く閉ざされたホールの扉。


人魚たちと観客たちが抜け出すとすぐに閉まったあの扉の内側で何が起こっているのか、音一つ聞こえてこなかった。



「もしかして魔法使いたちの言い訳でも聞いているんじゃ-!」


「マダム!」


ジョン・ギルガオンが神経質そうに舌打ちした。


「殺すと言ったら殺すんです。そこで終わりです。我が国1位を二言する人扱いするのは困りますね。」


「し、しかし!」


「違うって。韓国からキョン・ジロクや鬼主が来ればまだしも、可能性は全くありません。無駄口を叩く余裕があるならロビーでも片付けてください。」




ピンタダ側の人々と遅れて到着した守護騎士団が尽力しているが、ロビーは阿鼻叫喚だった。


憤怒した魔術師王が何か手を打ったのか、建物の外へ人魚たち以外は誰も出られなかったからだ。


まるで目に見えない区分線が引かれているかのように。




「[出してくれ!私たちも出してくれ!]」


「[私が誰だか知っててこんなことを?!後悔するぞ!]」


抜け出せない観客たちが恐怖に囚われ、阿鼻叫喚した。


ファン・ホンが呼び出した餓鬼と阿修羅たちから間一髪で逃げ切ったものの、軽く引っ掻かれただけでも流れた彼らの血がすでに川を成した。



「このままではだめだ。アルファ!場所を移さなければ。人魚たちを連れて海へ行く。ここは私が片付けるから、まだ出ていない人魚がいるか確認してくれ!」


「うん。そうしましょう。」






ヒュッ!

トランプカード一枚が額に突き刺さる。


襲い掛かってきた魔法使いが呪文を完成させられないまま、そのまま倒れた。


ジョン・ギルガオンは視線をくれず、歩き続けた。


虚空に浮遊する52枚の札が、余裕のある主人の周りを護衛するようにくるくると回る。


劇場ホール外のあちこちにも、魔法使いたちは当然残っていた。



「1軍にも入れなかった雑魚だろうけど。」


ヒーラーとは相性が良くないが、魔法使いとはそれほど悪くなかった。


味方としても、敵としても。


ハンカチで頬に飛び散った血を拭き取ったジョン・ギルガオンが、そのままタオルを丸めて捨てた。


遠いフランスまで来て後始末をしている自分の境遇がひどく哀れでもあるが······。



「悲しむ者は幸いなり。」


ジョン・ギルガオンが低く口ずさんだ。


労働がやりがいのある理由は、報酬という福が約束されているからだ。彼は音もなく角を曲がった。



「クッ•••• クウ••••。」


抑えられたうめき声。


正確な方向を捉えて近づくと、やはり。


「[落ち着いて、友達。味方だよ。良い人たち。]」


胸が開いたまま死にかけている人魚がここにもう一人。


ずっと這いずり回っていたのか、鱗がすっかり剥がれ落ちていた。人間化する余力さえ残っていないという意味。


「…これは、遅かったか。」


状態を調べていたジョン・ギルガオンの顔が険しくなった。


喪失した臓器が一つや二つではない。


これほどなら聖女が直接来ても意味がないだろう。


それでも生きようとここまで這ってきた者だった。


とりあえず連れて出るつもりで、彼が人魚をそっと支えるその時。



トボトボ。


「……!」


「複数!」


素早く人魚の口を塞ぎながら、ジョン・ギルガオンは角の壁にぴったりと寄り添った。カードが一糸乱れず動き、主人の存在感を隠す。


足音がどんどん近づいてきた。


反射的に身を隠したのは、強烈に感じるこの力が「魔力」だったからだが••••••ちょっと待て、あれは。



…マーリン?


一本残らず撫でつけたダーティブロンド。


若い顔をした老人。


世界魔塔主「賢者」マーリン・グリムストームだ。


シグネチャーも同然の傷だらけの手がローブの下で揺れた。


「……」


ジョン・ギルガオンはさらに息を殺して後退した。



「魔法使い」は現在キョン・ジオを除けば、それが誰であれ敵味方の識別が不可能な状態。


とりあえずその場を避ける方が良い。


後ろに手を伸ばした。

掴んだドアノブを回し、彼はそのままドアの内側へ入った。



「……なんだ、ここは?」


室内の温度は非常に涼しく、照明はほのかだ。


化学薬品の匂いと、その上に上塗りされた魔力香が嗅覚を鋭く刺激してきた。


奇異な感じだ。


どうやらこのまま引き返す方が色々と良さそうだが••••••。



「……」


ジョン・ギルガオンはしばらく悩んだ。


「勘」が彼を離してくれなかった。

彼に語りかける。この中に「何か」あると。



彼をこの地位まで押し上げた一番の功労者は、断然この第6感だ。


ジョン・ギルガオンは素早く悩みを終えた。



「[すぐ終わります。少しだけ待っててください。]」


死にかけている人魚を片隅にそっと下ろした後、彼は奥へ向かって入っていった。


このむっとする匂いは••••••。


何か覚えがあると思ったら、霊安室の匂いだ。


魔法的な処理がしてあるからすぐに気づかなかっただけ。


奥へ進むほど光量がどんどん濃くなった。


乾燥した青い照明が彼の秀麗な輪郭をなぞる。用心深く捜索していたジョン・ギルガオンがハッとして立ち止まった。



「人魚?」


「いや••••••ちょっと待て、違うじゃないか。」


水槽のように展示されたガラスのタンクの中に閉じ込められているのは、人魚ではなかった。


人間だ。



人種、性別、年齢区分なく、ガラスケースの内側に閉じ込められている人々の容姿は千差万別だった。


ジョン・ギルガオンは表面に貼られたチャートの一つを素早く読んだ。



「USA ニューヨーク マンハッタン、35歳、ジェームズ・ミラー、メイソン・インダストリー••••••。」





「弊学派ではVIP顧客の皆様のためのご遺体修繕サービスもご提供しております。生前の姿そのまま、愛する方とすぐに再会可能という点!」



なるほど。


「ご遺体修繕サービス?」



ヒュイ- 口笛が思わず出た。


「大物を釣り上げたな。」


失笑したジョン・ギルガオンが、人差し指でガラスケースの表面を軽く弾いた。どうりで奥へ入ってみるべきだという気がしたわけだ。


とんだ掘り出し物じゃないか?


これならわざわざ取引名簿がなくても、最も強力で確実な証拠だ。


「イ・ハン君のスポンサーがソウアングループだったな?どうせあの人は我々側が推す候補でもなかったし。この機会にソウアン側の持分をきちんと確保しておくのも悪くない-」


「……」


ドスン。



心臓が墜落する。


鼓動しているのか、その場にあるのかさえ、ずっと前に忘れていた彼の心臓が。




[大韓民国、ソウル]


「……」


[27歳 / 女]


「……」


[コ・ウン / ソウアングループ]


「…ウナ。」


首を絞められたような呻き声が漏れた。



ジョン・ギルガオンは馬鹿みたいにぼんやりと彼女を見上げた。


「ジョン・ギルガオンです。今日からそちらが私の婚約者だそうです。」


「ジョン・ギルガオン?名前がギルガオンっていうんですか?私はコ・ウンですが……」


「コ・ウンさん。覚えやすいですね。どこへ行っても婚約者の名前を忘れることはないでしょう。」


「そうですか?私たちの名前からなんとなく似ていますね。感じが••••••良いです。」


「当然幸せですよ。私の初恋の人と結ばれたんですから。学校に通っていた時からずっと片思いだったんですよ。ギルガオンさんは覚えていないでしょうけど。」


「・・・・・・・・・」


「なぜそんな風に見るんですか?私、何か付いてますか?」


「いいえ。演技の才能があると思って。」


「え?」


「私の名前も知らなかった人が初恋だなんておかしいじゃないですか。ああ。そこのカメラ、もう一度笑ってください。今日の主人公なんだから綺麗に見えないと。スマイル。」


「そうです。私は人が嫌いです。それが何か悪いですか?」


「本性が出たな。言いたいことはそれだけですか?」


「私を愛してくれというわけでもないじゃないですか!」


「・・・・・・・・・」


「そんなことはとっくに諦めました。あなたの言う通り、私は自分の分をわきまえているから。ただ私を、ジョン・ギルガオンさん、私を少し••••••見てくれたらだめですか?」


「・・・・・」


「とても寂しいんです。」


「……婚約解消の話は来週頃、ソウアン側に伝わるはずだ。荷物はあらかじめまとめておいてください。」


「ギルガオンさん、お願いだから•••••」


「ウナ、ごめん。」


「・・・・・・」


「俺は一生を偽物の中で生きてきた。すでにそうやって30年近くを生きてきたのに、少なくとも結婚して一緒に暮らす女は偽物じゃなくて本物であってほしいというのが…」


「・・・・・」


「それがそんなに理解しがたい話なのか、お前には?」


「・・・・・・」


「合わない人同士で暮らすからあなたも苦労したでしょう。整理が終わったら連絡して。俺はホテルで過ごしているから。」


「停止!止まってください!攻略に失敗したダンジョンです。ダンジョン暴走が進行中ですので安全な距離まで下がってください。」


「中に人がいると聞きましたが! D.I.から来ました。」


「え?中にいる方がD.I.の関係者だったんですか?確かに一般人だと聞いていたのに••••••ほう、なるほど!養老院がダンジョン化する過程で人々を避難させて中からドアを閉めたそうです。誰がそんな殺身成仁の精神を発揮したのかと思ったらやっぱりそうでしたか。」


「•••••では生存確率はどのくらい-ちょっと、理事?理事!!何してるんですか!早く理事を捕まえて!」


「離せ!クソ!ウナ!ウナ!!!! コ・ウン!!!!」


「収拾したご遺体はとりあえずソウアン側に引き渡しました。ご遺族の意思があまりにも強硬で••••••」


「・・・・・」


「お二人の婚約期間は長かったですが、すでに婚約解消した状態なので法的な権利がありません。もちろん理事がお望みでしたら法務チームとよく相談して-」


「いい。ビビアン。」


「理事。しかし理事が直接ご遺体収拾までされたのに••••••」


「ただ送ってやってくれ。」


「・・・・・・」


「その方が良い。」



青いガラスケースに映る若い男の顔。


その上に、忘れようと何度も努力したが、最後まで手放すことができなかった恋人の肖像が彼を見下ろす。


相変わらず寂しい顔。


相変わらず、そして永遠に許されない••••••。


ジョン・ギルガオンはそのまま崩れ落ちた。

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